労働安全衛生研究
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12 巻, 1 号
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巻頭言
特集「労働災害リスク」
原著論文
  • 山口 さち子, 前谷津 文雄, 𡈽井 司, 引地 健生, 藤田 秀樹, 今井 信也, 赤羽 学, 井澤 修平, 王 瑞生
    2019 年 12 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/02/28
    [早期公開] 公開日: 2019/02/19
    ジャーナル フリー

    本研究では2017年11月にMRI検査責任者宛てに実施した妊娠就業者のMRI検査業務の配置方針に関するアンケート2072件について,消極的配置(妊娠報告後は配置を減らす,配置しない等)の背景要因を検討した. 背景要因として,回答者の非電離放射線の見解と身体負荷の見解に着目した.第一に,決定木分析で消極的配置の回答について段階的に分析を行った結果,第一~三層で非電離放射線や身体負荷の見解が要因として抽出され,特に有害性に対する懸念が強く影響していた.続いて,消極的配置の選択における非電離放射線/身体負荷の見解の影響を二項ロジスティック回帰分析で検討した.独立変数は単変量解析で有意差を示した非電離 放射線の「関心・知識取得状況」,「有害性の懸念」,「ばく露防護」の3項目に,「身体負荷」,「基本属性」(性別, 年齢,人員充足度)とした.その結果,消極的配置の選択においては,非電離放射線への興味・関心は選択に影響を及ぼさないが,有害性やばく露防護に対する憂慮が影響を与えていることが示された.身体負荷の見解についても影響が観察されたことから,配置方針を検討する際の考慮要素であることが示唆された.また,基本属性では特に年齢が選択に影響していることが明らかとなった.本研究の分析結果は管理者と当事者が同程度に安全情報を共有できる資料作りに活用予定である.

調査報告
  • 甲斐 洋
    2019 年 12 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/02/28
    [早期公開] 公開日: 2019/02/19
    ジャーナル フリー

    本報告では,茨城労働局労働基準部健康安全課が平成25年度~平成27年度及び平成29年度の各年度に茨城県内の労働者数50人以上の約3,200の事業場に対して提出を要請した「安全衛生管理実施状況報告書」にお ける安全衛生管理実施内容を調査した結果とそれらの事業場で発生した労働災害を対応させて,労働災害を発生した事業場と労働災害を発生しなかった事業場の安全衛生管理実施内容を分析し,労働災害発生事業場における安全衛生管理実施内容の問題点を定量的根拠に基づき業種別に明らかにした.
    本報告で明らかにした問題点に基づいて安全衛生管理実施内容を改善することにより,茨城県内の労働災害発生事業場のみでなく,すべての事業場における安全衛生管理実施内容を労働災害防止に有効な活動とすることが期待できる.

  • 佐藤 嘉彦
    2019 年 12 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/02/28
    [早期公開] 公開日: 2019/02/19
    ジャーナル フリー

    2011年以来,大規模化学工場を含む事業場において,爆発・火災災害が連続して発生している.それらの事故の背景要因に係る共通点として,注意の要する危険物などの危険源や取り扱う物質の化学反応に対する理解不足により,取り扱う際のリスクアセスメントが不十分であったことが指摘されている.本稿では,国内及び海外において取り扱う物質の意図しない化学反応(異常反応)について言及したり,解析を行ったりしているリスクアセスメント等(リスクアセスメント及びその結果に基づくリスク低減措置)実施手法・ツールの調査を行い,実施する際の問題点などを整理した.さらに,異常反応を考慮したリスクアセスメント等の的確な実施を支援するための方策を検討した.その結果,いくつかの重要な事象(暴走反応,混触反応,自己反応性物質の爆発など)について,代表的なシナリオを複数示し,全体のシナリオ検討の際の参考にすることが,RA支援のための方策として挙げられた.

技術解説
  • 豊田 寿夫
    2019 年 12 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/02/28
    [早期公開] 公開日: 2019/02/19
    ジャーナル フリー

    OH&Sマネジメントシステムの新規格JIS Q 45001:2018のリスクアセスメントは,運用対象の業種に応じ労働安全衛生法第28 条の2 及び第57条の3 の規定により告示された二つのリスクアセスメント指針にもとづき実施しなければならない.ところが,国際規格ISO 45001:2018が“ISOの附属書SL”の枠組みで作られているため, “リスク及び機会”という概念が持ち込まれ,新規格の運用には二つのリスクとそれぞれに対応する機会,合計 4種類のリスク関連要素が入り込んでくることになった.また,規格要求事項自体には特定のリスクの低減レベ ルについて規定がない.そのため,本稿のリスクアセスメントは労働安全衛生法関連の両指針に従い新規格が求める“合理的に実現可能な程度に低い”リスクレベルを実現する枠組みを備えるものとする.なお,リスクア セスメントの仕組みと実施の手順ではJIS Q 31010:2012のリスク領域とリスクの区分に則って進め,目標のリスクレベルを達成する上での対応策を提案する.なお,2種類の機会については先行して新規格を運用中の英国 の例を参考に我が国での運用に備えてその検証を行う.

原著論文
  • 高橋 明子, 梅崎 重夫
    2019 年 12 巻 1 号 p. 41-50
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/02/28
    [早期公開] 公開日: 2019/02/18
    ジャーナル フリー

    労働災害による脊髄損傷(以下,せき損災害)の発生率は高くない.しかし,患者の早期の現場復帰率は低く,患者本人や家族,関係者にとって重い負担となるため看過できない問題である.本調査は,厚生労働省が保有する労働災害データを対象に,せき損災害の発生傾向を分析しその特徴をとらえることにより,せき損 災害防止に資する知見を得ることを目的とした.平成24~26年に発生した墜落・転落,転倒,はさまれ・巻き込まれによるせき損災害387件を対象とした.昭和50年代に実施された先行研究と比較し,せき損災害の発生 傾向の時間的変化を検討した結果,建設業が多いことは共通したが,近年,第三次産業や転倒によるせき損災 害の割合が大幅に増加していた.また,平成24~26年に発生した墜落・転落,転倒,はさまれ・巻き込まれの全労働災害,1/4抽出災害,平均雇用者数と比較し,せき損災害に特徴的な発生傾向を調べた結果,建設業, 墜落・転落災害,男性,高年齢労働者は有意にせき損災害の発生する割合が高かった.一方,せき損災害に顕 著な起因物はなかった.さらに,墜落・転落によるせき損災害は3m未満からの墜落・転落により6割近くが発生しており,1m以上の高さからの墜落・転落であれば重症化する可能性が認められた.本調査の結果により, せき損災害に遭いやすい業種や労働者のプロフィール,せき損災害の重篤度が明らかとなり,労働災害防止のための基礎データとして活用されることが期待される.

  • 池田 大樹, 久保 智英, 松元 俊, 新佐 絵吏, 茅嶋 康太郎
    2019 年 12 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/02/28
    [早期公開] 公開日: 2019/02/19
    ジャーナル フリー

    本研究では,職場環境改善の取組み時における勤務時間外の仕事に関する行動(メール確認,自宅仕事)が,労働者の睡眠や疲労,生産性等に及ぼす影響を検討した.製造業の中小企業において,組織体制の変更,勤務 開始時刻の多様化,勤務体制の多様化,作業環境の変更の4つの職場環境改善取組みが実施された.調査は,職場環境改善の約1か月前(事前調査),3,6,12か月後の計4回実施し,調査の同意が得られた36名を分析対 象とした.調査内容として,基本属性,睡眠の質,勤務時間外における仕事との心理的距離,生産性,疲労回復状況等を測定した.また,勤務時間外における仕事に関するメールの確認,自宅での仕事に関する設問を設け,その有無により,群分けを行った.線形混合モデル分析を行った結果,生産性に群と調査時期の交互作用が見 られ,自宅仕事が有った群のみ,職場環境改善前と比較して3か月後の生産性が低下したこと,無かった群と比較して3,6,12か月後の生産性が低かったことが示された.また,調査時期の主効果が睡眠の質と疲労回復 に見られ,職場環境改善後にそれらの改善及び改善傾向が生じたことが示された.また,群の主効果が心理的距離に見られ,勤務時間外にメール確認が無かった群は,有った群と比較して,勤務時間外に仕事との心理的距離が取れていたこと,一方,自宅仕事が無かった群は,有った群と比較して,心理的距離だけでなく,睡眠の質や疲労回復状況も良いことが示された.以上により,職場環境改善時における仕事関連の行動が労働者の生産性に影響を及ぼすこと等が示された.今後,職場環境改善の一環として,職場外・勤務時間外における働き方・休み方の改善も検討していく必要があると考えられる.

調査報告
資料
  • 八島 正明
    2019 年 12 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2019/02/28
    公開日: 2019/02/28
    [早期公開] 公開日: 2019/02/18
    ジャーナル フリー

    タンクやサイロなどの貯槽では,貯蔵した化学物質が発熱して発火,爆発したり,火災が発生したりする危険性がある.異常発生時には,現場作業員が緊急排出や消火等のトラブル対処作業を行う際に被災することもある.最悪の場合,小康状態が続き,大勢が集まった時に大きな爆発が発生することもある.内部が見えにくい貯槽等ではセンサーなどを使って状況を的確に把握し,爆発や火災に至る進展事象を予測し,避難のタイミングを計るなど,トラブルに適切に対処することが求められる.本稿では,貯槽等における爆発・火災の事例を挙げ,トラブル対処作業に関連して爆発と火災の予測と防止の方策を考察する.

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