製造業における労働災害の発生件数は減少傾向にあるが, 転倒に関連する労働災害(転倒災害)の発生件数は減少していない. その背景には高年齢労働者数の増加, 雇用者に占める高年齢労働者比率の増加が影響していると考えられ, 高年齢労働者の転倒災害発生予防に関する指針の作成が必要である. 今回, 文献検索結果を基に製造業における高年齢労働者の転倒災害予防に関するkey question(KQ)を作成し, 文献検索を基に各KQに対する指針案を作成した. 本指針案は従来から行われている環境因子に対する予防戦略と同時に, 労働者の身体機能(個人因子)に対する運動介入を中心とした戦略を併用することの必要性を示した内容であり, 本指針(暫定版)を活用した転倒災害予防活動の進展が期待される. 今後は製造業事業所に在籍する産業保健スタッフを対象に本指針案の有用性に関する外部調査を行い, その後, エキスパートパネルディスカッションを通して指針の完成を目指す.
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