労働安全衛生研究
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巻頭言
特集「第13次労働災害防止計画の推進に資する研究」
原著論文
  • 須田 恵, 柳場 由絵, 豊岡 達士, 王 瑞生, 甲田 茂樹
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 14 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2021/02/28
    [早期公開] 公開日: 2020/11/06
    ジャーナル フリー

    平成27年に,国内化学工場の複数の労働者に職業性膀胱がんが発生したと報告され,当該工場で使用されていたオルト-トルイジン(OT)をはじめとする芳香族アミン類が,膀胱がん発生の原因物質として疑われている.特にOTについては,気中濃度が許容濃度以下であったにも関わらず,作業者の尿には高濃度のOTが検出されており,作業者は経皮ばく露を受けたのではないかと考えられている.生物学的モニタリングとして,OT の尿中濃度定量方法については,NIOSHのMethod 8317が十分な根拠を持った分析方法として知られている.一方,労働現場における作業者尿の分析では,複合ばく露時の各成分の分析及び相互影響の確認が必要であるが,当該分析方法では,アニリン (ANL)の複合ばく露は想定されているものの,同時ばく露の可能性のある他の化学物質の相互影響について未検証であることや,尿成分によるマトリックス効果について検証がなされていないこと等,いくつかの欠点ある.そこで,本研究で我々は,現場で使用されていた 6種類の芳香族アミン類:OT,ANL,2,4-ジメチルアニリン(DMA),オルト-アニシジン(ANS),オルト-クロロアニリン,パラ-トルイジンおよびその代謝物について,液体クロマトグラフィ-タンデム型質量分析装置を用い,複数の芳香族アミン類およびその代謝物が解析でき,なおかつ尿成分によるマトリックス効果も補正できる分析方法の開発を行った.本開発方法を用いて,現場作業者尿を分析したところ,OT,ANL,DMA,ANSについては,十分に検出することができた.また,我々が開発した分析方法は,変動係数(3回測定)が設定定量下限値から計算される誤差範囲内であり,マトリックス効果の補正もまた十分に機能しており,過小評価を最小限にできた.これらのことから,芳香族アミン類の生物学的モニタリングに適した分析方法であるといえる.

  • 小山 秀紀, 北條 理恵子, 池田 博康
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 14 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2021/02/28
    [早期公開] 公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    近年,“Powered exoskeleton”と呼ばれる動力付外骨格型機器(以下,外骨格)が実用化され,脊髄損傷者の歩行再建に有用となる可能性が示されている.しかしながら,安全性の観点から外骨格について調べた研究報告は数少ない.我々は安全な外骨格の設計と運用に資するための基礎的知見を得ることを目的に,外骨格を用いたリハビリテーションの現状を調べ,そのリスクを分析した.まず文献調査の結果によれば,外骨格の有害事象報告には皮膚トラブルや機器の不具合の件数が多かった.転倒の件数は多くはなかったが,これは介助者の支援行動の有用性を示唆するものであった.次にリハビリテーション施設における2種類の外骨格を用いた歩行訓練を観察した結果,理学療法士2名の接触介助と近接監視が外骨格を装着した対麻痺患者の転倒を防止し,安全性の確保は介助者の支援行動に依存していることを裏付けた.一方,介助を担う理学療法士の不安定な歩行や心理的・身体的負担を示唆する行動特性が見られ,機器の適合性・使用性等の問題もあった.最後にリスクアセスメントの結果からは,複数の重要危険源に対する工学的保護方策の適用はリスク低減に寄与するが,転倒等の危険源に関しては使用者に依存する残留リスク方策と組み合わせなければ,リスク回避が困難であることが示された.外骨格の設計と運用にあたっては,装着者・介助者の使用を前提に,工学的手段と人的支援との包括的なリスク低減方策が必要と考えられた.

  • 髙田 琢弘, 吉川 徹, 佐々木 毅, 山内 貴史, 高橋 正也, 梅崎 重夫
    原稿種別: 原著論文
    2021 年 14 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2021/02/28
    [早期公開] 公開日: 2021/02/11
    ジャーナル フリー

    本研究は,過労死等の多発が指摘されている業種・職種のうち,教育・学習支援業(教職員)に着目し,それらの過労死等の実態と背景要因を検討することを目的とした.具体的には,労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センターが構築した電子データベース(脳・心臓疾患事案1,564件,精神障害・自殺事案2,000件,平成22年1月~平成27年3月の5年間)を用い,教育・学習支援業の事案(脳・心臓疾患事案25件,精神障害・自殺事案57件)を抽出し,性別,発症時年齢,生死,職種,疾患名,労災認定理由および労働時間以外の負荷要因,認定事由としての出来事,時間外労働時間数等の情報に関する集計を行った.結果から,教育・学習支援業の事案の特徴として,脳・心臓疾患事案では全業種と比較して長時間労働の割合が大きい一方,精神障害・自殺事案では上司とのトラブルなどの対人関係の出来事の割合が大きかったことが示された.また,教員の中で多かった職種は,脳・心臓疾患事案,精神障害・自殺事案ともに大学教員と高等学校教員であった.さらに,職種特有の負荷業務として大学教員では委員会・会議や出張が多く,高等学校教員では部活動顧問や担任が多いなど,学校種ごとに異なった負荷業務があることが示された.ここから,教育・学習支援業の過労死等を予防するためには,長時間労働対策のみだけでなく,それぞれの職種特有の負担を軽減するような支援が必要であると考えられる.

事例報告
  • 高木 元也
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 14 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2021/02/28
    [早期公開] 公開日: 2020/12/11
    ジャーナル フリー

    本研究は,小売業,飲食店,社会福祉施設における労働災害が減少(または横ばい)傾向をみせている法人等を対象に,労働災害防止に関する取り組み事例を調査し,効果的な取り組み,労働災害防止対策推進上の課題の抽出等を行った.効果的な取り組みとして,本社・本部が店舗・施設の安全管理を主導的に担い,本社・本部の安全衛生委員会・幹部会等に店舗・施設の担当責任者を参加させ,そこでの決定事項を迅速かつ確実に実行させていた.また,具体的な労働災害防止対策については,小売業では,事業者による保護具の支給等,滑りやすい状態の除去,危険な作業の廃止等が行われていた.飲食店では,深刻な人手不足対策として作業工数の削減に取り組み,それによる設備面の対策,危険な作業の廃止等が行われ,安全性の向上につなげられていた.社会福祉施設では,老人福祉施設の腰痛対策として要介護者の移乗作業の機械化等が進められていた.安全教育については,eラーニング(小売業),雇入れ時教育の充実(飲食店),介護研修での安全教育(老人福祉施設),定期的な安全教育(障害者支援施設)等が行われていた.今後の課題としては,3業種とも,総じて安全意識啓発につながる日々の安全活動があまり行われていないこと,飲食店でのアルバイトに対する安全教育(雇入れ時教育,OJT教育以外)や,社会福祉施設の転倒災害防止対策はほとんど見受けられないことがあげられ,これら課題の解消策を検討することが求められる.

研究紹介
  • 松垣 竜太郎, 松田 晋哉, 佐伯 覚
    原稿種別: 研究紹介
    2020 年 14 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2021/02/28
    [早期公開] 公開日: 2020/11/20
    ジャーナル フリー

    製造業における労働災害の発生件数は減少傾向にあるが, 転倒に関連する労働災害(転倒災害)の発生件数は減少していない. その背景には高年齢労働者数の増加, 雇用者に占める高年齢労働者比率の増加が影響していると考えられ, 高年齢労働者の転倒災害発生予防に関する指針の作成が必要である. 今回, 文献検索結果を基に製造業における高年齢労働者の転倒災害予防に関するkey question(KQ)を作成し, 文献検索を基に各KQに対する指針案を作成した. 本指針案は従来から行われている環境因子に対する予防戦略と同時に, 労働者の身体機能(個人因子)に対する運動介入を中心とした戦略を併用することの必要性を示した内容であり, 本指針(暫定版)を活用した転倒災害予防活動の進展が期待される. 今後は製造業事業所に在籍する産業保健スタッフを対象に本指針案の有用性に関する外部調査を行い, その後, エキスパートパネルディスカッションを通して指針の完成を目指す.

原著論文
  • 槇田 英範, 松永 武士, 吉原 俊輔, 崔 光石
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 14 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2021/02/28
    [早期公開] 公開日: 2020/11/11
    ジャーナル フリー

    近年,スマートフォンに代表される高周波数帯の通信機器の普及が進み,同周波数帯を利用する地上の防衛設備(レーダーなど)も増加傾向にある.このような背景から,現在市場で流通している電気機器が電子ノイズによる予期せぬ不要動作を起こす恐れがある.そこで本研究では,電気という重要なライフラインの安全利用に寄与する国内・外製の10種類の漏電遮断器を対象とした放射イミュニティ試験を3m法電波暗室中で行った.その結果,一部の漏電遮断器で本来はJIS規格外の周波数及び電界強度の領域ではあるが不要動作を確認した.そのため,電界軽減対策例を検討し試験を行った.試験結果により,漏電遮断器が規格外の周波数や強い電界を受ける環境下では,鉄箱に納めて外部からの電界を受ける面をメッシュ材にするなどの対策を施すことで電界を軽減する効果があることを確認した.

  • 冨田 一
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 14 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2021/02/28
    [早期公開] 公開日: 2020/12/04
    ジャーナル フリー

    メカトロニクス機器等の動作に影響を及ぼす可能性のある電磁波ノイズ源の一つである静電気放電について,帯電物体が接地体に接近しながら静電気放電が発生する場合の火花長,放電電流,過渡電界を測定した.接近速度が速くなると火花長が短くなる傾向を確認した.また火花長が短くなると,放電電流ピーク値は大きく,立ち上がり時間は短くなる傾向を確認した.静電気放電に伴って発生する過渡電界を測定し,火花長が短くなると電界の時間変化は急峻となり,振幅スペクトルは強くなる傾向となった.今回の実験での放電発生源から138mm離れた箇所における電界時間微分の最大値は,放電電流ピーク値,放電電流の時間微分の最大値及び放電電流の時間二階微分の最大値と相関性が認められ,準静電界が優位と考えられた.

資料
  • 鶴田 俊
    原稿種別: 資料
    2021 年 14 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2021/02/28
    公開日: 2021/02/28
    [早期公開] 公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー

    貯槽は,再生可能エネルギーの活用にしばしば重要な役割を果たしている.太陽光,風力は,天候により出力が変動する.バイオマス発電では,ガス化装置と発電装置の負荷追従特性に差が存在する.このような各段階での変動を吸収し,エネルギー需要変動に追従した送電を実現する必要がある.各段階での出力差を埋め,平準化のためしばしば貯槽にエネルギーを蓄えることが行われる.貯槽に蓄えられたエネルギーが,制御なしに放出されると貯槽が破損する.貯槽が,破損するときに発生する破片や爆風により周囲に被害が生じることになる.屋根を軽量な作りとし,破片の飛散距離を小さくし,爆風を上空に導き,周囲への被害を軽減する構造が用いられる.最近,発生した貯槽の爆発事故では,貯槽屋根が近隣家屋を大きく破壊し,負傷者を生じる結果となっている.過去の石油タンクを対象とした解析で,小型タンクの場合,屋根飛散時の内部圧力が高くなり,底部に損傷が起きる恐れがあることが指摘されている.この論文では,爆発時の記録から飛散した屋根の飛翔経路を推定する方法について検討した.

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