保健医療社会学論集
Online ISSN : 2189-8642
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33 巻, 1 号
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書評特集
飯田淳子・錦織宏 編『医師・医学生のための人類学・社会学――臨床症例/事例で学ぶ』(ナカニシヤ出版、2021年)
書評論文
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渥美一弥・浮ヶ谷幸代・佐藤正章・星野晋 編著『医師と人類学者との対話―ともに地域医療について考える』(協同医書出版社、2021年)
書評論文
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道信良子 著『ヘルス・エスノグラフィ――医療人類学の質的研究アプローチ』 (医学書院、2020 年)
書評論文
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原著
  • 栗原 美紀
    2022 年 33 巻 1 号 p. 46-55
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は、ヨガにおける身体的実践の意味について、マレーシア社会での指導実践を事例に検討することである。ヨガと健康の関係をめぐる先行研究では、思想的側面と実践的側面がそれぞれに議論されてきたが、両者の関係は十分に論じられていない。そこで本研究では、社会学的視点から相互行為としての指導実践に着目し、ヨガの思想と実践のつながりと、その健康との関わりを考察する。本稿の分析には、2017年よりマレーシアのクアラルンプールで断続的に行った参与観察の記録を用いる。本調査の知見は主として2つある。第一に、ヨガでは意識が重視されるため、身体的な実践が生物学的次元から認識的次元まで複層的な意味をもつ。第二に、指導者の言語的実践によって、生徒はヨガの実践を介して自らの身体認識を調整していく。これらの結果をふまえた今後の課題は、身体技法論と医療社会学を架橋し、個人の自律的健康形成を理論的に分析することである。

  • 木矢 幸孝
    2022 年 33 巻 1 号 p. 56-65
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    遺伝学的検査の出現は人々に自身の遺伝学的リスクと向き合うことを可能にした。先行研究では、主として遺伝学的リスクを有する個人はそのリスクに対して罪悪感や責任感等を抱いていることを示してきた。しかし、遺伝学的リスクを「大きな問題」ではないと語る人々の経験は十分に分析されてこなかった。そこで本論文では、遺伝学的リスクを「大きな問題」として捉えていない非発症保因者の語りをN. Luhmannの「リスク」概念と「危険」概念を用いて分析することで、遺伝学的リスクの意味づけに関して、これまでとは別様の理解を示すことを目的とした。その結果、遺伝学的リスクを「大きな問題」ではないと語る人とそうでない人はリスクの意味内容が異なり、両者には保因者の役割や子どもに対する責任の所在において差異があることが示された。同時に、両者は遺伝学的リスクの問題化の認識において、時間軸上にずれがあることが提示された。

  • 細野 知子
    2022 年 33 巻 1 号 p. 66-76
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    糖尿病薬注射患者は糖尿病手帳等を使ってセルフモニタリングし、厳密な血糖コントロールを図ることが求められる。本研究はセルフモニタリングの効果を評価する視点からではなく、糖尿病薬注射患者が糖尿病手帳を使う経験を、手帳を使いながら生じるつぶやきや語りもろとも記述することを目的とした。4名の研究参加者が糖尿病手帳およびつぶやき記録をつける調査に参加し、非構造化面接を受けた。データは現象学的に分析、記述した。A氏は従来通り糖尿病手帳をつけ、つぶやきをLINE®で送った。B氏は糖尿病手帳を新調してつぶやきと血糖値を記録した。C氏は従来通り糖尿病手帳をつけ、つぶやき記録は書かなった。頻繁に通院しているD氏は糖尿病手帳もつぶやき記録もつけなかった。糖尿病手帳を使う経験では生活の道具として手帳が身のまわりに存在していた。糖尿病薬注射患者へのケアでは糖尿病手帳がわかり合うための道具になる可能性が示唆された。

  • 藤田 智子
    2022 年 33 巻 1 号 p. 77-87
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    2020年7月、オーストラリア・ヴィクトリア州の生殖医療を規制する法律、2008年生殖補助医療法が改正され、治療にあたり犯歴や児童保護命令の記録の照会を義務付けていた規定が削除された。このような条件を課していたのは世界でもヴィクトリア州のみとされ、生殖補助医療の関係者等の強い批判を受けていたにもかかわらず、法改正が行われるまでの約10年間、子どもを望む者はこれによって生殖補助医療へのアクセスの規制を受けていた。本稿では、この生殖補助医療法による犯歴等に基づく治療の規制をめぐる議論に焦点を当て、このような規制が正当化された論理や具体的な運用のあり方などを分析することで、この規制の社会的意味と現代社会における家族統治のあり方について考察する。

研究ノート
  • 影山 葉子, 三部 倫子
    2022 年 33 巻 1 号 p. 88-99
    発行日: 2022/07/31
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、LGBTとその家族に関する看護学研究の総説・レビューから、LGBTの人々にとってどのような人や関係が家族と捉えられているのかに着目しながら、これまでの研究の内容を概観することである。PubMed、MEDLINE、CINAHLを用いて検索を行い、対象となった10文献をテーマごとに分類し、それぞれのテーマに特徴的な家族看護に関する知見をピックアップした。10文献のテーマは、「レズビアン・ゲイカップルが家族をつくることへの看護」、「トランスジェンダーの若者とその家族のメンタルヘルスに関する看護」、「LGBTのがんサバイバーとその家族への看護」、「LGBTとその家族へのエンドオブライフケア」に分けられた。男女の一対一の婚姻関係(モノガミー)や身体的性と性自認の一致(シスジェンダー)が主流の「一般的な家族」の枠組みではLGBTとその家族を捉えることは難しく、実践につなげるためにもLGBTとその家族を含めたさらなる看護教育・研究が必要である。

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