保健医療社会学論集
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26 巻 , 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特集 第41 回大会(2015 年度)首都大学東京
教育講演
  • 大森 健
    2016 年 26 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー
    在宅人工呼吸療法は、人工呼吸器という医療機関が使う機械を用いて在宅療養を行う、というものである。人工呼吸器とは院内でも高度医療機器にあたり、他の在宅療養で扱われる機械より難易度が高い。人工呼吸器のトラブルは機械によるものであれ取り扱いによるものであれ命に関わるケースも多い。当然、本人、家族、在宅のスタッフも在宅人工呼吸療法について熟知しなければならないが、知名度も高くなく、情報が少ないことは否めない。病院内と在宅療養の違い、在宅人工呼吸療法における問題点などを理解できれば、今後の在宅療養が発展し、利用者の満足度を上げることにつながると思う。
シンポジウム「この20年で医療はどう変化したか?」
  • 吉田 澄恵
    2016 年 26 巻 2 号 p. 9-12
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー

    シンポジウム「この20年で医療はどう変化したか?―生活モデル/セルフケア/自己決定」は、医療という営みにおいて生活という概念を重視した変化が生じたことを示したと考える。この20年、医学が基準とされる医療という社会的営みに、個人の固有性に応じる仕組みを強化し、人間が自分で自分をケアすることを重視し、かつ、自己決定の重要性を増した変化が生じた。そして、それは同時に、一人ひとりの固有性に呼応する多様なアクションを医療提供者に求め、標準化のベクトルで進む医療政策と相反する複雑な仕組みづくりを要求している。この変化は、看護職が、医療の中で、ケアの受け手との関係というミクロ社会レベルで実現しようとしてきたものと重なる。しかし、わが国における看護学は、生活概念を重視してきたものの、それを自明視したまま経過している。看護学は、保健・医療・社会の知の創造に貢献するような学際研究に参加しなければならない。

  • 松繁 卓哉
    2016 年 26 巻 2 号 p. 13-20
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー
    本稿は、第41回日本保健医療社会学会大会のシンポジウムのテーマである「この20年で医療はどう変化したか?――生活モデル/セルフケア/自己決定」について、「患者中心の医療」と「セルフケア」の2つのテーマに照射しながら考察するものである。この中で筆者が考察の補助線的に着目するのが「基準(standard)」という概念である。この20年の医療の変化を考えるうえで、健康と病をめぐる「基準」の変化は、きわめて特徴的な事象であっただろう。「基準」が厳格化され、多元化されてきた状況に医療実践は大きく影響を受け、人々の生活もまた左右されてきた。「基準値」のように、何らかの形で可視化され、客観化されうるもののみが中心になって価値判断が進む一方で、そうした処理の困難な事柄は、ますます判断のプロセスからこぼれおちてきたのではないか。そうした不確実さに向き合い続けていけるのかどうか。それがこの先の保健・医療・福祉に突き付けられている課題である。
  • 田代 志門
    2016 年 26 巻 2 号 p. 21-30
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー
    本稿では、現代的な死にゆく過程の成立をある医師の個人史と重ねて整理し、それが以下の3段階から形成されていることを明らかにした。まず、病院での死が当たり前となり、死にゆく過程が医療の管理下に置かれるようになること。次にその過程で「一分一秒でも長く生かす」ことの正しさが疑われるような局面が表面化すること。最後にこうした難しい局面においては、本人が死の近いことを知ったうえで、主体的に「生き方」を選択するという規範が支持されるようになること。これにより、「自分の死が近いことを認識している人間が残された生をどう生きるべきか思い悩む」という実存的問題が「発見」され、それが医療スタッフの経験する困難にも質的変化をもたらした。以上の変化を受けて、医療社会学には専門家による「生き方の道徳化」を批判的に検討しつつも、現代的な死にゆく人役割の困難さの内実に迫る研究に取り組むことが求められている。
原著
  • 藍木 桂子, 宮坂 道夫
    2016 年 26 巻 2 号 p. 31-42
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー

    高齢出産は女性の生き方の多様化により増加している。近年、高年初産を経験しているのは第二次ベビーブーム世代であり、またその母親は第一次ベビーブーム世代である。この二世代のベビーブームの間ではイエ意識や結婚・出産に関する規範が大きく変化し、少子化・高齢化にも影響していると考えられる。本研究の目的は高年初産を経験した娘をもつ母親にとって、娘の妊娠・出産・育児を経験して娘との関係がどのように変化したのか、またこれからどのような関係を築いていきたいのか、サポートの授受や価値観の違いが母娘関係にどのような影響を与えたか、について母親の語りから明らかにすることである。結果として、母親は娘との関係を良好と捉え、年齢が上がるにつれ心理的な距離は離れるが、娘の高齢での妊娠を機に、心理的・物理的に近接し、積極的にサポートしていた。母親はこれからも娘との良好な関係の維持を望み、娘からのサポートを期待する意識も示唆された。

  • 由井 秀樹
    2016 年 26 巻 2 号 p. 43-53
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー

    出産の医療化は戦後の現象として語られる傾向にあったが、都市部においては戦前、戦中期の段階からある程度医療施設出産が普及していたことも明らかにされつつある。しかし、従来の研究では戦前、戦中期の医療施設出産は十分な根拠をもって論じられてこなかった。本稿では、東京府の著名助産取扱医療施設に注目し、その運営状況を、戦中期に行われた助産取扱医療施設に関する調査や施設史などから検証し、戦前・戦中期東京府でどのような医療施設でどの程度出産が行われていたか検討した。その結果、1930年代中盤から40年代初頭にかけての東京府では、産婦人科取扱施設自体は多数存在していたにも関わらず、大部分の医療施設出産は一部の低所得者向けに設立された助産取扱医療施設において行われていたことが示された。したがって、この時期の東京府の医療施設出産は集約型と特徴付けられる。

  • 岡田 祥子
    2016 年 26 巻 2 号 p. 54-63
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー
    本研究では、重度知的障害者通所施設において利用者本人よりも保護者の要望が優先されることが、どのような論理に基づいているのかについて考察した。意思伝達が難しく、暴力行為も見られるような利用者を支援する職員たちは、自らの安全よりも利用者を優先するような職業的責任を求められる。しかし、インタビューによると利用者が共に暮らす家族の安定も必要となり、時に職員は本人よりも保護者の要望を優先せざるを得なくなる。これは利用者本人の主体性を奪い、障害者の家族を抑圧すると批判されてきた考え方の根拠となる。だが、知的障害者が頼れる機関は少なく、職員は利用者本人だけではなく彼/彼女らを取り巻く環境への対応も求められている。本稿では、職員が「保護者のニーズ=利用者のニーズ」という観点に立ち、保護者のケアをすることが本人の幸せにつながるという論理を組み立てることで、自らを納得させ、現場に立ち続けていることを明らかにした。
  • 鷹田 佳典
    2016 年 26 巻 2 号 p. 64-73
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は、Y病院血液腫瘍科において行われているZさんの活動を、「つながる/つなげる」実践に着目しながら記述・分析することで、病院におけるピアサポート活動について検討することにある。Zさんは経験者(ピア)として患児の親の声を聴くだけでなく、血液腫瘍科に関わる複数のアクターとつながり、また、彼/彼女たちをつなげるという重要な役割を担っていた。しかし他方において、こうした実践には負担や困難、リスクが伴うことも明らかになった。
研究ノート
  • 李 怡然, 武藤 香織
    2016 年 26 巻 2 号 p. 74-84
    発行日: 2016/01/31
    公開日: 2017/08/30
    ジャーナル フリー
    配偶子提供で生まれる子が増加し、出自を知る権利の保障とともに真実告知の重要性が指摘されている。不妊カウンセラーは、不妊当事者を心理面で支援する専門家だが、子への意識や真実告知への考え方は明らかにされていない。本研究では6名のカウンセラーにインタビュー調査を実施した。カウンセラーは不妊当事者の支援を第一義的としながらも、親子関係では「子の視点」を優先すること、カップルとしての共同意思決定を重視し対話を促進することが明らかにされた。支援のタイミングは、不妊当事者が治療を選択するまでの意思決定段階と、子の出生以降の告知の2段階にわたっていた。小児科医療では「インフォームド・アセント」の概念で子への説明と意思確認の機会を設けることが推奨されている。そこで、「事後的なインフォームド・アセント」の概念を援用し、真実告知を家族と専門家との協働作業として位置づけ、長期的な支援につなげることを提案したい。
書評
編集後記
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