本研究では,人工降雪及び人工造雪を利用した場合と天候デリバティブによる積雪リスクマネジメントを実行することにより企業価値が高まるかどうか検証を行う。また,降雪量を平準化する人工降雪・造雪によるリスクマネジメントと,キャッシュフローを平準化する天候デリバティブによるリスクマネジメントにはどのような差異があるか分析を行う。本研究では,新潟県南魚沼市およびその周辺のスキー場を事例として検証を行う。積雪リスクマネジメントの評価にあたり,その非完備性を考慮し,意思決定者のリスク回避性を価値評価に織り込むためにWang 変換(Wang 2000,2002)を利用する。分析の結果,客単価(単位当たり貢献利益)が2,700円程度と低い場合には,人工降雪及び人工造雪による積雪リスクマネジメントは,それにかかる費用を回収できないために,企業価値を高めないが,客単価が10,500円以上であり,かつ,λが0.4以上のある程度リスク回避的な経営者であれば企業価値を高めることが理解される。人工降雪及び人工造雪を利用している場合で,客単価が高い場合等,大部分の積雪リスクがヘッジされる場合には,天候デリバティブの利用による企業価値の改善効果は低いことが理解される。
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