保険学雑誌
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2010 巻, 611 号
特集保険自由化10年
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
ARTICLES
  • 保険学雑誌編集委員会
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_1
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
  • 石田 成則
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_3-611_22
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    1996年の保険業法の改正以降,継続的に保険規制は緩和され,保険行政の質的な転換が進んだ。また,その後の金融システム改革も含めて,業態間の参入障壁は引き下げられ,業務範囲規制も緩和されたことで,保険経営の自由度は高められた。しかし,こうした規制環境の変化にあっても,保険契約者に対するワンストップ・サービスのメリットは生かされていない。また,多角的な競争を通じた,業務の効率化と契約者への利益還元も十分とはいえない。
    こうした要因のひとつとして,相互会社組織の問題を取り上げ,規制環境の変化が相互会社の経営行動に及ぼした影響を検証する。そのうえで,エージェンシー理論の枠組みを用いて,経営改革のための制度的仕組みを包括的に論じる。それには,相互会社におけるガバナンス改革,資金調達手段の多様化,そして持株相互会社への移行などが含まれる。
  • 大倉 真人
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_23-611_39
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    本稿は,保険業法改正後,特に積極的になったとみられる保険会社の広告活動にかかる経済分析を行うことを主たる目的としたものである。より具体的には,Bloch and Manceau(1999)において示された広告モデルの紹介・祖述を通じて,「外資系保険会社の方がより積極的に広告活動を行っている(行っていた)」点について経済学的に明らかにしていく。
  • 上野 雄史
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_41-611_60
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    本稿では,規制緩和後の保険業の情報開示の変化を,企業会計に関する問題を中心に論じる。金融監督行政は,市場規律に即した事後的な検査にシフトした。これに伴い,保険業においても財務諸表により作成された会計情報の重要性が増し,他業種との比較可能性が高まった。ただし,保険業の情報開示は,他業種との比較ではなく,同業種との比較に焦点が当てられていた。保険業には時価会計に関する緩和措置が設けられる一方で,ソルベンシー・マージン比率およびその内訳が一般に公表され,同業種間で健全性の程度を競うことが求められている。これは保険業の特性を配慮したためと考えられる。しかし,こうした取り扱いは,将来的には認められなくなる可能性が高い。保険会社に対する諸規制は,監督規制と企業会計の両面から国際的な枠組みが形成されつつある。その変化の大きさは,1995年の保険業法改正から始まった規制緩和を上回るものかもしれない。
  • -保険市場の情報問題からの一考察-
    諏澤 吉彦
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_61-611_79
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    損害保険料率規制は,自由化を経て事実上の統一料率市場から,使用可能なリスク指標などに一定の制限を設けた事前認可制へ移行した。公的規制には,市場の不完全性を緩和する役割が期待されるが,保険市場に関しては情報問題の縮小がとくに重要となる。すなわち,保険規制には,保険カバーの価格・質,保険会社の支払能力,そして被保険エクスポージャのリスク水準などに関する情報の不完全性を緩和することが求められる。損害保険料率規制の変化を,このような情報問題との関連で見れば,その目的が,競争抑制による保険会社の支払能力の確保から,一部の高リスク者に対する価格抑制による保険の購入可能性の維持に主眼を置いたものへと転換したと見ることができる。いっぽう保険商品の多様化により,保険カバーの質に関する情報不均衡は,一層拡大し市場効率性を損なっているおそれがあり,保険会社間の協調など何らかの体制整備が求められる。
  • 田中 隆
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_81-611_100
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    日本における生命保険の普及は,営業職員を中心とする販売チャネルから供給されてきたが,それらのチャネルが,消費者の保険選択に有効であり続けてきた要素についての検討は,稀少であった。本稿では,営業職員チャネルを中心にした分析から,販売チャネルにおいて消費者から重視される信頼性の存在する構図について,さらに角度を変えて考察を進めた。
    本稿では,とりわけ営業職員チャネルの有効性に関しては,リレーションシップ・マーケティングの概念を分析手法に用いて考察を試みた。考察の結果,日本の生命保険販売が,営業職員チャネルによるものが大半である現状から,情報の非対称性下において機会主義的行動の可能性におかれる消費者にとって有効な行動は,営業職員を信じることであった。またリレーションシップ・マーケティングにおける交換的次元と共同体的次元の概念は,優良営業職員が築いてきた営業における言動に確認されることが示された。
  • 徳常 泰之
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_101-611_120
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    1996年に第2次橋本内閣が当時の世界経済情勢を背景として日本版金融ビッグバンを進めた。護送船団行政と称される規制による手厚い保護を受けていた保険業界を含む国内の金融機関が競争環境にさらされることになった。
    競争原理が導入されたことにより会社間での商品競争や価格競争などが発生した。消費者が得ることができた利点は少なくない。しかしその一方で,自由化以降,商品の多様化が急速に進みもともとわかりやすいとは言えない保険商品がますますわかりにくくなってしまったことや2005年に表面化した保険金不払い問題を引き起こす一因ともなってしまった。
    保険金不払いの原因は商品特性,人材,経営者の3点に集約される。また生命保険業界と損害保険業界においても異なる背景が存在する。
    本稿では保険金不払い問題と行政処分事例を考察することにより,保険金不払いの原因ついて考察する。
  • 安井 敏晃
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_121-611_140
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    本稿では,現在わが国において極めて身近な保険となっている私的医療保険について検討した。まず同保険が扱うリスクの性質について検討を行い,生命保険が扱う死亡リスクに比べて保険で扱うことが難しいリスクであること,さらに定額の医療保険であっても取り扱っているリスクは「医療費」リスクであることを改めて確認した。次に同保険に関する疑問や批判について検討した。この保険は自由化以降に多様化が進展しているが,その多様化について疑問や批判が投げかけられている。これらの疑問について検討した上で,医療保険のあり方について私見を述べた。
  • 宮地 朋果
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_141-611_156
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    少子高齢化を背景として,死亡保障商品の新規契約が伸び悩むなか,社会保障制度に対する不安や自己責任・自助努力への流れを要因として,第三分野商品に対するニーズは依然としてある。第三分野,なかでも医療保険は,国内生保市場で,今後もしばらくは潜在的な成長力が期待される分野となっている。
    本稿では,2001年度から急速な拡大をみせた医療保険市場を,生保会社による医療保険の商品開発の変遷という視点で考察し,保険金等の支払い問題に代表される保険商品販売上の課題について検討する。不払い等の問題は,件数の多寡や性質の相違等はあるものの,損害保険業,生命保険業を問わず,また,保険会社や共済など団体を問わず発生した構造的問題といえるが,本稿では生保会社による医療保険販売を中心に考察する。
  • 小川 浩昭
    2010 年 2010 巻 611 号 p. 611_157-611_176
    発行日: 2010/12/31
    公開日: 2013/04/17
    ジャーナル フリー
    自由化が保険研究に与えた影響について,保険関連の学会の動向を分析することによって考察する。保険研究を取り巻く大きな流れを経済学の動向として把握し,保険関連の学会の動向へと考察を進め,自由化によってリスクが重視され,米国化・金融化が生じる中,保険研究においては保険の相対化,保険と金融の同質性重視,保険学の一般性指向がもたらされたとする。しかし,より根源的には,投機をどう捉えるかという今後の研究の方向性を問う問題を自由化が突き付けていると結論付ける。
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