保険学雑誌
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2007 巻, 599 号
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【査読済み論文】
  • ―環境税(ピグー税)との比較―
    桑名 謹三
    2007 年 2007 巻 599 号 p. 599_1-599_30
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル フリー
    環境保険は,環境税と同様に環境汚染による外部不経済の費用を内部化する機能を有しており,保険料を通じて環境汚染を抑止することができる。保険の実務に即した保険料の表示方式を考慮したうえで,完全情報下における環境保険の経済効率性を分析した研究は,極めて少ないが,それらは,付加保険料の存在を無視したもので,かつ,環境保険の経済効率性は,理論的環境税であるピグー税に比べて劣ることを示すものであった。
    本論では,付加保険料をも考慮に入れた分析を行い,環境保険の設計条件を工夫することにより,環境保険がピグー税と同等以上の経済効率性を有しうることを示す。
    このことは,環境政策における経済的手法として,環境保険が環境税のオルタナティブとなりうることを証明し,さらに,新たなる公保険ビジネスの可能性をも示唆するものである。
  • ―暗黙契約の理論の視点から―
    上野 雄史
    2007 年 2007 巻 599 号 p. 599_31-599_57
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル フリー
    本稿は代行返上の意思決定要因と退職給付制度の成熟化との関係を暗黙契約の理論の視点から検証したものである。サンプルは2001年3月期と2002年3月期の金融業などを除く東証1部上場企業を対象とし,総数は1,141となった。統計手法として,t検定,Mann-Whitney検定を用いた。本稿の結果から,終身年金が義務付けられている厚生年金基金を保有する企業は保有していない企業と比べて成熟度(加入者に対する受給者の割合)が高くなっており,暗黙契約の不履行を行うインセンティブが強くなっているということが明らかになった。さらに,そのインセンティブは早期に代行返上を行った企業の方が強いという結果が算出された。本稿の結果はPetersen (1992),D’Souza et al. (2006)などの先行研究の実証結果と一致し,代行返上に関する意思決定要因に退職給付制度の成熟化が影響していることが明らかになった。
「保険契約法の現代化と保険事業」―平成19年度大会共通論題―
  • 柳 成京, 申 紀燮
    2007 年 2007 巻 599 号 p. 599_173-599_192
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル フリー
    韓国政府は公的リバースモーゲージ(RM:Reverse Mortgage)制度を2007年までに導入することを決定した。したがって,本研究では最近急速な高齢化の進展により生活資金の不足によって老後生活に困っている高齢者に老後生活資金の提供のために考案されたリバースモーゲージ制度を韓国において定着させると同時に,民営リバースモーゲージ制度を活性化させるための方案を提案した。このためにまず,リバースモーゲージ制度の概念について考察し,アメリカ及び韓国のリバースモーゲージ制度の意義,商品,市場動向等を検討した。さらに韓国の公的リバースモーゲージの導入案について分析し,韓国の民営金融機関の立場から公的リバースモーゲージと共に民営リバースモーゲージを活性化させる方案を提案した。
  • ―事業リスクマネジメントの検討―
    後藤 和廣
    2007 年 2007 巻 599 号 p. 599_193-599_212
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル フリー
    企業価値,事業価値の維持増大は,企業経営の重要な目標の1つである。DCF 法を使い企業価値,事業価値を定量化すると,その値は変動し,また株価等の他の指標とも乖離する。企業価値,事業価値を定量化した数値とその期待値や株価等との乖離をリスクと定義することで,企業価値,事業価値のリスクマネジメントを行うことができる。企業はリスクマネジメントの実践により,企業価値,事業価値の変動を減らし,その維持増大を図ることができる。そして,必要な株主資本を準備することで,倒産を回避できる。本稿では,企業価値,事業価値を定量化し,期待値,リスク量,リスクマネジメントに必要な資本量の考え方を,モデルを設定しモンテカルロDCF 法を使い,説明する。
  • ―金融規制の質的向上へ向けた取組み―
    高崎 康雄
    2007 年 2007 巻 599 号 p. 599_213-599_232
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル フリー
    規制遵守に関わるコストと消費者利益のバランスをいかに確保するかという課題は,効率的な監督規制を追求する上で避けて通ることができない。イギリスでは,金融サービス市場法が施行された後,法令遵守に伴うコスト増加という問題に直面し,監督規制の質的向上を迫られた。改善策としては,短期的には販売・勧誘規制を緩和した金融商品が提供される一方で,長期的には,顧客本位原則の下での事業運営と呼ばれる取組みがスタートした。この取組みが従来の手法と相違する点は,ルール・ベース(詳細な規制)からプリンシプル・ベース(原則を重視した規制)へという監督手法の転換が図られる中,企業の自主性に根ざした仕組みが用いられていることにある。この取組みはイギリスでも端緒についたばかりであるが,日本でも金融規制の質的向上が重要課題とされる中,有力な選択肢を示したものであり,注目すべき動向と考えられる。
  • ―被害者の直接請求権,特別先取特権の問題を中心に―
    浅湫 聖志
    2007 年 2007 巻 599 号 p. 599_233-599_252
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/09/28
    ジャーナル フリー
    法制審議会保険法部会において,規律の現代化として幾つかの新たな試みが審議されている。その中で,賠償責任保険契約に固有の事項として検討が進められている「保険金から優先的な被害の回復を行う方法」について,一定の条件が付された「直接請求権」や「特別先取特権」を制度として設けることが提案されている。こうした制度の創設には,実務的には多くのハードルがあるので,その問題点を明らかにしながら,どのような条件のもとであれば実効性のある制度が立ち上げられるのか,実務家の立場から考察した。
【書評】
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