創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
12 巻, 3 号
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原著
  • 城下 晃, 鴻池 奈津子, 武田 啓
    原稿種別: 原著
    2021 年 12 巻 3 号 p. 118-126
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

     褥瘡の外科的治療では,褥瘡の皮膚損傷の部位,デブリードマン後の組織欠損の大きさに応じて手術方法(閉鎖方法)を選択することが求められる。当施設で経験した仙骨部褥瘡38症例,大転子部褥瘡13症例に対して,デブリードマン後の組織欠損の大きさにより,長径5cmを境に大小のサイズ群に分類し,比較検討を行った。仙骨部は単純縫縮,局所筋膜皮弁,穿通動脈皮弁,大転子部は単純縫縮,局所筋膜皮弁,大腿筋膜張筋皮弁を中心に各手術方法の特徴,適応,術後局所合併症とその対策を検討した。仙骨部褥瘡の小サイズ群で局所筋膜皮弁を用いた場合,再度外科的加療を要する合併症は認めず,保存加療で治癒する合併症を10%以下で認めるのみで,安全性が高かった。小サイズ群で用いた単純縫縮や大サイズ群で用いた穿通動脈皮弁は有用性がある一方で,それぞれ再度手術加療を要する合併症を33%で認め,術後局所合併症の対策を考慮する必要があった。大転子部褥瘡ではサイズ群にかかわらず,大腿筋膜張筋皮弁を用いた場合,再度外科的加療を要する合併症は認めず,安全性が高かった。

  • 伊東 大, 渡邊 龍志, 細井 聡士
    原稿種別: 原著
    2021 年 12 巻 3 号 p. 127-132
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

     脊髄髄膜瘤の治療において,脳神経外科による脊髄形成術・髄膜瘤還納術後,皮膚軟部組織欠損部の被覆を形成外科に依頼されることが多い。欠損範囲が小さい場合は一次的縫縮が可能であることが多いが,欠損が広範な場合は植皮・筋皮弁・局所皮弁を用いた再建が必要となり,これまでにさまざまな再建方法が報告されている。今回,われわれ通常破棄されていると思われる脊髄髄膜瘤上の脆弱な膜様組織(以下瘤被膜)の病理組織学的検査を行い,植皮片として利用が可能であるかを検討した。瘤被膜の病理組織学的検査では,全症例において正常な皮膚構造を有していたが,一方で通常存在しない神経様組織が含まれていた。この結果より,瘤被膜を植皮片として利用した場合は,術後厳重な経過観察が必要であり,一時的な創閉鎖目的に瘤被膜を使用する利用価値はあると考えられた。

総説
  • 恋水 諄源
    原稿種別: 総説
    2021 年 12 巻 3 号 p. 133-140
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル フリー

     足病診療においては,「治る見込みが薄くても,足は切断しないで欲しい」という患者の強い希望にしばしば遭遇する。その希望が医学的に実現困難であったとしても,医療者が現実的な治療法を強制することはできず,医療者は本人の意向と医学的適応の間で板挟みになる。このような状況をどのように受け止め解決していくべきだろうか。
     本稿では,仮想事例として「少しでも長く足を残す治療をして欲しい」と希望する虚血肢患者を取り上げ,生命倫理四原則に沿った倫理的検討を行う。本事例では,無危害原則と善行原則の両方が自律尊重原則と対立し,原則を適応するだけでは結論に至らない。より実践的な方策を見出すには,患者の価値観を繰り返し問うとともに医療者の価値観を問い直し,真に患者の Well-being を中心に置いた選択肢を考える必要がある。加えて,足病治療に関するエビデンスの蓄積,社会制度設計に貢献するための長期的・巨視的視野が必要となる。

症例報告
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