目的:本邦での人工乳房再建は増加しており,手術部位感染(Surgical site infection: 以下SSI)の増加が懸念される。当院における2010年1月から2014年8月までのティッシュ・エキスパンダー(以下TE)挿入による再建後感染率は5.69%(55/967乳房)であった。その後SSI対策を強化したところ一定の効果を得たので,その結果と対策の詳細について報告する。 方法:SSI対策実施後の2014年9月から2018年2月に乳房切除と同時にTE挿入を施行した患者の感染率を対策前と比較し,感染の有無と各種要因との相関を検討した。 結果:全830乳房のうち感染は22乳房(2.65%)で,SSI対策前より有意に低下した(p=0.001)。感染の有無で各因子を検討すると,有意なリスク因子はなかった。 考察:SSI対策前後で感染率は低下しており,効果が得られたと考える。
ケロイドはヒト特有の難治性疾患であり,ケロイドを完全に再現できる理想的な実験動物モデルはいまだに開発されていない。そのため,現在のケロイド治療法に関するエビデンスの多くは症例報告の結果に基づいている。また複数の治療方法を組み合わせた現在の治療では,再発のリスクが高く,ケロイド治療の改善方法が模索されている。新たなケロイド治療薬を開発するうえで,ケロイドを評価するための動物モデルが必要不可欠である。本研究ではヒトケロイド組織を選定し,2系統の免疫不全マウス(ヌードマウスおよび NOD/scid マウス)の皮下に移植した。その比較検討した結果,NOD/scidマウスに移植した組織は11週間生存し,さらに移植組織の一部は増大した。短期間(11週以内)での治療効果を検討する際,NOD/scidマウスモデルは有用であると考えられた。
【目的】当科で経験した重症軟部組織感染症症例の重症度評価と転帰の関連を検討した。 【方法】2018年5月から2021年1月に当科にて緊急で外科的介入を必要とした重症軟部組織感染症19症例を対象とし,診療録を基にして後ろ向きに調査した。 【結果】転帰は,生存13例,死亡4例,不明1例,入院中1例だった。19症例のうち,LRINECスコアが6点未満にもかかわらず臨床診断で壊死性筋膜炎もしくはガス壊疽と診断した症例は2症例だった。LRINECスコアと臨床診断での乖離があったため,生存群と死亡群に分け,有意差の比較を行い,クレアチニン・臨床診断でのみ有意差がみられた。 【考察】LRINECスコアと臨床診断の乖離がある場合には臨床診断を重要視し,診断に準じた治療を行うことで患者の救命につながる可能性がある。
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