創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
5 巻, 4 号
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第5回日本創傷外科学会総会・学術集会(2013年7月,京都)特別プログラムより
特集1 : 細胞治療のUp To Date
  • 素輪 善弘, 井村 徹也, 岸田 網郎, 松田 修, 武田 孝輔, 沼尻 敏明, 西野 健一
    2014 年5 巻4 号 p. 158-165
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     末梢神経損傷において,シュワン細胞は神経軸索伸長や再髄鞘化などに不可欠な役割を果たす。これまでさまざまなアプローチでシュワン細胞を利用した神経再生が試みられてきたが,これらの方法はいずれも自家神経由来のシュワン細胞を利用するものであり,ドナー・サイトの犠牲などの障害があった。近年,脂肪組織内に多能性を有する体性幹細胞 ( ADSC ) が存在することが明らかになり,シュワン様細胞に分化することが報告され,末梢神経再生の切り札として期待され,実際に神経損傷部に ADSC の移植が行われ,その再生効果が確認されている。しかし,いまだ方法論的な見解は統一されているとはいい難く,シュワン細胞への分化誘導の機序や必要性,移植された細胞の運命についても不明な点が多く残されている。ここで ADSC の細胞特性について再考し,改めて末梢神経損傷に対する ADSC の利用法を検討したうえで,今後の効果的な臨床応用法を模索していく必要があると思われる。
特集2 : エキスパンダー: 私の工夫とコツ
  • 鳥山 和宏, 八木 俊路朗, 蛯沢 克己, 高成 啓介, 澤村 尚, 神戸 未来, 亀井 譲
    2014 年5 巻4 号 p. 166-174
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     エキスパンダーは腫瘍や瘢痕拘縮に隣接する皮膚を拡張して,その切除後の欠損を被覆する整容的に優れた術式である。今回 2006 年 4 月から 2013 年 3 月までに,当院にてエキスパンダーを使用した 39 患者に対して,使用部位,原疾患,再建方法,合併症について調査検討したので報告する。
     対象患者は 39 例で,平均年齢は 32 歳であった。挿入した部位は,胸部 15 例,頭部 7 例,背部 4 例などであった。原疾患は乳癌・乳房低形成 14 例,瘢痕拘縮 12 例,巨大色素性母斑 7 例などであった。
     手術回数 49 回中 12 回で合併症を認め,露出 5 例,感染 2 例,リザーバーの固定不良 2 例,リザーバーの破損 1 例などであった。
     われわれは,これらの治療経験から①エキスパンダーの露出に対しては,健常皮膚に皮膚切開を置いてエキスパンダーの皮下ポケットを 1 ~ 2 cm 大きく剥離し,ゆっくりと伸展させる,②巨大色素性母斑では,母斑内に別の皮膚切開を入れてリザーバーを確実に固定する,などの対策を行っている。
特集3 : 陰圧閉鎖療法の適応を考える
  • 佐藤 智也, 市岡 滋
    2014 年5 巻4 号 p. 175-180
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     静脈うっ滞性潰瘍の標準的な治療は,圧迫療法と慢性静脈不全に対する手術療法である。しかし,これらの治療で治癒しない難治例が一定の割合で存在しており,このような症例に対する補助療法として局所陰圧閉鎖療法は有効である。方法は,まず潰瘍を外科的デブリードマンする。未治療の一次性静脈瘤がある場合は同時にストリッピングや静脈瘤切除を行う。創部の止血が十分であることを確認したのち,局所陰圧閉鎖療法を 3 週間行う。潰瘍に良質な肉芽を誘導したら,植皮により潰瘍を閉鎖する。植皮が生着したのちは再発予防に圧迫療法を行う。局所陰圧閉鎖療法に当たり注意すべき点は,静脈うっ滞性潰瘍と類似した別の疾患を除外すること,壊死組織を十分にデブリードマンすること,出血を防止すること,細菌のコントロールを厳密に行うことである。局所陰圧閉鎖療法を補助療法として用いることで,難治例であっても効果的に閉鎖することが可能である。
特集4 : Free Flap と有茎皮弁の使い分け
  • -遊離皮弁の適応について-
    鳥山 和宏, 八木 俊路朗, 高成 啓介, 筑紫 聡, 西田 佳弘, 亀井 譲
    2014 年5 巻4 号 p. 181-188
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     四肢の悪性骨軟部腫瘍切除後は,可能な限り有茎皮弁で再建されるが,一部遊離皮弁が適応となる。当院の皮弁による再建症例 45 例を遊離皮弁症例と有茎皮弁症例で分類し,腫瘍原発部位・使用した皮弁・腫瘍の長径・皮膚軟部組織の欠損の大きさなどについて比較検討して,遊離皮弁の適応について考察したので報告する。
     症例は遊離皮弁症例が 16 例で,有茎皮弁症例が 29 例あった。遊離皮弁症例の腫瘍原発部位は下腿 5 例,大腿 5 例などで,有茎皮弁症例は大腿 14 例,上腕 7 例などであった。使用した皮弁は,遊離皮弁では広背筋皮弁 11 例,遊離腓骨皮弁 2 例などで,有茎皮弁症例では腓腹筋弁 12 例,腹直筋皮弁 8 例などであった。また,遊離皮弁症例では,有茎皮弁症例に比較し骨腫瘍の長径が大きく,軟部腫瘍の皮膚軟部組織の欠損が大きかった。
     遊離皮弁の適応は,有茎皮弁が届かない場合,欠損が大きい場合,遊離腓骨皮弁として使用する場合などであった。
原著
  • ~特に周術期CRP値の重要性について~
    西尾 祐美, 榊原 俊介, 寺師 浩人, 橋川 和信, 田原 真也
    2014 年5 巻4 号 p. 189-193
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     重症下肢虚血 ( critical limb ischemia : CLI ) 症例で,始めは下肢小切断術を計画していても血行再建術後の感染増悪により,結果的に下肢大切断術に至る場合がある。2005 年~ 2009 年までの 5 年間に経験したCLI症例 13 例のうち 3 例が大切断術となった。大切断術に至った症例と小切断術で治癒した症例について,患者因子を基に比較検討を行った。年齢,糖尿病の罹患の有無,血糖コントロールの方法,腎機能,対側の下肢切断歴の有無,血行再建前後と局所手術後早期のCRP値,局所手術前の栄養状態について検討を行った。患者因子として①糖尿病性腎症 (末期),②反対側の下肢切断歴,③低栄養が大切断のrisk factorとなっていた。また,血行再建術後と比較し,局所手術後早期のCRP値が高い症例は大切断術となる可能性を示唆し,周術期のCRP値が大切断術を回避するための指標の 1 つとなる可能性を示唆した。
症例報告
編集後記
エラータ
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