頭頚部癌に関連した術後瘻孔に対する手術症例を検討した。2016年4月から2022年12月までに当院および関連病院で手術を行った術後瘻孔は10例であった。発生した瘻孔の部位は咽頭皮膚瘻5例,口腔皮膚瘻3例,気管食道瘻2例であった。10例中8例で放射線照射歴を認めた。瘻孔の修復のため要した手術治療は1回から3回であった。全身状態不良により手術を断念した1例をのぞく9例で瘻孔は閉鎖した。 瘻孔の閉鎖手技は大胸筋皮弁8例,胸三角筋部(deltopectoral,以下DP)皮弁3例,遊離空腸,縫縮が各2例,遊離腓骨皮弁,舌弁,有茎広背筋皮弁,前胸部双茎皮弁,浅側頭動脈皮弁,hinge flap が各1例であった。閉鎖の補助手段として気管孔移動を2例,下顎再建プレートの除去を1例に行った。 頭頚部癌術後瘻孔では,唾液や喀痰,放射線治療や低栄養,プレートなどの異物が複合的に局所の創治癒遅延をもたらしている。有茎大胸筋皮弁を基本とし,個々の症例に応じた臨機応変な治療戦略が求められる。
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