創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
5 巻, 1 号
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特集 創傷の急性,亜急性,慢性,難治性をどう定義するか
  • 田中 嘉雄, 濱本 有祐, 玉井 求宜, 木暮 鉄邦, 井上 聡子
    2014 年 5 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
     創傷治癒阻害因子の数値化と重症度から創傷分類を試みた。創傷治癒阻害因子をDEFECT因子,CAUSE因子,LOCAL因子に分け,軽度因子をスコア1,重大因子をスコア2とした。重症度はDEFECT因子単独のⅠ分類,DEFECT因子に他の1因子が関与するⅡ分類,DEFECT因子に他の2因子が関与するⅢ分類に分けた。なお,DEFECT因子がなくCAUSE因子とLOCAL因子がある場合をⅡ'分類とした。以上を形成外科領域で扱う急性,亜急性,慢性創傷の代表的な13症例について,創傷治癒阻害因子のトータルポイントと重症度分類を求めた。急性創傷はⅠ分類,亜急性創傷はⅡ分類,慢性創傷はⅡ分類とⅢ分類となった。トータルポイントは急性創傷 ≤ 3,亜急性 ≤ 4,慢性創傷 ≥ 4であった。難治性潰瘍はⅢ分類のうち治癒後にもⅡ'分類に属する症例と考えられた。創傷を創傷治癒阻害因子の数値化と重症度によって分類することが可能であった。数値化によって治療目標が具体的になるため,慢性創傷の早期治癒に貢献すると考えられた。
原著
  • 時吉 貴宏, 辻 依子, 中山 真紀, 寺師 浩人
    2014 年 5 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
     中央趾の糖尿病性足潰瘍に伴う感染が central plantar space (CPS) に波及した症例に対し,足趾切断と同時に中足骨頭および metatarsophalangeal 関節関節包を切除することで CPS を開放し,感染を制御した。中足骨頭の切除に伴って問題になる同部の組織欠損に対しては,創を開放したまま二次治癒させた。6 例 6 趾に本法を行い,全例で治癒を得た。また再発や追加切断を認めず,全例が治癒後にインソールを用いて歩行が可能であった。本法は中央趾における糖尿病性足潰瘍から CPS に感染が波及した症例の治療として有用であると考えられた。
  • 羽多野 隆治, 小澤 俊幸, 森本 訓行, 坂原 大亮, 藤井 奈穂
    2014 年 5 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
     熱傷の深達度は,正確な判定に難渋することも多い。そこで今回,われわれは,superficial dermal burn (SDB) および deep dermal burn (DDB) の熱傷モデルラットを作成し,レーザースペックル画像血流計 (laser speckle flowgraphy : LSFG) を用いて熱傷深度の判定を行い,SDB と DDB の判別が可能かどうか検討した。動物は 10 週齢の Wistar 系雄性ラットを用いた。熱湯法により熱傷モデルを作成し,HE 染色標本をもとに SDB および DDB の適切な熱傷モデルを定義した。それらの熱傷モデルに対し,LSFG を用いて経時的に血流の評価を行った。LSFG の計測値は相対値であるため,正常皮膚に対する熱傷創の血流比を算出した。それらの値を SDB と DDB で比較したところ,両者間に有意差を認めた。LSFG は熱傷創に対する血流評価の 1 つのデバイスになり得ることが示唆された。
  • 石川 耕資, 南本 俊之, 一村 公人, 本田 進, 蕨 雄大, 古川 洋志
    2014 年 5 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
     壊死性筋膜炎と重症蜂窩織炎の鑑別に LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis) score の有用性が報告されている。われわれは 2005 年から 2012 年までの間に経験した壊死性筋膜炎 11 例と重症蜂窩織炎 110 例を後ろ向きに解析し,LRINEC score の有用性について検討した。壊死性筋膜炎群の LRINEC score (6~12,平均 9.2)は,重症蜂窩織炎群(0~10,平均 2.7)と比較して有意に高値であった。LRINEC score 6 以上を壊死性筋膜炎とするためのカットオフ値とした場合,感度 100%,特異度 85.5%,陽性的中率 40.7%,陰性的中率 100%であった。LRINEC score は,臨床,画像所見に加えた壊死性筋膜炎の補助的診断ツールとして有用であると考えられた。
  • 綾部 忍, 三木 綾子, 永松 正代, 元村 尚嗣
    2014 年 5 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
     基底細胞癌 (basal cell carcinoma : 以下,BCC) は,外鼻にみられる悪性腫瘍では最も多く,局所破壊性は強いが転移をきたすことはきわめてまれであり,腫瘍の完全切除により根治が期待できる。
     鼻部皮膚欠損創の再建には周囲からの局所皮弁が選択されることが多いが,顔面に新たな瘢痕が形成されること,デザインに熟練を要することなどが問題となる。
     今回われわれは,鼻部BCC切除後の皮膚欠損創 3 例に対し,2007年にHanらが報告した dermis graft で再建を行った。この方法は分層植皮片を脱上皮したものを移植し,周囲からの上皮化させるというものである。
     色調・質感の点で良好な結果を得ることができたが,殿部という荷重部が採取部となることが問題であると考え,鼠径部から採取するよう修正した。
     われわれの方法は手技が簡便で非荷重部から採取し,顔面に新たな瘢痕を形成することがないため,鼻部 BCC 切除後の再建方法として有用であると思われた。
症例報告
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