土木学会論文集B2(海岸工学)
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73 巻, 2 号
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論文
  • 池谷 毅, 岩田 善裕, 奥田 泰雄, 喜々津 仁密, 石原 晃彦, 長谷川 巌, 橋本 純, 小畠 大典
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_901-I_906
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     水理模型実験における陸上構造物に作用する津波力に及ぼす実験水路幅Bの影響を,水理模型実験と理論解析により明らかにした.水理模型実験では,初めに,流量制御可能なポンプを備えた水路内に,従来実施されていなかった限界流の条件を含む6通りの定常流を作成した.次に,幅dを5通りに変化させた正四角柱の構造物模型を設置して,構造物に作用する津波力,構造物周辺の浸水深を計測した.その結果,実験水路幅/構造物幅比B/dが小さくなるほど津波力は漸増すること,B/dが4程度以下になると構造物側方で限界水深が出現し津波力の増加が顕著になることがわかった.理論解析では,静水圧分布を仮定して,限界水深の出現を考慮した解析を行い,浸水深および津波力の理論値と実験値が定量的に一致することを示した.
  • 小笠原 敏記, 室井 宏太
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_907-I_912
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     海岸に襲来した津波は,複雑な地形や様々な構造物の影響を受けながら遡上するため,建物に作用する力の方向は,壁面に対して必ずしも直角に作用するとは限らない.さらに,壁前面の作用位置によっても作用する力は異なるものと考えられる.本研究では,津波段波の入射角の影響を考慮した建物への作用波圧を検討するため,模型建物の設置角度を変化させて,建物前面底部に作用する段波波圧に関する実験を実施した.その結果,建物に作用する衝撃段波波圧は入射する角度に強く依存することがわかった.さらに,建物前面の幅と入射角を考慮した波圧の低減量を既往の評価式に付加することによって,建物に作用する衝撃段波波圧の算定が可能な評価式を提案する.
  • 奥村 与志弘, 坂東 直樹, 米山 望, 清野 純史
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_913-I_918
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     建物に作用する津波水平力は周辺建物によって減少することが実験や数値計算によって指摘されてきた.しかし,実際の津波において,周辺建物がどの程度津波外力に影響したのかについては十分に明らかにされていない.本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震津波で多く残存した堅牢な建物がありつつ,6棟のRC建物が流出した女川町市街地に注目し,建物に作用する津波水平力による転倒モーメントが周辺建物群によってどのような影響を受けていたのかを検討した.その結果,対象建物に向かう津波の流れを弱めることでモーメントを低減する建物群と,対象建物の後ろへの水の流れ込みを阻害することでモーメントを増大させる建物群があった.その効果の大小は建物の組合せによって変化することが明らかになった.
  • 水谷 夏樹, 梅田 尋慈, 池本 将大
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_919-I_924
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究は,陸上遡上津波による鉛直二次元壁への衝突現象を取り扱い,中でも津波の先端が壁面衝突後に打ち上がり,その水塊が後続流の上に落下着水する際に生じる波圧と波力の特性について実験的に検討を行った.高速ビデオの画像と波圧の同期計測から,打ち上がった水塊が落下着水する際に壁面の圧力が上昇し,極大波力を発生させるが,条件が揃えばそれが最大波力となるケースもあった.これらの落下着水現象を,衝突速度を初速度とする鉛直投げ上げと最大打ち上がり高さからの自由落下であると仮定すると,衝突から落下着水までの無次元時間を進行波の最大水位で説明できることが分かった.また,落下着水による極大波力発生時の鉛直波圧分布は静水圧分布にはならず,全作用高さの1/2以下では圧力分布が一様になる傾向を示すことから,構造物への作用波圧は静水圧分布を前提としない対策の必要性が示唆された.
  • 鶴田 修己, 鈴木 高二朗, 喜夛 司, 宮田 正史, 竹信 正寛, 後藤 仁志
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_925-I_930
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波越流発生時の堤体への作用波力の算定は巨大津波に対する耐波性能照査の根幹を成す最重要課題である.しかし,限られた実験ケース数に基づき構築された現行の波圧算定式(静水圧差式)は,算定式内の静水圧補正係数の検討が不十分なため,特に港内外の水位差が卓越する越流条件下では作用波圧の現行式からの逸脱が顕著となる.また,その波圧の変動特性についても未だ不明な点は多く,算定式の改良が必須の課題である.本研究では,津波越流条件下での防波堤を対象とした水理模型実験および高精度粒子法を用いた数値実験を実施して,マウンドの透水性の変化や腹付け工の設置,上部工パラペットの設置による波力の変動特性を検討し,静水圧補正係数の包括的な算定手順を新たに提案する.
  • 竹下 哲也, 加藤 史訓, 森谷 拓実, 峯村 浩治
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_931-I_936
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究は,越波による海岸堤防背後の家屋の倒壊の危険性を把握するため,数値波動水路を用いて海岸堤防背後の家屋に作用する波圧の数値計算を行ったものである.
     堤防背後の家屋に作用する波圧計算を行った結果,上位1/10平均値では模型実験の値と概ね同様の結果を示した.また,海底勾配1/30,堤防高6 m,越波流量0.1~1.0 m3/s/mの条件での数値計算の結果から,海岸堤防背後の家屋が堤防から50 m以上離れていても静水圧の2倍以上の強い波圧が家屋に作用することが示された.
  • 河村 裕之, 太田 隆夫, 松見 吉晴, 権守 真也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_937-I_942
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,消波ブロック被覆堤の消波工を対象として,まず消波工の断面変形にともなう波力低減性能と越波低減性能の変化について,水理模型実験および数値計算により評価を行った.さらに実験と計算の結果にもとづいて,ニューラルネットワークを利用した水平波力と越波流量の予測モデルを構築し,その適用性を検討した.消波工の天端沈下を伴う変形が大きくなると,防波堤鉛直面に作用する波圧・波力が大幅に増加し,水平波力は最大で初期断面時の約3.7倍となった.越波流量も断面変形の進行にともなって増加するが,変形がある程度よりも大きくなると頭打ちもしくは若干減少した.また,水平波力の予測結果は±40%,越波流量は±10%の誤差範囲内に収まっており,ニューラルネットワークによる予測モデルの適用性が確認された.
  • 喜夛 司, 大野 俊夫, 星野 太, 鈴木 高二朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_943-I_948
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波の防波堤越流による水平波力増大やマウンドの洗掘による防波堤の滑動・転倒を防ぐ対策として,腹付工上への洗掘防止マットの敷設が提案されているが,マットの検討は十分に行われていない.そこで,本検討では防波堤背後の腹付工に設置された洗掘防止マットに越流を作用させる水理模型実験を行い,腹付工上の洗掘防止マットの設計手法やマットによるマウンドの安定性についての検討を行った.実験では,マットに生じたひずみを測定し,マットに働く引張応力を推定した.その結果をマットに衝突する越流水の運動量で整理することで,種々の越流に対する最大引張応力を推定する実験式を示した.また,試設計を行い,必要強度の算定方法を提案した.さらに,マットとその上に設置した被覆ブロックの付着で,ブロックの安定性が増大することを確認した.
  • 石井 敏雅, 琴浦 毅, 荒川 大樹
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_949-I_954
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     発電所専用港湾の防波堤に捨石傾斜堤を採用する場合,港内伝達波抑制,温排水の再循環の防止,漂砂流入防止などの目的で,傾斜堤の港内側に鋼矢板などの直立壁で透過防止工が設置される.既往の研究では捨石傾斜堤の伝達率や,捨石傾斜堤上部工への作用波力に関する研究はあるものの,透過防止工への作用波力に関する知見は少ない.そこで,本研究では背面捨石の有無,透過防止工の位置に着目した傾斜堤実験を実施して,傾斜堤伝達率,透過防止工作用波力,水位上昇量の特性を得た.
     また,合田が提案する傾斜堤伝達率を用いた波圧公式を検討したところ,傾斜堤形状によっては過大評価傾向になるものの,実験,数値解析を用いずに波力を安全側に評価できることを確認した.
  • 前田 勇司, 佐貫 宏, Duc Thang CHU, 樋口 慎一郎, 山口 吉宗, 篠崎 翔一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_955-I_960
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     置き鋼板セルは中詰完了後に強固な構造体となるが,セルの直径に対して部材厚が薄く,海底地盤に設置されるため,中詰めを行うまでは不安定な状態となる.本研究では中詰めを行う前を対象とし,耐波浪安定性とその挙動について検討した.水理模型実験により,波力軌道が真円に近いときは鋼板セルの回転方向が波力軌跡方向と一致することがわかった.また,CADMAS-SURF/3Dを用いた数値計算により,セルに作用する波力を評価したところ,実験結果とおおよそ一致することがわかった.実際の工事ではセルの回転と移動を抑制するために既設セルからワイヤーを展張している.ワイヤーに作用する張力について,現地観測および水理模型実験を用いて評価したところ,セルの動揺と移動による二つの成分があることや周期に対応して最大発生張力が大きくなることなどがわかった.
  • 大村 智宏, 小林 学, 古市 尚基, 杉松 宏一, 中山 哲嚴
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_961-I_966
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     杭式桟橋は地震・津波に対する防災・減災対策として有効な構造形式であるが,津波作用時の波圧・波力特性はほとんどわかっていない.本研究では直杭式横桟橋を対象に孤立波実験を行い,上部工や円柱杭に作用する波圧・波力特性について検討した.桟橋の最大鉛直力発生時及び桟橋前面水位最大時の波圧特性について解明するとともに,孤立波の先端衝突時に桟橋では衝撃波圧が発生することを明らかにした.またこの時の水平力・鉛直力とも衝撃波圧に対応して最大となり,桟橋前面水位最大時に波力最大とはならないことを把握した.さらに水平力よりも鉛直力の方が卓越する時間が長く,最大水平力と比較して最大鉛直力の方が大きい特徴を持つことや,桟橋前面水位最大時における揚力係数・抗力係数を示した.
  • 中山 朋大, 泉宮 尊司, 石橋 邦彦
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_967-I_972
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究は,津波漂流物対策施設である捕捉スクリーンワイヤーに働く衝突力の実験を行ったものである.実験は1/50スケールで行われ,津波漂流物模型としてコンテナおよび船舶を模した木製の模型を用いている.漂流物の移動速度等を計測するために,高速カメラおよびビデオカメラを同時に使用し,画像解析により,漂流物の速度,加速度および津波水位等を算定した.これらの推定値を用いて,運動量保存則およびワイヤーの動的効果を考慮した衝突力を求めた.また,抗力係数および質量力係数を衝突力の実測値より算定し,レイノルズ数およびフルード数の関数として定式化した.本研究の手法により得られた衝突力波形は,抗力係数等の関係式を用いたモリソン公式より推定されたもの,水谷らの提案式および津波漂流物マニュアルの提案式によるものと比較し,モリソン公式を用いた方法とほぼ一致することが見出された.
  • 木岡 信治, 遠藤 強, 竹内 貴弘, 渡部 靖憲
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_973-I_978
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     最も基本的な構造体である平板を中心とする様々な規模の角柱を対象とした海氷の衝突実験ならびにDEMによる数値実験を実施した.均一な物性・強度の氷やその完全な面接触など理想条件での衝突が現実では極めて困難または稀であり,必然的に実験結果がバラつく事,その衝突波形や破壊機構が複雑である事,等を数値実験から説明した.実験値及び実験困難な様々な条件での数値実験結果は,破壊の有無,動弾性率,衝突速度,氷の規模等に関わらず,理論的に得た弾性体の平板への最大衝突力を推定する単純な式の傾向特性と一致した.その理論式をベースとし,高速で漂流する小規模氷塊が脆性破壊を伴って衝突する場合の,平板を含む任意サイズの角柱構造物への最大衝突力を簡便に評価する方法の提案を試みた.
  • 江口 三希子, 武田 将英, 岩本 浩明, 松田 信彦
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_979-I_984
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,タンク内の自由水量を変化させたFlume式減揺タンクを搭載した浮遊ケーソンの自由動揺実験を実施し,実験から得られた縦揺固有周期と縦揺減滅係数を用いて動揺解析を実施した.本研究の結果,タンクの水量によって状態が概ね3つに区分(変化しない,自由水量と初期排水量の比がおよそ1.0~2.5%の範囲ではPitchがすぐ減衰する,およそ2.5~6%の範囲では縦揺固有周期が2倍長くなる)されることと,減揺タンク内の水量に依存するもののPitchが約6~8割も低減できることが分かった.
  • 小竹 康夫, 梅津 順一, 杉浦 仁久, 松村 章子, 中村 友昭
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_985-I_990
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     海上工事における作業船の動揺抑制は,施工精度の向上のみならず,作業の効率化や作業員の安全確保に重要な要素である.旅客船などでは減揺対策としてビルジキールを装着することがあるが,条件によっては十分な効果を有しないといった報告もある.また旅客船では主に航行時の横揺れを対象としているのに対して,作業船では停泊作業時の動揺が問題となる.そこで本研究では,まず対象とする作業船を簡易にモデル化した数値解析を実施し,定性的な傾向を把握するとともに,船体にビルジキールを装着する前後における実海域での作業船の動揺を計測することで,減揺効果を検証した.
  • 喜夛 司, 鈴木 高二朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_991-I_996
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     高潮による浸水想定では,設計高潮や設計高波だけでなく,設計を超える高潮や高波に対しても浸水想定を行うこととなってきた.しかし,設計を超える高潮や高波が護岸や海岸堤防に作用する場合の挙動については未解明な点が多い.そこで本研究では,混成型護岸の安定性を検討することを目的に,高潮位と波を複合作用させる水理模型実験を実施し,その堤体部,背後地盤の舗装工に加わる波圧を測定した.その結果,模型底部に作用する揚圧力の最大値が概ね合田式で算定できることを確認した.また,天端に越波水が叩き付けた際の圧力について,越波水の運動量保存則を用いた算定手法を提案した.さらに,複合作用による破壊実験を行い,揚圧力の作用による背後地盤の舗装工の浮上り,浸透流による舗装工下の砂の吸出しなどの破壊が発生することを確認した.
  • 岡田 克寛, 池内 正俊, 立脇 和則, 細川 善広, 鶴田 修己, 細山田 得三, 鈴木 高二朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_997-I_1002
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     強大な津波波力による防波堤ケーソンの滑動を防ぐために,粘り強い構造としてケーソン背後に腹付工を設置する方法が防波堤の耐津波設計ガイドラインに盛り込まれ,津波の越流に対する腹付工の洗掘に対する研究も進んでいる.一方で通常の高波の越波に対する腹付工の安定性についてはほとんど検討されてこなかった.そこで,本研究ではK港防波堤を対象として,その1/25縮尺の水理模型実験を行った.実験の結果から被災の有無を確認し,その際の流速・波高および動画のデータから被災の原因を検討した.また,越波による複雑な流況の確認をするため高精度粒子法による再現計算を行った.
  • 岡田 克寛, 鈴木 高二朗, 有川 太郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1003-I_1008
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した,東北地方太平洋沖地震津波では,震源のマグニチュードは9.0と我が国でも最大クラスの大きさの海溝型地震であった.この時に発生した,津波によって多くの防波堤が被災した.津波は,第一波来襲時から最大高さの波を確認するまでに,短いところでは数分,長いところでは何時間もかけて津波が来襲する.その津波が防波堤を越流している時にも,余震の影響が防波堤に作用している可能性が考えられるが,地震と津波が重畳した時に防波堤にどのような影響を与えるかが明確にはわかっていない.そこで,本研究では,地震と津波の重畳現象を再現できる大規模水路を用いて,周波数の違いによる影響と,マウンドの変形の有無による違いについて,明らかにすることを目的とした.
  • 平野 瑞樹, 木村 雄一郎, 松原 大輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1009-I_1014
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     フラップゲート式防潮堤は,通常地面に倒伏し,津波や洪水による水位変化が生じた場合,その変化に応じて無動力で浮力により扉体が浮上する防災設備である.本設備は,扉体動作を補助するためのカウンターウエイトを備えており,水位変化への追従性を高めている.本研究では,カウンターウエイトを備えた模型と,扉体単体で必要な浮力を有し,底部を単純ヒンジ支持した浮体板とを対象とし,水深と入射波をパラメータとした水理実験を通して波浪に対する扉体の応答性を比較し,作用波圧特性について評価を行った.実験の結果,条件によるものの,カウンターウエイトを搭載した形式は,水位に関わらず一定以上の復元力をカウンターウエイトにより得ているため,一般型と比較して,応答振幅は安定し,波圧のばらつきを抑制できることを確認した.
  • 大村 智宏, 八木 宏, 古市 尚基, 杉松 宏一, 中山 哲嚴, 朝倉 邦友, 本宮 佑規, 門 安曇, 野地 雅貴, 加藤 広之
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1015-I_1020
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     背後マウンド被覆材の安定性の評価手法としては,イスバッシュ式や越流水深に基づく算定法が提案されているが,上部パラペットを有する場合については十分検討されていない.本研究では様々な上部パラペット形状を有する防波堤について水理模型実験や数値計算を実施し,被覆ブロックの安定性に及ぼす影響について検討した.その結果,同一の天端高を有する防波堤ではパラペットを設けた方が被覆ブロックの安定性が高まり,パラペット幅と堤体幅の比が0.3以上のとき,越流水深で15%程度の増加に耐える効果があることを実験的に示した.また,数値計算からは被覆ブロック上下の圧力差が被災の一因であることが最大波圧との関係により示唆された.
  • 居波 智也, 田中 博通, 櫻田 哲生, 池田 雅俊
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1021-I_1026
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究は二次元水路を使用して防波堤の津波越流時を再現し,防波堤背後に敷設した一般的な平型被覆ブロックの被災状況を確認する実験と,防波堤越流水の落下水圧を堤体背後の水深ごとに計測する実験の2種類の実験を行った.被覆ブロックの被災状況からは,平型の被覆ブロックが被災度0.3に達する前の条件を算定することに加え,被災の状況から被覆ブロックがあることによる構造物全体の粘り強さを確認することができた.被覆ブロックの被災条件も一部踏まえた防波堤越流水の落下水圧実験では,越流水深h1と背後水位d1,鉛直距離Lz,落下水圧の関係を得た.また,防波堤背後の水があることによって越流水の落下水圧が減衰されていることを確認した.
  • 三井 順, 久保田 真一, 松本 朗
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1027-I_1032
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波の流れに対する被覆材の安定性に関する基礎的な知見を得ることを目的として,台形マウンドでの実験と,堤頭部を再現した実験の2種類の水理模型実験を実施した.津波の流れによる被覆ブロックの移動形態として,マウンドの法肩部や稜線部からの離脱と,ケーソン際の天端部からの離脱の2種類の形態を確認した.移動形態によって安定限界時のイスバッシュ定数が異なっており,後者の移動形態に関しては抗力以外の要因により離脱が生じている可能性が示唆された.またイスバッシュ式の適用に関しては,適切な斜面勾配のとり方や流速の測定位置を検討することが今後の課題として挙げられる.その際,イスバッシュ定数を決定するための実験時とイスバッシュ式により所要質量を算定する際との定義を整合させることが必要である.
  • 五十里 洋行, 後藤 仁志, 江尻 知幸, 小西 晃大
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1033-I_1038
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     ケーソン防波堤の越流洗掘型津波被災過程を数値解析によって再現するためには,津波の防波堤越流による落下水脈の記述,それによるマウンド・地盤の洗掘・変形,さらにはケーソンの滑動・転倒を解かなければならない.ここで,防波堤の粘り強さの正確な推定の鍵を握るのは,マウンドおよび地盤の変形である.洗掘の進行によって時系列的に変化するマウンド・地盤内応力分布が変形を引き起こし,ケーソンの転倒につながる.本研究では,マウンドおよび地盤を弾塑性体として扱うことで地盤内応力を計算し,その応力に基づいてそれらの大変形をも解く数値モデルを開発する.粒子法のフレームワークを用いてこれらを実現し,落下流による洗掘から,マウンド・地盤変形,そして最終的なケーソン移動までを包括的に記述できる数値モデルを提案する.
  • Abbas KHAYYER, Hitoshi GOTOH, Yuma SHIMIZU, Hosein FALAHATY, Hiroyuki ...
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1039-I_1044
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     A fully Lagrangian meshfree computational method is developed for simulation of incompressible fluids interacting with deformable elastic structures. The developed computational method corresponds to a novel SPH (Smoothed Particle Hydrodynamics)-based coupled solver. A projection-based Incompressible SPH (ISPH) fluid model is coupled with a SPH-based structure model in a mathematically-physically consistent manner via a careful attention to the mathematical concept of projection-based particle methods, i.e. Helmholtz-Leray decomposition. The fluid model solves Navier-Stokes and continuity equations, while the structure model is founded on conservation laws for linear and angular momenta corresponding to an elastic solid. A set of previously developed enhanced schemes are incorporated for the ISPH fluid model. Hence, the developed coupled method is referred to as enhanced ISPH-SPH. The performance of structure model is first verified in reproduction of the dynamic response of a cantilever rubber plate and then the enhanced ISPH-SPH is validated through the simulation of two FSI (Fluid-Structure Interaction) problems including a high velocity impact of an elastic aluminum beam, for which semi-analytical solutions exist, and hydroelastic slammings of a marine panel, corresponding to the experiments by Allen (2013).
  • 竹川 尚希, 澤田 豊, 河端 俊典
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1045-I_1050
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,津波の越流により防潮堤や海岸堤防などの海岸保全施設に甚大な被害が生じた.海岸堤防の被災要因の一つとして,津波による裏法尻の洗掘が指摘されている.我が国における海岸堤防の総延長を考慮すると,洗掘対策の要否および優先順位を検討することは極めて重要であり,これらを検討する上で,洗掘長や最大洗掘深などの洗掘形状を簡易に推定することは必要不可欠である.本研究では,水理模型実験を実施し,得られた実験結果と既往研究の結果から洗掘形状を渦の大きさおよび次元解析による2種類の方法で推定した.本研究にて導出された推定式は,実験結果および現地調査の結果を概ね予測できることが明らかとなった.
  • 佐藤 嘉則, 松山 昌史, 太田 京助, 内野 大介
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1051-I_1056
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波が火力・原子力発電所に到達した際,沿岸海域の水位変動の影響により,取放水設備の上部開口部から発電所敷地内へ溢水する可能性がある.原子力発電所敷地内への浸水は,発電所の安全機能の喪失に重大な影響を及ぼす恐れがあり,取放水設備からの溢水量を精度良く把握することは,津波浸水対策を検討する上で極めて重要である.本研究では一次元管路モデルを用いた溢水量算定手法を取放水設備に適用し,水理模型実験結果によって本手法の妥当性の検証を行った.検証の結果,概ね良好な再現性が得られることを確認できたことから,本手法が溢水量を算定するうえでの妥当な方法であると考えられる.
  • 犬飼 一博, 栗山 康弘, 佐藤 愼司, 加藤 史訓, 水谷 法美, 原田 賢治, 神保 正暢, 岩佐 隆広, 福田 晃正
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1057-I_1062
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     海岸堤防と背後の盛土が一体となり設計津波を超える津波に対して減災効果を発揮するために必要な海岸堤防の粘り強い構造及び整備効果の検討を行った.堤防の「天端保護工+裏法被覆工+裏法尻部保護工」の改良と設計津波の水位以下の盛土により仙台湾南部海岸での想定と同等の機能(破堤遅延時間3~5分程度)が確保できることを明らかにした.さらに,「レベル2津波が越流する形状の盛土」の場合,越流後でも現況堤防高以上の盛土高が確保される可能性が高いことを確認した.また,「越流しない形状の盛土」の場合,堤防の損壊や盛土機能への影響が生じる可能性は低く,海岸保全施設として改良する範囲が津波にさらされる天端保護工のみの整備で効果を発揮できることを確認した.
  • 本田 隆英, 織田 幸伸, 伊藤 一教, 小俣 哲平
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1063-I_1068
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波越流による海岸堤防の破堤は,主に堤体の法肩および法尻部で生じる洗掘に起因することが知られている.津波越流に対する海岸堤防の粘り強さ向上を目的として,堤体法肩部の浸食を抑制するための堰型対策工を提案し,同対策工による堤体の浸食抑制効果について縮尺1/50の移動床水理模型実験により検討した.その結果,提案した堰型対策工により堤体の浸食が抑制されることを確認した.ただし,対策工高が大きいと,堤体の浸食を助長する場合があることも分かった.また,固定床実験の結果から,対策工に作用する流体力は,越流時の対策工位置水位から静水圧分布を仮定して求めた流体力の約1.3倍であることが分かった.
  • 石河 雅典, 上月 康則, 山中 亮一, 大久保 陽介
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1069-I_1074
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日の東日本大震災での海岸堤防の被災を受け,全国では設計津波等を対象に海岸整備が進められつつある.筆者らは,今後更に整備が進むであろう南海トラフ巨大地震津波等の超大な外力に対して,堤体幅を現況と変えずに津波作用外力をうまく逃がすことができる新しい構造形式を複数考案し,地盤の洗掘を考慮した数値解析モデル(CADMAS-SURF/2D)を用いてその洗掘抑制効果を検証した.
     その結果,これまで粘り強い効果が期待できるとされてきた裏法面の緩勾配化よりも効果の高い構造形式として,裏法肩及び法尻部に曲線形を用い法尻陸側に落堀を付加した断面が有効であることを確認した.この構造形式は,堤体幅を現状と同程度とすることが可能であることから,粘り強さに加え現状の利用及び環境に影響を与えない効果も期待できる.
  • 飯干 富広, 前野 詩朗, 田井 祐介, 吉田 圭介, 赤穗 良輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1075-I_1080
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波が海岸堤防を越流すると法尻部で洗掘が生じ,それにより海岸堤防が半壊や全壊する事例が報告されている.今後の海岸堤防整備では,想定を超える津波に対して粘り強い構造であることが求められている.本研究では,防護に加えて環境や景観に配慮した堤防背面に大規模な盛土を有する構造に着目し,より粘り強さを向上させる方法について検討した.また,盛土流出時には被覆工に流れが作用するため,その際の流体力特性についても検討した.その結果,盛土内に防水シートとめくれ防止用ブロックを取付けた洗掘防止シートを設置することで盛土流出までの時間を延伸できることがわかった.また,被覆工表面に土砂滑落防止用に粗度要素を設けると,滑面に比べて作用する流体力は大きくなる傾向を示すが,得られた流体力を用いた安定照査結果では,抜け出しや転動は起こらないことが確認された.
  • 織田 幸伸, 本田 隆英, 小俣 哲平, 伊藤 一教
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1081-I_1086
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     陸上構造物に働く津波波力は,一般に,その構造物がない場合の通過波の最大浸水深を基準に評価される.しかし津波波形によっては,最大浸水深の発生時間と最大波力の発生時間が大きく異なり,その場合,通過波の最大浸水深発生時を最大波力の評価指標とすることは適切でないと考えられる.特に護岸近傍に設置される防潮堤では,浸水の初期段階において流速が大きいため,最大浸水深が生じるよりも前に大きな波力が生じる場合がある.そこで本研究では,様々な時系列波形の津波を対象に,陸上構造物に働く最大波力と通過波の関係について水理実験を実施した.その結果から,比エネルギー最大時あるいは比力最大時の通過波を指標とすることで最大波力を適切に評価できることを明らかとし,また水深係数を用いた津波波力の評価手法について示した.
  • 織田 幸伸, 本田 隆英, 小俣 哲平, 大野 剛
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1087-I_1092
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     東日本大震災を契機に,津波防災に対する考え方として減災の視点が重要視されるようになり,津波対策の1つである防潮堤についても,防潮堤を超える津波に対する備えが求められている.防潮堤設計における津波波力の算定は,対象構造物の位置における通過波最大浸水深と水深係数によって評価するのが一般的だが,防潮堤を越流する場合の波力評価手法として検証されたものは少ない.防潮堤を越流する場合,防潮堤が十分高い場合に比べてその作用面積が減るだけでなく,越流することにより作用圧も低減する.本研究では,防潮堤を主な対象とし,構造物を津波が越流する場合の津波波力の評価手法について水理実験に基づき検討した.津波高と堤体高の関係を変化させ,堤体を越流する場合の波力の低減特性について明らかとし,その評価手法を提案した.
  • 竹下 哲也, 加藤 史訓, 五十嵐 竜行, 小泉 知義, 宇多 高明
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1093-I_1098
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     計画規模を超える波浪時の越波により堤防裏法尻の根留工付近や,裏法被覆工が被災する現象に焦点をあて,移動床水理模型実験により海岸堤防の損傷軽減に資する粘り強い構造の確認を行った.実験の結果,越波に対して粘り強い海岸堤防の構造としては,(1) 堤防裏法尻の根留工に矢板を設置する方法,(2) 裏法被覆工を根継ぎする方法,(3) 根留工より陸側に段積みブロックを設置する方法,(4) 越波水塊を跳ね上げる機能を追加した根留工を用いる方法が効果的であった.
  • 趙 容桓, 張 楚, 中村 友昭, 水谷 法美
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1099-I_1104
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,潜堤における被覆ブロックの被災が集中する潜堤法肩部の被覆ブロックの被災機構を考究するため,被覆ブロックの移動限界時に作用する波力と被覆ブロック周辺の波浪場に着目した水理模型実験と数値計算モデルFS3Mによる数値解析を実施した.その結果,潜堤の法肩部における被覆ブロックの被災は,沖側法肩部(規則波)と岸側法肩部(長周期波)で顕著なことが確認された.規則波の場合,初期段階での鉛直波力が支配的であるものの,長周期波の場合,水平波力と鉛直波力が同程度であり,滑動被災とめくれ被災が同時に生じる可能性が示された.数値解析より,規則波において被災に支配的な鉛直波力は,法肩部ブロック上部の圧力の低下が原因であることが判明した.
  • 福水 啓太郎, 酒井 大樹, 金澤 剛, 荒木 進歩
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1105-I_1110
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     施工期間中の捨石護岸は高波浪来襲の際,安定質量以下の捨石が剥き出し状態であるため被災しやすい.本研究では,施工中の捨石護岸を対象に,施工中であっても粘り強く被災の程度を緩和する,構造的に簡易な変形抑制工の提案を行った.水理模型実験では,捨石護岸の中心部に変形抑制工として金網を設置した.変形抑制工を設置した場合と設置しない場合の護岸に,有義波周期の異なる2種類の不規則波を作用させることで,変形抑制工の性能検証を行った.その結果,変形抑制工による明瞭な対策効果が得られた.数値計算では,CADMAS-SURF/2Dにおいて不規則波の造波を行い,個別要素法を組み合わせることで実験の再現計算を行った.
  • 大木 裕貴, 草野 瑞季, 関 克己, 妙中 真治, 森安 俊介, 出路 丈時, 上田 秀樹, 有川 太郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1111-I_1116
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,CADMAS-STRの流体側の空隙における浸透流の抵抗においてDupuit-Forchheimer則を適用したモデルを構築し,物理実験と比較することによってその妥当性を検証した.その結果,本解析において矢板直下の浸透流速は計算結果と実験結果で一致し本手法の妥当性が確認できた.また矢板に作用する間隙水圧に関して計算値と実験結果は概ね一致した.このことからDupuit-Forchheimer則による抵抗則を適用し浸透流速を再現することで,地盤内の流れによる非定常間隙水圧を十分に評価できることがわかった.
  • 松田 達也, 三浦 均也, 佐藤 隼可, 諌山 恭平, 澤田 弥生
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1117-I_1122
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     波浪場における土砂移動は表層流速による掃流力と地盤内水圧変動による透水力が複合的に作用する複雑な現象である.本研究では,造波水路実験を用いて波浪場の土砂移動現象を詳細に観察することを目的とし,フルード相似則と漂砂の相似則を適用した実験条件による波浪場の地盤内応力変化の再現性について,u-p formulationを用いた数式解との比較により妥当性を検討した.Prototypeの地盤材料に近い豊浦砂を用いた場合,地盤内の応力変化を再現できないことがわかった.一方で,Prototypeに対してDean Numberを適用した硅砂8号を用いた場合,地盤深度の各点において数式解により得られた値と非常に近い過剰間隙水圧比の値が得られており,波浪場における地盤の応力変化を適切に再現できることを明らかとした.
  • 松田 典大, 磯田 隆行, 吉岡 祐策, 池野 正明, 須賀 康雄
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1123-I_1128
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     数値波動水槽(CADMAS-SURF/3D)を用いて,中国電力三隅発電所灰処分場護岸背後の埋め戻し材(ライトサンド)内へ伝わる波浪水位,流速,圧力を計算し,冬季高波浪来襲時に観測した5種類の入射波に対して埋め戻し材内の水圧を再現した.設計波(有義波高8.5 m,有義波周期12.5 s)に対する埋め戻し材内へ伝わる波浪圧力等を計算した.その結果,埋め戻し材の液状化の可能性が示唆された.液状化対策として現状の埋戻し高さに対し,ライトサンドを厚さ2m以上被覆すれば,設計波の伝達圧力に対して液状化は防げる.また,無対策の現状では,有義波高6m程度が液状化発生の判断の目安となる.
  • 高橋 英紀, 佐々 真志, 森川 嘉之, 丸山 憲治
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1129-I_1134
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     東日本大震災での津波によって多くの混成防波堤にも被害が発生した.各地で混成防波堤の補強が検討されており,その代表的な補強方法の1つがケーソン背後に石を積み上げる方法である.積み上げた石材からの反力で滑動安定性を高め,石材の重量やせん断抵抗力によって支持力破壊に対する安定性を高められる.ただし,その効果を定量的に評価する方法は十分には確立されておらず,本研究では,遠心力場で防波堤の前後に水位差を発生させる実験を実施すると共に,円弧すべり解析を利用した安定性評価を行い,その精度を検証した.実験では,腹付工が小さいか,腹付工を有しないケースにおいて,ケーソン前後の水位差で支持力破壊が発生した.解析では,滑動,転倒,支持力の耐力作用比を求め,その値は実験結果を適切に評価できることを示した.
  • 宮本 順司, 佐々 真志, 鶴ヶ崎 和博, 角田 紘子
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1135-I_1140
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究では,波による残留水圧蓄積による液状化と海底に埋設されたパイプラインの浮上との関わりを砂地盤―パイプ系の波浪実験により詳しく調べている.実験は遠心力場70g場で行い,粘性スケーリングの導入により,力学的相似性に加えて波浪載荷と地盤内の残留水圧蓄積に関する時間相似側を同時に満足したかたちで実施した.本論文では規則波と不規則波の2ケースの実験結果を示している.規則波実験の結果,波浪作用により埋設パイプ上端付近の地盤が液状化するとパイプが動き出すこと,波浪載荷の継続により液状化領域が進展し,それに伴いパイプが著しく上昇すること,さらに,最後は地表まで達することが得られた.不規則波浪でも,規則波の場合と同様に,地盤液状化が発生し,パイプの上昇がおこり地表面に達することを示し,波による液状化の進展とパイプライン挙動の関わりを明らかにした.
  • 川村 志麻, 土田 雄貴
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1141-I_1146
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     本研究は,地震動と波の相互作用を受ける盛土構造物の力学挙動に着目し,盛土の不安定化機構とその耐波性能を明らかにすることを目的とする.近年の甚大な災害被害を考えると,地震動と他の外的要因の影響を複合的に考慮する必要があり,より高度でかつ信頼性の高い評価法を提案することが急務であると言える.ここでは,二次元平面ひずみ模型土槽内に繰返し載荷履歴を与えることが可能な装置を開発し,地震動のような繰返し載荷を与えた条件下で造波模型実験を実施した.得られた結果から,盛土構造物の締固め条件ならびに波の作用条件の違いがその安定性に及ぼす影響を定量化し,盛土構造物の耐波・耐震に対する評価法の検討を行った.
  • 堀井 一樹, 鈴木 高二朗, 武部 悠一郎, 西野 好生
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1147-I_1152
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     港湾や岸壁の一般的な構造である重力式構造では,堤体の背後に防砂板が設置され,埋立土砂の流出(吸い出し)を防止している.防砂板には強度設計手法が無く,技術基準に示される最低規格を満たすものが一般的に用いられている.そのため,防砂板の強度不足による損傷ならびに堤体背後の陥没被災が度々発生している.
     近年の研究で,作用外力から防砂板の必要強度を推定する強度設計手法が提案された.この手法は,埋立前を想定した水理模型実験より,その妥当性が確認されているが,埋立状態については検討例がない.本研究では,埋立状態を想定した水理模型実験を行い,強度設計手法の適用が可能かを検証した.加えて,埋立前後の防砂板に作用する圧力と変形挙動の関係を分析し,未解明であった防砂板の挙動を明らかにした.
  • 松藤 絵理子, 高山 知司, 宮田 正史, 平山 克也, 河合 弘泰, 鈴木 善光, 宇都宮 好博, 福永 勇介
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1153-I_1158
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     従来の港湾構造物の設計波は,風波とうねりを区別せずに抽出した極大値資料を用いて算定することが一般的であった.しかし近年,2013年の台風第23号による鹿島港の被災等,うねり性波浪による港湾施設の被災が相次ぎ,うねりを考慮した設計波の設定の必要性が高まっている.しかしながら,実務として全国の港湾でうねりを考慮した設計波を設定するにあたっては幾つかの課題がある.本研究では,全国港湾における波浪観測データを用いてうねりが卓越する海域を把握するとともに,うねりの出現頻度が高い鹿島港を例に設計波の試設定を行い,うねりを考慮した設計波の設定における留意点を示した.また,従来設計波に加えてうねりを考慮した設計波が防波堤の安定性照査に及ぼす影響について概略的な評価を行った.
  • 甲斐田 秀樹, 木原 直人, 高畠 大輔, 柴山 淳, 宮川 義範
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1159-I_1164
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     津波漂流物の被害を受けることが想定される臨海部の構造物・施設等の設計・リスク評価においては,その挙動および衝突力の適切な評価が肝要である.本報では,これらに関する各種知見の確立・高度化に向けた検討のベースとすべく,衝突力計測が可能な鋼板に実規模木材を気中・水中で衝突させる大規模実験を行った.まず,気中衝突実験の結果を用いて,既存の衝突力推定式の精度を確認した.次いで,初期水位や最大流速の異なる5種類の遡上津波を用いた木材の水中衝突実験により,遡上津波中の作用を受けて漂流する木材の挙動および衝突時の特徴について検討を行い,被衝突体前面における反射波や木材の初期配置方向,木材が置かれた地点の初期水位が漂流物の漂流・衝突挙動に影響を及ぼすことを示した.
  • 水野 辰哉, 小笠原 敏記
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1165-I_1170
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     3Dプリンターを用いて作成した4車種の模型自動車に水位上昇を伴う流れを作用させ,その漂流特性を検討した.特に,漂流軌跡や移動速度を明らかにし,模型自動車の形状や重心位置,比重の影響を検討した.その結果,流れに直交する方向の自動車の変位量は,重心が模型前方に位置するほど大きくなることを明確にした.また,流れ方向の移動速度は,時間の経過に伴い等速状態に近づくことを明らかにした.さらに,流れ方向の移動速度が等速状態に必要な移動加速距離は,自動車の長さの8倍以上になり,車種により異なることから,自動車の形状や重心位置,比重が移動加速距離に影響を与えることを示唆した.
  • 遠藤 次郎, 杉松 宏一, 八木 宏, 宇田川 徹, 小口 哲史, 大村 智宏, 中山 哲嚴
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1171-I_1176
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     開放性沿岸域である鹿島灘・九十九里浜沿岸海域において,流動特性・物理環境特性を把握するために,超音波多層流速計・水温塩分計を用いた係留系観測および多項目水質計を用いた鉛直断面観測の現地観測結果と,Princeton Ocean Modelをベースとした数値計算結果を比較することにより,数値モデルの再現性について検討を行った.計算結果は,潮汐による水位変動,低気圧の通過に伴う流速の増大や観測前半の水温・塩分変動など観測結果を比較的良好に再現していた.また,北寄りの風が強化されることで南向きの流れが卓越し,利根川由来の低塩分水が犬吠埼を回り込むように九十九里浜沿岸に波及することが示唆された.一方,観測期間中,水温・塩分の上昇から,暖水が沿岸域へ張り出す暖水舌が形成されていたことが確認されたが,計算では再現されなかった.
  • 山口 創一, 杉原 裕司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1177-I_1182
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     σ座標を採用した数値モデルにおいては圧力勾配項に起因する誤差が生じる.これまで多くの誤差低減方法が開発・適用されてきたが,沿岸域対象のモデルに対しては多くなく、近年使用されるようになった水平方向に非構造格子を採用したモデルに対してはほとんど行われていない.本研究では鉛直にσ座標, 水平に非構造格子を採用したモデルにおける圧力勾配項の評価法の違いが再現精度に与える影響について検討した.圧力勾配項の評価方法としてσ座標のまま評価する従来の方法とz座標変換後に評価する方法を適用した.前者では圧力勾配項由来の誤った流れが駆動されたが,後者では現れず,観測値の再現精度も後者を用いることで大きく改善した.沿岸域を対象とした数値モデルにおいても適切な圧力勾配項の評価方法を適用することが重要である.
  • 坪野 考樹, 三角 和弘, 津旨 大輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1183-I_1188
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     日本海西部海域に領域海洋モデルを適用し,モデルの再現性確認のために,2010年1月から2月までの海洋レーダで得られた若狭湾東部海域の観測結果との比較を行った.計算結果は,解像できないレーダ各局近傍を除いて,海洋レーダにおける観測結果と比較的高い相関および比較的低いRMSEを持つことが示された.また,両者の主成分を比較した結果,変動の約80%を説明する第一主成分の流速パターンは同様な形状を示した.そして,観測結果の第一主成分を用いた計算結果のスコアは,観測結果を追随していた.この結果より,領域海洋モデルは観測結果に対し,良好な結果が得られることが確認出来た.海洋レーダで得られる若狭湾東部の第一主成分の正負,つまり流れの向きは,湾口部での対馬暖流の流速の大きさにより変化する循環に影響されていることが示された.
  • 山口 創一, 速水 祐一, 濱田 孝治
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1189-I_1194
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     有明海奥部および諫早湾では貧酸素水塊が毎年夏に発生している.発生には有明海中央部に形成される周囲より低水温のドーム状水塊(冷水ドーム)の奥部および諫早湾底層への貫入が関係し,貫入した水塊が貧酸素化する.したがって冷水ドームのDO濃度は貧酸素化する水塊の初期濃度であり,貧酸素化の期間や程度に影響する.本研究では現地観測と数値生態系シミュレーションを用いて冷水ドームのDO濃度変動およびその要因を調べた.冷水ドームのDO濃度は小潮ないし長潮から大潮時に低下し,有明海奥部や諫早湾の底層DO濃度とは異なる変動を示した.生態系モデルによる収支解析の結果,水平移流による酸素供給量減少がその要因であり,エスチュアリ-循環の大潮小潮変動に伴う供給量変動と諫早湾の低DO水塊の移流が寄与したと考えられた.
  • 西田 修三, 岡田 浩明, 中谷 祐介, 中 友太郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_1195-I_1200
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/17
    ジャーナル フリー
     都市沿岸域では長年にわたり水質改善施策が講じられてきたが,港湾域のような閉鎖性の高い海域では,いまだ十分な水質の改善はみられない.このような高閉鎖性海域の水質改善には,その海域の特性を捉えた水環境の改善施策や技術開発が必要と言える.本研究では,新たな改善策として,発電所などの沿岸事業場からの排水を利用した流動制御の可能性について定量的な検討を行った.大阪湾奥部に位置する発電所を例に,取放水の方法や水量を変えた流動シミュレーションを実施した結果,対象とした港湾域の流動は潮流に強く支配され,大きな流況改善効果は認められなかったが,残差流系を考慮した取放水方法により,港湾スケールの水交換を促進させることが可能であることが示唆された.
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