関西病虫害研究会報
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7 巻
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  • II. Pythium, Rhizoctonia, Sclerotium 菌の生育と土環環境
    高橋 実, 江藤 昌晴, 大東 脩員, 李 好正
    1965 年 7 巻 p. 1-7
    発行日: 1965/02/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本報では農作物の子苗立枯病或は根腐病を原因する Pythium 属菌として P. aphanidermatum, P. ultimum, P. ostracodes, P. zingiberum, P. sp. の5種を供試し, さらに Pythium 菌との比較のために土壌病菌として重視されている Rhizoctonia solani (st.1), R. solani (st.2) および Sclerotium rolfsii を用いて, これらの土壌病菌の土壊中における生育と土壌環境要素との関係について行つた実験結果を記載した.
    供試病原菌の培地上の生育最適温度は P. aphanidermatum は約36℃. ultimum は約 28~30℃, R. solani (st.1) は約 28℃, R. solani (st.2) は約 24℃ および S.polfsii は約 30℃ である. しかしこれらの土壌中での感染の最適温度は培地上の生育最適温度に比して低い.
    土壌温度を調節する装置としては各定温度にした容器中に入れた植木鉢 (pots) を用いた. 土壌中の病原菌の生育密度はコンタクトスライド法によつて測定した. 土壌中の生育最適温度は Pythium 菌では 24~28℃ であるが, R.solani (st.1) は約 20~24℃で, S. rolfsii は約 28℃ である.
    同様な方法は土壌水素イオン濃度, 土壌湿度および土壌の種類などの影響を知るためにも用いられた. 生育最適 pH は PythiumRhizoctonia 菌では約 pH 6.0 であり, S. rolfsii は pH 7.0 である. 土壌最適湿度は PythiumRhizoctonia は 17~20%含水比であるが S. rolfsiiPythium 菌よりも乾燥地で生育が良好である. 土壌の種類と生育との関係では Pythium 菌は壌土或は粘質壌土で生育が良好であつて, 砂質土では不良である. しかし R. solani, S. rolfsii は砂質土でよく生育する.
  • 室内検定法に関する一考察
    川瀬 保夫, 高橋 実
    1965 年 7 巻 p. 8-13
    発行日: 1965/02/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    1) 土壌病原菌に対する薬剤の生育阻害および土壌中における殺菌効果について検討し, 土壌殺菌剤の室内検定法について考察した.
    2) P. aphanidermatum 菌の生育阻害は有機窒素硫黄剤が最も低く, 有機水銀剤特に Phenyl marcuric acetate が最も強くその阻害限界濃度は 3.1×10-7 mol 附近である.
    3) 病原菌の薬剤に対する選択性を比較すると, P. aphanidermatum 菌に対して Dichlone, S. rolfsii 菌に対しては水銀剤が特効的に高い阻害効果を示す.
    4) 菌糸浸漬法では供試菌に対する殺菌力は有機水銀剤, Captan・TMTD が強く, Dichlone は R. solani, S. rolfsii 菌に余り効果がなかつた.
    5) ZENTMYER 法では殺菌効果は水銀剤で低下するか又は消失する. これは水銀剤が土壌に吸着されたためであると考えられるので, 土壌を媒介とした検定法が必要となる.
  • 病原菌に対する各種薬剤の殺菌効果と発病チヤ園におけるソイルシン乳剤による防除効果について
    安部 卓爾, 河野 又四, 渡辺 博
    1965 年 7 巻 p. 14-21
    発行日: 1965/02/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    各種薬剤によるチヤ白紋羽病菌 Rosellinia necatrix 培養菌糸に対する浸漬または土壌灌注処理による殺菌効果, 殺線虫剤によるガス殺菌作用, べーパムおよびソィルシン乳剤のチヤ樹に対する薬害, およびソイルシン乳剤および石灰硫黄合剤による発病チヤ園における白紋羽病の防除効果などについて述べた.
    1. 培養菌糸を30分間薬液に浸漬処理した場合の殺菌または生長抑制濃度は水銀 1.25~5.0ppm, 銅 100~200ppm で有機水銀剤は無機水銀剤よりも水銀の低濃度において殺菌作用を示した. 農薬の銅水銀剤はその含有する銅と水銀の協力効果は認められなかつた. 硫黄剤, 石灰, べーパム, ホルマリン, アムモニア, 2.4-D, その他薬剤による殺菌または生長抑制濃度についても調査した.
    2. ガス殺菌作用はクロールピクリン, べーパムおよびホルマリンにおいて顕著であつた. ホルマリンおよびネマヒユーム乳剤は適用量が少ない場合には殺菌作用を示さず菌糸生長の抑制作用を認め, 粒状ネマゴンおよび D-D は適用量の多い場合においてのみ菌糸生長を抑制した. べーパムはホルマリンおよびネマヒーユーム乳剤よりも低濃度でガス殺菌作用が大であつた. 処理時間についてはクロールピクリンはべーパムよりも短時間処理で明らかなガス殺菌作用を示した.
    3. 土壌灌注処理 (24時間) では水銀剤, 石灰硫黄合剤およびべーパムなどはは他の薬剤に比較して殺菌または菌糸生長の抑制効果が大であつた.
    4. べーパム 30~100ppm, ソイルシン乳剤 20~30ppm は培養菌糸に対する土壌灌注処理において殺菌または生長抑制効果を示す適用量であり, この適用量でチヤ苗木に対してソイルシン乳剤は全く薬害を示さななかつたがべーパムは薬害を示した. 栽植中のチヤ樹に白紋羽病が発生した場合の薬剤防除にはソイルシン乳剤の灌注処理が有望と考えられる.
    5. 京都府美山町大野ダム地域の白紋羽病発生チヤ園において薬剤防除を行なつた. 経済性の観点からその施用量を最少限にしたが昭和35年11月にソイルシン乳剤および石灰硫黄合剤を土壌灌注し, 翌年8月および10月に発病状態を調査した. その結果はソイルシン乳剤は石灰硫黄合剤よりも本病のまん延を抑制するものと推定した. チヤ白紋羽病の防除には薬剤についてはより安価で有効な土壌殺菌剤を開発する必要があるがさらに生態学的な防除法を究明し総合的に実施することが肝要と考えられる.
  • 伝染について
    井上 一男, 西ヶ谷 昭三
    1965 年 7 巻 p. 22-28
    発行日: 1965/02/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本報告はカンキツ黒点病の伝染について試験した結果について述べた.
    1. 胞子角の再形成は関係湿度98%以上で認められ,その再生能力は低かつた. 湿度100%処理区においては時間の経過と共に再形成の増加を示した. 各種の異なつた湿度に保つた罹病枝を飽和湿度で処理した場合, 処理後24時間で処理前67%以上の区に胞子角の再形成を認め,48時間後ではすべての区 (32~100%)が再形成を示した.
    2. 降雨時における柄胞子の溢出状態は降雨始めより認められ, 漸次時間の経過にともない増加し, 最も溢出の高いのは降雨始めより3~8時間の間と考えられ, それ以降は減少するようである.
    3. カンキツ樹冠下で採取した雨水および蒸溜水での柄胞子の発芽は常に雨水での発芽が高く, 発芽管の伸長も良好であつた.
    4. 葉令を異にするカンキツ葉上での発芽は葉令の高い旧葉での発芽が新葉に比して発芽率が低かつた.
    5. 柄胞子の飛散と葉, 果実の被害との関係は葉の被害においては発芽後より5月下旬までの柄胞子の飛散度に影響されるところが大きく, 果実については落花後から7月下旬頃までの飛散状態で左右される.
    6. 温州みかんにおける後期感染は熟期の近づくにしたがつて感染力が弱まり, 9月下旬以降の感染は認められなかつた.
    7. 枯枝の発生消長は冬期に少く, 8~10月に多い傾向を示したが, 胞子角形成度の高い多年枝の発生は5~8月に高いことを認めた. 罹病枝の発生消長は3~11月まで認められ, 年によりかなりの差異を示した.
    8. 樹令と保菌枝の関係は樹令を経るにしたがい保菌枝の発生率は増加し, 35~40年生で最も高く老木になると再び低下した. 同一樹令のものでも栽培管理, 薬剤散布, 寒害の影響等で発生率にかなりの差異が認められた.
    9. 静岡県下における保菌枝の分布は中部地帯で最も高く, 次いで東部, 西部の順に高かつた.
    10. 前年の越冬菌密度と翌年の果実の被害度との関係は1962年, 63年の両年について検討したところ, 殺菌剤の無散布樹ではγ=+0.584で5%危険率で有意差を示し, 散布樹ではγ=+0.123で有意差のある相関を示さなかつた.
  • 桂 碕一, 中村 勝
    1965 年 7 巻 p. 29-33
    発行日: 1965/02/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    前年9月初めにPCNB剤を施用した京都市上賀茂のスグキナ畑で, その後作として栽培されたナスが, 著しい生育障害をおこした. そのナスはアカナス台に接木されたものであり, たまたまそのナスはPCNB剤を施用しなかつた畑にまたがつて栽培され, 無施用の部分では何らの異常が認められなかつた.
    PCNB剤施用部分のナスは草丈が平均32.2cmで, かつ台木のアカナスには根部に福変腐敗が認められたのに対し, 無施用部分のナスは草丈が平均59.1cmで, アカナスの根部には異常が認められなかつた. 深底ペトリ皿の土壌にPCNB粉剤を混じ, そこにアカナスの種子を播いた結果, 10a当り30kg該当量区では, 立毛率が無施用区の2分の1で, しかも根が著しい薬害をうけて褐変し, 生育抑制がみられた. PCNB粉剤の施用量を異にし, 同様実験をおこなつた結果, 10a当り10kg該当量区ですでに薬害が認められ, 同20kg該当量以上では, アカナスの根部は100%褐変し, 明らかな薬害をうけた. ナスの5品種, トマト, ピーマン, ニンジン, ネギはPCNBの100ppm, 1000ppm共に薬害が認められないのに, アカナスは両濃度共に根が褐変した. PCNBの濃度1.25ppmは薬害の限界濃度であり, それより高い濃度では薬害が認められ, 1ppmでは薬害が認められなかつた. 以上の結果から, アカナス台のナス栽培はPCNB剤施用の畑では薬害をうけるおそれがある. なお根の被害部試料の約10%から1種のPythium菌が分離されたが, 接種試験の結果, 根の病徴の変色が, 薬害のそれと異るから二次的に侵入したものと思われる.
  • 発病生態および病原細菌に対する防除薬剤の室内検定
    戸崎 正弘
    1965 年 7 巻 p. 34-39
    発行日: 1965/02/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    1. 茶赤焼病の発病生態について,1958年~1962年に主としてほ場調査によつて得られた結果, および既往の報告を中心に,気象状況と発病との関連を検討し,併せて防除薬剤の検定結果を報告する.
    2. 本病の発病は主に早春(3~4月)と秋期の台風後に多いようで,早春では寒風,秋期では台風による葉柄部の付傷が侵入門戸になるようである.
    3. 本病の発病年と無発病年とを比較した結果2月,あるいは3月の半旬別平均湿度と極めて深い関係があり,発病年では70%以上の高湿度を示す半旬の比率が高く,温度との関係は少ないようであつた.この傾向は秋期の発生についても認められ,発病年では台風後5~7日の湿度は80%以上を示した.
    4. 病原菌はたえずほ場内に存し,風による付傷,および湿度条件がととのえばただちに発病が起るものと考えるが,この面での結果は明瞭でなかつた.
    5. 発病部位は,風による付傷,落葉部位と極めてよく一致した.
    6. ある程度硬化した葉の葉柄基部から侵入した病原菌は,樹液の流動にともない,中肋にそつて葉端え病斑を形成するとともに,枝条にも侵入発病し枝端部では枝条とともに上位葉へも発病伸展がみられた.
    7.防除方法を確立する前段としての室内検定の結果,有機水銀剤,銅剤,抗生物質中に有効なものがみられ,Hg剤と抗生物質の相乗効果はみられなかつた.
  • 宮田 正
    1965 年 7 巻 p. 40-52
    発行日: 1965/02/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    イネ苗 (愛知旭, 草丈約30cm, 苗令5-6令) 50gを有機燐殺虫剤を0.1%含む100ml溶液に24時間, 25℃, 関係湿度約80%の螢光燈照明恒温室内で水耕した. 24時間後, イネ苗地上部209を100mlの水と共に磨砕後, 等量のクロロホルムで5回抽出した. 抽出液をAllen (1940) の燐酸比色定量法に準じて薬量の測定を行つた. 同時に残存水中の未浸透薬量ならびに分解薬量についても測定した.
    乾燥重1g当り, Schradanでは約8,000γの薬量が検出された. 他の浸透殺虫剤についても2,000-4,000γ検出された. しかし, Phorate, Di-Syston, Methyl thiol Demetonでは400-700γしか検出されなかつた. またMethylParaoxon, Malaoxon, Dipterex, Sumioxonでは約3,000γ検出された.
    化学構造と浸透量の関係について,phosphate化合物はそのthio phosphate化合物より10-30倍の浸透量を示した. PhorateとDi-Systonの間ではその浸透量に有意な差はなかつた.
    イネ苗地上部に浸透移行している有効薬量は施用量の0.5%(Malathion, Diazinon, Sumithion)-27%(Schradan)まで変化があつた. 未浸透薬量ならびに残存水中での分解薬量は大部分の薬剤で30-50%であつたがTEPPでは95%以上, Guthionでは約1%であつた.
    水に対する溶解度と浸透量との関係について, 一般に溶解度の高いもの程浸透量が高かつた. しかし, 薬剤の浸透殺虫力については安定性, それ自身の殺虫力等の他の要因が重要な働きをしているのかもしれない.
  • 1965 年 7 巻 p. 53-89
    発行日: 1965/02/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
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