関西病虫害研究会報
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60 巻
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原著論文
  • 土田 祐大, 増井 伸一
    2018 年60 巻 p. 3-7
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    静岡県内のジチオカーバメート系薬剤の散布状況が異なる3圃場で採集したミカンサビダニに対する各種薬剤の殺虫効果を評価した。その結果,すべての個体群に対してマンゼブおよびビフェナゼートの効果が低いと判定された。一方,すべての個体群に対して,レピメクチン,ミルベメクチン,ルフェヌロン,アミトラズ,アセキノシル,ピリダベン,トルフェンピラド,スピロメシフェン,フルアジナム,キノキサリンの効果が高いと判定された。さらに,1個体群で本害虫に登録がない薬剤の殺虫効果を検定した結果,エチプロール,スピノサド,ピリフルキナゾン,ヘキシチアゾクス,ブプロフェジン,スピロテトラマト,シエノピラフェン,シフルメトフェン,シアントラニリプロール,フルベンジアミド,メパニピリムの効果が高いと判定された。これらミカンサビダニに対する殺虫効果が高い薬剤の中には,カンキツ微小害虫の土着天敵に対する影響が大きい薬剤も含まれるため,ミカンサビダニの化学的防除では土着天敵に悪影響を及ぼさないよう,使用薬剤の種類や散布時期に注意する必要がある。

  • 柿元 一樹, 太田 泉, 巽 えり子, 与那覇 麻美, 樋口 康一
    2018 年60 巻 p. 9-15
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    アブラムシ類に対する生物的防除であるバンカー(植物)法の実用性を高めるため,ムギクビレアブラムシの増殖に及ぼす土壌水分および寄主植物の影響を以下の2つの試験により検討した。試験1:エンバク‘ヘイオーツ’,コムギ‘さとのそら’,オオムギ‘てまいらず’,ライムギ‘007’などの8種の植物を,生産地のピーマン栽培施設内において土壌水分が異なる3箇所(pF=1.8,2.0,2.2)に植栽した。試験2:土壌水分を異なる2水準(pF=1.8およびpF=2.3)で維持管理した条件で,上記と同一の8種の植物を植栽した。両試験においてムギクビレアブラムシの増殖を比較した結果,本種の個体数は,生産地施設内における寄主植物の植栽場所によって有意に異なった(試験1)が,試験2においては土壌水分の相違による有意な差は認められず,土壌水分だけで本種の増殖の相違を説明することはできなかった。本種個体数は,両試験において寄主植物によって有意に異なり,エンバク,コムギおよびライムギが本種の増殖に適したバンカー植物であると推察された。

  • 山本 優一, 石川 陽介
    2018 年60 巻 p. 17-21
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    2015年に大阪府内においてバラ科樹木の害虫として世界的に知られているクビアカツヤカミキリ(Aromia bungii)が発見された。そこで,2015年から2017年に大阪府域において本種の宿主であるバラ科樹木を対象に被害状況を調査した。調査地において被害木は年々増加し,いくつかの被害木はおそらく本種の加害が原因で枯死した。

    サクラにおいては根元周が大きな木ほど被害を受けていた。一方で,同じ被害程度のサクラを根元周別に比較すると,大きな木ほど樹勢への影響を受けにくく,小さな木ほど枯損しやすい傾向にあった。

    被害木の被害部位の最高地上高は,大部分の被害木が地上から 2 mより低かった。また,被害を受けてからの年数が経過した被害木ほど被害部位の最高地上高は高かった。

  • 堀川 英則, 伊藤 涼太郎, 大橋 博子, 恒川 健太, 市川 耕治, 加藤 晋朗, 三宅 律幸
    2018 年60 巻 p. 23-29
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    シソサビダニとシソモザイク病の防除技術の開発のため,アオジソ(オオバ)葉上でのシソサビダニの発生消長と枝ごとのシソモザイク病の発病頻度を調査した。

    シソサビダニは,アオジソ漏生株で4月から6月に発生を確認し,その後,隣接した露地ほ場でも発生し,約3か月後には,約 50 m離れた施設ほ場でも発生した。各ほ場では,シソサビダニの発生盛期は,7月から10月で,シソモザイク病は,最初のシソサビダニの発生確認と前後して,7月から9月に急激に発病が拡がった。このため,屋外から施設へのシソサビダニの侵入と,極めて低密度のシソサビダニによるシソモザイク病の伝搬の可能性が示唆された。

    枝ごとのシソモザイク病の発病頻度は,保毒虫放飼後40日目には急増したが,放飼後69日目には減少し,放飼後96日目でも同様で,発病後に新たに発生した枝でシソモザイク病が消失する現象が確認された。しかし,見かけ上の健全枝から発生した枝で再び発病する事例があり,見かけ上の健全枝でもシソモザイク病の感染は続き,伝染源となると考えられた。

    これらにより,シソサビダニとシソモザイク病の防除には,伝染源となりうる施設内外の発病したシソ類の除去,そして,シソサビダニ発生始期前の防除が重要であると考えられた。

  • 堀川 英則, 大橋 博子, 永井 裕史, 加藤 晋朗, 三宅 律幸
    2018 年60 巻 p. 31-37
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    ブドウ晩腐病の防除のため,病原菌の胞子飛散盛期にあたる6月から7月に露地栽培の‘巨峰’に対してQoI剤ではない殺菌剤(ペンチオピラド,キャプタン)とQoI剤を各2回ずつ散布し,発病状況を調査したところ,アゾキシストロビン(QoI剤),ピラクロストロビン・ボスカリド(QoI剤混合剤),キャプタン,ペンチオピラドの順で防除効果が高かった。また,果粒表面に対する各殺菌剤の影響を調査したところ,果粒の大きさがダイズ大を超えた時期にピラクロストロビン・ボスカリドを散布すると果粉の溶脱が生じ,アズキ大からダイズ大程度の時期での散布では果粉の溶脱は実用上問題とならなかった。

  • 片山 晴喜, 増井 伸一, 土井 誠, 金子 修二, 多々良 明夫, 西東 力, 土屋 雅利
    2018 年60 巻 p. 39-45
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    静岡県内のウンシュウミカン園ではミヤコカブリダニがミカンハダニの主要な天敵となっている。しかし,清耕栽培が行われる栽培園では,地面付近におけるカブリダニ類の生息場所が少ない。カブリダニ類の発生を助長するため,草生栽培が有効と指摘されている。また,ミヤコカブリダニはイネ科植物への生息の報告がある。そこで,2004~2005年にイネ科植物であるナギナタガヤの草生栽培を実施し,カブリダニ類およびミカンハダニの発生を清耕栽培と比較した。その結果,出穂後のナギナタガヤからミヤコカブリダニが捕獲され,ナギナタガヤ枯死後にウンシュウミカン上からも捕獲された。草生区のカブリダニ発生時期は除草区より1~5週間早く,夏季のミカンハダニの密度ピークは除草区の 11~59%にとどまった。少数であったが,秋季~冬季のナギナタガヤからミヤコカブリダニが分離された。これらのことから,ウンシュウミカン園のナギナタガヤ草生栽培は,春季のミヤコカブリダニの発生を助長し,夏季のミカンハダニの密度抑制に有効と考えられた。

  • 墨岡 宏紀, 伊代住 浩幸, 鈴木 幹彦, 斉藤 千温, 影山 智津子
    2018 年60 巻 p. 47-53
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    ネギ黒腐菌核病(Sclerotium cepivorum)に重度に汚染されたネギ(Allium fistulosum L.)圃場において,作付前の転炉スラグ施用による被害軽減の効果について検討した。定植前の全面スラグ施用により,収穫時の重症株(廃棄株)の割合は,事前の土壌消毒の有無に関わらず,無処理区に比べ顕著に減少した(土壌消毒有り:74.7%→16.7%,土壌消毒無し:82.0%→50.7%)。翌年の同一圃場における作付では,前作より効果が低下したものの,追加の転炉スラグ施用をしなくても発病軽減が認められた。また施用場所をネギの植え溝部分に限定し,転炉スラグ量を減らして施用した場合の効果を検討した結果,無処理区と比べ発病の軽減が認められた。以上の結果は,定植前の転炉スラグ施用によりネギ黒腐菌核病を軽減できることを示している。

  • 金子 修治, 城塚 可奈子, 柴尾 学
    2018 年60 巻 p. 55-59
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    大阪府内の半促成ナス栽培を行う現地施設において,天敵温存植物・スイートアリッサムのナス株間への植栽と代替餌・アルテミア耐久卵を麻ひもに付着させた資材のナス株上への設置を行った条件で,飛ばないナミテントウ2および3齢幼虫の3回放飼とコレマンアブラバチ成虫の2回放飼を実施し,約3か月(4月下旬~7月下旬)にわたりアブラムシ類の密度の推移を調査した。無処理との比較はできなかったが,アブラムシ類(モモアカアブラムシ主体)は試験期間を通じて低密度に維持され,これら天敵2種および温存植物と代替餌を組み合わせた防除体系によるアブラムシ密度の長期抑制が示唆された。

  • 西村 幸芳, 西岡 輝美, 瓦谷 光男, 岡田 清嗣
    2018 年60 巻 p. 61-64
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    2014年,2015年に府内で発生したキュウリのウイルス病について病原ウイルスを調査したところ,ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)の感染が多いことが明らかとなった。また,ZYMV感染によっておこる萎凋症に対する遮光の効果を調査したところ,遮光によりハウス内の温度を下げることは効果的であるが,6~8葉期にZYMVに感染すると萎凋症の発生が多かったため,13~15葉期まではウイルスに感染しないようアブラムシの防除を徹底する必要があると考えられる。さらに,遮光とZYMVワクチンの併用による効果を調査したところ,ワクチン処理単独の場合よりもZYMVによる収量減少を軽減できる可能性が示唆されたが,ワクチン処理後すぐの3~4葉期にZYMVを接種すると遮光ハウスおよび無遮光ハウスともにワクチン無処理区と収量は同等であった。このことから,ワクチン処理と遮光を併用した場合でも6~8葉期まではZYMVに感染しないようアブラムシの防除を重点的に行う必要があると考えられる。

  • 岡本 崇
    2018 年60 巻 p. 65-69
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    夏まきエンドウを加害するウラナミシジミの成虫,卵およびふ化幼虫に対する薬剤の殺虫効果ならびにふ化幼虫の莢への食入阻止に効果がある薬剤を調査した。

    その結果,成虫に対しては殺虫効果が高かった7剤の内,ピレスロイド系のエトフェンプロックス乳剤,ペルメトリン乳剤,フルバリネート水和剤およびトラロメトリンフロアブル剤は速効的な効果が見られ,広範囲の一斉防除によって高い産卵防止効果を発揮すると考えられた。

    卵とふ化幼虫に対して殺虫効果が高かった10剤の内,殺卵効果とふ化幼虫にも殺虫効果が高かったエマクチン安息香酸塩乳剤,スピノサド水和剤,エトフェンプロックス乳剤およびアセタミプリド水溶剤は産卵部位である花蕾への散布で安定した防除効果が期待できると考えられた。

    ふ化幼虫の莢への食入阻止効果が高かった10剤の内,莢表面の食害痕が見られなかったカルタップ水溶剤,マラソン乳剤,エトフェンプロックス乳剤,ペルメトリン乳剤およびフルバリネート水和剤は,着莢時の防除における実用性が高いと考えられた。

  • 大谷 洋子
    2018 年60 巻 p. 71-76
    発行日: 2018/05/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル フリー

    トマト青枯病菌に対する土壌還元消毒の新規資材として,糖含有珪藻土または糖蜜吸着資材を用いた場合の処理条件について検討した。両資材とも,土壌に対して重量比で 1%以上混和して土壌還元消毒処理すると,青枯病菌に対して対照の廃糖蜜 0.6%処理に優る効果が得られることが示唆された。また,20~50°Cの範囲では温度が高いほど還元が進んだ。和歌山県で7~8月に施設内で土壌消毒を実施すると,地下 30 cmでは 40°C以上を12日間維持できた。一方,地下 40 cmでは,みなべ町では処理開始13日後以降 40°C以上を維持したが,海南市では 40°Cに達することはなかった。これらのことから,地下 30 cmより浅い層では高地温による菌密度低減と還元による菌密度低減が併せて起こり,地下 30~40 cmより深い層では溶出した糖含有珪藻土および糖蜜吸着資材の成分による還元が起こって菌密度が低減することが期待される。

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