20世紀初頭のE. Fischerに端を発したペプチド合成の夢は,1953年du Vigneaudらによりオキシトシンの全合成がなされて以来,近年急速な進歩を遂げ,続々と生理活性ペプチドの合成がなされつつある。その一般的方法はアミノ基を保護したアミノ酸とカルボキシル基を保護したアミノ酸とから,脱水縮合反応によりペプチド結合を生成させる方法である。このペプチド合成を行なう際の最大の問題点は,ラセミ化を伴わずペプチド鎖を延長することであり,種々の研究特に縮合剤の開発は従来ここに焦点が集められてきた。一方,反応方法も適当な溶媒中で行なう通常の液相反応による以外に,最近R. B. Merrifield によリレジン上でペプチド鎖の延長を行なう固相法が考案され,広く用いられつつある。また縮合剤についても数々の改良がなされ,ペプチド化学の進歩はめざましいものがある。従来知られているいくつかの縮合剤の紹介を中心に,最近著者らの研究室で開発された酸化還元系による合成法もあわせ述べる。
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