九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会
選択された号の論文の237件中151~200を表示しています
  • 岩坂 知治, 田中 創, 山田 実, 副島 義久, 西川 英夫, 森澤 佳三
    セッションID: 151
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     臨床において,頭頚部が左右どちらかに偏位している症例を多く経験する.しかし,何らかの愁訴を持った症例に限らず,健常者においても頭頚部の偏位が観察されることが多い.これには様々な要因が考えられるが,今回は左右の視力,利き目,頭頸部アライメント,可動域に着目し,健常者を対象に調査を行ったので以下に報告する.
    【対象】
     頭頚部に既往がなく,研究参加の同意を得た健常成人18名(男性15名,女性3名)平均年齢24±5歳.
    【方法】
     左右の視力・利き目の測定は,静止立位にて行った.可動域の計測は日本整形外科学会による評価法に従い,ゴニオメーターにて回旋・側屈可動域を測定した.頭頚部のアライメントに関しては,対象物を正面に見た静止立位の状態から,指標とした胸骨柄に対し,前額面上で鼻尖が左右どちらに位置しているかを観察,これを頭頚部の偏位とした.得られた計測値をもとに,各々の関係性を求めた.統計処理にはSpearmanの相関分析を用いて,視機能と頭頚部の可動性との関係性を検討した.
    【結果】
     視力差(右-左)の値と回旋可動域の差(右-左)の値に中等度の負の相関関係が認められた.(r=-0.542,p<0.05)
     その他の視力・利き目・頭頚部偏位・可動域に関する相関関係は認められなかった.
    【考察】
     本研究は,臨床上みられる頭頚部の偏位が,視力・利き目と関与しているかを明らかにする目的で行った.研究仮説として,視力優位側あるいは利き目側と対側に頭頚部が偏位しやすく,同様に可動域に関しても対側が大きくなりやすいと予測を立てた.今回の結果は,左側の視力が優位なほど,左回旋可動域が減少するという関係が認められた.つまり,頭頚部可動域を評価する上で視力を考慮する必要性が示唆された.しかし,利き目や頭頚部偏位また左回旋を除いた他可動域との関係性は認められなかった.これは,高齢者における姿勢戦略が,体性感覚優位から視覚優位へと退行する傾向にあるといわれているため,今回対象とした被験者の平均年齢が要因となり,利き目や偏位との関係性が示されなかったと考えられる.本研究を踏まえ,今後は対象者数,年齢を考慮し比較検証を行っていく必要性がある.
  • ~TUGを用いての比較・検討~
    黒木 博和, 田上 茂雄, 柚木 直也
    セッションID: 152
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     近年、課題指向型アプローチ、運動学習理論と神経学的リハビリテーションモデルの変遷が進んでいる。当院では、従来型の歩行訓練を見直し、日常生活に即した運動課題を取り入れた独自の歩行訓練プログラムの作成を検討している。そこで、今回は、毎日の生活と結びついた複数の運動課題を通常歩行訓練に課し、課題がTimed Up&Go Test(以下TUG)に与える影響を明らかにすることを目的とする。
    【対象・方法】
     対象者は、当院外来通院中(2回/週)の1本杖もしくは独歩自立にて在宅での屋外・屋内歩行訓練を実施されている脳卒中患者28名とした。その内、在宅にて実施している歩行訓練に課題を取り入れた14名をA群、在宅での通常歩行訓練14名をB群を無作為に振り分け、在宅での歩行訓練を2週間実施してもらい、訓練前後の評価をTUGにて行なった。対象者には研究の説明を口頭にて行い同意を得た。
     課題として、1:後方を振り向き、おじぎ。2:立ち止まり、左右を見る 3:横歩き(両側)。4:右方向へ360°回転。5:左方向へ360°回転。6:膝関節屈伸運動と設定した。各課題を行なう回数は、一日一回以上とした。
     統計処理には、群内・群間比較を行なった。A・B群の群内比較では対応のあるt検定。群間比較においては、Mann-WhitneyのU検定を用いて分析し、有意水準を5%未満とした。
    【結果】
     平均でA群1.83秒短縮、これに対して、B群0.43秒短縮が認められた。A群内では有意な効果が認められ(p<0.01)、B群内では有意な効果が認められなかった。また、A・B群間に有意な効果が認められ(p<0.05)、A群がB群よりも、有意にTUGの時間短縮を認めた。
    【考察・まとめ】
     本研究では、毎日の生活と結びついた課題が、TUG(機能的移動能力)に与える影響を検討した所、A群が時間の短縮という結果が得られ、歩行訓練に課題を組み込むことの必要性が示唆された。課題のみの分析を行なうと、支持基底面内を重心の上下左右移動を行なうバランス訓練、筋力増強訓練の効果があったと考えられる。また、約2週間の短期間の中で、自主訓練の中にスムーズに取り入れることが出来たのは、日常起こりえる動作、環境に適応しやすい動作だからこそ、運動学習理論で言われている固体―課題―環境の相互作用が図れ、動くことや知覚するための運動制御を構築し、能力向上という有意な結果が得られたと考えられる。
     今回は、課題の効果判定のみの研究であった。今後は、個々の能力に適した課題設定、課題設定時の評価・分析など、さまざまな今後の課題も得られた為、当院における歩行訓練プログラム作成に向け、更なる検討を続けて行きたい。
  • 「方向転換角度と関連する因子の検討」
    大田  瑞穂
    セッションID: 153
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     方向転換ステップ(以下、Turn step:TS)は移乗動作や応用歩行などの「向きを換える」課題が含まれる動作では重要な要素であると考えられる。しかし、TSの力学的研究は少なく、効率よく向きを変えながらステップする力学的考察は解明されていない。そこで本研究の目的は、TSの動作解析を行い、方向転換角度(以下、Turn Angle:TA)に関連する因子を検討することとした。
    【方法】
     対象は研究の主旨を説明し、承諾の得られた健常成人12名(男性7名、女性5名)、年齢24.2±1.4歳、身長166.8±3.6cm、体重59.8±6.6kgを対象とした。計測は三次元動作解析システムVICON MX13(VICON社製)と床反力計(AMTI社製)を使用し、下肢用簡易型ソフトウェア(VCM)にて下肢関節角度、下肢関節Momentを算出し、TAは両側のASIS、PSASに貼付したマーカーから空間に対する骨盤回旋角度を算出した。計測動作は静止立位(足関節内果間距離10cm)の状態から左下肢を支持とし、右下肢をステップする左回りのTSとした。計測区間は1相:動作開始~遊脚側下肢離床、2相:遊脚側下肢離床~遊脚側下肢着床、3相:遊脚側下肢着床~支持側下肢離床までの3相とした。抽出データは各相におけるTA変化量、下肢関節角度変位量、関節Moment最大値を抽出し、各相におけるTA変化量との相関関係を検討した(ピアソンの相関係数を用い、有意水準は5%未満とした)。さらに関節Momentは体重にて正規化した後に検定を行った。
    【結果】
     各フェーズにおけるTA変化量は1相:2.1±0.5(deg)、2相:31.6±7.7(deg)、3相:25.4±6.9(deg)であった。2相でのTA変化量に対して2相での片脚支持時間、骨盤側方傾斜角度、支持側股関節回旋運動量、膝関節伸展Momentは正の相関を示した(r=0.73 P<0.05、r =0.89 P<0.05、r =0.83 P<0.05、r =0.72 P<0.05)。3相でのQTに対して2相での遊脚側股関節回旋運動量は正の相関を示した(r=0.88 P<0.05)。
    【考察】
     TA変化量は片脚支持期である2相が最も大きくなる結果となり、片脚支持期での方向転換が重要であることが示唆された。片脚支持期では骨盤側方傾斜角度・膝関節伸展Momentを増加させ、片脚支持時間を長くした状態で股関節回旋運動を行い、TAを増加させていることが考えられた。さらに2相では遊脚側下肢の回旋運動が起こっており、3相でのTA変化量との相関が得られた。これはHorakとNashner ら(1986)の報告と同様に、次の3相でより効率良く方向転換するために、足部の位置を股関節の回旋にて、適した方向へ制御しているものと考えられた。
    【まとめ】
     今回はTSにおけるTAと各力学的データとの関連を検討した。片脚支持期では、支持側下肢の抗重力的な活動と体幹のバランス的戦略により片脚支持時間の延長を図るかることが重要であり、遊脚側においては次相に向けて股関節の準備的な働きがTAを増加させる因子であることが示唆された。
  • 下曽山 香織
    セッションID: 154
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     国際化時代が進む中、在日外国人数は年々増加傾向にあり、それに伴い在日外国人が抱える健康問題も増加している。特に、アジアの玄関口とも言われる九州においては、在日外国人に対してリハビリテーションを実施する機会も増えてくると予測する。在日外国人が日本でのリハビリテーションを受ける際、問題となり得ることは何かを探り、その解決策を考えることを目的とする。
    【方法】
     平成21年3月現在、日本で生活を送る外国人留学生を含む在日外国人15名(国籍はアメリカ、オーストラリア、韓国、中国、ネパール、フィリピン)に対し、日本でのリハビリテーションを実施する際、問題となり得る点を聞き取りにて調査した。その全回答主旨は、「互いに言葉が理解できないため、正しく症状が伝えられない、伝わらない、自身の状態を理解しているか大きな不安がある」であった。また、国によっては「リハビリテーション」という言葉自体の捉え方が異なるため、誤解を生じるケースもあった。そこで、日本におけるリハビリテーションの概念、身体部位の名称、病歴、症状の例、検査・測定項目を日本語と外国語で表記したパンフレットを作成し、実際にパンフレットを使用し、模擬的なリハビリテーションを実施した。
    【結果】
     パンフレットに記入された対象各国の言語を指で示すことで、在日外国人は今現在の状態をリハビリスタッフに伝えること、リハビリスタッフは在日外国人が示す症状を把握することが出来、それに応じた検査・測定を行い治療プログラムを検討することが出来た。しかし、パンフレットに記載されていない治療内容についての詳しい質問には回答できなかった。
    【考察】
     今回作成し、使用したパンフレットは在日外国人の病態現況を把握することが出来、当初の「症状が伝えられない」という問題は解決できた。しかし、リハビリテーションを提供する側の治療方針を在日外国人に伝えることが出来ず、在日外国人が抱える不安は完全に払拭されなかった。リハビリテーションを行なう上で重要となる信頼関係を結ぶには、コミュニケーションが必須である。今後ますます多様化する国際社会の中で、求められるリハビリテーションの提供に言語問題は重要な位置を占めると考える。今回のパンフレットの内容に、リハビリテーションに関わる治療・目標・方針などの項目を追加し、検討することを今後の課題としたい。
  • ―NIRSによる検討―
    松岡 美紀, 中川 慧, 青景 遵之, 崎田  正博, 松木 直人, 河原 裕美, 弓削 類
    セッションID: 155
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     運動学習は,ボディイメージをどのように持ち,自己の身体を中心とした空間をどのように知覚しているかによって変化するといわれ,近年,ボディイメージや運動イメージの精度が,実際のパフォーマンスに影響することが報告されている.ボディイメージの形成には,能動的な動きの中での空間視と体性感覚の統合が要求され,脳内ではその統合は頭頂連合野が関与している.そこで本研究では,健常者の内的なボディイメージを検討するために,接近する対象物に自己の指先が届くと判断した際の頭頂連合野,運動関連領域の活動を近赤外分光法(以下;NIRS)を用いて検討した.さらに視覚によるフィードバックを与え,介入がボディイメージの形成や再構築に与える影響を検討した.
    【方法】
     対象は,中枢神経疾患の既往が無い,健常成人11名(男性7名,女性4名,年齢:25.7±7.2歳)とした. 近赤外分光法装置(OMM-2001,島津製作所,日本)の全24チャンネルを,Cz(頭頂中心部)を中央に左右の運動前野,補足運動野,上頭頂小葉,下頭頂小葉,後部頭頂葉の領域に分けて脳酸素動態を計測した.
     課題は,座位にて対象者に接近する蛍光ボールを注視するだけのcontrol課題と,接近する蛍光ボールを注視し,自己の指先が届くと判断した時に合図させるreach image課題とした.さらにreach image課題は,フィードバックを入れないtask1と,フィードバック(予測した位置と実際のリーチとのエラー誤差を確認させる)を与えるtask2を設定した.解析は,イメージ時の脳活動とした.測定は,安静15秒,タスク20秒,安静15秒のブロックデザインとし,各5回連続して行った.なおreach image課題では,エラー誤差を0.5cm単位で記録した.
    【結果】
     脳活動では,control 課題とtask1のoxy-Hb 量の比較では,有意差は認められなかった.しかし,task1と比較して task2では全領域のoxy-Hbが増加した.特に左右運動前野,右下頭頂小葉では,有意にoxy-Hbの増加がみられた(p<0.05).また,エラー誤差の比較では,task1に比べtask2では,有意にエラー誤差が減少した(p<0.05).
    【考察】
     本研究でのフィードバックの実運動時には視覚誘導性の到達運動が行われており,その脳内機構は,運動前野や下頭頂小葉が重要な役割を果たしているといわれている. 実運動時と運動イメージ時で同運動関連領野が賦活されるという報告は多くあり,これはヒトがある運動効果器の運動をイメージすると,その運動の制御に関連する運動領野の脳活動が賦活されることを意味する.本研究においても,内的なイメージの際に視覚誘導性の到達運動と同領域の賦活がみられた.これは,フィードバックの記憶によって,視覚的な注意が喚起され,フィードバックを行わないtask1では鮮明に想起できなかった視覚的なイメージをtask2では運動イメージとしてより鮮明に想起することができたと考えられる.よって,フィードバックを与えることで,脳内の運動イメージやボディイメージを変化させうることが示された.
  • 釜賀 大将, 榊間 春利, 宮崎 雅司, 徳田 清一, 本武 千典, 諏訪 健司, 上原 聖子, 林 協司, 中川 雅裕, 川村 英俊, 米 ...
    セッションID: 156
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     我々は股関節術後患者に対して、できる限り疼痛や筋力低下を軽減し、歩行能力を向上させ社会復帰することを目標に理学療法を実施している。股関節外転筋力は股関節の安定性を向上させ、歩行能力やADLの回復に大きく影響する。また、疼痛や片脚立位時間は、歩行能力に支障を来す一要因である。今回、我々は股関節外転筋力、片脚立位時間、疼痛、歩行能力の間にどのような関連性があるかに着目した。本研究の目的は一本杖歩行あるいは独歩にて在宅復帰した片側股関節術後患者の歩行能力と股関節外転筋力・片脚立位・疼痛との関係を明らかにすることである。
    【対象と方法】
     片側股関節手術後当院にて理学療法が施行され、認知症、脳血管障害を合併していない17名(男性:5例、女性12例、平均年齢:73±12歳、THA:6例、CHS:5例、人工骨頭置換術:5例、RAO:1例)を対象とした。両側股関節外転筋力の測定姿位は仰臥位、測定部位は外果で行い、測定には可搬型の徒手筋力測定器(HHD)を使用した。外転筋力(Nm/kg)は下肢長と体重で正規化した。外転筋力、両側の片脚立位時間と歩行速度の測定は3回施行し、平均値を代表値として使用した。さらに、疼痛(VAS)、股関節JOA scoreを調査した。術側(患側)・非術側(健側)間の比較、歩行能力別(一本杖歩行群と独歩群)の比較、歩行速度と各因子との相関関係の検討を行った。統計学的有意水準は5%とした。
    【結果】
     患側における股関節外転筋力、片脚立位時間、JOA scoreは有意に健側と比較して低値を示した(p<0.05)。杖歩行群において、平均外転筋力(患側/健側)は独歩群と比較して約12%減少していた。片脚立位時間は独歩群より健側(66%)、患側(79%)ともに有意に減少していた(p<0.05)。歩行速度は独歩群と比べ39%低下していた。VASやJOA scoreは両群間に有意差は認めなかった。健側、患側の股関節外転筋力は歩行速度や患側片脚立位時間と有意な正の相関を示した。患側筋力と健側片脚立位時間には相関関係は認められなかった。また、歩行速度に影響を与える因子についてStep-wiseの重回帰分析を行った結果、健側片脚立位時間が最も影響を与える因子であった。
    【考察】
     今回の結果より、在宅復帰可能であっても患側の外転筋力や片脚立位時間は健側と比較して低下していることがわかった。そのため、在宅での転倒予防を考慮して退院後の継続したリハビリテーションの必要性が示された。また、杖歩行群は患側だけでなく健側の機能低下が著明であり、健側下肢機能が歩行能力に大きく影響することが示唆された。
  • ~2症例における症例報告を通じて~
    上村 健次, 平川 善之, 山崎 登志也, 小楠 智加
    セッションID: 157
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     股関節疾患患者の異常歩行に対して,中殿筋の筋力増強エクササイズ(以下ex)が中心に行われている.しかし,臨床において中殿筋のexのみでは異常歩行が残存することを経験する.近年,大腰筋は股関節の前方安定性に関与し,またインナーマッスルとしての機能も有すると言われており,大腰筋exにより,重心動揺が有意に改善したと報告されている.このため股関節疾患の場合,大腰筋は歩行の安定性に関与する重要な機能と考えられる.
    【目的】
     大腰筋exが即時的に歩行機能へ与える影響を調査し,考察を加えて報告する.
    【対象】
     症例1:60歳女性 右大腿骨頭壊死より右全人工股関節置換術(以下THA)を施行.症例2:52歳女性 変形性股関節症より右THAを施行.
    【方法】
     大腰筋ex前後の測定項目として,1歩幅2歩行スピード3中殿筋の平均筋活動量及び4ピーク出現時期を比較した.1・2は10m歩行中に測定した.3・4は表面筋電図Tele Myo2400(Noraxon社)を用いた.測定対象筋である中殿筋は腸骨稜と大転子の中点を測定部位とした.得られた筋活動を最大筋活動で除し%MVCを求め,3は検査側の接踵から離指までの%MVCを、4は立脚期全体を100%中とし踵接地から最大筋活動が出現するまでの時期(%)とその時の%MVCを用いた.また,中殿筋筋活動の波形を視覚的に比較した.大腰筋exの方法は,端座位にて大腿後面が座面から浮く程度に股関節屈曲を3秒間保持し,3秒間休憩を左右交互に各10回行なった.測定は10m歩行を3回実施後,大腰筋ex,その直後に10m歩行を3回実施し,平均を算出した.尚,本研究は当院の倫理委員会より承認を受けている.
    【結果】
     症例1:大腰筋ex前後で歩幅は1.1cm増加.歩行スピードは0.64秒改善.平均筋活動は両側で増加.ピーク出現時期は健側で8%の138.6%MVCから4%の175.6%MVCに増加,患側で18%の68.1%MVCから24%の74.5%MVCに増加した.症例2:歩幅は2.1cm増加.歩行スピードは0.7秒改善.平均筋活動は両側で増加.ピーク出現時期は両側ともに著明な変化は認められなかった.しかし,症例1,2ともに中殿筋筋活動の波形は収縮・弛緩の区別が明確になった.
    【考察】
     大腰筋exの即時効果として,ex前では中殿筋の持続的収縮が見られていたが,中殿筋筋活動の収縮・弛緩の区別が明確になり,正常歩行の波形に近づいた.これは大腰筋の機能である重心を跨いで腰椎・骨盤・股関節を連結する点,両側大腰筋の収縮により腰椎の圧縮機能を有する点から,下部体幹の安定性が増すことで中殿筋が発揮しやすくなったためと考えられる.このため,一側支持期における重心動揺が改善されたために,歩幅・歩行スピードの増加につながったと考えられる.
  • 田中 宏樹, 後藤 由美, 隈川 公昭
    セッションID: 158
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     日常的に頻繁に繰り返される動作に立ち上がりがある。立ち上がりは大腿四頭筋との関連について多く報告されているが、股関節内転筋群との関連についての報告は少ない。本研究は、股関節内転筋群へのアプローチが立ち上がりに及ぼす影響について検討することを目的とした。
    【対象】
     下肢に整形外科的疾患を有する65歳以上の高齢者で立ち上がりが自立し、本研究の趣旨を説明し同意の得られた10名を対象とした。この10名を無作為に股関節内転筋群へアプローチを行う介入群と従来の運動療法のみを施行した対照群に分けて検討した。
    【方法】
     股関節内転筋力はMMT、立ち上がり能力は、10秒間の立ち上がり回数を測定した。片脚立位保持時間は開眼で最大1分間測定し、下肢荷重力は片側足底に体重計を置き、最大努力で体重計を押してもらい測定した。股関節内転筋群のアプローチは、立位姿勢にて足底にタオルを敷き片側ずつ可能な範囲で股関節内・外転運動を繰り返す。また臥位で膝関節を90°、0°屈曲させた肢位で5秒間ボールを挟む等尺性収縮を10回行う。このアプローチを1週間行い1週間後に再度同様の項目を測定し、MMTを除く各測定項目の改善率を群間で比較・検討した。
    【結果】
     股関節内転筋力は、介入群では改善は認められず、対照群で2名のみ患肢がMMT3→4への改善が認められた。立ち上がり回数の改善率は、介入群68.3±77.8%、対照群16.7±23.6%。片脚立位時間は介入群42.6±56.3%、対照群19.0±29.9%。下肢荷重力は介入群10.8±13.3%、対照群0.40±4.81%であり、介入群が対照群よりも大きな改善率を示した。
    【考察】
     介入群では股関節内転筋力の変化は認められないものの、対照群よりも立ち上がり回数や下肢荷重力、片脚立位保持時間の向上が認められた。下肢荷重力は大腿四頭筋筋力や前方への重心移動量と関連しており、片脚立位についても大腿四頭筋との関連性が報告されている。したがって、股関節内転筋群へアプローチを行うことで、大腿四頭筋の補助的な活動の増加や、立ち上がり時の骨盤前傾による前方への重心移動量の増加が起こったと考えられる。これにより、立ち上がり能力が向上したものと推察される。
  • 西  洋樹, 野口 大助, 今屋 将美, 東 利雄, 高橋 知幹, 堤  文生
    セッションID: 159
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     近年、人工股関節全置換術(以下THA)の技術進歩により適応年齢が拡大している。しかし、THA術後における身体機能の経過や達成目標を年齢ごとに示した指標は見当たらない。今回、年齢がTHA術後の身体機能に与える影響を調査した。
    【対象】
     対象は当院でTHA施行した117例(男性25例、女性92例)。
    【方法】
     年齢によりA群(45-54歳):27例、B群(55-64歳):34名、C群(65-74歳):40名、D群(75-84歳):16例の4群に分類した。測定項目は、1)股関節屈曲筋力(0.102Nm/kg)、2)股関節外転筋力(0.102Nm/kg)、3)10m歩行時間(秒)、4)1本杖歩行が自立するまでの期間とした。なお、1)~3)の測定時期は術後1~4週・退院時とし、測定値は術前の測定値で除した術前比(改善率)に変換した。統計学的分析には、Bonferroni検定(有意水準:0.0083)にて4群間の多群比較を行った。
    【結果】
     股関節屈曲・外転筋力や10m歩行時間は、全ての時期で4群間に差を認めなかった。1本杖歩行が自立するまでの期間はA~C群よりもD群が有意に遅かった(A群:20.9±7.7日、B群:20.2±8.6日、C群:21.6±12.0日、D群:30.6±11.3日)。
    【考察】
     今回の研究では、股関節周囲筋力や10m歩行時間の改善率に関しては、年齢による差を認めなかった。一般的に筋力や10m歩行時間は年齢の影響を受ける項目であるが、THA術後早期では疼痛や関節可動域などの股関節機能が大きく改善するため、年齢に関わらず同等の改善率を示したものと考えられる。しかし、1本杖歩行が自立するまでの期間に関しては、75歳以下の群と75歳以上の群では約10日間の差があり、歩行安定性に関与すると考えられる股関節周囲筋力の改善率とは異なる結果を示した。75歳以上の群において早期に1本杖歩行が自立するには、股関節周囲筋力以外の歩行安定性に関与する因子が重要であることが示唆される。75歳以下の群に関しては、各測定項目に有意差を認めず、THA術後は同等の改善率を示すことが示唆された。
    【まとめ】
     術後の股関節周囲筋力や10m歩行時間は年齢に関わらず同等の改善率を示すことを認めた。また、1本杖歩行が自立するまでの期間は75歳以下の群では年齢による差を認めないものの、75歳以上の群は遅延する可能性があることから、年齢を考慮する必要があることが示唆された。
  • 矢野 雅直, 小牟禮 幸大, 田中 創, 山田 実, 森澤 佳三(MD), 西川 英夫(MD), 副島 義久(MD)
    セッションID: 160
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     臨床において,下肢の変性疾患や術後歩行開始した患者を観察すると歩き始めに不安定性が出現する例を多く経験する.今回,不安定感がない健常者を対象に歩き始めに関与する因子の調査を行ったので考察を交えて報告する.
    【対象及び方法】
     対象は身体に重篤な既往のない健常成人20名(男性18名、女性2名)、平均年齢24.7±8歳である.測定には大・小の東大式角度計を使用し、股関節内外旋と足部内外反可動域を日整会の方法に従い同一検者(2名)で実施した.振り出し脚の決定は,研究の説明をする前に実施し,方法は対象者の自然立位から検者が遠くを指差して歩行開始の指示を出して3回実施する.振り出し脚が多い側を基準に設定する.統計処理は,Willcoxonの符号付順位検定を用い,振り出し脚と同側・対側の股関節内外旋,同側・対側の足部内外反可動域との相関を各々分析した.(有意水準は5%未満とした)
    【結果】
     振り出し脚と同側足部外反可動域と対側足部外反可動域において対側足部外反可動域が有意に大きかった(P=0.003).その他の項目との関連性は認められなかった.
    【考察】
     歩き始めの支持脚側において,寛骨前方回旋-大腿骨外旋-下腿内旋-距骨下関節回内(足部外反)の運動,振り出し脚側では寛骨後方回旋-大腿骨内旋-下腿外旋-距骨下関節回外(足部内反)となっていると言われている.よって,振り出し脚では同側の股関節内旋可動域と足部内反可動域が対側に比べて大きく,又,支持脚では同側の股関節外旋可動域と足部外反が大きくなると予測していた.しかし,振り出し脚の対側足部外反可動域が同側に比べて優位に大きいという結果が得られた.つまり,支持脚側の足部外反可動域が対側よりも大きい結果となり予測が裏づけされる結果となった.これらにて,歩き始めは支持脚側の決定が関与していることが考えられるため振り出し脚側の足部内反可動域との関連性がなかったと考える.足部外反に関しては,歩き始めには,支持脚側への重心移動が必須で,重心移動に伴う支持面の安定には足部外反が関与しているのではないかと考える.今回,他動での関節可動域テストを行っていて,床面との接触がある足部では骨形態が影響しやすいが,股関節回旋は骨形態に依存するとは限らないことが示唆された.
    【まとめ】
     歩き始めと股関節内外旋・足部内外反可動域との関連性を調査した.支持脚となる側の足部外反可動域のみが優位に大きくなる結果を得た.今後は,その他の因子との関連性についても追究していきたい.
  • 鈴木 佑介
    セッションID: 161
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、両恥~坐骨骨折により歩行開始後に歩容の不安定感がみられ、転倒危険性のある症例を担当する機会を得た。新聞配達への強い復帰願望があるが、本人の歩行に対する不安感も強く、今回は立位での歩行訓練よりも臥位による訓練の有効性が高いと考え、その中で寝返り動作と歩行の共通点に着目し、寝返り動作に対しアプローチを行った。その結果、歩容に変化が見られ歩行に対する不安感の改善が得られたのでここに報告する。
    【症例紹介】
     71歳女性。職業:新聞配達(歩行)。現病歴:平成20年10月29日両恥・坐骨骨折受傷。11月21日紹介転院、25日より理学療法・歩行訓練開始。
    【理学療法評価[H20.11.25]】
     右股関節内旋時、右恥骨部に疼痛(VAS2/10)。両内転筋収縮時痛(VAS1/10)。腹直筋、腹斜筋normalレベル。両大内転筋、両大腿筋膜張筋、両腓骨筋の筋緊張亢進。歩行時、寝返り時疼痛無。
    【動作分析及び臨床推論】
     右荷重応答期~立脚中期において骨盤右回旋が不足し、その後立脚中期後半にかけて体幹の前傾と共に骨盤が右後方へ引けていた。この現象は、右股関節内旋時の疼痛による内旋制限のため、左立脚後期で得た骨盤の前方かつ右回旋方向への加速度にブレーキがかかり、左下肢から骨盤・上部体幹への運動の連結が行えず、結果として右立脚中期後半において前方への重心移動を体幹前傾で代償したと考えた。
     寝返りに関しては、右側への寝返り時、左下肢で床面を蹴り骨盤を右方向へ回旋させるものの、側臥位付近で骨盤の回旋にブレーキがかかり重心が支持面を超えることが出来ず、結果的に上部体幹右回旋を代償的に利用し腹臥位方向に移動していった。
     これらの結果より寝返りにおいて右股関節の内旋を誘導しながら左下肢から骨盤、さらには上部体幹への運動の連結を測り、床面を蹴ることにより作り出された回旋力を左下肢から上部体幹へスムーズに伝達させることにより歩容においても改善ができると考えた。
    【PTアプローチ】
     1.筋膜リリース 2.股関節機能訓練 3.体幹機能訓練 4.基本動作訓練(寝返り)
    【結果[H20.12.15]】
     右股関節内旋時痛、内転筋収縮時痛消失。右側への寝返り時、左下肢から骨盤、上部体幹の連結が図れ、股関節の内旋も可能となったことにより、左下肢で作った回旋運動のスムーズな上方への運動連結が見られた。その結果、骨盤の右回旋も可能となり、歩行においても体幹前傾での代償が減少した。また、それにより本人の歩行に対する不安感も軽減された。
    【まとめ】
     今回、歩行に対する強い不安感のために、本人のデマンドを達成できない症例を担当した。このように歩行に対する本人の強い不安感がある場合、立位によるアプローチよりも寝返りと歩行のリンクに着目し、歩行訓練の一手段として寝返り動作にアプローチする事も効果的であると考える。
  • 赤川 精彦
    セッションID: 162
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     体幹の安定化を図る目的の一つとして腹横筋のトレーニングがある。最近、腹横筋の解剖、および機能が詳細に報告され、その重要性が明確にされてきている。その機能を評価する非侵襲的な方法として超音波画像診断装置が推奨されており、一般的な超音波画像診断装置による筋活動の評価は筋厚の変化として捉える方法が主流である。その画像診断を用いてのバイオフィードバック練習や従来の運動療法との比較による運動療法の効果判定、そして腹横筋の機能不全と腰痛との因果関係など疫学的な面からの検討も報告されている。しかし、臨床的にどのような指導方法(肢位、口頭指示の内容、触診の有無)が最も効果的に腹横筋を収縮させることができるかに関しては、不明瞭である。
     そこで今回、健常人に対し、安静坐位時の腹横筋の筋厚、口頭指示にて腹横筋の収縮を促した坐位時の筋厚、それとセラピストにより腹横筋触診を比較し、口頭指示と触診を用いた指導による腹横筋厚について検討したので報告する.
    【方法】
     対象は現在腰痛を有さない当院職員男性11名,年齢は22歳から26歳(平均23歳)、平均身長172cm、平均体重65kgであった。以上の対象者に対し,1)安静坐位で超音波画像診断装置を用い腹横筋厚を測定する。2)臍を背中のほうへ引き込むように指示し、超音波画像診断装置を用い腹横筋厚を測定する。3)被検者の両側の上前腸骨棘(以下ASIS)を触知し、左右のASISの距離を近づけるように指示し超音波画像診断装置を用い腹横筋厚を測定する。それぞれに腹横筋厚を測定し、安静坐位の腹横筋厚と口頭指示のみの腹横筋厚の変化量と、触診を用いた指導後の腹横筋厚の変化量を比較した。
    【結果】
     腹横筋の平均筋厚は安静時4.6±1.2mm、指示のみ6.3±1.4mm、触診あり指示8.1±1.7mmであった。変化量は指示のみ1.8±1.3mm、触診あり指示3.6±2.0mmであった。2標本t検定により指示のみの腹横筋厚と触診あり指示の腹横筋厚間に有意な差(p<0.05)が認められた。
    【考察】
     すべての症例において、指示のみの腹横筋厚よりも触診あり指示の腹横筋厚が大きかった。安静坐位時の腹横筋厚と触診あり指示の腹横筋厚の変化量と口頭指示のみ腹横筋厚の変化量に有意差が認められた。口頭指示のみよりも、触診を含め指示をするほうがより腹横筋の収縮を促すことが示唆された。患者指導において、腹横筋の収縮を指導する際には口頭指示のみよりも、触診を用い指導するほうが効果的であると考えられる。
    【まとめ】
     今回は坐位姿勢の腹横筋のみの評価であったが、今後は多裂筋の収縮の評価と姿勢による変化、重心動揺の変化も含めて検討していく。
  • 緒方 孝, 井手 睦, 今村 豊
    セッションID: 163
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    造血幹細胞移植(以下移植)は、造血系悪性腫瘍を中心とした血液疾患に対する治療法として知られている。本治療法においては前処置として多量の抗癌剤投与や全身の放射線照射のうえに、移植後の無菌室や病室内の長期間の隔離と安静を必要とする為、廃用症候群を引き起こす危険性が非常に高く、当院においては平成20年10月より血液内科にて移植患者に対し理学療法の介入が開始となった。長期の隔離が四肢周径・握力・ADLにどのような影響を与え、無菌室入室中における理学療法介入の検討指標となるのではないかと考え検討した結果をここに報告する。
    【対象・方法】
    移植目的で当院血液内科に入院した移植前後で理学療法の介入を行った患者6名、移植後合併症として四肢の腫脹を認めなかった5名(男性4名、女性1名、平均年齢52.8±10.7歳)を対象とした。移植方法は同種骨髄移植1名、臍帯移植4名であった。評価項目は、理学療法開始時と移植後再開時の握力・四肢周径・ADLとし、比較検討を行った。統計解析は対応のあるt検定、Mann-Whitney検定を用い、有意水準5%未満を有意とした。なお、本研究は当院倫理委員会の基準に従い行った。
    【結果】
    移植による隔離期間は27.2±9.7日であり、移植前後の各評価の平均は
    1)握力(移植前:右30.1±9.3kg・左30.4±10.1kg、移植後右26.4±8.3kg・左24.4±9.2kg)左において有意な低下が認められた(p<0.05)。
    2)上腕周径(移植前右27.8±3.5cm・左28.4±3.3cm、移植後右25.6±1.8cm・左24.8±1.3cm)移植後周径の低下は認めたが有意差は認められなかった。
    3)前腕周径(移植前右24.1±2.2cm・左24.3±2.2cm、移植後右23.4±2.2cm・左23.5±1.8cm)移植後周径の低下は認めたが有意差は認められなかった。
    4)大腿周径膝上10cm(移植前右42.2±3.4cm・左41.6±2.6cm、移植後右39.7±1.7cm・左39.1±1.6cm)移植後において有意な減少が認められた(p<0.05)。
    5)下腿周径(移植前右34.6±3.5cm・左34.4±3.4cm、移植後右32.2±2.9cm・左32.3±2.7cm)移植後に右において有意な減少が認められた(p<0.05)。
    6)ADL(移植前BI97.0±6.7、移植後73.0±12.0、移植前FIM119.4±9.0、移植後96.0±6.0)移植後で有意な低下が認められた(p<0.01)。
    【考察】
    今回、移植を施行した患者の移植前後のADLを含めた身体機能の評価を行い検討した。握力に関しては左にのみ有意な低下が認められ、上腕・前腕周径については、有意差は認められなかったが、周径の低下は認められた。これは、無菌室隔離という狭小化された状況においても、上肢の活動はADL上に必要であり周径の低下は認められたが有意な低下まではならなかったと考えられる。下肢の周径に関しては、無菌室内の身体活動状況により、ベッド周囲の活動になってしまい下肢の活動が行えないことで有意な周径の低下が生じたと推測している。
    今回、移植後における合併症の全身倦怠感、悪心、嘔吐、下痢、発熱など活動性の制限の要因となるものとの関係は検討できてはいない。今後、症例数を増やすことで、これらとの関係なども検討してゆきたい。
  • 川島 由希, 大塚 もも子, 金子 秀雄
    セッションID: 164
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     急性期では肺合併症予防のため,腹臥位や側臥位への体位変換が行われている.しかし,その時の横隔膜運動の変化についてはあまりよく知られていない.MRIや超音波診断装置を用いた先行研究において側臥位や腹臥位の横隔膜運動の変化が示されているが,その報告は少なく,これらの体位を同時に比較した先行研究はない.
     そこで今回の研究では,健常な人において,安静呼吸での様々な姿勢の中での横隔膜運動について超音波画像を用いて把握することを目的とした.
    【方法】
     健常な男子学生12名,平均年齢22.1±0.79歳,平均身長1.74±0.05m,平均体重63.8±7.4kgを対象とした.対象者には内容を十分に説明し,同意を得た.
     安静呼吸時の横隔膜運動を測定に超音波診断装置(Bモード,3.5MHz),リニア式プローブ(8.0cm)を使用し,1)背臥位,2)左側臥位,3)腹臥位の3条件で行った.各条件において,一回換気量と呼吸数の測定にスパイロメータを使用した.
     対象者はフェイスマスクを装着し,マット上に安楽な姿勢をとり,測定肢位の順番はランダムに決定した.プローブは右中腋窩線上に置き,モニター上にて横隔膜の境界が表出できるようプローブの位置や超音波診断装置のゲインを微調整した.その後,対象者が安静呼吸であることを確認し,超音波画像をビデオカメラに録画した.各測定は同一検者が行った.録画した超音波画像をパーソナルコンピュータに取り込み,動画ソフト上にて安静呼気終末,安静吸気終末における静止画像を抽出,解析し,横隔膜の頭尾方向の移動距離を1mm単位で測定した.3呼吸分の平均値を代表値とした.
     各姿勢別に横隔膜の移動距離と一回換気量(TV),呼吸数(RR)を比較するために,Tukey法による多重比較を行った.有意水準は5%とし,それ未満を有意とした.
    【結果】
     横隔膜の移動距離は背臥位,腹臥位に比べ,左側臥位では有意に小さかったが(p<0.05),背臥位と腹臥位ではほぼ同等であった.横隔膜の移動距離が最も大きかった姿勢を対象者別にみると,背臥位,腹臥位でそれぞれ6名であった.このときTV,RRに有意差はなかった.
    【考察】
     左側臥位では横隔膜の移動距離が有意に小さくなった.側臥位での横隔膜運動は重力の影響により下側が大きくなる.そのため上側では静水圧が減少し,右横隔膜の移動距離が減少していたと考えられる.背臥位と腹臥位での横隔膜の移動距離はほぼ同等であり,MRIを用いて比較した先行研究と同じ結果となった.しかし,背臥位と腹臥位における横隔膜運動の変化は対象者によって異なり,個々の呼吸パターンに影響されていることが考えられる.
     今回の研究により,健常男性における背臥位,腹臥位時の横隔膜運動の変化は対象者によって異なることから呼吸パターンの変化は個別に捉える必要があると思われた.
  • 江里口 恵介, 沖 侑大郎, 金子 秀雄
    セッションID: 165
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     呼吸介助は、換気を改善する手技として知られている。この呼吸介助の臨床的効果は、換気量を増加、胸郭の可動性と柔軟性の改善、リラクセーション効果などがあげられる。
     現在、呼吸介助中の効果についての報告はあるが、呼吸介助後も含めその効果を検証した報告は少ない。今回、健常者に対し上部胸郭への呼吸介助を行い、呼吸介助中およびその前後の呼吸機能がどの程度変化するかを検討したので報告する。
    【対象および方法】
     対象は健常な男性10名とした(平均年齢21.5±0.7歳)。なお、本研究は、全ての対象者に対して説明し、同意を得て実施した。
     測定は、呼吸介助中およびその前後の一回換気量(TV)、分時換気量(VE)、呼吸数(RR)と呼吸介助前後の肺気量(肺活量:VC、最大吸気量:IC、予備呼気量:ERV)を測定するために、スパイロメータ(HI-801、チェスト)を使用した。
     呼吸介助は上部胸郭に対して行い、圧迫時に痛みや不快感がないことを確認した。また、対象者に対して呼吸介助時に意識的な呼吸を行わないように指導した。
     対象者は肺気量を測定した後、ベッド上安静臥位を3分間行った後にVE、TV、RRを測定した。測定後、背臥位で3分間呼吸介助を行った。呼吸介助を開始して1分後と呼吸介助終了1分後にVE、TV、RRを測定した。その時、意識的な呼吸を確認した時は再度測定を行った。最後に、再び肺気量を測定した。
     統計学的分析には、呼吸介助中およびその前後を比較するためにTukey法による多重分析を行った。有意水準は5%とし、それ未満を有意とした。
    【結果】
     呼吸介助前での比較では、介助中の一回換気量は介助前と比べ約1.5倍近く増加し有意な差がみられた。たが、介助後では有意な差は認められなかった。分時換気量では介助前と比べ介助中では54.0%増加し、介助後では23.5%減少し、ともに有意差を認めた。呼吸数は呼吸介助前と比べ介助中は4.8回の減少、介助後では2.5回の減少を認めともに有意差が認められた。また、肺気量は呼吸介助前、呼吸介助後は有意な変化が見られなかった。
    【考察】
     上部胸郭への呼吸介助によりTV、VEが増大し、呼吸介助後のRR、VEを減少させることがわかった。これは呼吸介助中のVE増大によりPaCO2が減少したことに加え、胸郭弾性力の利用した吸気作用によりリラクセーション効果が生じ、換気が抑制されたことが考えられる。
     また、今回、呼吸介助により胸郭柔軟性が改善されることで、肺気量位に及ぼす影響についても検討を加えたが、有意な変化は生じなかった。今回の結果における呼吸介助は上部胸郭に対してしか行わなかったので、今後は下部胸郭の呼吸介助を含めて検討していきたい。
  •            ~早期に改善した2症例を経験して~
    田村 幸嗣, 小川 泰敬, 小笠原 威, 橋本 まどか, 財津 由忠, 今村 貴志, 吉田 裕一郎, 猪崎 茜, 田中 卓也, 三秋 拓郎, ...
    セッションID: 166
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     術後無気肺と急性薬物中毒後の2症例の閉塞性無気肺を担当し、呼吸理学療法(以下呼吸PT)による病態の改善を経験する機会を得たのでここに報告する。今回の報告は、当院の倫理委員会の承認を受けている。
    【症例1】
     患者;30代、男性。急性胆嚢炎の診断にて腹腔鏡下胆嚢摘出術の緊急手術を施行。手術翌日午前10時の胸部単純写真(以下CXP)にて左側無気肺を認めた。この時に呼吸PTの依頼があり夕方のCXPで改善がない時は気管支鏡検査(以下BF)をすることとなった。開始時の覚醒状態は良好で、咳嗽は創部痛による制限を認めるものの咳嗽力は自己喀痰可能な程度だった。<経過>1)酸素飽和度の変化(室内気);呼吸PT開始時91%。施行直後は5%上昇するもすぐに低下が生じたが、漸増的に95%を維持可能となる。2)CXP透過性の変化;呼吸PT開始前の午前10時のCXPでは左側無気肺であったが、同日午後4時には透過性の改善を認める。3)聴診の変化;初回の聴診で左側全領域での聴取不可であったが2時間後より左前胸部にラ音が出現する。4)痰の性状;呼吸PT開始時は黄色痰粘性高い。2日目午後は淡黄色となった。
    【症例2】
     患者;40代、女性。急性薬物中毒。入院後、人工呼吸器管理となる。覚醒状態良好となり気管支鏡で喀痰吸引後抜管を行ったが、翌日朝のCXPで左無気肺が見られ、2時間後に呼吸PT開始となる。開始時の覚醒状態は良好だった。<経過>1)酸素飽和度の変化;呼吸PT開始時98%(鼻カヌラ1L/分)で施行中の著明な変化なし。夕方より室内気となる。2)痰の性状;呼吸PT時の喀痰は40分間の間で15回。黄色痰で粘性高い。3)聴診の変化;開始時は左肺の呼吸音は聴取不可だったが呼吸PT施行後はわずかな呼吸音が聴取可能となった。4)BF;呼吸PT直後のBFでは左主気管支、左上葉・下葉支に白色粘稠痰の貯留を認めたがいずれも喀痰による閉塞は無かった。しかし「この検査は呼吸PT時と比較すると5倍辛かった」と訴えられる。5)CXP;午前7時のCXPでは透過性を失っていたが正午のCXPでは透過性の改善を認めた。
    【治療内容】
     1)排痰体位を聴診にて決定した。2)吸入療法;超音波ネブライザーを使用し呼吸PT中に施行。3)呼吸PTの実際;体位排痰は吸入と同時に開始。調節呼吸~胸郭拡張(深呼吸)~Huffing~調節呼吸とアクティブサイクル呼吸法(以下ACBT)を実施した。また呼吸PT中は強制呼出手技(FET)も合わせて施行した。4)自己排痰の指導;体位やACBTを用いた自己排痰方法を指導した。5)施行頻度;開始初日は可能な限り頻回とした。
    【考察・まとめ】
     急性期の無気肺の治療としてBFが施行されるが覚醒している人にとっては苦痛を伴う処置である。今回の症例は呼吸PT後無気肺の病態の改善を認めた。今回の2症例から自己排痰が可能な急性期の閉塞性無気肺に対する呼吸PTは苦痛を伴わない有効な治療手段であることが経験できた。
  • 有川 あゆみ, 武藤 真由, 真鍋 靖博
    セッションID: 167
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     近年、維持透析患者に対し「腎臓リハヒ゛リテーション」が提唱され、積極的に運動療法を取り入れる医療機関は増加傾向にあるが、確立した「腎臓リハ」の指針はまだない。
    今回、平成19年7月より透析前・透析中の運動療法を開始し、現在も継続できている症例について報告する。
    【症例紹介】
     70代男性、糖尿病性腎症による慢性腎不全にて平成18年より維持透析導入。ADLはすべて自立。
    【実施内容】
     透析前に20分のストレッチと機器を用いた筋力トレーニンク゛、透析開始1時間後から20分の下肢エルコ゛メーターを実施した。運動強度についてはAT1分前の脈拍、またはホ゛ルク゛指数12~13以下とし、透析中は心電図モニター監視下にリスク管理を行った。頻度は外来透析日に週3回実施した。
    【評価】
     評価項目は、柔軟性の指標としてChair sit and reach test、筋力の指標として膝伸展筋力(HUR社製レック゛エクステンション・カール)、握力、歩行能力を10m歩行スヒ゜ート゛テスト、ハ゛ランスを片脚立位、運動耐容能を心肺運動負荷試験(以下CPX)(ミナト医科学社製エアロモニタAE-310S)で評価した。またQOLの評価はSF-36を用いた。運動療法導入時からCPXは半年、その他の評価項目は3ヶ月毎に再評価した。
    【結果】
     各評価項目について初期・最終評価の結果を順に示す。
    柔軟性:-18cm 1cm、膝伸展筋力:115Nm 125Nm、握力:34Kg 36Kg、10m歩行:5.39秒 5.44秒、片脚立位:30秒 30秒、CPX(AT時運動強度):3.2METs 2.7METs。SF‐36《身体機能:65 70 日常役割機能 (身体):38 63 体の痛み:100 100 全体的健康感:32 77 活力:44 56 社会生活機能:25 25 日常役割機能(精神):100 100 心の健康:55 75》
    【考察】
     近年、維持透析患者に対し「腎臓リハヒ゛リテーション」が提唱され、適度な運動療法を実施することで筋力の増大、運動耐容能やADL・QOLが向上することが報告されている。
    維持透析患者では腎性貧血、筋蛋白の異化亢進、低栄養など、筋力トレーニンク゛に関しては不利な面が多いといわれているものの、適切な負荷による長期間のトレーニンク゛の継続、および動機付けにより、本症例において筋力の増大が図れたものと考える。
     運動耐容能に関しては、明らかな効果は得られなかった。これは訓練に使用した機器の限界で、重錘ハ゛ント゛で補うも十分な負荷をかけることができなかったためと考える。
     現在、エルコ゛メーターについては負荷調整可能な機器の導入を検討中であり、今後はCPXによる運動処方・適切な負荷による効果的な運動療法をすすめていきたい。
  • 東 友美, 片岡 拓巳, 安藤 絵美, 福島 喜代康
    セッションID: 168
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     突発性間質性肺炎(以下、IIP)とは肺の間質を病変の主座とする原因不明、進行性の炎症性疾患群の総称である。治療には副腎皮質ステロイド薬が使用されるが、時に副作用が問題となる。中でも理学療法(以下、PT)時に注意する症状は運動誘発性低酸素血症(以下、EIH)、脈拍上昇、呼吸困難感等である。今回肺癌術後の療養中にIIP急性増悪となり、ステロイド治療中に下肢近位の筋力低下が著明なステロイドミオパチー(以下、SM)とEIHを認め起居動作・歩行困難となった症例を担当した。リスク管理を行いながら段階的運動負荷訓練を実施しADL自立自宅退院となったので、PT経過と投薬経過を比較検討しここに報告する。
    【症例および現病歴】
     63歳、男性。入院前の職業、学校用務員。H18年2月にIIP診断されるが特に治療はなし。H20年6月に肺癌を診断され7月29日左下葉切除。8月9日に当院転院。転院当初は酸素療法実施下でADL自立。9月中旬IIP急性増悪した。
    【理学療法および経過】
     10月20日からPTを開始した。開始当初、KL-6は1100U/mL、ステロイドは点滴にて250mg/日投与、酸素療法安静時1.75L動作時4L下で起き上がり時SpO283%、脈拍130回/分、下肢筋力(モルテン社製デジタル下肢筋力計使用)右1.1kg左1.6kg、起居動作に介助を要していた。訓練中はSpO290%維持、脈拍は予測最高心拍数の65%を超えない範囲内でパルスオキシメーターにてモニタリングしPTをベッドサイドより開始した。段階的運動負荷増量にはMETsを参考におこなった。10月29日ステロイド錠剤30mg/日、1METsの平行棒内歩行訓練施行。11月25日ステロイド錠剤20mg/日、2METsの前方支持O2キャリー歩行訓練施行。12月2日ステロイド錠剤15mg/日、3METsのエルゴメーター施行。2月19日ステロイド錠剤10mg/日、5METsの階段昇降訓練施行。最終評価時、ステロイド錠剤10mg/日、KL-6は381U/mL、下肢筋力右30.5kg左29kg、酸素療法動作時3L下SpO290%Keepで6MDは300m可能、階段・入浴自立となった。
    【考察】
     SMはステロイド投与量が減量するごとに改善するとされている。しかし、IIPは進行性の炎症性疾患でありEIHなどのリスクがある重症例の場合、高負荷の運動療法は危険を有する為2.5~3METs程度の訓練が有効とされている。今回、初期の段階に1METSの低強度訓練から開始しステロイド投与量とKL-6などの検査項目を確認した。その結果、肺機能改善に伴いリスク管理と運動負荷増量した事が状態を悪化させる事無く下肢筋力UPと5METsの階段昇降が可能になったと考える。
  • 岩田 なつみ, 田中 とも, 新納 真子, 工藤 優美, 甲原 国雄, 山田 康二, 葦原 義典
    セッションID: 169
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院では病棟担当制を導入し、H19年度より呼吸器病棟に専従の作業療法士(以下OT)を置して呼吸器疾患患者に積極的な介入をする機会が増えてきた。今回は、当院での呼吸器リハビリテーション(以下呼吸リハ)におけるOTの介入について報告する。
    【実績】
     H19年5月~H21年3月の間に呼吸器疾患の診断をされ、OTが介入したのは延べ275名(男性162名、女性113名)、平均年齢は81.2歳であった。診断名の内訳は、誤嚥性肺炎55名、慢性閉塞性肺疾患50名、肺炎99名、呼吸不全22名、気管支炎16名、間質性肺炎9名、その他の疾患24名。平均在院日数は34.1日、平均リハ実施日数は29.5日であった。
    【OTの介入】
     当院では理学療法士の呼吸リハと並行して、OTも呼吸管理を含めた病棟ADLを中心に訓練を行っている。介入時の患者の状態は、活動性の低い人工呼吸器管理下の方から、活動性が高い病棟ADL見守りレベルの方まで様々で、患者の活動度に合わせた介入が必要となる。
     医師よりベッドサイドからの介入を指示された方は、早期離床を目指し、各関節及び胸郭の可動性維持などの機能訓練と併せて、顔拭きや整容動作などのベッド上で可能な日常生活動作(以下ADL)に介入していく。離床の許可が出たら、まず呼吸苦が緩和できる動作の指導と環境設定を行い、SpO2の値をみながら病棟内ADLを中心に介入していく。特に離床許可時期の活動へ不安を感じている方にとっては、呼吸苦を感じたときの対処法指導や呼吸管理の習得状況の確認をし、実践的に訓練を展開して不安の軽減を図る。病棟内ADLが改善されてきたら、退院後の生活場面を想定して、環境設定の再検討や介助法の検討及び介助者への指導など、より実用的なADLへの介入をしていく。介入当初より活動性の高い患者については、早期のADL自立を目指して、病棟内ADL訓練から介入し、実践的に呼吸の自己管理やパニックコントロールなどを指導していく。
    【まとめ】
     呼吸リハに関しては、診療報酬上からも理学療法分野と考えられてきた領域である。当院では、H19年度から呼吸器病棟に専従のOTを1名配置して積極的に呼吸器疾患患者へ介入しており、H20年度の診療報酬の改定をきっかけに呼吸リハにおけるOT介入の体制化を計っている。OT介入の特徴として、ベッドサイドからの介入が80.2%と高く、離床のタイミングを医師に確認しながら早期離床を促すことで病棟ADLの拡大につなげていくことが挙げられる。しかし、呼吸器疾患への経験が浅いため、今後はさらに呼吸リハにおける技術や知識を習得し、呼吸器疾患患者へのOT介入の必要性を検討していきたい。
  • 早川 武志, 石田 治久, 百田 昌史, 高木 佳子, 生駒 英長, 水田 聡美, 橋口 鮎美, 田尻 香織, 本江 篤規, 毛利 誠
    セッションID: 170
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     パーキンソン病(以下PD)では長期の服薬に伴い日内変動と同様に日差変動も出現すると言われている。この日差変動は服薬が管理されているにも関わらず出現することも多く、日常生活やリハビリテーションの阻害因子となっている。しかし、日差変動に関する報告は未だ少ない。そこで今回、日差変動に影響を与えると思われる諸因子をいくつか取り上げその関係を調査したのでここに報告する。
    【対象】
     現在当院利用のPD患者31名中「日によって調子に差がある」と答えた23名(男性7名、女性16名、平均年齢63±13歳、Hoehn&yahr stageI:3名、II:5名、III:5名、IV:6名、V:4名)を対象として調査を行った。
    【方法】
     1日の症状変動を平均してvisual analogue scale(以下VAS)を用いて、10:最高に良い、5:普通、0:最も悪いとし5以下(普通より悪い)と答えた日に次の諸因子 1:睡眠障害(寝つけない、眠れない、頻繁に目が覚める)、2:便秘、3:精神的要素(普段は感じない不安、心配事、イライラなど)、4:気候・気温(寒暖や急激な変化)、5:疲労のうち当てはまっているものを選択してもらった。(複数回答可)。
    【結果】
     今回の調査においては、1:睡眠障害 11件、2:便秘 12件、3:精神的要素 14件、4:気候・気温 10件、5:疲労 6件であった。最も多かったのが精神的要素であった。また、Stage別に見るとIでは気候気温、IIでは精神的要素、IIIでは便秘、IVでは睡眠障害・便秘・精神的要素、Vでは睡眠障害が最も多かった。
    【考察】
     今回の結果をみてみると、全体では精神的要素が当てはまると答えた人が最も多く全体の約6割であった。PDでは精神的な緊張や興奮などが振戦を増強させるなど心理的な要素が身体に影響を及ぼす事はよく知られている。今回の結果も同様に精神的要素が身体に影響を与え、症状変動にも大きく影響を与えているのではないかと考えられた。また、stage別ではstageが進行するにつれて睡眠障害や便秘の割合が増えてくる。これは、睡眠障害は睡眠中にドーパミンが産生される、便秘は薬の腸からの吸収に影響する、など薬効や血中ドーパミン濃度と密接に関係しているためだと考えられる。PDではStageが進行するにつれて薬物に依存する割合が高くなってくるため、これらの因子が大きく影響を与えるものと推測される。従って、上記の症状を把握しアプローチしていく必要があると思われる。具体的には、早期からの精神的なフォロー、生活リズムの確立、便秘予防体操などを行うことにより、症状の変動を少しでも抑える事が出来るのではないかと考える。
  • ~笑顔でお化粧~
    橋口 鮎美, 生駒 英長, 石田 治久, 早川 武志, 百田 昌史, 田尻 香織, 毛利 誠, 本江 篤規, 高木 桂子, 水田 聡美
    セッションID: 171
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     パーキンソン病(PD)では緩徐進行性の病態を呈し、罹病期間が長期にわたることで薬物療法の効果だけでは補足出来ない部分も多い。今回、Hoehn&yahr stage5の症例に好きな化粧をすることで日内変動による症状を緩和し、ADL上の変化が現れたのでここに報告する。
    【症例紹介】
     70歳代女性、13年前に振戦・固縮が出現し当院受診にてPDと診断。その頃より外来リハビリ開始となる。その後自宅での転倒が多く、在宅での介護が困難となり5年前に当院に入院となる。病初期はお洒落で整容には特に気を遣われる方であった。
    【作業療法評価】
     Hoehn&yahr stage5、UPDRS 88点、MMSE 15点、Barthel index 25点(ADL全般に中等度~全介助)日内変動グラフ:毎食前にwearing-off期が出現。VASスケール:朝食前は4/10、昼食前は測定不可、夕食前は4/10。特に昼食前の30分は振戦、無動、幻覚症状が強く食事中も介助を要する時がある。
    【介入方法】
     昼食前はwearing-off期が強く、食事中にも振戦・無動・すくみ症状が出現する。そのため、昼食前に症例が好きな化粧を手渡し鏡を設置する。また、その後の食事動作の時間とVASスケールを計測する。
    【結果】
     食事動作時間は、アプローチ実施前が42分、実施後は26分。VASスケールは、アプローチ実施前は測定不可、実施後は7/10。客観的指標として、化粧を行うことで自発言語が増え、上肢操作におけるリーチ速度が徐々に向上した。鏡を見ながら行うことで顔面の表情が緩み笑顔が多く見られた。また、その後の食事では、すくみもなく自力摂取で行えた。
    【考察】
     本症例はPDを発症してから10年以上経過しており、出来るADLも徐々に低下し自発的な随意運動も少なくなってきている。それに伴い、自発言語量の低下や精神の無動により症例が何を望み何をしたいのか聴取することが困難となってきた。しかしPDでは、昔馴染みのある作業ではドーパミン不足の影響を受けにくく、比較的スムーズに動作が行えるという特徴がある。今回はその特徴を活かし症例の馴染みのある作業の化粧を行う事により、昼食前のwearing-off期が緩和出来たのではないかと考える。柴によればPDでは外的視覚刺激による運動前野系の機能は保たれているため、外発性随意運動は容易に遂行出来るとしている。化粧をするにあたり鏡を設置したが、この事が外的視覚刺激による相乗効果としてもたらしたと考える。
     今回の症例を通して、普段は見ることの出来ない表情を観察出来、残存能力を引き出しいく作業の重要性を感じることが出来た。PDの日内変動によるoff期では、身体のみならず精神的な苦痛を伴う。その為PDのリハビリテーションでは、個々の日内変動を把握し、適切な刺激及び環境設定を整えることが重要であると考える。
  • ~固有感覚アプローチを行って~
    高山 佳子
    セッションID: 172
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     感覚情報に異常が生じると姿勢制御に混乱が生じ、姿勢保持・運動遂行に環境適応する人の平衡機構に影響を与えると言われている。今回、脳出血後3週間経過、重度感覚鈍麻を呈した全盲の症例に対し、固有感覚アプローチを行った結果、実用歩行獲得に至ったので考察を加えここに報告する。
    【症例紹介】
    60代女性、主婦 診断名:左基底核出血(H20.2.14発症) 病前ADL:全て自立。買い物以外の家事全般を行い、外出時は娘が手を引き引率する。主訴:一人でトイレに行きたい。ふらつかず歩きたい。
    【初期評価】
    Brunnstrom stage:右上下肢V、感覚:足部表在覚は軽度(4/5)、痛覚・深部覚は重度鈍麻(1/5) modefait Ashworth sale(以下MAS):膝伸展1、足背屈1+ 膝蓋腱反射:++ Berg Balance Scale(以下BBS)24点 FIM 93点。静止立位は右膝ロッキングし、全身の筋緊張が高い。歩行は右後方より軽介助。立脚初期は足部内反し床に足底を打ちつける。立脚中期は膝過伸展し、股関節伸展不十分。遊脚期に体幹左側屈し下肢を振り出すため非麻痺側過支持となる。体幹の回旋が減少し側方動揺が強い。10m歩行20秒 6MD280m。
    【方法】
    1)歩行とADLを中心としたアプローチを2週間実施。その後、2)固有感覚アプローチとして、a.バランスボールやストレッチポールを用いての足関節運動。立位で膝屈曲しての股関節運動。b.両膝角度30・60°で調節しOKC肢位と、スクワット様にCKC肢位で膝屈伸運動する内容を重点的に2週間実施。(1)(2)の各効果を感覚、筋緊張、10m歩行、6MD、BBS、歩容面で比較検討した。
    【結果】
    感覚:足部表在覚は軽度(4/5)、痛覚・深部覚は中等度鈍麻(3/5) MAS:膝伸展0、足背屈1 膝蓋腱反射:+ BBS:47点 FIM:112点と数値的に改善傾向を示した。歩容は立脚期の踵接地可能となり、下腿前傾することで前方への推進が向上、体幹動揺は減少した。10m歩行12秒 6MD350m。自宅内伝い歩き自立、屋外は左手引きの最小介助となり、H20年5月自宅復帰。
    【考察】
     本症例の歩行は麻痺側足部の不十分な感覚入力により下肢の分離運動が見られず、側方への体幹動揺からバランス低下を招き、屋内歩行自立が困難であった。地神らによると『メカノレセプター情報を遮断した研究は歩行時の筋活動や身体傾斜が減少しバランス低下する一方、足部は視覚代償できない姿勢調節情報がある』と報告されており、全盲である本症例に感覚入力訓練は有用と考え、固有感覚アプローチを実施した。結果、体幹と股関節の可動性が改善し、体幹動揺が減少したことで歩容とバランスの改善と歩行スピードの向上が得られ、実用歩行の獲得に至ったと考え られる。
  • ~慢性的な左半側空間無視を呈した症例の座位姿勢の改善を目指して~
    井上 亮子, 山田 麻和, 西本 加奈, 岩永 勇人, 井元 舞, 大木田 治夫, 瀬戸 牧子, 辻畑 光宏
    セッションID: 173
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     2年前の脳梗塞により左半側空間無視(以下,USN)が残存し,再発により両側片麻痺となった症例を経験した.症例は常に頭部右偏倚であり,頚部体幹の筋緊張が高く座位が不安定であったことから,USNと座位姿勢の改善を目的に神経学的音楽療法(以下,NMT)を取り入れることとした.
    【対象】
     80歳代,男性,右利き,元小学校教諭.診断名:脳出血.障害名:右不全片麻痺,左片麻痺,USN.画像所見:左前頭回皮質下出血,右内頚動脈閉塞に伴う広範囲の梗塞.既往歴:脳梗塞により当院に6ヶ月入院.介護度3.
    【評価】
     意識清明.Br-s:右V-V-V,左II-II-III.感覚(左)表在:中等度鈍麻,深部:重度鈍麻.ROM:頚部体幹の左回旋・伸展,左上下肢に制限あり.Ashworthスケール:左上下肢 3/4,右上下肢0/4.端座位は体幹屈曲・右側彎,骨盤後傾位,重心右優位であり右肘伸展位にて支持,保持は約1分にて左後方へ崩れる.視線は常に右下肢周辺で頭部の左への動きは見られず.車椅子10M駆動70秒.BIT行動性無視検査(以下,BIT)通常56/146点,行動11/81点.FIM運動面33/91.食事時の左側食べ残し,左側へのずれ,駆動困難さあり.MMSE26点.言語面問題なし.
    【方法】
     発症後2ヶ月目より通常の理学療法・作業療法に加え,右手で打楽器やキーボード演奏や歌唱を行うNMTを開始した.A期(NMTなし)1週間,B期(NMTあり)2週間としたABAB方式を用い,1回約30分,週6回を2クール,合計24回実施した.評価として,座位姿勢分析,左への臀部荷重率,10M駆動,BITを週1回,加えて毎回のNMT前後に星状末梢,二等分検査を実施した.尚,本研究は当院倫理委員会の承認後,症例に説明し同意を得た.
    【結果】
     ROM:頚部体幹の右回旋・伸展への可動性が拡大.Ashworthスケール:左上下肢2/4.端座位は骨盤前傾可能,頭部右偏倚はあるも正中位がとれ約30分保持可能.左への臀部荷重率は,41.7から46.0%へ改善した.車椅子10M駆動53秒.BIT通常78/146点,行動37/81点と得点改善.毎回のNMT後の星状末梢,二等分検査では,ばらつきはあるものの改善傾向を示した.FIM運動面39/91.駆動時の左方へのずれやぶつかりが減少し,左側の探索活動が高まった.
    【考察】
     今回,慢性的なUSNを呈した症例に対しNMTを行った.症例の左側認識は机上検査・日常生活でも改善が見られ,慢性的USNへの効果が認められた.また,NMTの中で多重感覚刺激に加え,頸部体幹といった中枢部の随意的な動きを引き出したことにより,頸部体幹・左上下肢の筋緊張が軽減し関節可動域が拡大され,座位姿勢の改善につながったと考える.さらに,発話や笑顔の増大といった変化も見られNMTの有用性を確認できた.
  • 森 沙弥香, 元村 隆弘, 岩永 梨沙
    セッションID: 174
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     神経筋難病では構音障害や上肢の機能障害により、会話や書字でのコミュニケーションが困難となるため、患者の安全を確保するためのコミュニケーション機器の導入や操作スイッチの選定が重要となる.今回、シャイドレーガー症候群(以下、SDS )により、重度の自律神経症状、錐体外路症状、小脳症状を呈する症例を担当し、STと共同でナースコール(以下、NC)の改良とコミュニケーション・エイドの導入について検討したので報告する.尚、本研究は症例や家族の承認を受け実施した.
    【症例】
     60歳代男性.H12年頃から転倒・発汗障害出現し、H13年SDSと診断.H15年頃から車椅子での生活となり発語も聞き取りにくくなる.在宅療養中であったが、H18年リハビリテーション目的で当院入院.H19年気道内分泌物貯留が増加したため気管切開実施.気管切開後も経口摂取を試みるが気道内分泌物が多く、同年胃瘻造設する.
    【作業療法評価】
     ROM:両手関節・左手指は制限なし.MMT:上肢近位は1~2、上肢遠位は3(R>L).下肢1.体幹1.感覚:詳細な評価は困難だが触覚や痛覚は判別可能.失調症状:振戦、測定障害.ICARS:85点.パーキンソン症状:四肢の歯車様筋固縮.UPDRS運動機能項目:45/56点.自律神経症状:起立性低血圧、便秘、排尿障害.言語機能:発語困難なため、Yes/Noを瞬きで示す.理解は良好.基本動作、ADL動作は全介助.NCは左手指に把持し、右母指で操作可能.FIM:36点(運動項目13点、認知項目23点).
    【経過】
    1.伝の心(株式会社日立ケーイーシステム製)
    H19年4月伝の心を導入.スペックスイッチ(パシフィックサプライ株式会社製)を左示指と左母指の側方つまみ動作で練習開始.H20年2月頃より気道内分泌物貯留が増加し、伝の心練習時に疲労がみられ、入力文字数が減少、誤字が増加.
    2.NC
    H19年10月より北九州障害福祉センターのSTを交え、スペックスイッチ式NCへの変更を検討開始.H20年2月NC使用時に視覚的なフィードバックができるよう環境整備実施.H20年3月スペックスイッチ式NC導入を検討し、同年4月より使用開始.本人の意思による活用がみられ、夜間の睡眠時間が増加.H20年6月不随意運動による誤差動が増えたため、ストリングスイッチ式NCへ変更し使用開始.
    【考察】
     患者が安心して療養生活を送るためにコミュニケーション手段を確保していくことは最も重要なことである.症状の進行によりできなくなることが増えていく中で、何らかの意思伝達方法を見つけ、できる可能性を引き出していくことが作業療法士の役割の一つであると考える.今回、病状の進行に合わせたスイッチの選定や症例や家族の要望に近づけるように適宜カンファレンスを実施することで、本人の意志によるNCの活用を維持できたことが、夜間の睡眠時間の確保、症例や家族が安心して過ごせる療養環境の提供に繋がったと考える.
  • 川路 由里子, 下仮屋 奈々, 永田 千夏, 榎畑 純二, 福田 秀文, 野元 佳子, 久松 憲明
    セッションID: 175
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     脳卒中患者への麻痺側上肢に対しての治療法は少なく、エビデンスが低いのが現状である。近年、川平の提唱する促通反復療法による治療効果が報告され注目されつつある。今回当院入院中の患者に対し促通反復療法を実施し、改善が認められた2症例を経験したので報告する。
    【症例紹介】
    症例1:30歳代男性、右利き。発症後7週目の内頚動脈閉塞による脳梗塞、左片麻痺。入院時上田式12段階片麻痺テスト(以下Grade)は上肢Grade3、手指Grade1、感覚は表在、深部共に中等度鈍麻。方向性の注意障害がみられた。簡易上肢機能検査(simple test for evaluating hand function;以下STEF)0点、機能的自立度評価法(functional independence measure;以下FIM)83点。
    症例2:70歳代女性、右利き。発症後8週目の心原性脳塞栓症、左片麻痺。入院時上肢Grade2、手指Grade0、感覚は表在、深部共に軽度鈍麻。注意の持続性低下、脱抑制がみられた。STEF0点、FIM58点。
    【方法】
    介入方法として促通反復療法を週5日、1日40分実施。
    日常生活動作(activities of daily living;以下ADL)訓練と物品操作を併用した。
    症例1介入運動パターン:肩関節屈曲・屈曲外転、肘関節屈曲伸展、前腕回内回外、手関節背屈、手指屈曲伸展。
    症例2介入運動パターン:肩関節屈曲・屈曲外転・屈曲内転、肘関節屈曲伸展、前腕回内回外、手関節背屈、手指屈曲伸展。
    【結果】
    症例1:退院時上肢Grade8、手指Grade8、STEF3点、FIM112点。左上肢でのコップ把持可能となった。
    症例2:退院時上肢Grade7、手指Grade7、STEF0点、FIM90点。左上肢での衣服のつまみ動作可能となった。
    【考察】
     回復期リハビリテーション病棟においては、ADLの向上が最優先されており、特に入院時に重度麻痺を呈する患者の麻痺側上肢への積極的な治療が実施できないことがあった。今回の2症例においては、麻痺側上肢の機能回復への希望が強くADL訓練と併用して促通反復訓練を行った。入院時点で発症より6週以上経過していたが、麻痺の改善が認められ、退院時にはADLで麻痺側上肢の使用も可能になった。今回の経験を通し、患者の麻痺側上肢機能に対する回復の可能性を十分に引き出しているか考えさせられた。
    【まとめ】
     促通反復療法を用い、麻痺側上肢機能の改善が得られ、日常生活でも参加が可能となった症例を経験した。今後、セラピストの積極的な麻痺側上肢への介入の検討も必要ではないかと考える。
  • 村山  健一郎, 古田 大, 緒方  陽一郎, 尾田 憲彦, 沖園 秀次, 呉 聖能, 仲川 純代, 横山 信彦, 井手 泰之, 力丸 伸樹
    セッションID: 176
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     意欲低下はリハビリテーションの粗害因子である。最近我々は、意欲低下の著しい症例にプールリハを導入してADL改善をみた症例を経験した。意欲障害に対するプールリハの有効性について若干の考察を交えて報告する。
    【症例及び経過】
     66歳主婦。平成13年より統合失調症と診断され、食事、トイレ動作以外は終日臥床していた。平成20年9月4日トイレ動作時に転倒して頭部打撲。9月8日意識障害出現し救急病院に搬入。頭部CTで右急性硬膜下血腫と診断、開頭血腫除去術を受けた。10月15日、リハ目的で当院へ転院したが、経鼻経管栄養、ADL全介助から改善せず。頭部MRIで水頭症を認めて、12月18日紹介元病院で脳室腹腔シャント手術を受け、12月26日、ストレッチャーで当院へ再転院となる。再転院当初、Br.stage(2-2-2)、体幹全体が伸展パターンに支配され姿勢反射異常が認められた。GMTにてSLRは0、上肢2レベルで寝返り・座位保持ともに全介助。FIMは20点であった。精神面でも消極的、依存的でADL訓練に対する意欲が低かった。平成21年1月23日には車椅子座位で食事自己摂取可能となったが、伸展反射の残存のため臥位にて膝の屈曲や体幹の回旋が行えず、立位を介助でとるも膝のロッキングと臀部の後方突出が著しく、訓練効果が進まない状況が続いた。1月27日よりプールリハ開始。陸上での訓練と比較すると、明らかに自力で立位をとろうとする意思がみられた。2月1日には陸上訓練でも平行棒把持、腋窩介助で立位保持可能となる。3月下旬には、軽介助で起立、屋内での歩行器歩行が可能となる。4月14日、プール内での起立動作・立位保持が見守りレベルとなった。4月20日時点のFIM評価は、初期の20点から51点と大幅に改善を示し、日常生活動作の介助量が著しく少なくなった。
    【考察】
     本症例はプールリハを導入してからADLが大幅に改善を見せた。理由としては、水の浮力による荷重量の軽減や粘性抵抗による姿勢の保持により、「自分の足で歩く」という身体イメージの再獲得が容易になり、ひいては陸上での歩けるという自信を獲得したからであると考えられている。また、「溺れたくない」という自己生存欲求を賦活することにより訓練意欲の改善をもたらしたのではないかと考えられた。
    【まとめ】
     プールリハは陸上では困難な立位保持や歩行獲得が容易であり、ひいては陸上での基本動作の介助量軽減を図ることができる。また、患者自身が「歩ける」という自信を持つ、あるいは「溺れたくない」という生存欲求をもつこと。すなわち患者の情動、意欲を揺り動かす効果も、プールリハの重要な効果である。
  • ―アンケート調査とその報告―
    末山 喜代絵, 竜 かおり
    セッションID: 177
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     入院患者様の家屋調査を実施し、退院後の生活をスムーズに行えるよう、家屋改修・福祉用具導入等の環境調整に取り組んでいる。しかし、実際に退院後の生活状況や改修等についての満足度に関して十分に把握できないのが現状であった。そこで今回、環境調整を実施した患者様及びご家族に対しアンケート調査を行ったので報告する。
    【方法・対象】
     研究方法;アンケート調査、結果の集計・分析
    アンケート実施期間;平成21年1月15日~平成21年2月28日
     対象者;平成16年1月~平成20年12月の間に当院入院もしくは通院し、環境調整した方とそのご家族74名。内訳は、年齢77.7±9.89歳、性別;男性30名、女性44名。
    【結果】
     74名中45名から回答が得られた(回収率60.8%)。改修及び福祉用具設置率は、玄関80%、トイレ73.3%、浴室58.3%、廊下53.3%、その他44.8%であった。満足度は、玄関95.6%、トイレ85.7%、浴室82.4%、廊下87.5%、その他83.3%であった。家屋調査での認知度では、知っていた35.7%、聞いたことがある17.8%、知らなかった32.1%であった。
    【考察】
     今回の調査において、玄関とトイレの改修率が高いことが分かる。玄関では日本特有の上がり框等の段差が多く使用しにくいこと、トイレでは在宅の中で使用する頻度が多いことが、ご家族や患者様の改修ニードに繋がったものと思われる。浴室は、使用頻度が少なく、また通所系サービスを利用している方も多い為、改修率が少なかったと考える。満足度では、全体的に高く、患者様の要望・ニードに即した提案と改修が可能であったと思われる。しかし、一部では満足されていないことが分かったものの、具体的な理由までは得られなかった。毎日使用する場所が適切に機能することで、満足度が高くなると考えられる為、使用頻度が高い場所を中心に調査・環境調整の必要があると考える。また、家屋調査の認知度では、半数の方が聞いたことがあり、認知度が高くなってきていることが分かる。その為、より専門的な知識・必要性の判断・分かりやすい説明等を行うことが円滑な自宅退院に繋がると考えられる。
    【おわりに】
     今回のアンケート調査の問題点として、過去5年間をさかのぼりアンケートを実施した結果、改修率が低くなり、全体の意見が聞けなかったことが挙げられる。その為、今後は(1)退院後すぐのアンケート実施、(2)より分かり易いアンケート方法の検討、(3)退院後訪問の実施を検討していきたい。
  • 訪問リハビリスタッフとしての関わり
    芳野 洸子
    セッションID: 178
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     要介護者とその家族の在宅支援の一つに住環境整備が挙げられる.当院の訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の利用者と家族にアンケート調査し家屋改修や生活の現状と訪問リハ職員としての関わりを検討したのでここに報告する.
    【対象者】
     平成21年3月現在訪問リハの利用者で過去に改修を行ったことのある方とその家族
    【結果】
     36名より回答(回収率82%)うち一回改修26名(72%)複数改修10名(28%)平均介護度2.5
    1)改修時期:入院中12名(33%)在宅生活中24名(67%)
    2)初回改修場所:浴室89%,トイレ86%,玄関81%,廊下50%,自室25%
    3)改修に関わった人:家族67%,ケアマネージャ53%,PT・OT42%,本人25%,その他36%
    4)転倒経験数:24名(67%)
    5)転倒場所:自室50%,廊下25%,玄関・浴室各21%,台所・トイレ各17%,屋外8%
    6)再改修場所:自室・浴室各14%,廊下11%,トイレ6% 時期:2年後17%,1年後6%
    7)再改修希望場所:浴室14%,自室・トイレ各6%
    8)理由:移動手段変更・確保17%,機能低下・生活上の必要性各6%,転倒・浴室使用希望・成長各3%
    2)3)5~7)は複数回答
    【考察】
     訪問リハでは実際の生活の場で能力に応じた環境整備が行えるという利点がある.調査の結果,改修時期は生活中,再改修時期は2年後が最も多く生活が継続される中で不便を感じるようになったと考えられる.改修場所の最多は浴室であった.入浴動作は複合的な動作から構成され最も難易度が高く介助者にとってもリスクが高い支援項目であるとされている.トイレは使用頻度が高い事から初回改修率が高く再改修率は低かった.転倒率は67%と高く自室は初回改修率が最も低い反面,転倒率・再改修率が高い結果となっている.原因として敷居は低い段差のため危険箇所としての認識が低いが使用頻度は高い事,動作の個別性が高く予測困難な事が考えられる.また改修に関わった者としてPT・OTが42%という結果になっている.中には転倒を繰り返すが調整を行えていない者,身体機能低下や成長に伴い再調整を希望しているが実際改修に至っていない者も多く訪問リハ職員として積極的に関わっていく必要がある.予後を見越した提案や広い行動範囲を考慮した多岐に渡る提案が必要であり,使用状況を定期的に調査し身体機能の変化に合わせたより安全な環境作りに関わる事が望ましい.
  • ~一人職場での業務効率化を目指して~
    土井 秀幸
    セッションID: 179
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)では、主治医をはじめ他職種との連携は極めて重要である。その中でも、介護保険においてケアプランを作成するケアマネージャー(以下、CM)との連携は特に密にしていかなければならない。
     当訪問リハビリテーション事業所(以下、当事業所)では、他職種との様々な連携を図る際に固定電話やFAX等を利用している。しかし、理学療法士(以下、PT)1名で活動しており訪問リハ業務以外のデスクワークも多忙である。その為、他職種との情報交換等に十分な時間が持てない状況にあり、今後の連携の在り方についても懸念を抱いていた。
     そこで今回、当事業所においてCMとの新たな連携手段を試みた結果、訪問リハ業務等にどのような影響や変化が生じたのかを報告する。
    【方法と対象】
     当事業所と関わる各居宅介護支援事業所(以下、居宅事業所)のCM12名を対象に電子メール(以下、Eメール)を利用していく事の趣旨を記した案内書を配布した。そして、賛同するCMには当事業所のEメールアドレス(以下、アドレス)へ返信を依頼した。返信が無いCMには、面談し回答を得た。
    【結果と考察】
     返信があったCMは6名だった。返信が無かった6名の内3名がアドレスを持たず、3名が検討中と回答した。実際にEメールで情報交換を試みた結果、1)報告、連絡、相談等の機会が増えた。2)提供票や実施計画書等を添付送信する事で配達の手間が省け、郵送にかかる事務諸経費が軽減した。3)情報交換の内容文が連携を図った明確な記録となる為記録業務が簡素化した。4)事務的業務の効率化で、主治医等との面談の時間が長く持てるようになった。5)デスクワークに余裕ができ、身体的精神的疲労が軽減した。
     結果より、Eメールは利便性に優れている点では評価できるが、受信確認無しでは内容を知る事が出来ない為、至急の連絡や報告等は電話やFAXでの伝達手段が適当だと考える。
     今回の試みは一人職場での業務効率化を図る為の前身であり連携の意味の深さを再認識する良い機会にもなった。しかし、各居宅事業所でのEメール利用率は低く全担当CMとの密な連携体制を構築していく為には更なる啓発と工夫が必要と考える。
    【まとめ】
     今回の取り組みを踏まえ、今後も他職種との連携を密に図り、利用者や家族のニーズに即した質の高い訪問リハを提供していきたい。 
  • 廣田 明日香, 岩清水 美如, 井上 愛, 穐本 真奈美, 酒村 勇輝
    セッションID: 180
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     在宅支援サービスの需要が高まり、サービスの質がより問われるようになった。その一部を担う訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)を行ううえで、他職種との連携は必要不可欠である。中でもサービスの調整役である介護支援専門員(以下CM)との連携は特に重要である。CMの訪問リハの認識や連携に対する考えを明らかにし、当院訪問リハの課題を見つけることを目的に、今回CMに対しアンケート調査を実施した。
    【対象と方法】
     北九州市若松区内のCM(35名)を対象とした。アンケートの調査内容は訪問リハの目的、ゴール、連携等とした。回答は、目的は選択式、ゴールと連携は記述式を用いた。
    【結果】
     CM25名(71.4%)から回答を得た。「訪問リハの目的」では、身体機能及び歩行能力の維持・改善(44.0%)、ADLの獲得(17.9%)、在宅生活への適応(14.3%)、少数意見として介助者・自主トレーニング指導(8.3%)、環境整備の助言(3.6%)があった。「訪問リハのゴール」では、『目標に達した時点がゴール』との回答が最も多く得られたが、『利用者・家族がリハに依存、目標達成後も現状維持を望まれる、終了に対する不安が強い』など訪問リハが終了できず利用継続となっているとの意見もあった。「訪問リハとCMの連携」では、『直接会って話す機会が必要だが時間調整が難しい』との回答が最も多く得られた。
    【考察】
     「訪問リハの目的」では、身体機能やADLへのアプローチという印象が強く訪問リハの利用目的が限られている。実際は、環境整備や福祉用具の助言などの生活環境のアプローチ、IADL、介助者指導なども目的とし、在宅生活の再建・継続、質を向上させるための支援を行っている。訪問リハを適切に利用してもらうためには、CMをはじめ他職種に訪問リハへの理解・認識を高める必要があり、事例検討や意見交換などの合同勉強会を開催し訪問リハの啓発活動を行なうべきである。「訪問リハのゴール」では、目標に達した時点がゴールとの考えは当院訪問リハの方向性と一致していた。しかし、訪問リハ終了に対する不安が利用継続の理由となっているケースに対しては、終了後も訪問リハで獲得した能力が維持できることに自信がもてるよう、本人・家族への指導の徹底や他のサービスとの連携が必要である。「訪問リハとCMの連携」では、時間調整については当院でも難渋する問題のひとつであるが、情報交換で重要な連携とは利用者を交えた現場での協議である。時間調整を理由に直接会うことが出来なければ職種視点からの意見が聞けず、利用者の本質的な希望を共通認識できない危険性もあり、また前述した目的やゴール設定に差が生じる。訪問リハでは利用者の生活の再建を目指しており、そのためには他職種との情報交換が必要不可欠である。情報を待つのではなく、専門的意見の発言、担当者会議の開催など積極的な言動をとり、信頼関係を築くことの必要性を感じた。
  • 岩清水 美如, 廣田 明日香, 穐本 真奈美, 井上 愛, 酒村 勇輝
    セッションID: 181
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     社会の高齢化が進み、今後訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)の需要が高まるとされている。当院においても訪問リハの利用希望者数が増加傾向にあり、H19年度は38名、H20年度は52名の新規依頼があった。しかし実施期間の長期化により利用者が固定化し、新規利用者の受け入れが困難となってきた。利用希望者に円滑に訪問リハを開始するために、訪問リハの終了及び実施期間の検討が必要であると考え、今回当院の所在する北九州市若松区における実施期間の現状調査を行ったので、以下に報告する。
    【対象及び方法】
     若松区にある5つの訪問リハ事業所に対し、H19年5月からH21年3月の間に訪問リハを実施した利用者についてアンケート調査を行った。対象となった利用者は157名(男性57名、女性100名、平均年齢77.7±10.6歳)で、A群46名:継続1年未満、B群36名:継続1年以上、C群62名:1年未満で終了、D群13名:1年以上で終了の4群に分け、年齢・介護度・疾患名・実施期間・目的・終了理由・介護者の年齢について比較した。
    【結果】
     実施期間の平均はA群5.3±3.2ヶ月、B群35.3±22.8ヶ月、C群4.3±3.0ヶ月、D群37.5±36.2ヶ月であった。実施目的はA・C・D群において「歩行・ADL向上」が最も多く(A群23.9%、C群51.7%、D群33.3%)、C・D群において、その他の目的は「疼痛軽減」「廃用・拘縮予防」「自主トレ指導」「介護指導」「環境整備」であった。B群においては「能力維持」51.3%、「歩行・ADL向上」41.0%、「疼痛軽減」7.7%であった。終了理由はC群において「目的達成」46.8%、「入院」12.9%、「死亡」11.3%、「入所」9.7%、D群において「入院」38.5%、「目的達成」「死亡」「入所」が各々15.4%を占めた。その他の調査項目に、大きな差は認められなかった。
    【考察及びまとめ】
     若松区において実施期間が長期化する原因は、年齢や介護度等ではなく実施目的である事が示された。C・D群においては目的が明確で達成時期を決定しやすいのに対し、B群は「維持」が最も多く、達成時期が明確にならず長期化する傾向がある。目的達成・訪問リハ終了へ移行するには、目的を明確化し焦点を絞ったリハを実施する必要がある。しかし進行性難病や病態によっては継続的な訪問リハが必要になることもあり、維持が目的として不適切とは言い難い。他サービスで補完し訪問リハを終了する等、維持の為に有効な手段を検討する必要もあると思われる。
  • ~復帰に向けたチームアプローチの重要性~
    生田 哲郎, 前田 英児, 池田 絵里香, 鎌? 佑佳, 青木 奈菜, 原田 忠行
    セッションID: 182
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     患者様(以下症例)の在宅復帰を円滑に進めていく上で、症例、家族、関係スタッフの連携は非常に重要である。当院では症例の実生活場面での評価に重きをおき、複数回の訪問指導を実施している。今回は、4回の訪問を実施し、連携を密に行うことで、退院に繋げる事ができた症例について報告する。
    【症例紹介】
     90歳代女性。診断名:アテローム血栓性脳梗塞(左尾状核、放線冠)、中等度失語症(運動性-喚語困難、意味性錯語あり)。病前生活:一人暮らし、キーパーソン:弟夫婦。入院前の利用サービス:ホームヘルパー(掃除、洗濯[洗うのみ]、入浴見守り)。病棟内ADL能力:入浴のみ見守り、問題解決能力が低下しており動作時の安全面の配慮など周囲からの修正が必要。
    【訪問指導と実施目的】
    1回目:家屋内外での動作確認<可能な動作の確認、課題となる生活場面の抽出>
    2回目:症例の在宅にて、家族との担当者会議<それぞれ情報共有しサービス内容等の再調整を行う>
    3回目:1日外出(8時~19時)<症例の一日の活動内容を確認、生活場面の課題の修正>
    症例は在宅にて、生活場面に即した動作が自発的に見られた。外出後から、病棟生活でも自宅を想定した環境調整、訓練プログラムの設定ができ、症例、家族、関係スタッフとの連携がより一層高まる。
    4回目:入浴動作確認<家族との最終の動作確認、サービス内容の再確認>
    実際に入浴をしてもらい、介護上の注意点を関係スタッフ、家族と共有した。また脱衣時の椅子の設置、トイレにパットの設置するなどの生活環境の調整を行う。
    【チームアプローチの実際とまとめ】
     症例は失語症、問題解決能力の低下により、病棟での生活にもうまく適応できていない状態であった。それにより、家族の在宅復帰に対しての不安も大きかった。今回、4回の訪問指導を行うことにより、当初から家族、ケアマネジャー、MSW、当院スタッフが顔を合わせる機会も多く、具体的な課題解決の方法、目標・期間の設定について随時修正を行いながら情報の共有を行っていった。この事により、家族が症例の現状、今後の課題を理解する上で、大きな効果になったと思われる。そして家族が打ち解けてくるにつれ、より具体的な不安の発言などもあり、その不安を一つずつ取り除いていく援助を行った。その結果、症例・家族に対し常に包括的な援助を実現することが可能となったと考える。
     今回の関わりを通し、症例、家族、関係スタッフが退院後の生活場面をイメージし共有する事は非常に重要だと改めて感じた。今後も生活場面にアプローチしていくOTとしての専門性も活かし、さらに深い関わりを展開していきたい
  • 出田 良輔, 椎野 達, 植田 尊善
    セッションID: 183
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     脊髄損傷において神経学的損傷高位とその程度はADL自立において極めて重要な因子である。受傷後の機能回復予後を判断する能力は、リハビリテーションプログラムの立案の上で重要となる。しかし、国内での機能回復の経時的変化に関する報告は極めて少ないのが現状である。今回、当院データベースをもとに改良Frankel分類の回復過程について検討したのでここに報告する。
    【対象・方法】
     対象は、当院データベース登録者(2005年7月〜2009年4月)で、以下の条件1)受傷後1週間以内に搬送、2)受傷後180日以上経過観察、3)入院時改良Frankel分類がA-C2であった者、を満たした脊髄損傷者76名(男性61名、女15名、平均年齢=53.5±18.9歳)である。方法は、入院時、受傷後3ヶ月、6ヶ月での改良Frankel分類の回復割合と歩行可能(改良Frankel分類D1以上)の割合を調査した。なお、対象者全員に対し本研究の趣旨を説明し同意を得ている。
    【結果】
     3ヶ月時点において、76名中46名(60%)に回復が認められた。内訳(D1以上への回復割合)は、A→B1以上:10%(0%)・B1→B2以上:100%(43%)・B2→B3以上:100%(17%)・B3→C1以上:100%(60%)・C1→C2以上:93%(60%)・C2→D以上:79%(79%)であった。6ヶ月時点において、76名中49名(64%)に回復が認められた。内訳は、A→B1以上:14%(0%)・B1→B2以上:100%(71%)・B2→B3以上: 100%(50%)・B3→C1以上:100%(40%)・C1→C2以上:93%(80%)・C2→D以上:93%(93%)であった。
    【考察】
     全対象の6割以上に何らかの回復が認められ、改良Frankel分類A以外では9割以上で何らかの回復が認められた。また、受傷後1週間以内での改良Frankel分類B・群において、3ヶ月後・6ヶ月後それぞれの歩行可能となる割合はB(3M:40%・6M:54%)・C(3M:69%・6M:86%)であった。受傷後1週間以内での損傷高位以下の感覚残存は、歩行の予後予測因子として重要であることが示唆された。麻痺の回復をある程度想定した上で、リハビリテーションプログラムを作成する必要があり、長期的視野のもとでリハビリテーションを行う必要があると考えられる。
  • 山下 愛子, 生駒 成亨
    セッションID: 184
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     一般的に股関節疾患を有する患者は,股関節の変形により脚長差を生じ,骨盤・脊椎アライメントに影響を及ぼすことが知られている.今回,THA施行前後における前額面骨盤傾斜の変化を調査し,THAが骨盤アライメントに与える影響について若干の知見を得たのでここに報告する.
    【対象・方法】
     2008年3月以降に当院入院し変形性股関節症によりTHA施行された6症例,全症例女性,手術時年齢52~66歳,平均年齢64.3歳を対象とした.これらの症例に対して立位にて両下肢を肩幅に広げた姿勢で,両上前腸骨棘を結んだ線と水平線のなす角(以下骨盤傾斜角)を術前及び術後1週,2週,3週で計測し,術側傾斜をマイナス表示,非術側傾斜をプラス表示とし,前額面骨盤傾斜角の変化について調査した.また,術前後の脚長差についても計測した.統計処理はフリードマン検定・多重比較を用い,危険率は5%とした.
    【結果】
     脚長差は術前0.5~2.0cm,平均1.1cmと明らかな脚長差が認められたが,術後は0~0.5cm,平均0.4cmとほとんど認められなくなった.術前の前額面骨盤傾斜角は-5.0~-3.0度,平均-3.6度で,術前の骨盤傾斜は下肢短縮のある患側へ傾斜する結果となった.術後の前額面骨盤傾斜角は1週目-2.0~+4.0度,平均2.33度,2週目-1.0~3.0度,平均1.83度,3週目0~2.0度,平均1.5度であり,非術側に傾斜する傾向となった.術前及び術後1週,2週,3週についてフリードマン検定・多重比較を用いて危険率5%とし検定を行った結果,術前と術後1週目に有意差が見られた.
    【考察】
     術前の骨盤傾斜は下肢短縮のある患側へ傾いているが,THA施行後は非術側に傾斜し徐々に骨盤傾斜角が減少していく傾向を示した.術後,骨盤傾斜角が非術側に傾斜する要因として,立位時の術側の疼痛,術側に荷重する不安感などから術側荷重量不足による体幹側屈などの代償や,術側の股関節外転筋力低下が原因として考えられえる.術後,骨盤傾斜角が徐々に減少していく傾向を示した事について,疼痛の軽減により術側への荷重量が増大したことや術側の股関節外転筋力向上が関与しているのではないかと考えた.THAを施行し術側荷重量不足による骨盤・体幹での代償が生じ,これが腰痛の発生や歩容に影響を与える可能性がある.術後早期から術側への荷重を促し,姿勢の改善を図る必要があると考える.
    【まとめ】
     股関節疾患を有する患者は,術前の骨盤傾斜は下肢短縮のある患側へ傾き,THAを施行すると,術前と術後1週目で有意差がみられ,骨盤は非術側に傾斜する傾向がみられた.股関節疾患を有する患者に対して,脊椎・骨盤のアライメントを考慮する必要があると考える.
  • 中村 裕樹, 竹内 直人, 永留 篤男, 藤井 康成
    セッションID: 185
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     我々は、平成16年より鹿児島県の高校野球選手に対するメディカルチェックによるコンディション調整を年2回行っている。肩関節回旋運動での投球側と非投球側の比較検討は諸家によりこれまで報告されているが、それは肩関節複合体(SHj)としての検討がほとんどで臼蓋上腕関節(GHj)と肩甲胸郭関節(STj)で測定している報告は少ない。今回我々は回旋及び水平内転の測定を行い、更に練習状況等も調査し若干の知見を得たので報告する。
    【方法】
     平成18~21年にメディカルチェックに参加した投手76名(年齢16.3±0.6歳、右投げ63名・左投げ13名)を対象にした。
     調査は1.肩関節可動域:坐位で1st・2nd・3rdポジションでの内・外旋及び水平内転域をGHj・SHjで測定し、投球側と非投球側で比較検討した。2.アンケート調査:調査時点での傷害の有無・部位。更に投球フォームに関して、選手自身が投球の際に気をつけている点を聞き、投球動作周期で検討した。
    【結果】
     1.GHj外旋:投球側は1st・2nd・3rdそれぞれ68.4°±17.8・95.7°±10.6・98.9°±9.2、非投球側は69.3°±15.8・92.7°±8.3・96.6±7.1。SHj外旋:投球側は78.4°±14.3・113.8°±14.4・106.8°±11.1、非投球側は79.8°±12.6・107°±14.6・103.9°±9.1。GHj内旋:投球側は2nd・3rdそれぞれ34.3°±14・18.9°±20.5、非投球側は50.8°±14.4・31.1°±17.7。SHj内旋:投球側は66.7°±19.6・31.1°±22.4、非投球側は77.2°±17.1・42.3°±17.8。水平内転:投球側はGHj・SHjそれぞれ102.6°±9.7・129.3°±10.1、非投球側は107.5°±9.4・134.5°±13であった。2nd外旋SHj、2nd内旋GHj・SHj、 3rd内旋GHj、水平内転GHj・SHjに有意な差を認めた(p<0.05)。
     2.傷害を有した者は、選手76名に対し28名で、肩・肘に問題のある選手は20名であった。投球フォームで約8割が「体の開き」や「リリースポイントを前に」など、コッキンク゛期及び加速期に注意をしていた。
    【考察】
     投球動作の反復により回旋可動域が外旋方向へシフトし、肩後方組織の伸張制限・拘縮による内旋制限を引き起こすとされており、今回の我々の調査においても同様の結果となった。水平内転における投球側の可動域低下も肩後方組織のタイトネスによる影響が大きいと考える。投球側と非投球側のSTjの可動域を算出すると、2nd内旋でその差が大きくなり肩甲骨の動きでGHjの制限を補足しているのではないかと考える。今後は、肩複合体として特にGHjへのより効果的なストレッチ指導の必要性を感じた。
  • 山下 健太, 村上 秀孝
    セッションID: 186
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【緒論】
     思春期腰椎分離症に対して、X線、CT、MRIによる画像診断、体幹装具療法、超音波治療など様々な診断、治療の有効性が報告されている。我々も第21回九州・山口スポーツ医・科学研究会において、思春期腰椎分離症を呈した症例に対し、MRI早期診断後、スポーツ中止、体幹装具、低出力超音波パルスによる早期治療を行い、椎弓分離部の骨癒合促進効果を報告した。
     発生メカニズムは、オーバーユースの結果としての疲労骨折、また股関節周囲筋のTightnessによる腰椎への過負荷が影響していると報告されている。近年、体幹深部筋の弱化に起因したスポーツ動作時の体幹の不安定化もその一つとされており、腰椎分離症は複数の因子を包含して発生するものと考えた。
     理学療法においては、股関節周囲筋のストレッチを中心とするアプローチのみに留まっており、明らかになりつつある発生要因の複雑性を考慮すると、十分な対応とは言えないのではないかと考えた。これは腰椎の伸展、回旋を伴う動作が分離症の増悪へと繋がる事、患部の安静が骨癒合に重要かつ不可欠な要素であり、積極的な運動、動作によりその安静が損なわれる事が危惧されているものと考えられた。
     今回、思春期腰椎分離症を呈した症例に対し、股関節周囲筋のストレッチに加え、競技復帰後の再発予防を視野に入れた積極的な運動療法として体幹深部筋トレーニングを実施したので、その検討、若干の考察を含め報告する。
    【対象と方法】
     対象は、当院で腰椎分離症と診断された6例9椎弓、男性4例、女性2例、平均年齢は13.7±1.9歳であった。診断後、スポーツ活動を中止し、体幹装具作製、低出力超音波パルス治療、股関節周囲筋のストレッチ、体幹深部筋トレーニングの指導を行った。
    【結果】
     骨癒合率は、8/9椎弓で89%であった。骨癒合までの平均日数は、84.8±42.9日であり、その後全例1ヶ月以内にスポーツ復帰が可能となり、平均7.5ヶ月経過後の現在まで腰痛は認められていない。
    【考察】
     今回、思春期腰椎分離症を呈した6例に対し、股関節周囲筋のストレッチに加え、積極的な運動療法として体幹深部筋トレーニングを実施した。骨癒合率は89%、骨癒合までの平均日数は84.8±42.9日、その後全例1ヶ月以内にスポーツ復帰が可能となり、平均7.5ヶ月経過後の現在まで腰痛は認められていない。腰椎分離症の治療期間として、6ヶ月間が最もスタンダードな期間とされてきた事を考慮すれば、今回、競技復帰までの期間は短縮され、加えてその後腰痛が出現していないことから、無理なく競技復帰できたものと考える。治療期間の短縮は、早期診断、超音波治療の効果が推測できるが、今回、体幹深部筋トレーニングを運動療法に加えたことで、思春期腰椎分離症の本質的且つ包括的なアプローチに近づいたものと考えた。
     しかし、その後の腰痛の経時的変化や再発率、パフォーマンスへの影響などに不明点が多く、今後縦断的研究も視野に入れて検討を重ねる必要性が示唆された。
  • Mclaughlin法と広背筋移行術
    杉安 直樹, 山下 導人, 内野 潔
    セッションID: 187
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     肩腱板断裂に対する観血的療法は、Mclaughlin法(以下M法)が最も頻回に実施されている。修復困難な場合、当院では広背筋移行術(以下LD法)にて良好な成績を得ている。今回、術後成績の比較を行い予後、理学療法施行時の注意点、反省等を検討したので報告する。
    【対象】
     H.15.4~H.20.6までに当院で腱板再建術を施行した男性18例(18肩)、女性6例(6肩)、計24例(24肩)。M法19例(19肩)、LD法5例(5肩)。手術時平均年齢は60.8±8.5(45~71)歳。職種は漁業6例、大工6例、農業4例、その他8例。
    【方法】
     等尺性筋力測定器MICROFET2による肩関節屈曲・外転90°・内外旋中間位の筋力(健側比;術側/非術側×100)、日整会肩疾患治療成績判定基準(以下JOA-S)を測定。術前と術後1年未満(短期)、以上(中期)を比較、さらにM法とLD法の比較検討。尚、本研究すべての対象者よりインフォームト゛コンセントを得た後に実施した。
    【結果】
     (1)術前と短期・中期の比較 筋力:外旋筋は短期・中期で有意に改善。屈曲・外転・内旋筋は中期のみ有意に改善。JOA-S:短期は疼痛・日常生活動作・総点で有意に改善、中期はすべて有意に改善。(2)M法とLD法の比較 筋力:短期で外転・外旋筋ともにM法が有意に高値、中期で有意差なし。JOA-S:有意差なし。
    【考察】
     石谷らは外転筋力比は短期では有意な回復を示さなかったが、外旋筋力比は短期でも有意に回復し、外転・内旋筋力よりもアウターマッスルの影響を受けないためと推察している。今回の結果はこれに近似していた。外転筋力は3ヶ月では有意な回復はみられないが、外旋筋力は3ヶ月で有意な回復を示し、術後1年で各筋力は正常に近づくと推察された。JOA-Sは9割以上を獲得し、復職率は100%であった。
     M法とLD法にて、信原らによると肩腱板断裂の予後は断裂端の最大径に左右されるとしている。今回の検討での術式選択は大・広範囲断裂はLD法であり、M法が予後良好と予測したが両者に有意差はなかった。LD法では、広背筋が棘上・棘下筋の働きを補完するよう機能変換した結果と思われる。また岡村らは筋電図解析から広背筋の機能転換がみられるのは術後5週間以後としており、今回の結果と近似していた。LD法の欠点として機能変換にかかる期間が腱修復術後の回復に比べ長いと思われた。術後リハヒ゛リテーションとして、M法では棘上筋を中心とした筋再教育、LD法では広背筋の機能変換を目的としたフィート゛ハ゛ックトレーニンク゛の必要性が示唆された。
  • 野中 信宏, 田崎 和幸, 山田 玄太, 坂本 竜弥, 油井 栄樹, 貝田 英二, 宮崎 洋一
    セッションID: 188
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     手指腱修復術後の早期運動療法の成功例は多くの施設で報告されている.しかしながら,腱癒合状態が弱い術後早期の腱滑動は再断裂の危険性があり,諸家の報告の中でも少ないながら散見する.今回,腱再断裂再縫合術1例を経験したので経過と予後を紹介し,その原因と影響を考察して報告する.
    【症例と術中所見】
     本報告に承諾を得た47歳の男性で職は警備員.割れた茶碗にて右手を受傷.受傷部位は屈筋腱ZoneにてIII.断裂していた浅・深指屈筋腱は横手根靭帯切離して近位断端を同定し,両屈筋腱とも吉津法にて縫合した.次に断裂していた中指尺側の血管,神経を各端々縫合した.
    【術後セラピィと経過】
     術後2日目から指他動屈曲位を保持する自動屈曲運動とPIP・DIP単関節の他動伸展運動を中心に1日4セット早期運動療法を行った.術後3週時に手関節中間位,MP関節60度屈曲位のスプリント内にて指自動運動を開始したところ指自動伸展から自動屈曲時にプツと音がして中指自動屈曲不能となった.浅・深指両屈筋腱とも再断裂しており,2日後に吉津法にて再縫合した.医師と相談後,再縫合術後3週間は他指の他動運動と中指の他動屈曲運動のみ行った.3週時のTFMは190度で中指屈筋腱癒着と中指各関節の屈曲拘縮が強固に存在していた.5週時から中指PIP・DIP各関節他動伸展運動を開始し,特に強固な屈曲拘縮を呈していたPIP関節は動的に他動伸展するスプリントを装着させた.6週時のTAMは60度しかなくこの時期から指屈筋腱を伸張させた.8週時でTAMは124度,3ヶ月のTAMでようやく200度を超えた.腱癒着はまだ残存していたが再縫合術後3ヶ月半でほぼ支障がなくなり仕事復帰した.
    【考察】
     一般的に腱縫合術後3週時は自動屈曲運動が可能な時期である.しかし,今回の再断裂は3週時に行った指伸展位から指自動屈曲運動にて起こった.つまり,その運動に耐えうる腱癒合状態ではなかったと思われ,それまでに腱縫合部のgapを形成していた可能性が考えられる.運動としては指他動屈曲位での自動屈曲運動を継続すべきであった.再縫合術後のセラピィでは,1治癒中途での再手術は創傷の再燃にて,関節軟部組織や腱滑動周囲組織のより増悪した環境をつくりやすい.2最初の腱縫合術からさらに再縫合術後の安静・固定にて,より長期の固定を余儀なくされる.3セラピスト心理として縫合腱伸張運動を遅延させやすい.4症例心理も運動に対する恐怖心が増加する.1~4の要因からより強固な関節拘縮,腱癒着を呈することとなる.結果,改善訓練に多大な時間を必要とし社会復帰時期が著しく延びる.今回はZoneIIIという部位でもあり訓練にて支障ない程度には改善できたが,改善が滞ると拘縮解離術も必要になっていた.早期運動療法の積極的価値は大きいが,再断裂がどのような影響を及ぼすかを今回考えさせられ,より安全な方法の確立に努めたい.
  • 坂本 竜弥, 田崎 和幸, 野中 信宏, 山田 玄太, 油井 栄樹, 貝田 英二
    セッションID: 189
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     橈骨神経運動低位麻痺は母指・手指伸展が不能となり、多くの非把握動作に障害を呈する。今回、橈骨神経低位麻痺後に母指橈側外転、指伸展機能再建術を行なった症例を経験したので、実践した術前・後のセラピィに考察を加えて報告する。尚、報告に際し症例には同意を得ている。
    【症例紹介】
     74歳、男性、右利き。外傷歴はなく左橈骨神経低位麻痺を呈し、2008年4月に橈骨神経剥離術を行なったが回復徴候なく、8月に再建術を施行した。
    【術前セラピィ】
     初期より関節拘縮の除去と筋力強化訓練を行なった。また移行筋となる橈側手根屈筋と長掌筋の分離及び強化訓練を積極的に行なった。
    【術中所見】
     指伸筋は橈側手根屈筋にて、母指は長母指外転筋腱をpulleyとして長掌筋腱を長母指伸筋腱にinterlacing sutureして再建した。縫合時の緊張は母指は手関節中間位で最大橈側外転位、示~小指は手関節背屈30度位でMP関節伸展0度とした。
    【術後セラピィ】
     術後翌日からセラピィを開始し、まず手関節背屈、指伸展、母指伸展・橈側外転位のスプリントを運動時以外装着させた。運動は手関節最大背屈位でのMP単関節で他動屈曲運動、PIP・DIP関節同時他動屈曲運動、指伸展・母指他動橈側外転位を移行筋の収縮にて保持させる運動(switching)を開始した。術後4週でコックアップスプリントを作製し、日中は母指橈側外転及び指伸展・屈曲自動運動を行なわせた。術後5週から、手関節自動掌屈運動と掌屈位での軽い指関節自動屈曲運動を開始した。術後6週でスプリントは夜間のみとし、術後10週で除去した。
    【結果】
     術後3ヶ月時、自動可動域は手関節背屈55度、掌屈40度であった。手関節掌屈位での手指MP関節自動伸展-10~0度に対し、背屈位では-40~-20度であった。また母指橈側外転は30度と不十分であった。手指自動屈曲は良好で握力20.6kg(健側比56%)であった。
    【考察】
     本症例においては母指橈側外転及び指伸展不足に不満が残った。運動機能再建術後の早期運動療法では、通常の腱縫合後の早期運動療法に加え、移行筋従来の運動機能ではなく、機能転換させて行なわせる難しさがあった。本症例は高齢でもありswitchingが十分でなく、動的腱固定効果や残存筋を用いての母指外転、手指伸展を行なう傾向にあった。つまり、母指では短母指外転筋と母指対立筋にて掌側外転するとともに動的腱固定効果を用いて伸展させ、手指では手関節を掌屈させることで動的腱固定効果を用いてMP関節を伸展させ、骨間筋及び虫様筋にてPIP関節を伸展させていたと考えられる。これにより移行腱の滑走を低下させ癒着を引き起こしたと考えられる。対応策として早期からバイオフィードバック装置を用いた筋再教育訓練を導入すべきであった。今後は症例の状態に応じた臨機応変なセラピィができるよう努力していきたい。
  • ~保存療法における単純X線画像を基に~
    西牟田 亮, 竹山 志之, 田中 祐一
    セッションID: 190
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     橈骨遠位端骨折において整復後、橈骨遠位端の手根関節面に対するアライメント(以下、橈骨アライメント)は一般的に手関節の機能予後に関与するといわれており、その中でも可動域制限が及ぼすADL動作への影響は大きい。今回、徒手整復を行った橈骨遠位端骨折の単純X線画像から、橈骨アライメントが手関節可動域に及ぼす影響について調査し若干の知見を得たので報告する。
    【対象と方法】
     平成17年7月から21年2月に当院受診し、橈骨遠位端骨折と診断され保存療法の下、リハビリテーションを実施した者のうち、受傷より8週以上追跡調査可能であった24例(男性4例、女性20例、平均年齢67.4±8.1歳)を対象とした。骨折型の内訳はColles骨折20例、背側Barton骨折3例、Smith骨折1例であった。
     単純X線画像から、橈骨アライメント所見として、背側傾斜角Dorsal tilt(以下DT)、橈骨尺骨長差Ulnar Variance(以下UV)を計測し、手関節可動域として掌屈、背屈の可動域とのそれぞれの相関を求めた。統計処理としてPearsonの相関係数を用いて検討した。
    【結果】
     各平均値は、DT 7.4±9.5°(-11~26°)、UV 1.9±2.7mm(-2~7mm)、掌屈 57.7±14.2°(25~85°)、背屈 68.8±16.3°(30~90°)であった。各項目の相関においてDTとの間には掌屈、背屈いずれの項目でも有意な相関は認められず、UVとの間には掌屈では相関は認められなかったが、背屈で(r=-0.62,p<0.01)と有意な負の相関が認められた。
    【考察】
     DTにおいては関節面の背側偏移に伴い、相対的な掌屈制限を生じるものと予測したが、その関連性を示すことはできなかった。一般的にDTは20°以上で予後不良といわれており、本研究対象のDTにおいては整復が比較的良好なことにより関連性が示されなかったことが示唆される。
     UVにおいては骨折後の橈骨短縮によるUVの増大により、背屈の可動域制限が残存しやすい傾向にあることが認められた。香月はplus varianceの増大により月状骨の圧集中部位が橈骨関節面からTFCCへと移動することが示されたと報告している。UVの増大は橈骨手根関節の橈屈偏移を招き、橈骨手根関節の背屈において連携作用として起こる近位手根骨の内転運動を妨げるものと考える。また、橈骨手根関節の橈屈偏移に伴い、月状骨の接触面は尺側へ移動し、手根骨関節窩へは舟状骨の圧集中が起こり、橈骨手根関節では舟状骨による運動が優位に反映されることが予測できる。正常な背屈運動では、舟状骨は橈骨舟状骨靱帯と舟状大菱形骨靱帯の緊張により、月状骨より早期に背屈運動を停止し、その後は月状骨による運動が続行されるが、UVの増大に伴い、舟状骨での運動が優位となった橈骨手根関節では舟状骨と月状骨の連携作用の破綻が起こり、可動域制限を生じることが考えられる。
     橈骨遠位端骨折による可動域制限は浮腫の程度や合併症の有無など様々な関与が考えられるが、今回の結果では橈骨アライメントと手関節の機能予後とを関連付ける一因子であることが示唆される。
  • ~3次元動作解析による歩行解析を通じて~
    坂口 重樹, 大田 瑞穂, 長田 悠路
    セッションID: 191
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、変形性股関節症にて右寛骨臼移動術の手術を受けた症例を担当する機会を得た。本症例はDuchenne歩行を呈し独歩困難であった。このような症例に対して3次元動作解析装置による歩行解析を行い、その結果を踏まえ術側立脚期の改善に向け理学療法介入した結果、歩行能力の改善が得られたので以下に報告する。
    【症例紹介】
     29歳女性(159cm、47kg)。3年前より右股関節痛出現し、平成19年12月頃より安静時痛出現。平成21年9月にA病院にて右寛骨臼移動術施行。術後2週より1/3PWB歩行、術後5週でFWB歩行開始。術後7週で退院となり、当院での外来理学療法開始。平成21年1月(術後18週)より屋内・屋外歩行がT字杖にて可能となった。
    【方法】
     片松葉杖歩行レベルであった術後15週(A期)とT字杖歩行レベルであった術後27週(B期)の杖なし歩行を3次元動作解析装置(VICON MX)・床反力計(AMTI社製)にて計測した。分析項目は、歩行速度、右側の立脚前期(1相)・立脚中期(MS)・立脚後期(2相)の床反力作用点(左右:COP-x、進行方向:COP-y)の変化、MSの鉛直方向床反力(Fz)・股関節内外転角度と外転モーメント・体幹関節角度でありA期とB期を比較した。
    【理学療法アプローチ】
    1.股関節ROM訓練 2.下肢筋群のリアライメント 3.筋力増強訓練(OKC,CKC) 4.ステップ肢位での重心移動 5.歩行訓練 6.水中歩行
    【結果】
     歩行速度はA期0.71m/sec.B期0.9m/sec.であった。COP-xはA期24cm(1相:右側へ21cm、2相:左側へ3cm)・B期15cm (1相:右側へ15cm、2相0cm)、COP-yはA期38cm(1相26cm、2相13 cm)・B期49cm (1相38cm、2相11cm)であった。MSの床反力はA期395.42N・B期441.01N、股関節内外転角度・股関節外転モーメントはA期(1.1°外転・5.5Nm)・B期(1.7°内転・27.5Nm)、体幹角度(前後・側屈・回旋)はA期(後傾4.2°・右側屈9.5°・左回旋6.4°)・B期(後傾1.8°・右側屈8.7°・左回旋3.1°)であった。
    【考察】
      B期で歩行速度が改善した要因として、MSの右股関節外転モーメントが約5倍増大し股関節の側方制御が改善したことが考えられる。このことは、MSにおけるFzの11.5%増大や、右側へのCOPの変位が減少したことに影響し、結果として進行方向へのCOPの推進に寄与したものと考えられた。また、パッセンジャーである体幹のアライメントは下肢の筋活動に影響するとされており、本症例も杖歩行期では前後・側方・回旋いずれの角度も重力ラインに近づくような変化があったため、これらが下肢の筋活動に影響したのではないかと推察した。
  • ~膝前面組織の評価・治療の重要性~
    大堀 洋平, 濱崎 友香
    セッションID: 192
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     今回、有痛性分裂膝蓋骨を呈した症例を担当し、分裂膝蓋骨のメカニカルストレスを機能解剖学的に解釈し、治療を行った。この経験から、膝前面痛に対する局所評価・治療を整理したので、ここに報告する。
    【症例紹介】
     10代前半、男性、陸上部(100m/走り幅跳び)。診断名は、左有痛性分裂膝蓋骨。X-P所見は、SaupeIII型(膝蓋骨外側の斜方分裂)。受傷機転は無く、起床時に疼痛出現し、増強傾向のため、1ヶ月後、当院受診となった。主訴は、膝関節屈曲時痛、歩行・階段昇降時痛(膝蓋骨分裂部)であった。
    【理学療法開始時評価】
     圧痛は膝蓋骨分裂部にあり、膝関節屈曲110°(疼痛あり)、大腿筋膜張筋・大腿四頭筋(特に外側広筋)のtightnessがみられ、ober test陽性、大殿筋テスト陽性、腸脛靭帯は緊張し滑動性低下していた。
    【プログラム】
    大腿筋膜張筋・外側広筋・大殿筋反復収縮
    腸脛靭帯・膝蓋外側支帯ストレッチ
    【経過】
     リハビリ開始3週経過にて、Heel Hip Distance(骨盤後傾位)の全可動域可能となった。4週経過にて、ADL可能となり競技復帰を目指していたが、7週経過にて、走行時、膝蓋骨下部に疼痛出現した。
    【考察(再評価・追加プログラム・結果含む)】
     本症例の疼痛は、膝蓋骨分裂部へのtraction forceが過度に加わったため、生じたと考える。膝蓋骨外側に付着する、大腿筋膜張筋・外側広筋にtightness、腸脛靭帯・膝蓋外側支帯に緊張、滑走不全がみられた。外側支持組織の緊張は、屈曲時、膝蓋骨分裂部を外側へ折り曲げる力を過度に生み、また歩行立脚期に分裂部への過度なtraction forceを生む。外側支持組織の柔軟性改善により、膝屈曲可動域拡大、歩行・階段昇降時痛は消失した。
     しかし、走行時に膝蓋骨下部に疼痛が生じ(6/10点)、外側膝蓋脛骨靭帯・膝蓋靭帯外側・膝蓋骨骨尖外側に圧痛がみられた。膝蓋骨周囲を再評価すると、内側膝蓋脛骨靭帯・膝蓋大腿靭帯の緊張、膝蓋下脂肪体の腫脹がみられた。外側支持組織の緊張による外上方、内側支持組織の緊張による内下方の分力が、膝蓋骨の内上方への動きを過度に作り、traction forceにより膝蓋骨外側下部に疼痛が生じたと考える。内側膝蓋脛骨・膝蓋大腿靭帯ストレッチ、膝蓋下脂肪体のモビライゼーションを加え(計4回施行;週1回)、柔軟性改善を図ると疼痛軽減した(2~3/10点)。その後、走行(全速力)時の疼痛がやや残存したため、insoleを施行した。
    【まとめ】
     膝前面痛は、膝蓋骨の適切なtrackingを作る必要がある。膝蓋骨上部だけでなく、膝蓋骨周囲軟部組織の評価・治療が不可欠であると再考できた。この経験を障害の治療・予防に貢献させたいと考える。
  • ~PNFコンセプトに基づいたアプローチ~
    吉村 恵三, 佐野 博之, 渡辺 寛, 木村 香江, 町本 周平, 濱田 貴広
    セッションID: 193
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     ACL再建術後患者における後療法について、その損傷に至った原因が下肢機能だけにあるとは限らない。よって体幹を含めた全身を個々に評価しアプローチしていく必要があると考える。今回、ACL損傷に至った原因を静的アライメント(SA)および動的アライメント(DA)等より分析し、固有受容神経筋促通手技(PNF)コンセプトに基づいたアプローチを行った。その結果SA・DAの改善ならびに歩容の改善が認められたので報告する。なお演題として発表することに関して本人より了承を得た。
    【症例紹介】
     46歳、男性。診断名:左ACL損傷、左膝外側半月断裂。職業:事務職(デスクワークが主、右利き)。現病歴:平成21年1/16ソフトバレーでジャンプ後に着地した際、膝を捻り受傷。平成21年2/16手術(靭帯再建術:半健様筋)既往歴:24歳時に右膝ACL損傷(再建術)。
    【術前評価】
     N-test±、lachman test+、ROM-t(Lt/Rt)膝屈曲110°/90°内旋30°/45°、SA(立位):体幹右側屈・右回旋、骨盤後傾・左挙上、両大腿外旋(Rt>Lt)、右膝軽度内反。DA(左片脚立ち)重心移動は不十分で遊脚側の骨盤は下制し、両上肢は外転、体幹は右側屈・右回旋していた。(右片脚立ち)体幹の右側屈・右回旋を強め、骨盤帯を右側へ移動し、両上肢を外転していた。前方踏み込み動作:左knee in-toe out&膝内外旋動揺+。右軽度knee in-toe out&膝内外旋動揺++。四肢や体幹に対するPNFパターンでは体幹回旋筋群の筋出力や持続収縮時間の低下があり、スタビリティーの低下を認めた。
    【アプローチ】
     片脚立ちで左右とも体幹右側屈・回旋、骨盤後傾と同一の姿勢反応で対応していることや両上肢を外転してバランスをとっていることから腰椎・骨盤の安定性に関与するローカルマッスルの機能低下が考えられた。骨盤後傾は大腿骨との相対的位置関係から大腿筋膜張筋などの受動要素による側方支持が使われやすい。また運動連鎖として大腿は外旋する為、外転筋・外旋筋群は働き難い。よって能動的な筋活動が要求される場面では外転・外旋筋などによる制御が行えずknee inや両膝の内外旋動揺が起こり損傷に至ったと考えられた。アプローチは最大活動制限期(術後~2w)であり運動前後の疼痛や再建靭帯への負担を避けるような肢位、膝の角度、荷重量を配慮した。運動パターンはより強い頭頚部・上肢・肩甲帯からのオーバーフローを利用し体幹、骨盤帯、下肢へと繋げていった。また臥位、座位、立位へと支持基底面および重心を難易度の低い方から高い方へと進めていった。
    【結果・考察】
     片脚立位において体幹の正中位保持が可能となり、立脚下肢の内外旋動揺は改善された。Knee in傾向は両下肢とも消失し、歩容の変化も認められた。PNFコンセプトに基づいたアプローチを行ったことで早期に歩容の改善が得られたと思われた。活動制限期(3W~6W)には移植腱の壊死性変化が生じてくる為、可及的早期に個々の問題を分析し、再建靭帯にストレスをかけないようなアプローチを提供していくことが重要と考える。
  • 吉岡 茜, 北村 宏規, 高原 信二, 小松 智, 平川 信洋, 青柳 孝彦, 可徳 三博
    セッションID: 194
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     近年,膝関節前十字靭帯(以下ACL)再建術の合併損傷や主観的満足度に関する報告が散見される.臨床において,半月板切除を合併する競技者は個体要因としてアライメント不良例が多く,また,競技復帰を果たしても疼痛などの訴えが少なからず聞かれる.そこで今回我々は,ACL再建術後患者における半月板切除の有無が主観的満足度に与える要因について検討したので報告する.
    【対象】
     対象は,当院において多重束折り膝屈筋腱を用いてACL再建術を施行し,競技復帰をして1年以上経過した競技者33名33膝である.これらを,受傷から再建までの期間または再建術時に半月切除を施行したあり群19例(男4名,女15名,平均年齢25.7±9.0歳)とACL単独再建術を施行したなし群14例(男3名,女11名,平均年齢28.8±11.0歳)の2群に分けた.
    【方法】
     方法は,受傷から再建術までの期間,術後経過観察期間,術後リハビリテーション(以下リハビリ)回数(1~3ヶ月,3~6ヶ月,6~8ヶ月,8~12ヶ月)を調査した.また,テロスSE製品を用いて膝関節前方移動量を,BIODEX system3を用いて膝関節屈曲,伸展の脚力を角速度60,180,300の等角速度運動にて測定した.主観的評価として現在の膝関節の疼痛の程度をNRSにて調査し,アンケートを無記名にて実施し,スポーツ活動の満足度を10点満点で調査した.統計学的処理にはt-検定を用い,0.05以下を有意水準とした.
    【結果】
     術後リハビリ回数は6~8ヶ月においてあり群が有意に多かった.脚力は膝関節屈曲の角速度60においてなし群が有意に高かった.疼痛の程度はなし群に比してあり群の方が有意に高く,また,スポーツ活動の満足度はなし群に比してあり群の方が有意に低い結果となった.その他の項目では有意差は認められなかった.
    【考察】
     今回の結果より,ACL再建術に加え半月板切除を施行した競技者は主観的満足度の低下が認められた.これらの要因として角速度60の膝関節屈筋筋力の低下,疼痛の残存,リハビリ回数が相互的に関係していると考えた.
     まず屈筋群は姿勢保持に有効に働き,また,スポーツ動作は膝関節屈曲位で行う事が多い.よって最大筋力の低下は,競技特性または活動性が高くなるにつれて動作に影響すると考える.更にスポーツ動作において関節への接触圧が高まった事で疼痛が誘発された事も一因と考える.リハビリ回数においては,部分練習が開始となる時期に有意にあり群が多い結果となった.競技者にとっての満足度は,受傷前と同様の活動レベルで早期にスポーツ現場へ復帰する事であると考える.今回の結果から,最大筋力の不足及び疼痛の残存が要因となり,競技復帰の許可が出せないまたは満足のいく復帰ができない一因となり,リハビリ回数が多くなったものと考える.
  • 全荷重開始後の歩行の予測
    永田 達, 田中 創, 矢野 雅直, 副島 義久, 森澤 佳三, 西川 英夫
    セッションID: 195
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     骨折を呈した症例では,健側の可動域や機能を目標とした理学療法を行っている場面が多々みられるが,目的とする動作の予測をふまえた理学療法が必要と考えている.今回,歩行の予測に着目し右足関節外果骨折を呈した症例に対しアプローチを行い,若干の効果が得られたので考察を交え報告する.
    【症例紹介】
     症例は60歳代女性.診断名は右足関節外果骨折.現病歴は平成21年3月足部内反位にて転倒し,4日間のギプス固定後当院にて骨折観血的手術施行.術後1週よりギプスをつけPWB開始.X線所見はAO分類にてA1.既往歴は10年程前に左足関節外果骨折.Needは歩けるようになりたい.
    【理学療法評価】(ope後14日目)
     右足部は軽度腫脹・熱感が残存しているが,特に疼痛の訴えはみられない.触診より後脛骨筋,長・短腓骨筋,下腿三頭筋の筋緊張亢進がみられる.ROM-Testにて,右足関節背屈5°,外返し15°である.MMTにて前脛骨筋3,その他著明な問題なし.下腿捻転角は両側20°で外捻しており,骨盤は右が後傾している.足部のアライメントは後足部回外,前足部回内をとり,徒手的に後足部回内を促すも舟状骨の下降は観察されない.
     右下腿外旋を徒手的に促した後,膝立ち位での体重移動を行うと右側荷重時に骨盤が右回旋し,体幹右回旋と右側屈が生じる.右下腿内旋位を徒手的に促した場合は,右側荷重時に骨盤は正中位を保つことができる.
    【問題点】
    #1.右足関節背屈可動域制限,#2.右足部内側縦アーチ下降制限,#3.右前脛骨筋筋出力低下
    【治療内容】
    1)右足関節背屈ROM-ex,2)右後脛骨筋,下腿三頭筋ストレッチ,3)右足趾屈曲位での足関節背屈運動
    【結果】
     ROM-Testにて右足関節背屈15°,外返し15°.アライメントに著明な変化はみられないが,徒手的に後足部回内を促すと舟状骨の下降が観察されるようになった.全荷重開始後,歩行時に右足部内側縦アーチの下降・下腿の内旋が生じDuchenne現象はほぼみられなくなった.
    【考察】
     本症例は右後足部回外・前足部回内しており,後脛骨筋・下腿三頭筋の過緊張により内側縦アーチの下降制限が生じているため,歩行時右側立脚初期での下腿内旋が制限されると考えられた.本症例は形態上両下腿が外捻しており,下腿外旋を促した後の膝立ち位での右側荷重時には骨盤の右回旋と体幹の右回旋・右側屈が観察されため右側立脚中期にDuchenne現象が生じていると考えられた.
     それに対し,下腿の内旋を促した後の膝立ち位での右側荷重では,骨盤が前傾することで中殿筋後部・大殿筋が働きやすくなり骨盤の正中位を保つことができるようになった.そのため,本症例の歩行において右足部内側縦アーチの下降と下腿の内旋がDuchenne現象の予防になると推論立ててアプローチを行った.
     右足部内側縦アーチの下降には後脛骨筋・下腿三頭筋のストレッチを行い,立脚期で下腿内旋に作用する前脛骨筋の促通を行った.これらのアプローチにより,全荷重開始後の歩行で右側立脚初期に足部内側縦アーチの下降と下腿内旋がみられたためDuchenne現象がほぼみられなくなった.
  • 踵骨骨折およびその疑いがあった症例を通して
    瓜生 功祐, 宮崎 一臣, 松岡 太志
    セッションID: 196
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)において、入院患者が踵の痛みを訴え、それが脆弱性骨折と診断される症例が増えてきた。そこで今回、訓練経過中におこった踵骨骨折およびその疑いがあった症例について、経過に考察を加え報告する。
    【対象】
     平成18年4月から平成21年4月に回復期リハ病棟に入院し、経過中に踵骨骨折およびその疑いがあった症例7名を対象とした。内訳は女性7例で、年齢67歳から92歳(平均81.3歳)。入院時診断名は、胸腰椎圧迫骨折3例、大腿骨近位部骨折3例、頚椎症性脊髄症1例であった。
    【現症及び経過】
    ●症例A氏:骨密度56%、誘引なく腰椎圧迫骨折を受傷、当院入院。シルバーカー歩行からT杖歩行開始とともに左踵骨部に疼痛出現。
    ●症例B氏:骨密度57%、転倒繰り返し外来受診にて頚椎症性脊髄症と診断、当院入院。ピックアップ歩行から歩行器歩行開始とともに右踵骨部に疼痛出現。
    ●症例C氏:骨密度42%、転倒にて大腿骨転子部骨折受傷、当院入院。歩行器歩行継続中、両踵骨部に疼痛出現。
    ●症例D氏:骨密度62%、重量物を抱え疼痛出現し腰椎圧迫骨折受傷、当院入院。歩行器歩行から独歩歩行開始とともに両足底部に疼痛出現。
    ●症例E氏:骨密度74%、誘引なく胸椎圧迫骨折受傷、当院入院。T杖歩行訓練継続中、右足関節後面に疼痛出現。
    ●症例F氏:骨密度30%、転倒にて大腿骨転子部骨折受傷、当院入院。病棟内ADLを車椅子から歩行器歩行に変更とともに右踵骨部に疼痛出現。
    ●症例G氏:骨密度40%、転倒にて大腿骨転子部骨折受傷、当院入院。平行棒内歩行から歩行器歩行開始とともに左踵骨部に疼痛出現。
    【考察】 
     今回、踵骨骨折およびその疑いがあった症例は、骨密度が低く、入院時診断名の受傷機転においても誘引なく骨折をおこしている症例が多い。加えて訓練経過中に、歩行レベルの向上に伴い、受傷した症例が多く見られた。これらの症例は、脆弱性骨折を起こす可能性があり、訓練負荷量(特に歩行レベルの向上)の増加には注意が必要であることを示唆している。
     しかし、当院ではその原因をはっきりと究明するには至っていない。同程度の骨密度や受傷内容でも、脆弱性骨折を起こさない症例も多く見られる。原因が明らかではないため対応は的確に行えないかもしれない。しかし、高齢化に伴い、骨粗鬆症患者も増加傾向にあることから、訓練経過中に脆弱性骨折をおこす症例は増加するのではないかと考えられる。今後は、注意深く観察し、検討を重ねることが重要であると考える。
  • 北嶋 秀一, 村田 伸, 松本 武士, 吉浦 勇次, 冨永 浩一, 甲斐 美穂, 田中 良和, 角 典洋
    セッションID: 197
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     我々は第30回本学術大会において、痛みの程度とQOLとの間に明らかな関連が認められなかったことから、整形外科に通院できる程度の高齢者の痛みでは、QOLに影響を及ぼさない可能性を報告した。ただし、前研究では対象者数が少なく、性差や部位別の検討など詳細な分析は行っていない。そこで本研究では、女性高齢者を対象に、上下肢別に痛みとQOLとの関連を検討した。
    【対象と方法】
     対象は上下肢に痛みがあり、認知症が認められない65歳以上の女性高齢患者で、調査に同意が得られた147名(平均年齢76.1±6.3歳)である。そのうち、上肢に痛みを有する者は66名(診断名:肩関節周囲炎・頚椎症など)、下肢に痛みを有する者は81名(診断名:変形性股関節症・変形性膝関節症など)であった。調査は、診断名や通院期間などの個人プロフィールのほか、痛みの部位や程度(Visual Analogue Scale;VASで評価し、得点が高いほど痛みが強いことを表す)、QOLの評価として活動能力、主観的健康感、生活満足度、生きがい感、人間関係に対する満足度を評価した。なお、活動能力は老研式活動能力指標、それ以外のQOL評価にはVASを用いたが、得点が高いほど良好な状態を表すよう尺度化した。統計処理は、痛みの程度と各QOL評価尺度との関連をピアソンの相関係数を用いて分析した。
    【結果】
     相関分析の結果、上肢に痛みのある患者では、痛みの程度と主観的健康感との間に中等度の負の相関(r=-0.37,P<0.01)が認められた。下肢に痛みのある患者では、痛みの程度と活動能力との間に中等度の負の相関(r=-0.38,P<0.01)、痛みの程度と主観的健康感との間に弱い負の相関(r=-0.26,P<0.05)が認められた。その他の痛みの程度とQOL尺度得点との間には有意な相関は認められなかった。
    【考察】
     今回の結果から、女性高齢患者では上肢の痛みが強いほど健康感が低く、下肢の痛みが強いほど活動能力が低いことが示唆された。高齢者の主観的健康感は、家庭や社会において役割感の有無に影響を受けることが報告されている。上肢の痛みは、家事、趣味、仕事など、家庭や社会での役割に影響を及ぼし、そのため健康感を低下させたものと推察した。また、下肢の痛みでは活動能力が低下することから、女性高齢者の社会的生活機能を低下させる要因の一つであることが示唆された。今回の結果から、女性高齢者では痛みの部位により関連するQOLの因子が異なることが示された。
  • 瀬口 明香, 大塚 未来子, 田中 とも, 森田 年哉
    セッションID: 198
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院の創傷ケアセンター(以下創傷科)では様々な基礎疾患を背景に傷を持った患者が入院している。傷の部位や状態も多様である為苦慮することが多い。そこで今回、創傷科入院患者の傾向を調べ理学療法士としての関わり方を検討したので報告する。
    【方法】
     平成20年9月~21年3月に創傷科に入院しリハビリ処方のあった患者23名を対象とした。年齢、性別、平均在院日数、リハビリ実施期間、転帰先、原疾患、基礎疾患、受傷機転、術式、関節可動域、筋力、感覚障害、Barthel Index(以下B.I)、歩行状態を調査および評価した。
    【結果】
     平均年齢66.3才、性別は男性13人、女性10人で男女差は認められなかった。平均在院日数37.1日のうちリハビリ実施期間は18.7日であった。転帰先は69.6%が自宅に戻っているが、再入院を繰り返す患者が39.1%にも及んだ。原疾患は足趾壊疽39.1%、次いで褥瘡が17.4%であった。足趾壊疽の受傷機転は靴擦れや胼胝、擦り傷が主であった。基礎疾患に心臓疾患や糖尿病があり65.2%は感覚障害も合併していた。術式はデブリドマン、切断術が主で73.9%が入院時に手術適応であった。創部周辺の関節可動域制限、筋力低下が目立ち、大きな改善を認めず退院を迎える患者がほとんどであった。B.Iは入院時平均53.2点、退院時64.3点で向上していた。歩行状態は寝たきりや車椅子中心の患者が30.4%、その他は歩行補助具の使用も含めて見守り~自立レベルであった。
    【考察】
     傷は日常生活上での不注意から生じることが多いにも関わらず、病識が低くADL上で気をつけるべきことを患者自身が把握出来ていないと感じた。リハビリ処方は術後が多く安静期間が長い。その期間に創部周囲筋を中心とした廃用の進行が懸念される。またリハビリ実施期間が短い為身体能力の改善が十分に得られぬまま退院を迎えることも問題である。早期から創部に負担が無い肢位や関節からの介入、また創部除圧のポジショニング、ADL指導の必要性を感じた。創傷患者へのリハビリは創部負担が懸念され消極的となる傾向にある。その為Dr.とカンファレンスを設け傷の治癒状況確認や訓練内容の進行に対して助言を頂くことが大切である。今後は再発予防が一番の課題である。足病変に対してフットケアのリハビリテーション体制を確立していきたいと考える。調査を通して、入院時から患者教育に努め意識改革していくことが予防に繋がり一番重要であることが分かった。
  • ~情報共有に関する現状調査より~
    井上 博隆, 上原 江利香, 黒瀬 一郎, 梅野 裕昭, 佐藤 浩二
    セッションID: 199
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     回復期リハ病棟においては他職種間の協業が必要不可欠である.特にPTとOT間では,目標である退院後の「する活動」に向けて「できる活動」を高めるために日々専門性を発揮していく必要がある.この互いの専門性をいかした協業を行うには患者の「している活動」を適切に情報収集し共有する姿勢が必要であると考える.当院でも,このような考えのもと「している活動」の状況を日々確認し合っている.
     今回,PTとOTの専門性をいかした協業のあり方を考察する目的で,介入頻度の高い排泄動作での情報共有状況を調査した.なお,PT・OTの担当は経験の浅いセラピスト同士とならないように経験年数も考慮に入れ対応している.
    【対象】
     当院の回復期リハ病棟から無作為に抽出した排泄動作に介助を要すCVA患者40名の担当セラピスト,PT25名,OT28名である。経験年数はPT1~9年,中央値2年,平均2.8年,OTは1~12年,中央値2年,平均3.1年である.
    【方法】
     40名の担当PT,OTに対してアンケート調査を実施した.アンケートの内容は,各患者が日中病棟で使用しているトイレでの排泄動作について,「できる活動」と「している活動」の視点で自立・見守り・一部介助・全介助の4段階で評価してもらうと共に,動作工程を1)便器への移乗,2)下衣を下げる,3)便器に座る,4)後始末,5)立ち上がる,6)下衣を上げる,7)車椅子への移乗,の7工程に分け,工程毎にも同様の評価をした.分析はそれぞれの「できる活動」と「している活動」との一致率を算出し統計処理を行った.
    【結果】
     排泄動作の一致率は,「できる活動」は97.5%,「している活動」は90.0%であった.排泄動作を7工程に分けた場合では,「できる活動」では1)80.0%,2)70.0%,3)75.0%,4)57.5%,5)75.0%,6)70.0%,7)85.0%,「している活動」では1)75.0%,2)60.0%,3)65.0%,4)62.5%,5)70.0%,6)57.5%,7)82.5%であり,カイ2乗検定では有位に「している活動」の一致率が低下していた.
    【考察】
     患者の排泄動作の全体像を把握する上では,PT,OTの評価の一致率は「できる活動」「している活動」共に90.0%以上と高いことから良好と判断する.しかし,工程毎に見ると必ずしも正確な情報共有が出来ているとは言い難い.更に,「できる活動」の把握以上に「している活動」の把握は低い状況にある.このことは,「できる活動」を「している活動」に定着させていく上で,看護師,介護職など多職種との情報共有にも影響を及ぼすものであり,今後の情報共有のあり方を再度見直す余地があると考える.具体的には,PT・OT間で協業意識を再確認し,現場での動作要領について,「いつ」「どこで」「どのように」行っているか一つ一つきめ細かく確認し,情報伝達する習慣を定着する必要がある.
  • 道下 裕之, 早川 賢吾, 佐々木 信行
    セッションID: 200
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     患者様が当院リハビリテーション(以下,リハ)部職員のリハの質における「リハ内容」と「接遇」についてどのように感じているかを客観的に把握し,その内容から課題を整理することを目的に満足度調査を行った.
    【対象】
     当院に1ヵ月以上入院しているMMSE24点以上,かつ失語症のないリハ対象患者様のうち,調査の趣旨に同意が得られた36名とした.
    【方法】
     当院の「リハ部指針」や「接遇マニュアル」を参考にして,リハの治療内容や接遇に関する独自の調査票(7カテゴリー,計34問,4件法)を作成した.調査票について患者様に説明後,無記名で記入して頂き,回収箱に投函して頂いた.統計処理はPSポートフォリオ分析を用いた.
    【結果・考察】
     総合的な満足度への影響度が高い項目は直接的に患者様の治療効果に影響するリハ内容に関する項目が多く,影響度が低い項目は,接遇に関する項目が多かった.
     リハ内容の項目別に検討すると,リハの説明については優先的に維持すべきものとして「治療内容の説明に納得」,維持すべものとして「リハ目標の説明に納得」,優先的に改善すべきものとして「目標の説明不足」「治療内容の説明不足」が挙げられ,目標,治療内容ともに説明機会が不足しているものの,説明には納得されている方が多い傾向にあることが示された.このことは,個人によって説明機会の有無に差があると考えられ,今後説明機会を設けることを標準化することが総合的な満足度向上に繋がると考えられた.リハの治療内容では優先的に改善すべきものとして「リハ量への不満」「訓練以外の時間が退屈」が挙げられ,訓練時間外での自主訓練を中心としたスケジュールの導入が必要であると考えられた.
     接遇の項目を検討すると,マナーについては優先的に維持すべきものとして「公休時の連絡ができている」,優先的に改善すべきものとして「よく走り回る」「時間変更時の連絡不足」,言動では優先的に改善すべきものとして「忙しい時の対応が雑」が挙げられた.これらは総合的な満足度の向上のために忙しい時や公休時などのマナーや言動において適切な対応を行っていくことが重要であることが示唆された.
     総合的な満足度への影響度が高い項目全体を見ると,優先的に維持すべきものに挙げられた各項目と改善すべきものに挙げられた各項目は全体の平均値と比較して大きな差が見られず,ともにどちらにも成りうる可能性が考えられた.したがって,優先的に維持すべきものはすぐに改善すべきものとなる危険性があり維持する努力を怠らない必要があること,優先的に改善すべきものは努力すればすぐに改善が可能であると考えられた.
     今回の結果を参考に今後より一層の満足度の向上に努めていきたいと考えている.
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