熱帯農業研究
Online ISSN : 2187-2414
Print ISSN : 1882-8434
ISSN-L : 1882-8434
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究報文
  • 内野 浩二, 熊本 修, 腰替 大地
    2024 年17 巻2 号 p. 39-44
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,高湿度条件下における果皮色の異なるマンゴー品種の着色障害の発生を比較した.本研究では,以下の9品種を用いた:‘甘近星’(果皮色:黄緑色),‘Ataulfo’(黄色),‘Bailey’s Marvel’(黄緑色),‘Carrie’(黄緑色),‘Golden Nugget’(黄緑色),‘Irwin’(赤色),‘Jubilee’(赤色),‘Mallika’(黄色)および‘Tahar’(赤色).また,あわせてこれらの品種の果実品質を比較した.各品種の開花盛期は2月下旬~3月中旬,収穫盛期は6月下旬~7月下旬の範囲であった.高湿度処理は4月下旬に開始し,収穫終了まで行った.処理期間中,湿度は高く維持され,日最高相対湿度の平均値は98%に及んだ.着色障害(赤あざ症およびまだら果症)は,赤色系品種(‘Irwin’,‘Jubilee’および‘Tahar’)では発生したが,赤色系以外の品種では発生しなかった.‘Irwin’および‘Jubilee’では,収穫時期が遅くなるほど,着色障害の発生程度は高くなった.果実重は‘Bailey’s Marvel’および‘Jubilee’では600 gを超え,‘Ataulfo’および‘Carrie’では400 gより小さかった.糖度は,‘甘近星’,‘Ataulfo’,‘Bailey’s Marvel’,‘Carrie’,‘Golden Nugget’および‘Mallika’では,‘Irwin’より高かった.以上のように,高湿度条件下における着色障害の発生は,赤色系品種に特有の生理障害であることを明らかにした.
  • 東 弘菜, 一谷 勝之, 山本 雅史, 志水 勝好
    2024 年17 巻2 号 p. 45-50
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/07
    ジャーナル フリー
    ボタンボウフウ(Peucedanum japonicum Thunb.)は東アジアの亜熱帯から暖温帯地域に固有なセリ科カワラボウフウ属の多年草である.我が国では沖縄県本土と島嶼部から鹿児島県島嶼部に自生しており,沖縄では長命草と呼ばれ,健康に良いと考えられ食されてきた.これはボタンボウフウにはビタミンC, βカロテン,ルテイン,ポリフェノールが豊富に含まれ,多様な抗酸化成分を豊富に含むことが報告されているからである. 本研究では鹿児島県における分布について詳細に調査し,自生地の現状を明らかにすること,伝播の経路の解明の一助とすることを目的とした.今回は調査地として鹿児島県の南さつま市,甑島,奄美大島,種子島,喜界島,沖永良部島,加計呂麻島の沿岸部とした.自生地ではGPSデータを記録し,ボタンボウフウの変種を形態から識別した.その結果,ボタンボウフウは主として海岸の岩場で多く見られ,砂地ではほとんど見られなかった.甑島では標高200 m程度の断崖で観察できた.奄美大島瀬戸内町では,外形からナンゴクボタンボウフウに類似した個体を確認した.調査地のうち,5地域(鹿児島県南さつま市,奄美大島,上甑島,中甑島,下甑島)の本葉を採取しDNA抽出を行い,start codon targeted(SCoT)分析を実施し,その結果に基づきクラスター分析を行った.その結果ME法,NJ法およびUPGMA法の三種の系統樹とも南さつま市,奄美大島および甑島3つのクラスターに分類できた.
  • 松田 正彦, 富田 晋介, 広田 勲, 山本 宗立
    2024 年17 巻2 号 p. 51-60
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/07
    ジャーナル フリー
    農村生業の把握は様々な学術研究や開発実践の基礎にあり,熱帯アジアやアフリカでは特に生業多様性(生業構造)が着目されてきた.しかし,十分に汎用性のある生業多様性の定量的指標は整備されておらず,比較研究やメタ研究を難しくしている.本研究は東南アジアにおける農村世帯の生業構造を表す定量的指標を軸とした簡易な調査手法の提案を目的とする.まず,既存の生業多様度指数を基にして,生計構造多様度指数(Structural Livelihood Diversity Index: SLDI)と生計配分多様度指数(Distributive Livelihood Diversity Index: DLDI)を定めた.次に,両者の標準化のために生計活動種別の12基本区分を設定した.加えて,簡便化した5段階の範囲区分を用意し,DLDIの簡易的な適用を可能にした.さらに,具体的な調査事例での算出と検討およびモンテカルロ法による精度評価をおこない,上記手法が東南アジア農村において一定程度の妥当性を持って適用できることを明らかにした.以上から,SLDIとDLDIの2指数と生計活動種別の12基本区分と占有割合データの5範囲区分の運用基準を合わせたパッケージを簡易生業構造調査法とした.
短報
研究集会
feedback
Top