【要旨】近赤外分光法(near infrared spectroscopy: NIRS)による脳機能計測は、無侵襲・無騒音であるため、音声言語を使った乳幼児の研究に最適である。しかしいくつか制約があり、(a)微弱な光を使用するため、光の到達範囲は数cm以内である。(b)頭皮上から記録するため、脳表までの組織構成と厚さに差が大きいと光の経路が異なり、記録される脳体積が異なる。(c)光路は楕円形に広がるため、位置によって感度むらが生じる。(a)により脳深部の情報が得られないが、逆に対側からの信号が混入することはない。(b)は左右の対応部位を比較する場合には解剖的にほぼ同じであることが期待できる。(c)賦活領域にある程度の広がりがあれば影響は出にくいが、光端子位置を同じにして比較をするなどの注意が必要である。左右側頭部の聴覚性言語反応について、側化指数(Laterality Index, LI)を(L-R)/(L+R)で定義し(LとRは左と右の反応最大値)、光端子の位置を同じに保って複数の条件下で記録を行った。課題は、音韻・抑揚の違いを含んだ単語の受動的聴取時の脱馴化反応である。音韻対比・抑揚対比の反応のLIの差を検定すると、右利き成人では85%で音韻応答が抑揚応答より左に側性化しており、左利き成人では半数が左右逆転していた。発達的にはLIの左右差はほぼ満1歳以降で有意となり、これを聴性言語発達の指標とすることができる。
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