認知神経科学
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9 巻, 1 号
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  • Julian Paul Keenan
    2007 年9 巻1 号 p. 3-6
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
  • 牧 敦, 小幡 亜希子, 田中 尚樹, 桂 卓成, 小泉 英明
    2007 年9 巻1 号 p. 7-12
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】現在、様々な脳機能イメージング法が開発され、認知そして神経科学の融合が始まってきている。しかし、人の機能は遺伝子・脳・行動と大きく3階層に分けることができ、脳機能イメージング法で計測できることは脳の機能に限られる。この3階層は、それぞれ異なる計測方法によってそれぞれの特性を明らかにすることが可能であり、これら計測方法の統合によって人の理解へ1歩進むであろう。まず、行動から計測される個人の立体視能と光トポグラフィによって計測される立体視時の脳活動の関連性を示した。この結果から、立体視能によって2群に分けられた被験者が立体視を行った際、頭頂連合野・後頭頂連合野における脳血液量(総ヘモグロビン濃度変化)が立体視能と同様な傾向を示すことがわかった。次に、採血によって決定されたアセトアルデヒド代謝酵素の遺伝子多型と、光トポグラフィによって計測された視覚刺激に対する脳活動(飲酒時)の関連性を示した。この結果からは、遺伝子によって2群に分けられた被験者がチェッカーパタン(赤黒8Hz反転)を見た際、後頭葉1次視覚野近傍における脳血液量が遺伝子多型によって異なる時間経過を取ることが明らかとなった。本論文では、これらの実験結果を再構成し、異種計測方法の統合によって、人の本質的な理解が深まる可能性を議論する。
  • 檀一 平太
    2007 年9 巻1 号 p. 13-18
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】光トポグラフィは頭表上に設置したプローブから脳の活性状態を血流変化として計測する方法である。しかし、光トポグラフィの測定プローブは頭表上に置かれるため、補助的撮像を使わなければ、脳のどこを測っているのかが分からないという問題があった。これを解決するために、光トポグラフィのみで脳活動データの空間解析が行える方法として、頭の上からその下にある脳の位置を確率的に推定する、「確率的レジストレーション法」を開発した。その結果は、標準脳座標系上の座標値として表現され、推定精度は概ね1cm以内である。これによって、光トポグラフィと他の脳機能研究手法による脳機能計測データの相互参照が可能となる。
  • 精山 明敏, 大井 康浩, 関 淳二
    2007 年9 巻1 号 p. 19-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】非侵襲脳活動計測装置には、計測されるパラメータの違いから、1)神経活動を直接反映した信号変化を検出する脳磁界計測装置(MEG)や脳波計測装置(EEG)、2)代謝活動を測定することのできる磁気共鳴スペクトル装置(MRS)や陽電子放射断層撮像装置(PET)、さらに、3)血行動態の変化を測定することのできる機能的MRI(fMRI)や機能的NIRS(fNIRS)などがある。これらの装置を用いてヒトの脳活動計測を行う際に、我々は、神経活動の変化、代謝活動の変化、血流変化の三つの生理学的なパラメータの間には密接な関係(tight coupling)が存在することを暗黙の前提としている。特に、3番目のfMRIやfNIRSは脳活動の変化にともなって生じる局所的な血行動態の変化を測定しており、測定された血行動態の変化が真に刺激入力に対応した神経活動を反映しているかどうか、詳細に検討する必要がある。本研究では、1)動物を用いたモデル実験により、神経応答関数、代謝応答関数、血管応答関数などの生体応答関数を求め、2)それらの関数を用いて、ヒトの脳賦活検査におけるfNIRS(やfMRI)の信号変化が入力刺激に対応した神経活動をどの程度反映しているか検討した結果について紹介する。
  • 上田 之雄
    2007 年9 巻1 号 p. 24-29
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】多チャンネル時間分解分光装置を用いた反射型時間分解トモグラフィによりmental task中の脳内ヘモグロビン濃度分布の3次元画像化を試みた。成人の脳では透過光の検出は困難なため反射光を利用し、さらに脳の奥行き方向の分解能を考慮して時間分解分光法を採用した。画像化アルゴリズムには散乱と吸収が独立であるという仮定に基づき、散乱媒体内の光の振る舞いから我々が導きだした吸収に依存しない時間分解型光路分布を用いた。また脳機能タスク時の血液変化による光量の変化量は数%程度と少なく絶対値の画像化は困難であるため、変化分に対する画像化を試みた。その結果、前頭前野部における脳内の各ヘモグロビン濃度の不均一性を示し脳機能診断の可能性を示した。
  • 森 浩一
    2007 年9 巻1 号 p. 30-37
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】近赤外分光法(near infrared spectroscopy: NIRS)による脳機能計測は、無侵襲・無騒音であるため、音声言語を使った乳幼児の研究に最適である。しかしいくつか制約があり、(a)微弱な光を使用するため、光の到達範囲は数cm以内である。(b)頭皮上から記録するため、脳表までの組織構成と厚さに差が大きいと光の経路が異なり、記録される脳体積が異なる。(c)光路は楕円形に広がるため、位置によって感度むらが生じる。(a)により脳深部の情報が得られないが、逆に対側からの信号が混入することはない。(b)は左右の対応部位を比較する場合には解剖的にほぼ同じであることが期待できる。(c)賦活領域にある程度の広がりがあれば影響は出にくいが、光端子位置を同じにして比較をするなどの注意が必要である。左右側頭部の聴覚性言語反応について、側化指数(Laterality Index, LI)を(L-R)/(L+R)で定義し(LとRは左と右の反応最大値)、光端子の位置を同じに保って複数の条件下で記録を行った。課題は、音韻・抑揚の違いを含んだ単語の受動的聴取時の脱馴化反応である。音韻対比・抑揚対比の反応のLIの差を検定すると、右利き成人では85%で音韻応答が抑揚応答より左に側性化しており、左利き成人では半数が左右逆転していた。発達的にはLIの左右差はほぼ満1歳以降で有意となり、これを聴性言語発達の指標とすることができる。
  • 渡邊 正孝
    2007 年9 巻1 号 p. 38-44
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】認知神経科学は非侵襲的脳機能測定法の進歩により大きな飛躍を遂げ、どのような精神作業時に脳のどの部位がどのくらい活動しているのかを非侵襲的に捉えることができるようになった。認知神経科学においては、人に比べてはるかに知的機能の劣った動物を用いた研究など、もはや必要がなくなった、という声すら聞かれる。しかし、非侵襲的脳機能測定法では「特定の精神活動に関係していつ、どの脳部位がどの程度活性化するのか」、が、わかるとしても、「そこでどのような情報処理が行われているのか」については明確にしてくれない。一方、動物実験の中でも、サルなどの高等哺乳類を用いた最近の研究では、記憶、意思決定、期待などの高次な精神活動を支えるニューロンメカニズムや神経伝達物質の動態について重要な知見が数多く得られている。実験技術の進歩に伴い、動物が感じ、考えていることに関し、あたかも「覗くかのように」その内容を、従来に比べてはるかに詳しく捉えることができるようになっている。こうした知見は、いかに最近の進歩があっても非侵襲的脳機能測定法では得ることができないものであり、認知神経科学における動物実験の重要性は、今日でも全く減ずることはないと言える。ちなみに非侵襲的脳機能測定法による研究では、従来の動物実験の結果や人での損傷研究の確認に終わっているものが多く、この方法で新たに解明された知見は極めて少ないのである。
  • 安東 潔
    2007 年9 巻1 号 p. 45-48
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】アルツハイマー病を含むいくつかの神経精神疾患において、認知機能障害は重要な症候の一つである。それゆえ、サル類を用いた認知機能測定法確立ならびに各種薬効評価の検討は前臨床研究として重要な研究課題となる。アカゲザルの遅延見本合わせ反応に関する実験例から、サルでの認知機能実験は、ヒトでの薬効評価に役立ちうることを論じた。しかし、サル類の実験が無条件で正当化されるわけではなく、この動物種でなければ分からない側面が明らかにされ、なおかつ、それがヒトでの薬効などを予測しうる条件が必要である。また、サル類の新しい実験動物としてのコモンマーモセットの神経精神疾患研究における将来性についても論じた。一方、ヒトの認知機能研究において、PETやfMRIなどが利用されるようになり、各種認知機能にかかわる脳内部位が明らかにされつつある。サル類の研究で、これと同じようなことを実施しても多分意味はなく、侵襲的な実験操作などを含めたヒトでの研究には限界がある部分について実施され、なおかつ、それがヒトの認知機能理解に十分役立ちうることが必要となろう。
  • 宮内 哲, 三崎 将也, 寒 重之, 小池 耕彦, 岩田 一樹, 高濱 祥子
    2007 年9 巻1 号 p. 49-55
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】近年のヒトの中枢神経系活動の非侵襲計測では、fMRI・PET等の空間分解能に優れる計測法とEEG・MEG等の時間分解能に優れる計測法の併用あるいは同時計測による、統合的計測が注目されている。fMRIは非常に高い空間分解能と非侵襲性から、ヒトの非侵襲脳機能研究にとって不可欠の計測法となっている。しかしながら、EEGとの同時計測という点に関しては、計測に際して非常に高い磁場を使用するために種々のアーチファクトがEEG上に混入し、PETやNIRSに比べて困難であった。最近になって、さまざまなアーチファクト除去法が考案され、実用化段階に入っている。本稿では、fMRIとEEGの同時計測の意義と、われわれが構築したfMRIとEEGの同時計測システムについて説明した後、fMRIを用いた新たな睡眠研究の可能性について展望する。
  • 荻野 竜也
    2007 年9 巻1 号 p. 56-61
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害、学習障害、発達性言語障害などの内、知能障害が無いか軽いものを軽度発達障害と呼ぶ。発達障害は基本的には行動特徴によって定義されている。したがって、詳細な行動の観察や病歴の聴取が重要であり、幅広く情報を収集する必要がある。診断の補助ツールとして種々の質問紙や構造化面接法が考案されているが、日本語に翻訳された感受性と特異性が高いものはない。多くの患者では何らかの共存症を認めることに留意する必要がある。診断には必須ではないが、療育や教育の計画に神経心理検査は有用である。障害毎のWISC-III得点プロフィールの特徴はある程度は認められるが、個人差が大きい。
  • 鈴木 美穂, 岡村 信行, 谷内 一彦
    2007 年9 巻1 号 p. 62-65
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    【要旨】非侵襲的脳イメージング法には、血流量を指標として脳機能を計測する機能イメージングと、神経伝達物質とその受容体の働きに着目した分子イメージングがある。PET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)は、きわめて高い感度と定量性を特徴とする重要な非侵襲的脳イメージング法である。われわれは、機能イメージングと分子イメージングの両者を組み合わせ、さまざまな分野の研究を行っている。本総説では、これまで行ってきた高次認知機能研究、効ヒスタミン薬の鎮静性評価、疾患特異的タンパクのイメージング研究を中心に、脳研究におけるPETの幅広い応用を紹介する。
  • 五十嵐 雅文, 麓 正樹, 有田 秀穂
    2007 年9 巻1 号 p. 66-73
    発行日: 2007年
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    統合失調症における自発的運動の障害は臨床的にもみられる。統合失調症では運動の準備や意図などの運動プログラミングにおいて困難があるとされている。運動関連電位(BP)は運動準備機能を反映する。しかし、過去の統合失調症におけるBP研究にはいくつかの矛盾した結果が報告されている。そこで、我々は、統合失調症のBPについて再評価を行った。薬剤性の影響がある患者は対象から除外した上で、単純および複雑な手指運動のBPを陽性症状の強い患者(11人)、陰性症状の強い患者(13人)、そして健常者(11人)にて測定した。健常群と2つの患者群との間において比較を行った。実際の運動パフォーマンスの評価としてペグボードやタッピングを用いた。複雑な手指運動の後期BP成分において、健常群と比し陽性症状の強い群では統計学的有意に振幅が大きく、陰性症状の強い群では有意に振幅が小さいという顕著な結果が得られた。また2つの統合失調症群はともに健常群より統計学的有意に運動パフォーマンスが悪かった。この異常なBP変化は、BPの起源とされる補足運動野や感覚運動野に統合失調症にて機能障害があることが推察できる。さらにBPは運動準備機能を反映するので、統合失調症においてみられる運動パフォーマンスの悪さは、運動準備機能を必要とする複雑な課題での統合失調症群における不適切なBPの水準がその一要因となっていると考察した。
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