認知神経科学
Online ISSN : 1884-510X
Print ISSN : 1344-4298
ISSN-L : 1344-4298
最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
表紙
会告
目次
巻頭言
総説
  • 渡辺 茂
    原稿種別: 総説
    2023 年 24 巻 3+4 号 p. 79-86
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    【要旨】海馬と空間認知の関係は認知神経科学の大きな課題であるが、魚類を対象とした研究は限られている。ウナギは大規模回遊をすることで知られているが、個体レベルでの空間行動の研究は少なく、脳研究も少ない。本稿では、新しい脳の大きさの指標を用いたウナギ脳の特徴を調べる解剖学的研究を紹介するとともに、空間学習の実験的研究を紹介し、視覚手がかりを用いた空間学習、水流を手がかりとする空間学習が可能であることを示す。さらに、大脳損傷の研究から大脳背外側内側部が感覚情報を受け、そこから哺乳類海馬との対応が示唆される背外側腹側部にその情報を送るモデルが提起された。ウナギは完全野生から完全養殖(海を知らない個体)までの個体が利用できる可能性があり、生育環境と脳の発達の研究にも役立つことが期待される。

原著
  • 宮﨑 圭佑, 山田 純栄, 川崎 聡大
    原稿種別: 原著
    2023 年 24 巻 3+4 号 p. 87-92
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    【要旨】 文字や図形の認知に課題を抱える児童の視覚認知過程の弱さが報告されている。このような視覚認知過程の問題に対して、触覚を利用した学習支援が試みられており、学術的な根拠に基づいた効果の検証が求められている。本研究では、視覚性記憶検査であるRey-Osterrieth複雑図形検査 (Rey-Osterrieth Complex Figure Test:以下ROCFT)に着目し、独自に加工した立体図版を作成して触覚学習実験を行った。触覚学習がROCFTの成績向上にどのような影響を与えるかを調べることで、視覚記憶への寄与について検討した。対象者はVision-Haptic群(V-H群)とVision群(V群)の2群に分けられた計52名の健常成人である。1回目再生課題を実施した直後に、V-H群は立体図版を「見ながら触れる」再学習を、V群は通常図版による「見る」再学習を行った。この再学習から24時間後に2回目の再生課題を実施した。ROCFTの得点を従属変数、学習方法の違いによる群と学習の事前事後を独立変数とし、二元配置分散分析を行った。さらにROCF総得点に加えて、図形を3つの下位ユニット(外部、部分、内部)に分けて、ユニットごとの得点も同じ手法で分析した。結果、2群間の交互作用が有意となりV-H群はV群よりROCFT再生成績の向上が大きいことが分かった。V-H群においては、視覚と触覚の2つの手がかりを利用することで、よりROCFの外部形状を中心とした精緻かつ具体的なイメージの形成と表出が可能になったと推測する。触覚-視覚情報の認知的統合が視覚性記憶を促進させる可能性を確かめられた。

  • 惠 明子, 鈴木 暁子, 愼 重弼, 安村 明
    原稿種別: 原著
    2023 年 24 巻 3+4 号 p. 93-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー

    【要旨】 書字は視覚認知機能やワーキングメモリなど多くの認知的要素が関連し表出される。ワーキングメモリや抑制機能などの要素的な認知発達についての研究が盛んに行われているが、書字の発達的変化については未だ明らかにされていない。神経発達症は特異的な認知発達を主徴とすることが知られる。筆者らはこれまで、神経発達症と書字形態との関連性や自閉スペクトラム症傾向と書字動態との関連性について報告した。しかし、書字速度や筆圧の分散等の詳細な書字動態の指標との関連性については十分に検討されていない。本研究では書字動態の発達的変化と神経発達症傾向との関連性について、詳細な解析を加え報告する。対象は通常学級に在籍する小児27例 (男児12例、女児15例、平均12.4歳) と成人26例 (男性15例、女性11例、平均27.3歳) であった。書字動態はペンタブレットで取得可能な時間と筆圧を細分化した5つの指標を用いた。結果、発達的変化では小児と比較して成人で書字速度の短縮を認めた。神経発達症と書字動態との関連性については小児において、注意欠如・多動症傾向と筆圧の分散に相関関係がみられ、自閉スペクトラム症の質問紙の下位項目である細部への関心と書字速度との間に相関関係が認められた。それぞれの神経発達症に特徴的な書字動態が表出される結果が得られ、神経発達症の診断補助としての書字動態の有用性が示唆された。

会則
投稿規程
奥付
feedback
Top