家兎食道ニ極メテ伸展性ニ富ム「ゴム」球一-三個ヲ挿入シ食道反射運動ヲ描寫シテ次ノ種類ヲ得タリ。
〔一〕限局性反射。伸展性刺戟ノ與ヘラレタル部位ニ限局セル週期性蠕動ナリ。刺戟好適部位ハ胸部食道ニシテ腹部之ニ次グモ、収縮頻度ハ胸部及ビ頸部ハ同一ニシテ腹部稍之ニ劣ル。刺戟強度ナル時ハ本運動ノ存續短カク、又刺戟ヲ緩徐ニ増加シテ一度ソノ上限點ニ達セシメシ場合ニハ、之ヲ漸減スルニ際シテハ本反射ハ發現セザルモ、尚ソノ上限點ニ達セシメザリシモノハ之ニ反ス。食道ノ二箇所ヲ同時ニ刺戟スルニ收縮頻度ハ同一ニシテ、然モ下部ハソノ收縮上部ノモノヨリ一定ノ遲延チ示セルモ、コハ兩所各別ニ存スル限局性蠕動ナリ。
〔二〕非限局性反射。(A)全反射。刺戟ヲ食道ノ何處ニ加フルトモ必ズ嚥下動作ヲ以テ始マリテ噴門ニ傳播スル蠕動ニシテ所謂正常嚥下蠕動卜本態同一ナリ。刺戟好適部位ハ頸部食道ニシテ、發現頻度ハ刺戟ノ強度ト平行ス。
(B)下位反射。前者ト同一本態ナルモ唯蠕動が刺戟部以下ニノミ波及スルモノナリ。發生刺戟ハ食道内ノ高壓ヲ急ニ除去スルコトニシテ隨所ニ發セシメウルモノナリ。
上記ノ諸運動ニ對スル反射弓ハ總テ迷走神經ニ存シ而モ一側内ニモ在リ。交感神經又ハ頸部脊髓ヲ截斷スレスバソノ運動多少亂ル(自抄)。
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