新第三系堆積岩に由来する酸性硫酸塩土壌の改良には,過酸化水素酸化一水酸化カルシウム粉末添加緩衝曲線法によって求めた中和石灰量が,現地の土壌改良試験によって高収を示した石灰施用の区とほぼ一致し,中和石灰量を求める方法として合理的かつ実用的であることが確証された。その際の炭酸石灰の適正な所要量は4,000kg/10aであった。なお畑作物ではこれよりやや多い施用量(約2割増)で最高収量がえられた。その際の作物の養分吸収は,水稲と畑作禾本科作物とで特徴的な傾向が認められ,とくにFeやSは低減してゆき,Mnは畑作物において低減してくることが示された。跡地土壌について,分析結果から石灰施用によってよく酸性が改良されることが明らかである。また施用石灰量の増大に伴ないCaO含量は増大し逆にSは減少してくること,Fe_2O_3は水田では増大するが畑では減少し,Mn_2O_3は何れも土壌pHの増大により減少してくる傾向が認められた。母材および土壌pHの変化により,検出量に差が示された重金属成分があったが,何れも農用地汚染防止の規準値以下であり,酸性の改良を適正に行ないさえすれば農耕地土壌として特には問題のない土壌であることが確証された。かくして新第三系の地層を砕屑して耕地土壌とする際の理論的根拠と実用的な改良方策が明らかに示された。
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