南房総嶺岡山系において蛇紋岩および玄武岩に由来する4地点の土壌について,土壌断面形態の記載,一般理化学性,遊離酸化鉄の形態および粘土鉱物組成の分析を行い,その生成過程および分類学的位置づけを考察し,暗赤色土およびその類縁土壌に関して現行土壌分類体系の問題点とその改善案を検討した。その結果,蛇紋岩上のKa-1とKa-2は,それぞれ未熟土または岩屑土として分類され,現行の分類体系間に大きな相違は認められないが,玄武岩由来のKa-3とKa-4は日本の統一的土壌分類体系-第二次案(2002)では褐色森林土大群,包括的土壌分類第1次試案(2011)では暗赤色土大群に分類され,大群レベルで大きく異なった。また,WRB(2006)とSoil Taxonomy(2010)では,Ka-3とKa-4はともにCambisolまたはInceptisolに相当し,塩基飽和度により下位カテゴリーで細分された。しかし,WRB(2006)ではChromicを付記することにより,暗赤色を表記できるが,Soil Taxonomyでは土色は反映されなかった。玄武岩由来のKa-3とKa-4は断面の形態学的特徴や理化学性において,暗赤色土の中心概念に適合するため,暗赤色土大群に分類されることが望ましいと考え,日本の統一的土壌分類体系-第二次案(2002)の改善案として,暗赤色土大群の母材の限定を外すことを提案した。また,包括的土壌分類第1次試案(2011)では,暗赤色土大群の分類基準として,交換性Ca/Mg比を導入し,「石灰性」「マグネシウム質」「酸性」「普通」の4群に細分することを提案した。
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