土壌の生成に及ぼすササ植生の影響を亜高山帯に属する長野県根子岳山頂(標高2,195m)のチマキザサ密生地において調査し,一般理化学的性質,遊離酸化物および腐植の形態などを検討した。その結果はつぎのとおりである。1)土壌の断面形態は黒ボク土に類似しており,40cmほどの厚さの黒色(7.5 YR 2/1〜2)のA層が特徴的であった。2)pHは全層にわたって低く,酸性を呈した。リン酸吸収量はA_3層およびBC層で7,000mg/100g乾土近くの値となった。3)Al_2O_〓の溶出量は下層ほど高い値を示し,ポドゾル化作用を受けていることが推定された。4)炭素量はA_<11>層およびA_<12>層で20%以上を示したが,腐植の性質からは黒ボク土の腐植とは異なっていた。また,腐植の形態分析では,両層位で腐植酸C%(乾土あたり)が6〜8%にまで達していたが,腐植酸のタイプは全層を通じてP型であった。5)以上のことから,P型腐植酸でも多量に集積すれば,厚い黒色のA層を形成することが明らかになった。
抄録全体を表示