青海チベット高原東部澤庫県の高山草地土壌の特性と草地の退化に伴う土壌肥沃度の変化を明らかにした。軽度退化高山草地土壌は,mollic層をもつHaplic Phaeozem(Siltic, Calcaric)であり,退化土壌はmollic層をもたないHaplic Cambisol(Siltic, Calcaric)であった。土壌は石灰質レスを母材とし,土性はUSDA法によるとsilt loamであり,粘土鉱物組成はイライト,カオリナイト,バーミキュライト,クロライトであった。表層土の有機態炭素含量は14,8〜39.5g kg^<-1>,全窒素含量は1.4〜4.0g kg^<-1>,陽イオン交換容量(CEC)は10.7〜25.4cmol_c kg^<-1>であった。土壌のpH(H_2O)は7.6〜8.8の間にあり,74〜104g kg^<-1>の炭酸カルシウムを含むが,炭酸カルシウムの二次的集積は認められなかった。また,塩類の集積も見られなかった。表層土の可給態窒素含量は35〜66mg kg^<-1>,可給態リン酸含量は6〜20mg P_2O_5kg^<-1>であり,いずれの土壌でもきわめて低い水準であった。草地の退化とともに表層土において有機態炭素含量,全窒素含量,CECおよび可給態窒素含量の明らかな減少とpH,塩基飽和度および炭酸カルシウム含量の増大が見られた。
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