東京都奥多摩の自然林であるツガ林とブナ林を中心として,植生と土壌との対応関係を考察した。その結果,ツガ林ではブナ林に比べて,A_0層およびA層のpHが低く,A層はうすく,A層の置換性カルシウムも少なかった。さらに,同じツガ林やブナ林の中でもそれぞれの植生の下位単位ごとに,pHや置換性カルシウム量等に差がみられた。この性質の差は土壌型にもあらわれ,ブナ林の典型下位単位の土壌は典型的B_D型であり,ツガ林の典型亜群集の土壌ではB_B型であった。これらの対応は,植生下位単位が現地での土壌型の決定に有用であることを示唆している。また,この植生と土壌との対応はA_O層およびA層の厚さやA層のpHや置換性カルシウムの測定値を用いた主成分分析を仲立ちとして,より詳しく明らかにできた。即ち,塩基の豊富さの因子と粗大堆積腐植の未分解さの因子による分類は,各土壌型(B_B, B_D, B_E)と良く対応するとともに,それぞれの植物群落単位ともよく対応した。こうして同じ植物群落中のそれぞれの下位単位のもつ性質を浮かびあがらせることができた。
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