中国吉林省の中西部に分布する4種類の土壌(湿草地性黒色土,黒色土,淡色チェルノーゼム,アルカリ土)を用い,ナトリウム飽和後,超音波分散し,沈降法と遠心法を繰り返して,細砂(20〜200μm),シルト(2〜20μm),粗粘土(0.2〜2μm),細粘土(0.2μm以下)相当の有機・無機複合体を分離した。各複合体画分について,酸添加DMSO溶媒によって腐植酸を抽出し,1%吸光係数(E_<600>値),元素組成,官能基組成,XAD樹脂により分画される成分組成の測定を行い,中性糖,アミノ酸,リグニンの定量を行った。得られた結果は以下のように要約される。1)いずれの土壌も粒径が細かくなるほど有機・無機複合体の存在率は減少した。複合体炭素と土壌有機炭素の比から,有機炭素の濃縮率を求めると,4土壌とも粗粘土複合体に有機炭素が濃縮しており,チェルノーゼムとアルカリ土ではシルト複合体にも有機炭素が濃縮していた。いずれの土壌も粒径の低下とともに複合体有機物のC/N比は低下した。2)DMSO抽出腐植酸のE_<600>値は粗粘土複合体が最も高く,シルト>>細粘土,細砂複合体の順に低下した。腐植酸のH/CとO/C比を比較し,粗粘土,シルト複合体の腐植酸は細粘土,細砂複合体腐植酸よりも脱水反応と脱メチル反応を強く受けていると推察した。3)いずれの土壌も,粗粘土,シルト複合体の腐植酸は,細粘土,細砂複合体の腐植酸に比べ,カルボキシル基およびフェノール性水酸基含量,カルボキシル性成分の存在率が高く,アルコール性水酸基含量,脂肪族性成分の存在率が低い特徴が見られた。4)同一土壌の粗粘土,シルト複合体から抽出した腐植酸中のヘキソース,ペントース,アミノ酸およびリグニン含有量は細粘土,細砂複合体から抽出された腐植酸中の同成分量より少なかった。5)主成分分析を行い,2つの主成分が腐植酸の量的因子と質的因子を表すことを認めた。主成分得点をもとにしたクラスター分析によって区分された複合体のグループは,土壌および複合体の粒径の違いを明瞭に表した。
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