阿蘇火山西方に分布し,風乾すると著しく収縮,硬化する埋没火山灰土壌「ニガ土」に対して,風乾に伴う硬化,収縮および水漬時の土塊細塊化と砕易化の定量を行い,ニガ土の硬化と微細形態,理化学性,鉱物学的特性および元素組成との関係について解析した。1)ニガ土地帯の代表土壌断面の14の層すべてで,生土の土壌の一軸圧縮強度(kg/cm^2)は5以下であった。風乾すると,多くの層(ニガ土)で土塊の一軸圧縮強度は10以上に増大したが,強度が増大しない層(非ニガ土),増大の程度が小さい層(非ニガ土に近い層)もあった。土塊の体積は,風乾するとほとんどの層で生土時の58%以下まで収縮した。生土時の65%以上と収縮程度が小さい層が3層見られ,それらは全て非ニガ土または非ニガ土に近い層であった。風乾時のニガ土の一軸圧縮強度と収縮は,非ニガ土および各地の火山灰土壌の風乾時の一軸圧縮強度(5以下)と収縮(ほとんどが生土時の70%以上)にくらべ著しく大きかった。また日本および世界各地の種々の硬盤層についての報告事例と比較してもニガ土の一軸圧縮強度は大きかった。2)ニガ土の土塊は,風乾と水漬の処理を4回反復した後でも径2mm以下の細土が6%と,細塊化の程度が小さかったのに対し,非ニガ土の土塊は2回の処理でほぼ全てが細土になった。3)ニガ土の土壌微細形態は,生土と風乾のどちらの状態でも孔隙割合が12%以下と少なく,バグ状の孔隙同士が連続していない微細構造型であった。これに対し,非ニガ土や非ニガ土に近い性質の層は,生土の状態では孔隙割合や微細構造型は様々だったが,風乾の状態では孔隙割合が27〜31%と大きく,小粒状,軟粒状,海綿状といった孔隙同士が互いに連続している微細構造型であった。4)断面各層の乾燥に伴う硬化度合いと,粒径組成などの物理性,および土壌微細形態との間には関係が見られたが,化学性,一次鉱物組成,粘土鉱物組成および無機元素組成との間には関係が認められなかった。
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