PLANT MORPHOLOGY
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18 巻, 1 号
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  • 安積 良隆
    2006 年 18 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:近年,シロイヌナズナ等で減数分裂期に異常が生じる挿入変異体が数多く報告されるようになり,またそれらを解析する様々な技法が確立されて,ようやく植物でも減数分裂の分子遺伝学に基づく解析が可能になってきた.当研究室でもシロイヌナズナを用いて,相同染色体の対合過程を制御するしくみを明らかにすべく,研究を行ってきた.その研究の一環として,相同染色体の対合できない変異体を単離し,その原因遺伝子の解析を行ったところ,この遺伝子,SOLO DANCERS,は減数分裂時に特異的に発現するサイクリンの遺伝子であることがわかった.このことからシロイヌナズナでは,相同染色体の対合にサイクリンが必要で,この遺伝子の変異体では相同染色体同士が全く接近しないことが明らかになった.また,FISH(fluorescent in situ hybridization)法を用いた減数分裂期の染色体の詳細な解析により,対合の開始時期にセントロメア同士が接着している様子や相同染色体分離時には染色体が末端部分で連結されている様子が観察され,セントロメアとテロメアにはこれらの時期に果す,まだ知られていない働きがあることが示唆された.
  • 田中 一朗
    2006 年 18 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:被子植物の花粉発生では, 雄原細胞と栄養細胞の分化が有性生殖成立のために必須であり, その分化は減数分裂後の小胞子のたった 1 回の不等(細胞)分裂に起因する. 小細胞の雄原細胞は, その後分裂により 2 個の精細胞となり, 雄性配偶子細胞として受精に機能する. 一方, 大細胞の栄養細胞は, 配偶体細胞として機能し, 花粉管を伸長することによって配偶子を胚のうまで運搬する. 構造や機能が大きく異なるこれら2種類の細胞を生み出す不等分裂の機構を探るために, 我々は両細胞の遺伝子活性に大きな影響を与えるであろうクロマチン形態の差異(雄原核: ヘテロクロマチン, 栄養核: ユークロマチン)に着目した. そこで, ゲノムサイズが巨大なテッポウユリを材料に, 花粉プロトプラストを用いた独自の実験系によって単離・精製した雄原核と栄養核のヒストン構成について生化学・免疫学的比較を詳細に行うとともに,単離したヒストン遺伝子の発現解析を行った. その結果, ヒストン(変種)群の中から, 1)両核に共通して存在する, 通常の複製依存型ヒストンの他に, 2)雄原細胞で特異的に遺伝子発現し, 雄原核と精核に局在するヒストン変種(gH2A, gH2B, gH3), 3)栄養細胞で特異的に遺伝子発現し, 栄養核に局在するヒストン変種(H3.3)を見出すことができた.
  • 野口 哲子
    2006 年 18 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:シロイヌナズナの花粉の形成・成熟過程, および, ムラサキツユクサの花粉管伸長過程における液胞系(液胞, 小胞体とゴルジ体)の分化を中心に解説する. 第一有糸分裂による生殖細胞の形成に先だってミクロ胞子内に出現する大型の液胞は,栄養細胞由来の小さな液胞の融合と吸水によって形成された. 第一有糸分裂後の未成熟な花粉では, 大型の液胞は分断して小型化した. この分断は求心的ではなく, 液胞膜が一端から他端へ陥入する独特の様式であった. 分断された液胞はエクソサイトーシスによって消失した. 開花直前の成熟花粉には, 膜で囲まれた繊維状物質を含む構造が多数出現した. この時期の花粉に, β-液胞プロセシング酵素遺伝子の発現が検出されたため, 膜で囲まれた繊維状物質を含む構造は貯蔵型の液胞であると判定した. この時期の花粉が発芽すると, 貯蔵型液胞は花粉粒の基部で大型の液胞へと変化した. 一方, 発芽しなかった花粉では, 貯蔵型液胞は酸性ホスファターゼ活性を示すリソソーム様の構造(分解型液胞)へと変化し, 細胞内成分を分解した. 花粉管基部に発達する液胞は, 吸水, および, 小胞体や脂質滴が関与する膜の供給によって体積を増大すると考えられた.
  • 東山 哲也, 浜村 有希
    2006 年 18 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:花粉管ガイダンス分子(誘引物質)の存在がはじめて提唱されたのは,19世紀後半とされる.培地上で発芽した花粉管が,雌蕊組織に向かって伸長する様子が観察された.それ以来,150年近くにも渡って多くの植物学者がその同定を試みながら,いまだに誰一人として成功していない.花粉管ガイダンス分子は本当に存在するのであろうかという疑問が提唱されたほどである.しかしこの10年ほどの間の研究で,花粉管ガイダンス分子はまぎれもく存在し,花粉管をガイドしていることが明らかとなってきた.本総説では,これまでの研究から浮かび上がってきた花粉管ガイダンス分子の実体を総括するとともに,ガイダンス分子としての必要十分条件についてあらためて考えてみたい.
  • 長舩 哲齊
    2006 年 18 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:細胞の中では,オルガネラはダイナミックな形態的変化を示す.異なるDNAをもつ細胞核,葉緑体,ミトコンドリアは相互に連携し,融合,分裂,分岐を繰り返しながら細胞周期(cell cycle)の一定の時期に,特定の形態に変化するよう制御されている.われわれの研究室では,同調培養した単細胞藻クラミドモナスおよびユーグレナ細胞を用いて,ミトコンドリアの形態を電子顕微鏡で追跡し,一時的に“巨大ミトコンドリア”が形成される現象を見いだした.そして,ミトコンドリアのダイナミックな動態をcell cycle中に最初に位置づけ,“ミトコンドリア・サイクル”を確立した.また,このような現象は葉緑体でも起こるのではないかと推測し,複数個の葉緑体をもつユーグレナの同調培養集団における葉緑体形態を経時的に追跡した.その結果,葉緑体についても“巨大葉緑体”をみいだし,ダイナミックな“葉緑体・サイクル”の存在を明らかにした.従来から,ピレノイドは光合成酵素リブロース-1 ,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)の貯蔵場所と考えられてきたが,その機能については判っていない.ピレノイドの機能を知るための一歩として免疫電顕法を利用し,ユーグレナのcell cycleにおけるピレノイド構造の変化と光合成酵素RuBisCO分子の動態を経時的に追跡し,ピレノイドが光合成における炭酸固定と密接な関連のあることを明らかにした.
  • 村田 隆
    2006 年 18 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:細胞の伸長方向を制御する構造である表層微小管がどのようにして重合開始するかは,植物の形を制御する機構の理解のために重要であると考えられる.我々は,表層微小管形成の主要経路は微小管上で新たな微小管が枝分かれ状に形成される経路であることを見いだした.微小管の分枝形成は,細胞質γチューブリンが表層微小管上に結合し,結合したγチューブリンが新しい微小管を生じさせることにより起こった.分枝型微小管形成は高等植物細胞における表層微小管以外の微小管構造の形成にも働いている可能性がある.
  • 森稔 幸
    2006 年 18 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:被子植物の受精過程は動物のそれに比べるときわめて複雑であり,配偶子形成から受精の瞬間までが密集した配偶体組織(花粉・胚のう)の中で段階的にとりおこなわれる.この事情から,植物体内での配偶子間相互作用の瞬間やそれに働く因子の知見はこれまで皆無であった.近年,私はテッポウユリの単離雄原細胞(花粉内の雄性生殖細胞)をもとに雄性配偶子で特異的に発現する新規膜タンパク質GCS1(GENERATIVE CELL SPECIFIC1)を発見した.シロイヌナズナのGCS1変異株を用いた機能解析結果から,GCS1は受精の最終段階である配偶子間の接着・融合に働く重要な分子であることが示唆された.また,GCS1は被子植物のみならず粘菌や藻類,原虫類でも保存されており真核生物の接合にひろく関与している可能性がある.この発見はこれまで分子レベルでの知見が全くなかった被子植物受精を理解する上で重要な手がかりであり,有性生殖の基本メカニズムの解明に大いに貢献すると考えられる.
  • 堀口 吾朗, 塚谷 裕一
    2006 年 18 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:植物の葉は有限成長によって形成される器官である.従って,葉のサイズの決定には,細胞数と細胞サイズの制御の両方が重要な役割を果たす.近年,葉や花の各器官における細胞増殖や細胞伸長の制御に関する突然変異株や,遺伝子が続々と報告されている.これらに加え,ある種の突然変異株で葉の細胞数が減少するとともに,最終的な細胞サイズが増加する「補償作用」が報告されている.補償作用は,細胞増殖と細胞伸長との個別制御だけではなく,両者を調和させる機構もまた葉のサイズ決定に重要であることを示唆する.しかし,その分子機構についてはほとんど不明である.本総説では,葉における細胞の数とサイズの制御系について解説し,補償作用を引き起こす原因について考察したい.シロイヌナズナ,細胞増殖,細胞伸長,補償作用
  • Ayumu Kondo, Keiko Shibata, Tatsuya Sakurai, Masahiro Tawata, Toru Fun ...
    2006 年 18 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Summary: In leaves of some succulent crassulacean-acid-metabolism(CAM)plants, including Kalanchoe species, we previously discovered the phenomenon of chloroplast clumping. A combination of light and water stress induced chloroplasts to form spherical bodies within mesophyll cells. In this study we focused on the positioning of nuclei and mitochondria with clumping of chloroplasts in mesophyll cells in leaves of the succulent CAM plant Kalanchoe blossfeldiana using fluorescence microscopy. Under both well-watered and water-stressed conditions, there were several mitochondria around each chloroplast. When subjected to water-stress, chloroplasts gathered around a nucleus and formed a clumped chloroplasts. Three-dimensional analysis of the clump showed that the nucleus was localized within the clump. Our findings suggest that the chloroplast movement in succulent CAM plants is closely connected with the nucleus. We discuss the significance of the organelle interactions in the leaves of succulent CAM plant under drought conditions.
  • 杉山 立志, 志手 真人, 藤野 廣春, 辰尾 良秋, 中村 佐紀子, 覚正 信徳, 伊藤 昌夫, 横田 秀夫, 加瀬 究, 黒崎 文也
    2006 年 18 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    要旨:トウガラシの辛さは,辛味成分のカプサイシンとジヒドロカプサイシンの含有量に比例する.世界一辛いトウガラシといわれるハバネロは日本のタカノツメの10倍以上の辛さを持つ.これらの辛さの違いの主な要因はどこにあるのか,二つの仮説を立てて検証した.一つは生合成関連酵素の量や活性が異なり,いわゆる生合成能が高いことである.もう一つは「生合成の場」が相対的に広いということである.そこで,生合成細胞を特定して,生合成組織あたりのカプサイシン含有量を生合成能とし評価した.生合成関連遺伝子によるin situハイブリダイゼーションにより果実内部の隔壁表皮細胞が生合成を行う細胞であることがわかった.そこで,隔壁表面積を3次元立体構築から算定し,液体高速クロマトグラフィーによるカプサイシン量の測定結果とあわせて,生合成組織あたりのカプサイシン含有量を試算した.辛さの異なる3つのトウガラシにおいて,組織あたりのカプサイシン含有量に大きな差はなく,果実に占める生合成組織の割合の違いが辛さの差を生み出していることが示唆された.
  • 2006 年 18 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 2006年
    公開日: 2010/06/28
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