アルミナセメントを含む低セメントキャスタブルの硬化に対する,ほう酸の遅延機構について検討を行った。アルミナセメント分散液のろ液にほう酸を添加することで,イオン濃度及びpHの低下とともに,Alを多量に含むゲル状沈殿物が生成した。しかしながら,低下したAlイオン濃度とpHは時間経過とともに段階的に上昇した。生成したゲル状沈殿物の溶解性は,Al(OH)3ゲルに似ていた。アルミナセメントを覆うゲル状沈殿物のイオンや水に対する選択的な透過性,及びpH変化に対する溶解性の劇的な変化が,アルミナセメントの水和反応に対するほう酸の遅延機構であると考えられた。キャスタブルにおいて,ほう酸濃度の増加は凝結時間を遅延したが,凝結時におけるキャピラリー水のpHは殆ど同じ値を示した。また,凝結の際にはキャピラリー水中へのAlイオンの溶出が生じた。これらの結果は,アルミナセメント水和反応に対するほう酸の遅延機構が,キャスタブルの硬化についても適用できることを示していた。
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