日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
選択された号の論文の302件中151~200を表示しています
循環器系
  • 原田 拓真, 塩谷 元宏, 阿部 純子, 福島 民雄, 板村 理央, 浜田 悦昌
    セッションID: P-085
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】性腺ホルモンは心電図における性差を引き起こす原因の一つと考えられている。事実、一般的に女性は男性よりも心電図のQT間隔が長く、女性であることが心室頻拍のリスクそのものであるとも考えられている。そこで、本研究では、2種類のK channel (Ikr & Iks) blockerを性腺摘出モルモットと非摘出モルモットに投与した時の心電図QT間隔を比較した。【方法】薬物処置の約4週間前にモルモットの性腺(精巣または卵巣)を摘出し、nifekalant (9 mg/kg)およびchromanol 293B (4 mg/kg)を9週齢の性腺摘出モルモットおよび同週齢の非摘出モルモットに単独または併用投与した。投与前後にテレメトリー計測システムで心電図を記録した。モルモットは心電図記録時に保定用の布に入れ、腹位で覚醒・安静状態に保った。【結果および考察】卵巣摘出の雌(OVX)、精巣摘出の雄(ORCH)および同週齢の非摘出雌雄モルモットのいずれの心電図QT間隔も、薬物処置前は同等の値であった。Nifekalantとchromanol 293Bの併用投与時のQT間隔の延長の程度は、雄より雌の方が大きい傾向が認められたが,雌雄ともに性腺摘出と非摘出との間には明らかな差異は見られなかった。以上のように、モルモットにおいては心電図のQT間隔の変化は性腺ホルモンの変化からだけでは説明できなかった。
  • 西田 昌広, 宮崎 裕康, 佐々木 和彦, 関谷 浩司, 小冷 恵子, 池田 孝則, 錦辺 優
    セッションID: P-086
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    Physiological sensitivity of canine telemetry assay to detect MK-499 induced QT prolongation was compared with those of the following models: pentobarbital-anesthesia (Pento), pentobarbital- anesthesia and vagotomy (Pento+V), isoflurane-anesthesia (Iso) and isoflurane-anesthesia and vagotomy (Iso+V). Telemetry assay was conducted with latin’s square cross-over design in four beagles while the anesthetized assay was performed by cumulative infusion. The magnitudes of the QT prolongation at higher exposure levels ( >5 ng/mL) were as follow: telemetry assay < Pento = Pento+V < Iso = Iso+V, but the concentration of MK-499 that induce 5 to 10% of QT prolongation in the telemetry study was equal to the anesthetized models. These results suggest that telemetry assay is equivalent to the anesthetized models for detecting minimum changes in QT interval of novel compound.
  • 阿部 純子, 原田 拓真, 塩谷 元宏, 浜田 悦昌
    セッションID: P-087
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】イヌの毒性試験における心電図QT間隔の評価は致死性不整脈を予測するパラメーターの一つとされている。しかしながら,QT間隔は心室脱分極時間(QRS)と再分極時間とで構成されており,その評価においては心室脱分極時間をも含んだものとなっている。そこで各種の薬物を投与し,再分極時間に相当するJT間隔およびT波のピークからT波終末の時間(Tp-e)について検討した。【方法】クラスIaに分類される4薬物(pilsicainide, quinidine, disopyramide, procainamide),クラスIIIの2薬物(dl-sotalol, amiodarone),その他2薬物(bepridil, pimozide)を静脈内または経口投与し,無麻酔,懸垂位保定下で心電図を測定した。QRSおよびQT間隔は胸部誘導(CV5RL),RR(HR)およびPQ間隔は第II誘導で測定した。【結果】Amiodaroneおよびpilsicainideを除く6薬物においてQTcおよびJTcが延長し,QTcに比べJTcがその変化率が大きかった。また,pilsicainideはQTc,PQおよびQRS間隔が有意に延長したが,JTcの延長は認められなかった。Tp-eに関しては,今回用いた8薬物では有意な延長は認められなかった。【考察】PilsicainedeにおいてJTcに変化が認められなかったことは,action potential durationへの影響がないとする報告と一致していた。また,QTcに比べJTcの変化率が大きかったことも考え合わせると,JT間隔を評価することは薬物投与時の心筋再分極時間を評価する際に有用であること考えられた。
  • Miyamoto Mutsumi, Cathy Kelly, Sylvie Gosselin
    セッションID: P-088
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    The QT interval is commonly used as a surrogate biomarker to predict the risk of developing a potentially fatal ventricular arrhythmia, known as Torsades de Pointes (TdP). However, since the QT interval and heart rate (HR) have an inverse and non-linear relationship, change in HR has to be taken into account when assessing the test substance’s effect on QT interval. ICH S7B recommends that the QT interval data obtained after administration of the test substance should be compared with control and baseline data at similar HR in addition to the QT correction formula. Since the relationship between the QT interval and HR varies among species and between animals within a species, it is critical to know each individual’s normal baseline QT intervals over wide range of HR prior to test substance administration. A retrospective analysis of data generated between August 2003 and August 2005 was performed to show normal physiological range of the QT interval and HR in 3 different species: Dogs (most commonly used in safety pharmacology studies), nonhuman primate (more appropriate species in case of metabolic profiles of the drug), and minipigs (similar cardiovascular physiological characteristics as humans). The QT intervals were collected through the telemetry device in dogs and nonhuman primates, and 6 lead electrocardiographic tracing in minipigs. The main findings in dogs were the relationship between QT interval and HR are different depends on the source of the animals.
  • 安東 賢太郎, 新宅 芳久, 太田 哲也, 池田 陽一, 佐々木 篤志, 山下 保志
    セッションID: P-089
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【背景】心電図QT延長作用が問題になってから久しいにもかかわらず,毒性試験では相変わらず非生理的な条件での心電図測定が行われている.また,安全性薬理試験は生理的条件で検討しているもののほとんどの場合,単回投与しか行わないため半減期の長い代謝物の影響を含めた検討をするには難しい.そこで,動物に手術を施さないで使用可能なホルター心電計を用いて薬剤連投時の心電図を測定することによりこれらの欠点を補えるかを検討した.【方法】健常ビーグル成犬,雄,4頭にastemizole 10および30mg/kgを7日間に渡って経口投与し,astemizole投与前後のA-B誘導心電図をホルター心電計(フクダME,HS1000 VL)を用いて測定,解析した. さらに,astemizoleおよびその代謝物であるdesmethylastemizoleの血漿中濃度を測定した.【結果】astemizoleは心電図上のQT間隔を用量依存的かつ経日的に延長させた.また,astemizoleおよびdesmethylastemizoleの血漿中濃度は用量依存的に上昇し、反復投与により特にdesmethyl体で上昇が認められた.【考察&まとめ】astemizoleによるQT延長作用は代謝物であるdesmethyl体が主因とされている.本検討でastemizoleの連投により、desmethyl体の血漿中濃度の増加とQT延長作用の増強が認められたことより,代謝物の作用によるQT延長作用が測定できたと思われた.ホルター心電計は着脱が容易であること,生理的な条件下で十分な心電図の測定が可能であること,代謝物が原因となる心電図異常の測定が可能なことから,今後は本方法を毒性試験や安全性薬理試験に取り入れて行くことは有用と思われた.
  • 永山 幸利, 秋江 靖樹, 杉山 賢, 正木 文夫, 門田 利人
    セッションID: P-090
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    目的:安全性薬理試験における心血管系評価は主に無麻酔の動物を用いて行われるが,薬物が心拍数の低下をきたす場合,見かけ上のQT間隔延長が生じる.通常はBazett補正式等を用いて評価する方法が簡便であるが,一般に用いられる補正式では個体ごとの薬物感受性の差による心拍数の変動を適切に補正するのは困難である.そこで我々は,心房ペーシングモデルを用いることで,一定の心拍数下で心拍数低下を示す薬物のQT延長作用を評価した.
    方法:体重9_から_12kgの雄性ビーグルイヌを用いた.イソフルラン吸入麻酔下で大腿静脈よりペーシングカテーテルを挿入し,カテーテル先端部電極を心房内膜に押し付け,400Hzペーシング時のQT間隔を測定した.QTを延長させかつ心拍数を低下させるdl-Sotalol 0.3,1,3mg/kgを前腕橈側皮静脈から投与し,心電図及び血圧の変化を記録した.心電図は動物用心電図解析装置 (6000AX-D,フクダエム・イー工業株式会社) を用いた.
    結果:Sotalolを静脈内投与した結果,用量に依存したQTの延長が評価できた.また,心拍数を150拍に維持したモデルで3時間以上の評価が可能であった.
  • 坂本 憲吾, 大谷 光嗣, 坂本 貢, 野村 護, 佐藤 吉沖, 高原 章, 杉山 篤
    セッションID: P-091
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】薬物によるtorsades de pointes(TdP)の発生を非臨床試験の結果から正確に予知することはこれまで困難であったので,現在のICH S7Bガイドラインは,薬物性TdPを予知できるin vivoモデルの開発を推奨している。最近、我々が開発に成功したカニクイザルの慢性完全房室ブロックモデルの特性をQT延長およびTdPの発生が臨床報告されている薬物を用いて評価した。【方法】体重約3 kgのカニクイザルをpentobarbitalで麻酔し,房室結節を電気的に焼灼して完全房室ブロックを誘発した。心臓のリモデリングが完成した慢性期に,ソタロール,シサプリドおよびアステミゾールを経口投与し, QT延長作用およびTdPの発生頻度を,ホルター心電計を用いて評価した。TdPは,QT延長に引き続いて発生したR on T型期外収縮から始まる多形性心室頻拍が6拍以上連続する場合と定義した。【結果】ソタロール,シサプリドおよびアステミゾール(各5 mg/kg)の投与によりTdPが各々4/5,2/3,3/5例に誘発された。TdPの発生回数は1〜78回,最大持続時間は2分であった。すべてのTdPは自然停止したので、適切な評価間隔を設けることで同じ個体を用いた複数の被験薬の評価が可能であった。【総括】慢性完全房室ブロックサルは薬物性TdPを予知できる有用な催不整脈モデルであることが証明された。薬物代謝には種差が存在するので、既に確立されている慢性房室ブロック犬モデルと併用することで,より信頼性の高い安全性評価が可能になると考えられる。
  • 塩谷 元宏, 原田 拓真, 阿部 純子, 浜田 悦昌, 堀井 郁夫
    セッションID: P-092
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    非循環器用薬によるQT間隔延長作用に対する認識の高まりと共に,有用なin vivo QT評価系が創薬のより早い段階で求められるようになっている。モルモットはその心筋イオンチャネルが他の小動物に比べてヒトに類似していることより,in vitro評価系で乳頭筋活動電位持続時間の測定等に汎用されており, in vivo QT評価系としても関心が寄せられつつある。既に我々はテレメトリー送信機を埋め込んだモルモットを用いて,QT評価に必要な基礎データの収集,およびヒトでQT延長作用が知られている薬物によるバリデーションを実施している。近年,心電図T波のピークからエンドまでの間隔(Tp-e間隔)が,心室再分極時間の不均一性を示す良い指標であるとの報告がされている。そこで本試験では,テレメトリーモルモットでの薬剤性QTc延長時において,Tp-e間隔/QT間隔の比がどのように変化するのかを検討した。また,心室再分極時間を表すパラメータであるJTcに関しても同様に検討した。その結果,Tp-e/QT比は必ずしもQTcの変化に相関しなかったが,9種のQT延長薬物のうち2種においてはTp-e/QT比の著しい増加が見られた。JTcに関しては,QTcとほぼ並行した変化を示し,いくつかのQT延長薬物においてはQTcよりも顕著な延長が確認された。これらの解析結果は,モルモットを用いたQT評価に新たな知見を提供するものと思われた。
  • 小野原 信, 中村 己貴子, 田保 充康, 浅沼 健太郎, 堤 秀樹, 片桐 公一, 木村 和哉
    セッションID: P-093
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    Telemetry study is recommended for evaluating the QT liability of drugs. For establishment of telemetry study, it is important to select appropriate QT/RR correction formulas and confirm the QT prolongation induced by positive compounds. We had already reported that Bazett’s and Fridericia’s formulas are suitable for correcting QT interval against RR interval in miniature swine (JST, P-20, 2005). In this study, we examined the effect of E-4031, selective Ikr channel blocker, on the cardiovascular system including QT interval in order to explain the utility of miniature swine telemetry study for predicting drug-induced QT prolongation.Göttingen miniature swine was obtained from Chugai Research Institute for Medical Science Inc. (male, 4 animals/ group). ECG parameters (PR, QRS, QT intervals and QTc corrected by Bazett’s and Fridericia’s formulas), heart rate and blood pressure were recorded in conscious and unrestrained condition by telemetry system (OPEN ART & HEM). The animals were given intravenous injection of E-4031 at 0.004, 0.02 and 0.1 mg/kg. E-4031 prolonged QT interval and QTc (QTcB or QTcF) in a dose-dependent manner and decreased heart rate at 0.02 and 0.1 mg/kg. In contrast, E-4031 had no effects on blood pressure, PR and QRS intervals at any doses tested. From the result that Ikr channel blockade prolong QTc on miniature swine, it is concluded that telemetry miniature swine is available for evaluating QT-prolonging risk of drug.
  • 寳来 直人, 坂東 崇志, 楊 秀英, 葛西 勇人, 永山 伸一, 戸門 洋志, 福崎 好一郎, 永田 良一, 阿邉山 和浩, 福田 良
    セッションID: P-094
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】大動物の肺傷害をコンピュータ断層撮影法(CT)により検出・評価することを目的に、カニクイザルを用いたオレイン酸(OA)肺水腫モデルを作製し、肺水腫誘発から2週間後までの経時的なCT画像診断及び画像定量解析を行い、CT検査の有用性を確認した。【方法】動物:カニクイザル(雄、3_から_7才)、9例/群、計18例 肺水腫モデル:OAの0.08 mL/kg、単回静脈内投与(対照:生理食塩液) CT検査:Pre、投与1_から_8時間後及び14日後までケタミン麻酔下(仰臥位)で撮影(Scan pitch: 2 mm、Auklet TSX-003A[東芝メディカル]) 画像解析:後葉背側辺縁部のCT値を算出 諸検査:CT検査前に血液ガス検査、剖検時に気管支肺胞洗浄液検査(BALF) 病理組織学的検査(肺):4時間後、1、3及び14日後、n=2_から_3/時点【結果】CT所見:投与1時間後から各肺葉の辺縁部に異常陰影、4_から_8時間後で顕著なすり硝子陰影・斑状浸潤影が出現した。変化は1日後以降に軽減したが、3_から_14日後に線条陰影が辺縁部に出現した。CT値:4時間後をピークとして増加し、1日後以降は投与前値レベルに低下した。血液ガス:1時間後からPao2は急激に低下し、6日後まで低値傾向を示した。BALF:3日後までALAT、ASAT、LDH及びアルブミンが高値を示した。病理組織学的検査:3日後まで肺胞浮腫、出血、炎症性細胞浸潤、肺胞壁壊死、毛細血管内の血栓形成性等の変化がみられ、3日後で_II_型上皮細胞の過形成、14日後で胸膜線維化及び肺胞壁の線維性肥厚がみられた。【結論】OA投与後のCT所見及び画像解析データは換気機能及び病理変化と深い関連がみられ、CTがサルにおける肺病変の検出、定性・定量的解析に有用なツールになり得るものと考えられた。今後、肺毒性の非侵襲的で経時的な評価への応用が期待される。
トキシコパノミクス
  • 五十嵐 勝秀, 中津 則之, 相崎 健一, 北嶋 聡, 児玉 幸夫, 菅野 純
    セッションID: P-095
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    受容体原性毒性トキシコゲノミクス研究の基盤データベース作製を目的に、核内受容体作動性物質をマウス雄に経口投与しPercellome手法を用いて遺伝子発現変動を網羅的に解析した。10種類の核内受容体に作用する計19種類の物質(Testosterone propionate(TP), Ethynyl-estradiol(EE), Diethylstilbestrol(DES), Tamoxifen(TAM), Bisphenol A(BPA), Genistein(GEN), Tributyltin(TBT), 9-cis retinoic acid(9-cisRA), All trans retinoic acid(ATRA), TCDD, TCDF, 3-methylcholanthrene(3-MC), Indigo, Dexamethasone(DEX), Clofibrate(CFB), Troglitazone(TGZ), Levothyroxine(T4), 5-Pregnen-3beta-ol-20-one-16alpha-carbonitrile(PCN))を単回経口投与し、2, 4, 8, 24時間目に肝臓、一部は精巣、胸腺を解析した。EEはGDF15、TCDDはCyp1a1、9-cis RAはCyp26a1、ATRAはIdb4、DEXはCYp2b10、CFBはCyp4a14、PCNはCyp2c55など、各々の核内受容体に特徴的な遺伝子発現変化が捉えられた。AhRを活性化する化学物質に関し、TCDDは持続的発現誘導を示す一方、3-MC, Indigoは早期におさまること、各々の化学物質で誘導される遺伝子群には一部違いがあることが明らかになった。以上から、受容体原性毒性トキシコゲノミクス研究の基盤として有用なデータベースが整備できたものと考えられた。
  • 北嶋 聡, 相崎 健一, 五十嵐 勝秀, 中津 則之, 相賀 裕美子, 菅野 純
    セッションID: P-096
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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     発生毒性学は、個体発生過程に於けるダイナミックな遺伝子発現調節の分子機構を基礎に、より正確なものに補強されることが分子発生研究から示されている。分子毒性研究の応用として、我々は、化学物質トキシコジェノミクス・プロジェクト(Percellome project)により、毒性発現分子メカニズムに支えられた、より正確、迅速、安価なリスク評価系の開発研究を推進している。ここでは、このPercellome projectの発生毒性への適用のモデル実験として、モデル遺伝子欠損マウス胚を用いた技術的妥当性の検証、ならびにモデル発生毒性物質投与による本手法の具体的な適用例について報告する。 モデルとしての当該遺伝子は、bHLH型転写因子MesP1およびMesP2遺伝子とした。両遺伝子は、発生初期の原腸陥入直後における中胚葉において一過性の発現を示す。この遺伝子欠失マウスの解析結果から、これらの遺伝子が心臓中胚葉形成に必須な遺伝子であることを明らかにしてきた。経時変化ならびに機能面から、この遺伝子カスケードに注目し、胎生6.5日および7.5日の野生型ならびにホモ欠失胚の遺伝子発現を、GeneChip MOE430v2 (Affymetrix社)を用いて網羅的に解析し、比較・検討したところ、欠失胚で発現が減少している遺伝子群として、心筋細胞あるいは血管内皮細胞の発生に関与する遺伝子群がリストアップされ、発生毒性に向けたこの解析技術の妥当性を検証することが出来たものと考えられた。次いで、C57BL/6CrSlcマウス(胎生6.5- 9.5日)の全胚遺伝子発現プロファイル・データベースを構築し発生に関わる遺伝子発現の経時変化を取得することができた。さらにこの結果を踏まえ、モデル催奇形性物質として、Shhシグナル阻害剤であるサイクロパミンの妊娠動物への投与実験による胎児の遺伝子発現変動を解析中である。
  • 相崎 健一, 中津 則之, 北嶋 聡, 五十嵐 勝秀, 菅野 純
    セッションID: P-097
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    我々はマイクロアレイや定量PCR を用いて細胞1個あたりのmRNA量を測定するPercellome手法を開発し昨年度年会にて報告した。この手法を適用した大規模な化学物質投与実験を行い約90化合物におけるトランスクリプトームデータを取得・データベース化してこれらの解析を進めている。
    オミクス技術による研究においてボトルネックとなるのはデータ解析である事が多い。これは容易に扱える解析ツールが不足しているためである。そこで我々はデータ生成と共に独自の解析アルゴリズム・ソフトウエアの開発を進めた。
    複数パラメータを有するデータ、例えば用量反応と経時変化を同時に測定したデータの解析において、折れ線グラフなど一般的な視覚化に加え、発現量や再現性の評価、他の遺伝子との比較などを、直感的に把握し効率良く解析するために、遺伝子発現情報を3次元平面波(Surface)として描画する視覚化手法を開発した。
    また数万の遺伝子から特定条件を満たす候補を効率よく選び出すために2つの発現パターンがどの程度類似しているかを評価するアルゴリズム(TMF)を開発し、注目遺伝子やユーザー定義のSurfaceを雛形として類似発現パターンを呈する候補遺伝子を全自動抽出するソフトウエアを開発した。
    さらにTMFの考え方を拡張し全遺伝子情報を発現パターンに基づいて自動分類するクラスタリングアルゴリズム(MADIC)を開発し、これを運用する計算解析サーバーを構築した。
    これらの技術を利用する事で、毒性など化合物暴露による生体反応の解析がより簡便に進められる様になると期待される。現在データのみならずこれらの解析技術をオンラインで利用できる公開データベースを準備中であり、トキシコミクス研究分野の発展の一助となるものと期待される。
    (なお本発表は年会でのポスター発表と共に、共催のトキシコミクスフォーラムにおいても口頭発表する)
  • 高木 篤也, 中津 則之, 五十嵐 勝秀, 相崎 健一, 江馬 眞, 菅野 純
    セッションID: P-098
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】哺乳類の口蓋形成は分子、細胞、組織間の相互作用による一連の複雑な過程により進行することが知られている。また、ダイオキシンやレチノイン酸等の多くの化学物質が口蓋裂を誘導することが知られているが、その詳細な機序は未だ明らかでない。そこで、我々はダイオキシンによる口蓋裂発生の機序解明のため、ダイオキシン投与マウス胎児口蓋における遺伝子発現量の変化を細胞1個当たりのmRNAのコピー数で表すことが出来るPercellome手法を用いた定量的マイクロアレイ法を用いて解析した。【方法】12.5日齢のC57BL/6妊娠マウスに2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)を20μg/kgの用量で単回強制経口投与後、13.5、14.5、15.5日齢の胎児を摘出し、口蓋部位を小型のハサミで採取、RNAをRNAeasy(キアゲン社)で抽出、蛍光ラベル後、40000以上の遺伝子解析が可能なアフィメトリクス社のGeneChip Mouse Genome 430 2.0 Arrayを用いて遺伝子発現解析を行った。【結果及び考察】TCDDの投与により、Cyp1a1、Ahrr、Cyp1b1、TCDD-inducible poly(ADP-ribose) polymerase (Tiparp)等のTCDDにより誘導されることが知られている遺伝子が対照群に比較して顕著に増加し、胎児口蓋がTCDDの標的部位であることが遺伝子レベルでも確認された。その他、筋肉や軟骨の分化に関連する遺伝子の発現にも変化が見られており、口蓋を形成する細胞の分化へもTCDDが影響している可能性が示唆された。(本研究は厚労科研費・H16-化学-003「内分泌かく乱化学物質(ダイオキシン類を含む)の胎児・新生児暴露によるリスク予測に関する総合研究」による)
  • 高木 篤也, 北嶋 聡, 中津 則之, 五十嵐 勝秀, 相崎 健一, 菅野 純
    セッションID: P-099
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】ES細胞から形成される胚様体(Embryoid body:EBと略す)は胎児の卵筒胚(egg cylinder)に近似しており、初期胚への影響を調べるために利用されている。我々は、EBと胎児の分化を遺伝子レベルで比較することを目的に、細胞1個当たりのmRNAのコピー数で表すことが出来るPercellome手法を用いた定量的マイクロアレイ法を用いて解析した。【方法】マウスES細胞(TT2)を LIFを除いたES培地で、最初の2日間はhanging drop法で、次の5日間は浮遊培養法で、計7日間培養した。ES(0日)と分化培養開始1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7日後と0.5日ごとにEBを採取してプールし、サンプルとした。 RNAはRNAeasy(キアゲン社)で抽出、蛍光ラベル後、40000以上の遺伝子解析が可能なアフィメトリクス社のGeneChip Mouse Genome 430 2.0 Arrayを用いて遺伝子発現解析を行い、さらに、正常マウス胎児の分化マーカー遺伝子の発現パターンと比較した。【結果及び考察】中胚葉のマーカーとして知られているbrachyuryはEBの分化3日後をピークに一過性に増加し、中胚葉由来の心筋のマーカーであるcardiac actinは分化5日目より増加した。一方、胎児では、brachyuryは胎齢7.5日をピークに一過性に発現が見られ、cardiac actinは胎齢7.75日から増加するなど、それぞれ良い関連性が認められた。以上、EBおよび胎児の発生過程を連結した指標を同定し、今後のEBを用いた発生影響解析に利用出来ることが期待された。
  • 中津 則之, 北嶋 聡, 相崎 健一, 五十嵐 勝秀, 児玉 幸夫, 菅野 純
    セッションID: P-100
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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     Diethylnitrosamine (DEN) は完全発がん物質(complete carcinogen)と考えられ、イニシエーション作用としての遺伝子傷害作用及びその遺伝子上への固定に関わるmitogenとしてのプロモーション作用が示されている。また、C57BL/6 (B6)マウスよりもC3H/He(C3H)マウスの方がDENに対して発がん感受性の高いことが知られている。本研究では、マウス肝臓におけるDENのイニシエーション作用及びプロモーション作用に関わる分子メカニズムを解明することを目的とし、 発がん感受性の異なるB6及びC3HにおいてDEN投与による24時間以内の遺伝子発現変動を検討した。 C57BL/6 CrSlc及びC3H/He Slc (male, 12 weeks)にDEN を0, 1, 3, 10 mg/kg (溶媒0.5% CMC)で経口投与し、投与後 2, 4, 8, 24 時間に肝臓をサンプリングした。サンプリングした肝臓の遺伝子発現をGeneChip MOE430v2で測定し、我々の開発した“Percellome”手法(細胞一個当たりのRNA発現量を厳密に得る手法)を用いて標準化した。用量・時間関係を視覚化して評価する”MilleFeuille”データ法を用いて解析した結果、p21遺伝子やDNA傷害のセンサーであるATM/ATR系に属する遺伝子、DNA修復酵素などの初期の発現変動をとらえることができ、DENの作用の分子メカニズムの解明の手がかりが得られた。今後、短期反復投与実験等の解析を進めることにより、DENの作用の分子メカニズムの解明が期待される。(本研究は厚労科研費・H15-化学-002「化学物質リスク評価の基盤整備としてのトキシコゲノミクスに関する研究」及び、H16-化学-001「内分泌かく乱性確定試験法及び内分泌かく乱性試験評価包括ガイドラインの開発に関する総合研究」による)
  • 福島 民雄, 吉川 理恵, 浜田 悦昌, 堀井 郁夫
    セッションID: P-101
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、医薬品開発における早期肝毒性予測のためのゲノミクス的アプローチの有用性を検討するため、肝毒性を惹起するアセトアミノフェン(APAP)、四塩化炭素(CL)、アミオダロン(AD)およびテトラサイクリン(TC)の毒性用量を雄ラットに経口投与し、投与6および24時間後に採取した肝臓を用いてGeneChip microarray解析をもとにした遺伝子発現解析を行った。投与後6時間には、明らかな病理組織学的変化はみられなかったが、投与後24時間では、ADを除く全ての薬物により変化がみとめられた。遺伝子発現解析においては、GeneChip microarray解析の信頼性を確認するため、S-plusを用いてクラスター解析を行った。投与後6時間には、明らかな病理変化が認められなかったにもかかわらず、投与化合物と相関性のある5つのクラスターに分かれた。投与後24時間でも同様であった。GeneSpringを用いた遺伝子発現解析では、全ての薬物で投与後6および24時間に、転写因子、酸化ストレスおよび脂質代謝関連遺伝子が対照群に比し変化していた。さらに、これらの影響を受けた遺伝子をIngenuity Pathway Analysisを用いてネットワーク解析を行ったところ、全ての薬物で投与後6および24時間にSREBP1を介した脂質代謝関連遺伝子の減少制御、APAPおよびCLではNrf2を介した酸化ストレス関連遺伝子の増加制御ネットワークが見出された。以上のことから、クラスター解析やネットワーク解析は、肝毒性を予測するために有用な手法であると推察された。
  • 田辺 和弘, 諫田 克也, 太田 哲也, 山崎 真, 務台 衛, 井上 裕章, 内村 洋一, 中川 幸光
    セッションID: P-102
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    近年,バイオマーカーを見出す技術の一つとして生体内代謝物を網羅的に解析し,変化に最も影響を与えている因子を特定する技術であるメタボノミクスが注目されている. 演者らは極性低分子代謝物の分離に優れるキャピラリー電気泳動と微量成分の検出およびスキャンモードの測定感度に優れるイオントラップ型質量分析装置を組み合わせた分析装置CE/MSを用いてメタボノミクス解析システムを開発した. メタボノミクス解析では,複数の測定試料から検出される数千のピークを比較する必要がある.しかし,CE-MSでは温度や試料中の塩濃度の影響を受けて移動度が大きく変動することから,異なる試料間の同じ成分に由来するピークを特定する技術を確立する必要があった. 演者らは,複数の内部標準物質を用いた補正プログラムを開発し,複数の生体試料中から得られる1500_から_3000ピーク程度の増減を比較解析することを可能とした. 次に約500の標準物質について移動度,m/z,ピーク強度,MS/MS等に関する情報を登録したデータベースを作成し,生体試料中から検出されたピークについてデータベースと自動的に比較することを可能にした.さらに,代謝マップ上にその増減をグラフィック表示させる機能を付与した.  このメタボノミクス解析システムは,トキシコロジーのみならず創薬および臨床評価において,毒性,有害事象および薬効の新たなバイオマーカーを検討するツールとしても期待される.
  • 太田 哲也, 山崎 真, 田辺 和弘, 諫田 克也, 内村 洋一, 中川 幸光, 務台 衛, 井上 裕章
    セッションID: P-103
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    キャピラリー電気泳動と質量分析計を組み合せたCE/MSはイオン性の代謝物を網羅的に感度よく測定する方法としてメタボノミクスへの応用が期待されている. 演者らは,イオントラップ型質量分析計を組み合わせたCE/MSによるメタボノミクス解析系を確立した. 本解析系の有用性を確認するため,過量投与すると肝毒性を惹起するacetaminophen(APAP)をラットに投与した際の生体内代謝物の変動について検討した. 6週齢の雄ラット(Crj:CD(SD)IGS)にAPAP 300および600 mg/kgを単回経口投与し,対照群には媒体を同様に投与した. 投与6, 24および72時間後にそれぞれ血液および肝臓を採取するとともに,投与後0_から_24および48_から_72時間の間に24時間尿を採取した. 尿,血漿および肝臓について適切な前処理を行った後,CE/MSにて生体内代謝物を測定した. また,血液生化学検査を実施した. 血液生化学検査の結果,APAP群で投与24時間後にAST,ALTおよびALPの上昇した個体が認められたが,投与72時間後にはこれらの変化は認められなかった. CE/MS測定の結果,APAP群の投与24時間後の尿サンプルでAPAPの解毒に関わるグルタチオン合成経路の代謝物の減少が用量相関的に認められた他,TCAサイクルおよび酸化還元反応に関わる代謝物の変動が認められた.これら変化は投与72時間後では消失もしくは減少した.
  • 山崎 真, 太田 哲也, 田辺 和弘, 諫田 克也, 内村 洋一, 中川 幸光, 務台 衛, 井上 裕章
    セッションID: P-104
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    キャピラリー電気泳動と質量分析計を組み合せたCE/MSはイオン性の代謝物を網羅的に感度よく測定する方法としてメタボノミクスへの応用が期待されている. 演者らは,イオントラップ型質量分析計を組み合わせたCE/MSによるメタボノミクス解析系を確立した. 本解析系の有用性を確認するため,肝毒性物質であるα-naphtylisothiocyanate(ANIT)をラットに投与した際の生体内代謝物の変動について検討した. 6週齢の雄ラット(Crj:CD(SD)IGS)にANIT 150 mg/kgを単回経口投与し,対照群には媒体を同様に投与した. 投与3および7日後にそれぞれ血液および肝臓を採取するとともに,投与後2_から_3および6_から_7日の24時間尿を採取した. 尿,血漿および肝臓について適切な前処理を行った後,CE/MSにて生体内代謝物を測定した. また,血液生化学検査を実施した. 血液生化学検査の結果,ANIT群で投与3日後にAST,ALTおよび総ビリルビンの顕著な上昇が認められたが,投与7日後にはこれらの指標の回復または回復傾向が認められた. CE/MS測定の結果,ANIT群の尿,血漿および肝臓は対照群に比べ,投与3日後のサンプルでTCAサイクル,アミノ酸代謝経路および尿素回路の代謝物をはじめ数多くの変動ピークが認められた.これらの変化は,投与7日後では減少し,ANIT投薬後の代謝物の変動は血液生化学の変化と一致した.
  • 富澤 香織, 山本 利憲, 藤川 真章, 山田 弘, 堀井 郁夫
    セッションID: P-105
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    ヒト肝細胞キメラマウスは免疫不全肝障害マウスにヒト肝細胞を移植して、肝臓をヒト肝細胞に置換することにより作出される。このキメラマウスを医薬品開発研究に用いることにより、医薬品候補物質のヒトでの薬物動態、安全性試験がより正確に予測でき,医薬品開発研究がより効率的に進むものと期待されている。本発表ではヒト肝細胞キメラマウスの特性を検討するため、アセトアミノフェン投与による肝臓の遺伝子発現変化についてDNAマイクロアレイを用いて検討した。 ヒト肝への予想置換率70% 以上と試算されたヒト肝細胞キメラマウス(雄、雌)に0.5% Methyl Cellulose に懸濁したアセトアミノフェン1400 mg/kg BWを強制単回経口投与し、投与後4、24時間にて剖検に供した。なお、0 mg/kg BW投与群は0.5% methyl celluloseを投与し、投与後24時間にて剖検に供した。各肝臓からヒト肝細胞領域のみを採材し、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array (Affymetrix Inc.)にて遺伝子発現解析を実施した。 投与後24時間で代謝関連遺伝子群の発現が変動する傾向にあり、特に脂肪酸生合成、グルタミン酸代謝に関連する遺伝子群に発現変動が認められた。一方でアセトアミノフェン投与により一般的に変動するアポトーシス関連遺伝子群の発現変動は4、24時間投与群ともにほとんど認められなかった。病理組織学的検査結果との関連性も含め、各投与群における遺伝子発現変動の解析結果からヒト肝細胞キメラマウスのもつ特性について考察し、報告したい。
  • 山本 利憲, 富澤 香織, 藤川 真章, 佐藤 靖, 山田 弘, 堀井 郁夫
    セッションID: P-106
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    [緒言]ヒト肝細胞を移植したヒト肝細胞キメラマウス(以下,キメラマウス)の毒性試験への応用の妥当性を検討する目的で,アセトアミノフェン(APAP)を単回投与した時の肝臓中タンパク質並びに尿および血清中の内因性代謝物の変動を解析した。[方法]キメラマウスに,APAPを1400mg/kgの用量で単回経口投与し,4および24時間後に肝臓,血液および膀胱尿を採取した。プロテオミクスはキメラマウス肝臓のヒト肝細胞領域のみを対象として実施し,2次元電気泳動によるタンパク質分離後,コントロール群と投与群とのスポットの比較および階層的クラスター解析により発現変動の確認されたタンパク質を質量分析により同定した。メタボノミクスは,尿および血清を対象として実施し,600MHz NMRにより測定したスペクトルの主成分分析により代謝物の変動を解析した。[結果]肝臓中タンパク質のプロテオミクス解析の結果,キメラマウスの肝臓中タンパク質発現の大きな個体差のために,発現の変動しているタンパク質の抽出は困難であった。この個体差の大きさは,病理組織学的検査の結果と矛盾しないものでもあった。そこで,正常肝組織像を示す個体と典型的なAPAP特異的な組織変化を示す個体との比較および病理組織学的検査と関連させた階層的クラスター解析により,発現変動タンパク質を抽出した。その結果,35種のタンパク質を同定した。メタボノミクス解析においては,尿中および血清中の3種の代謝物の変動を認めた。以上の結果から,キメラマウスにおけるAPAPの肝毒性発現メカニズムは,主に脂質/脂肪酸代謝およびエネルギー代謝パスウェイを介した変化,および酸化的ストレスによるものであると推測された。この一連のヒト型肝モデル動物でのパラメータの変化は,正常マウスにおいて報告されているものと同様であった事から、ヒト肝で誘発される特異反応などについては更なる検討が必要とされる。
  • 伊藤 和美, 渡辺 恭子, 熊谷 和善, 鈴木 洋子, 斉藤 有司, 寺田 仁美, 清沢 直樹, 寺西 宗広, 古川 忠司, 矢本 敬, 中 ...
    セッションID: P-107
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Acetaminophen(APAP)は,代謝過程で生ずる活性酸素による酸化ストレスや代謝産物によるグルタチオン(GSH)枯渇に基づいて肝細胞壊死を誘発する.一方,poly-ADP-ribosyltransferase(PARP)抑制物質である3-aminobenzamide(3-AB)による活性酸素等の毒性作用に対する細胞保護効果に関しては,過剰なPARP発現によるNAD+枯渇防止のほか,3-ABによる間接的な抗酸化作用の関与なども示唆されている.今回,3-ABによるAPAP誘発肝障害に対する保護作用の機作解析を目的として,両化合物をラットに投与し,肝臓におけるPARP合成産物の免疫染色と遺伝子発現解析を実施した.【材料および方法】動物は9週齢の雄性F344ラットを用い,各群4例の動物に,APAP(1000 mg/kg,p.o.),3-AB(600 mg/kg,i.p.)をそれぞれ単独に,あるいは併用投与した.実験開始12時間後に肝臓を採取,PARP合成産物であるpoly ADP ribose (pADPr)の免疫染色とGeneChip を用いた網羅的遺伝子発現解析を実施した.【結果および考察】APAP単独群,3-AB単独群,およびAPAPと3-ABの併用群で,GSH枯渇関連(59個),細胞障害関連(30個),細胞周期関連(14個)のプローブについて発現変動を評価した結果,3-AB併用によりAPAP単独群に比べてこれらプローブの発現誘導は抑制される傾向を示した.発現増加の低減は、細胞障害関連遺伝子群において最も顕著であった.pADPrの免疫染色ではAPAP単独群で変性・壊死巣周囲肝細胞の核で陽性反応が認められたが,3-AB併用投与群では陰性であった.以上の結果より,3-ABによるAPAP肝障害の低減作用にはDNAの損傷抑制とDNA修復メカニズムが寄与している可能性が示された.
  • 大村 功, 清澤 直樹, 上原 健樹, 清水 俊敦, 廣出 充洋, 宮城島 利一, 小野 敦, 漆谷 徹郎, 長尾 拓
    セッションID: P-108
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    我々はトキシコゲノミクスプロジェクトのデータベースを用いて血漿中TG減少に関連する遺伝子を選出し,それらの発現解析から作用メカニズムを解析した。
    摂餌量プロファイルはそれぞれ異なるがTG減少が見られた化合物19個をそれぞれ投与したラット肝臓の遺伝子発現データから,共通して変動した207プローブセットを同定した。このプローブセットを用いて34化合物を投与したラット肝臓の主成分分析を行ったところ,大きく第一,第二主成分に分類された。第二主成分方向にはPPARαアゴニストであるクロフィブレート,WY-14,643,ゲムフィブロジルが主に存在し,PPARα活性化を示すものであると考えられた。第一主成分方向にはフェノバルビタール,オメプラゾール,メタピリレン,チオアセトアミドなどが存在した。固有ベクトル値の解析から,第一主成分に対する寄与が大きいと考えられる遺伝子の多くは,Constitutive Androstane Receptor(CAR)によって誘導されることが報告されているものであった。CARはフェノバルビタールのような薬剤によって誘導されるだけでなく,絶食によっても誘導されるという報告がある。CARは異物代謝酵素を誘導するが,それらの酵素は血中の甲状腺ホルモンも代謝することが知られている。甲状腺ホルモンはリポプロテインリパーゼ(LPL)の活性に関与し,甲状腺機能を低下させたラットでは末梢のLPL活性化によって血漿中TGレベルが低下することが報告されていることから,TG減少メカニズムの一つとして薬物や摂餌量低下によるCAR活性化があることが示唆された。第二主成分に寄与の大きい遺伝子はPPARαによって制御される遺伝子が多く,PPARα活性化によるTG減少を示すと考えられた。
  • 上原 健城, 清澤 直樹, 清水 俊敦, 大村 功, 廣出 充洋, 今澤 孝喜, 小野 敦, 宮城島 利一, 漆谷 徹郎, 長尾 拓
    セッションID: P-109
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】創薬初期ステージにおいて,医薬品候補化合物の毒性及びヒトでの副作用を迅速かつ効率的に評価・予測する為の基盤技術としてトキシコゲノミクスが注目されている.トキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)では,医薬品を中心とした約150化合物について,ラット肝臓,ラット初代培養肝細胞及びヒト初代培養肝細胞の各評価系における一連の曝露試験を実施し,大規模なトキシコゲノミクスデータベースを構築している.本研究では,種差のブリッジングを考慮した安全性研究の一例として,クマリンの肝毒性種差に関するトキシコゲノミクス解析結果について報告する.【方法】TGPデータベースを用い,クマリン曝露後24時間の遺伝子発現プロファイルに注目し,ラット,ヒト間での肝毒性発現感受性差を比較した.【結果】クマリンを投与したラット肝臓では,グルタチオン枯渇や酸化ストレスなどのクマリンの肝毒性発現メカニズムに密接に関連する多数の遺伝子の発現変動が確認された.これらの遺伝子の中から,ラット肝細胞においても用量依存的に発現変動を示すマーカー遺伝子を選抜し,ラット肝細胞及びヒト肝細胞の両試験間でその発現変動プロファイルを比較した.その結果,両試験系において,選抜したマーカー遺伝子の発現プロファイル変動は同様の傾向を示したものの,変動の程度はラットで顕著であった.【考察】今回,トキシコゲノミクス手法を用いた解析により,ヒトでのクマリンに対する肝毒性発現の低感受性を示唆するデータが得られた.文献的に,肝臓におけるクマリンの毒性代謝物の無毒化速度に種差が存在することが報告されており,今回の結果は,こうした代謝プロファイルの種差を反映するものと推察された.以上,従来の毒性学的アプローチに加え,トキシコゲノミクス手法を応用することで,種差のブリッジングを考慮した毒性評価が可能となると考えられた.
  • 廣出 充洋, 上原 健城, 大村 功, 清沢 直樹, 清水 俊敦, 小野 敦, 宮城島 利一, 漆谷 徹郎, 長尾 拓
    セッションID: P-110
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】肝機能不全を診断する際には、多くの血液生化学的検査が用いられる。肝細胞障害の指標としては、ASTあるいはALTなどの肝逸脱酵素がその代表例である。一方、肝機能不全の際には血液凝固異常をきたすことも知られており、血漿中のフィブリノーゲン濃度あるいは血液凝固試験からも肝機能不全が推定可能である。今回、我々はトキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)で蓄積された遺伝子発現及び毒性学的データベースの中から血液凝固系に異常をきたした8化合物(クロフィブラート、オメプラゾール、エチオニン、チオアセタミド、ベンズブロマロン、プロピルチオウラシル、WY-14643、アミオダロン)を選択し、ラットに反復投与した際のデータを用いてその遺伝子発現変化を検証した。【方法】各化合物は3用量段階でラットに投与し、3, 7, 14及び28日間の反復投与24時間後に剖検し、遺伝子及び一般的な毒性学的データを得た。網羅的遺伝子発現解析にはAffymetrix Rat 230Aマイクロアレイを用いた。【結果および考察】血液学的検査ではAPTT及びPT時間の延長、血清中のフィブリノーゲン濃度低下がみられ、病理組織学的には壊死を伴わない軽度な肝細胞の変化がみられたが、 血液生化学的検査ではASTあるいはALTを始めとした肝逸脱酵素に著変は認められなかった。一方、遺伝子発現解析では血液凝固カスケード、ストレスなどに関与する遺伝子群が変動していた。これらの遺伝子群は肝機能不全及び薬物による肝毒性に関与している可能性が考えられる。
  • 清水 俊敦, 大村 功, 清澤 直樹, 上原 健城, 廣出 充洋, 小野 敦, 漆谷 徹郎, 宮城島 利一, 長尾 拓
    セッションID: P-111
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】トキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)は国立医薬品食品衛生研究所、(独)医薬基盤研究所および製薬企業15社によって進められており、約150化合物についてラットin vivo、ラット初代肝細胞およびヒト初代肝細胞の3つの試験系で暴露試験を行い、遺伝子発現データ及び関連する毒性学的データを蓄積中である.本発表では、ミトコンドリアの機能不全を引き起こすことにより肝毒性を発現するバルプロ酸に着目し、暴露後の遺伝子発現変化をラット初代肝細胞で解析するとともにヒト初代肝細胞との比較を行い、ラットおよびヒト肝細胞でミトコンドリア毒性物質により発現変動を示す遺伝子の抽出を試みた.
    【方法】ラット初代肝細胞は、6週齢の雄性SDラットからコラゲナーゼ還流法により分離した.また、ヒト凍結初代肝細胞は3ロットをT-Cubed社より購入した.遺伝子発現解析には、ラットではAffymetrix GeneChip Rat 230 2.0を、ヒトではAffymetrix GeneChip Human U133 Plus 2.0を用いた.
    【結果】バルプロ酸暴露後24時間のラット初代肝細胞において主として脂質代謝およびストレス・細胞死に関与する遺伝子発現変化が観察された.主成分分析や発現変動のスコア化により、ミトコンドリア毒性発現機序の類似したNSAIDsがバルプロ酸近傍にプロットされ、ミトコンドリア機能に影響を与えるものの機序の異なるPPARalphaアゴニストや呼吸鎖脱共役物質はそれぞれ異なる位置にプロットされた.また、ヒト初代肝細胞との比較では、変動遺伝子の機能カテゴリ比較においてラットとヒト、さらにヒト凍結肝細胞のロット間において一致が見られた.以上の結果、in vitroにおいて遺伝子発現データに基づき注目化合物と種々の既知化合物との毒性発現機序の比較が可能であり、機序解析のリファレンスとしてTGP遺伝子発現データベースが有用であることが示された.
  • 長谷川 美奈, 井手 美佳, 長谷川 陽子, 竹中 重雄, 山手 丈至, 津山 伸吾
    セッションID: P-112
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】創薬において,毒性を早期に掴むスクリーニング法が必要とされており,中でもメタボノミクス解析は有用な方法として注目されている.そこで,フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS)を用い,肝傷害モデルとして知られるチオアセタミド(TAA)誘発性肝傷害ラットの尿メタボノミクス解析を実施し,肝毒性に関与するバイオマーカーの検索を行った.【方法】 肝傷害を誘発することで知られるTAA 300 mg/kgを雄性ラットに単回腹腔内投与し,投与前,投与1,3,5および7日後(Day0, 1, 3, 5, 7)に5時間尿を採取した.採取した尿を溶媒(メタノール:水=1:1)で希釈し,インフュージョンによるポジティブおよびネガティブイオン測定を実施した.得られたMSスペクトルから多変量解析を行い,さらに,媒体対照群および薬剤投与群間において変動した分子の同定ならびに構造解析を試みた.【結論および考察】MS解析の結果,ポジティブイオンのMSスペクトルはTAA投与によって変動し,Day1および3でいくつかのイオンに変動がみられた.Day5および7では,媒体対照群とほぼ同様のスペクトルを示した.得られたデータの主成分分析により,薬剤投与群と媒体対照群間では差が認められ,さらにローディングプロットにより,これらの差の要因となったイオンを同定した.現在,それらの物質の特定および構造解析を試みている.以上の結果より,FT ICR-MSによる肝傷害モデルラットの尿メタボノミクス解析で,いくつかの物質の変動が認められ,これらが肝毒性に関与するバイオマーカーである可能性が示唆された.
  • 森脇  紀親, 河上 祐紀, 河野 友紀子, 中山 光二, 関島 勝
    セッションID: P-113
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    [目的]構造異性体で変異原性を有する2,4-及び2,6-ジアミノトルエン(DAT)は,ラット肝発がん性に著しい差があることが知られている。我々は,トキシコゲノミクス及びプロテオミクス手法を用いて,2つのDATによるラット肝初期毒性差異の解明を試みた。[方法]2,4-DAT(2, 10, 50, 250 mg/kg)及び2,6-DAT(1.6, 8, 40, 200 mg/kg)をそれぞれSDラット(雄,5週齢)に単回強制経口投与し,3, 6, 9, 24, 48時間後に肝臓及び血清を採取して,血液生化学及び病理学的検査を行った。更に同一個体の肝臓組織からRNA及びタンパク質を抽出し,GeneChipによる遺伝子発現解析及び2D-DIGE法を用いたプロテオミクス解析を実施した。[結果及び考察]血液生化学及び病理学的検査より,2,4-DAT 250 mg/kg群でのみ肝障害が誘発され,2,6-DATでは認められなかった。遺伝子発現解析では,2,6-DATと比較して2,4-DATの50及び250 mg/kg群で,投与3-9時間後にDNA損傷・修復(RhoB, Jun, p53, Bax, Mgmt etc.)並びに投与6-24時間後に細胞障害(Hspb1, Hspb8, Txnrd1 etc.)に関与する遺伝子に顕著な変動がみられた。プロテオミクス解析により,2,4-DATの50及び250 mg/kg群で投与48時間後に上昇したタンパク質のうち,Hsp90β, Krt-18, ApoA-Iの遺伝子発現上昇は6-48時間後に認められ,Atp5h及びApoEはタンパク質でのみ認められた。以上より,2,4-DATの肝初期毒性は,従来法では毒性の認められない用量でも,遺伝子発現レベルでは投与3時間で,タンパク質発現レベルでは投与48時間でそれぞれ評価可能であった。一方,両DATはCYP1A1およびメタロチオネインの発現を誘導したが,2,4-DATではアセチル化転移酵素ファミリーに属するNAT5の発現を上昇させたことから,2,4-DATによる毒性発現には水酸化体よりもアセチル化体の関与が推察され,活性化体が核酸やタンパク質に共有結合することで代謝初期段階にDNA損傷や細胞障害を誘発すると考えられた。
  • 鈴木 睦, 小島 健介, 林 砂緒, 川原 潤一
    セッションID: P-114
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗体投与に伴う副作用として、Infusion Reactionが知られている。Infusion Reacitonの発現時にはTNF-αやIL-6の増加が認められており、サイトカイン放出症候群と言われることもある。しかしながら、現在Infusion Reactionの詳細な発現機序については不明な部分が多い。臨床現場では、この反応を回避する目的で抗体投与前に抗ヒスタミン薬などを前投与することも行われているが、全てのInfusion Reactionを抑制するには至っていない。そこで我々は、抗体によるInfusion Reactionを回避する前処置剤を探索する目的で実験を実施した。【方法】Infusion Reactionの反応が認められたサルから、Infusion Reaction前後の血液を採取し、包括的な遺伝子検索を実施した。解析後に選定された前処置剤候補について、マーモセットを用いてInfusion Reactionの回避を確認した。さらにInfusion Reactionで認められるサイトカイン放出に対する影響を検討する目的で、擬似的なモデルとしてラットにLPSを投与し内因性のサイトカインを誘導するモデルを用い、その誘導に対する影響を検討した。【結果】包括的な遺伝子検索の結果、カスパーゼ関連遺伝子の変動が認められた。そこで、マーモセットにカスパーゼ関連遺伝子の変動を抑える目的でミノサイクリンを前投与したところ、Infusion Reactionによる死亡や一般状態の悪化が認められなかった。さらにラットを用いた検討では、ミノサイクリンの投与によりLPSによるカスパーゼの変動が抑制され、各種サイトカインの誘導が抑制された。これらのことから、抗体投与によるInfusion Reactionに、新たにカスパーゼが関与することが考えられた。また、抗体投与によるカスパーゼ発現減少を抑えるミノサイクリンの前投与はInfusion Reactionを抑制する目的に有効である可能性が示された。
  • 藤田 卓二, 小島 健介, 林 砂緒, 鈴木 睦, 川原 潤一
    セッションID: P-115
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Infusion Reaction (IR)は抗体投与による副作用であり、主症状として投与後24時間以内に発現する血圧低下、発熱等のアナフィラキシー様の反応が知られている。IRの発現時には炎症性サイトカインの上昇を伴うことがあるが、詳細な発現機序については不明な部分が多い。今回、我々は抗体を投与したカニクイザル血漿を解析して、IR様症状に伴って変動するタンパク質を同定し、IR発現機序の推定を試み、また、IR様症状の発現を素因(個体差)により予測可能かどうかを検討した。【方法】抗体を投与し、IR様症状が認められたカニクイザル2匹と、認められなかった2匹の血漿を用いた。アルブミン除去した血漿をトリプシン消化し、nanoLC/Linear Trap-TOF (NanoFrontier L、(株)日立ハイテクノロジーズ)によりMS/MS解析を行い、タンパク質を同定した。さらに、同一個体で抗体投与前後において発現量が変動したタンパク質及びIR様症状の有無で発現量が異なったタンパク質を、MS/MS面積の比較により選択し、IR様症状との関連性を解析した。【結果】MS/MS解析により約200個のタンパク質が同定された。抗体投与前には発現しておらず、投与後にIR様症状が認められた群においてのみ増加したタンパク質は症状の発現に関与している可能性が考えられた。一方、症状が認められなかった群でのみ、抗体投与後に増加したタンパク質は症状の抑制に関与している可能性が考えられた。また、両群で投与前のタンパク質発現量を比較し、発現量が異なっていたタンパク質は、IR様症状を発現する素因と関連があることが推定された。これらタンパク質の発現変動とIR様症状発現機序との関連について解析を進めている。今後さらに例数を増やす必要性があるが、本手法はInfusion Reactionの発現機序を明らかにする上で、有用であると考えられる。
  • 宮本 索, 高見 健治, 宮嶋 伸行, 堀之内 彰, 福井 英夫, 朝日 知, 伊勢 良太, 和泉 博之, 金指 秀一, 永田 良一
    セッションID: P-116
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    医薬品候補化合物の毒性を効率良く解析・推定するためのツールの開発を目的として毒性試験で主に用いられる霊長類であるカニクイザルのDNAマイクロアレイを開発した。カニクイザルの主要6臓器(肝臓、心臓、腎臓、脾臓、肺および精巣)で発現している遺伝子の解析により、既知あるいは新規遺伝子の配列並びにアノテーション情報を収集し、ゲノム全域を網羅する良質なデータベースを構築した。データベースを遺伝子アノテーション情報により機能カテゴリーの分布を解析したところ、遺伝子が多数含まれるカテゴリーは多い順にKINESIN-RELATED, KRAB-RELATED C2H2-TYPE, ZINC-FINGERS, KRAB BOX ZINC FINGER TRANSCRIPTION FACTORS, SERINE/THREONINE PROTEIN KINASE, SMALL GTPASEであり、これらをヒト・マウス遺伝子と比較した場合、カニクイザルでは嗅覚受容体関連遺伝子が少ないものの、上位カテゴリーに含まれるファミリーはほぼ同等であった。さらに、それらの中より選択した約16000の遺伝子について60merのオリゴヌクレオチドを搭載したDNAマイクロアレイを作製、動作検証により良好な再現性を確認した。また正常カニクイザルの各種臓器の遺伝子発現を上記DNAマイクロアレイを用いて解析したところ、それぞれの臓器において高発現している遺伝子が特徴的にみられることを確認した。本解析によりカニクイザルにおける各臓器に高発現している遺伝子の情報を得ることができ、新たに開発したDNAマイクロアレイが臓器特異的な毒性の解析に有用である可能性を示した。
  • Yokokawa Shinya, Mulhern Declan, Ohshima Yuuko, Adachi Yasuhisa, Kohar ...
    セッションID: P-117
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    The combination of microarray technology and the use of human hepatocytes for the in vitro prediction of drug toxicity promises to expedite drug discovery while at the same time delivering safer drugs to patients. To explore the suitability of cryopreserved human hepatocytes for toxicogenomic studies we treated hepatocytes from three donors with a range of model compounds and monitored their gene expression profiles using Affymetrix GeneChip technology. Plated hepatocytes were treated with acetaminophen, chlorpromazine, diclofenac, gemfibrozil, isoniazid, nitrosodimethylamine, phenobarbital, tetracycline and DMSO vehicle control. Total RNA was isolated after 1, 4 and 24 h and used to synthesize biotin-labelled cRNA. Labelled cRNA from the three donors was pooled and hybridized to an Affymetrix HG U133A GeneChip. Two replicates for each compound at each time point were performed. Differential expression analysis of the data across all treatments yielded significantly altered gene sets for the three time points studied. Principal component analysis and hierarchical clustering show that after 1 h, samples cluster according to experimental group rather than chemical treatment. Later time points suggest no group dependency as replicate samples cluster together. These results indicate that environmental factors are the prominent cause of gene expression differences at early time points in in vitro studies and as such, early time course data should be treated with caution.
  • 高島 佳代子, 半田 千彰, 丸山 英俊, 長澤 直人, 村上 真, 黒田 淳二
    セッションID: P-118
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
     マイクロアレイ実験では,十分なN数を確保出来ない場合がある。N数が少なくなるほど,抽出した遺伝子の発現変動が,真実なのかノイズなのかを判断することは非常に難しい。また,NCBI GEOなどの大規模な公共データベースを参照する場合,それらのデータは,多様な測定システム(施設差,サンプル調製の差,実験者の差,スキャナーの差等)によって収集されているために,例え同じ種類のマイクロアレイであったとしても,相互参照を行うことは殆んど不可能である。
     そこで,我々は,遺伝子発現値の順位に着目した解析方法の検討を行い,NCBI GEOに登録されているアレイデータを用いて,N数が少ない場合,および実験が異なる場合の解析を試みた。遺伝子発現値の順位にいくつかの補正を行った値(Rank補正値)を,ハウスキーピング遺伝子(GAPDH,BACTIN,B2M,PPIA,
    RPL13A,SDHA)を用いて検証したところ,Rank補正値は,Per Chip補正値と比較して,個々のアレイ間での値のバラツキが小さいことが確認された。続いて,ラットのPPARα活性化化合物の実験データを用いて薬物投与後の変動遺伝子を,Rank補正値を用いて抽出した結果,Fold change(FC)法による抽出と比較して,既知のマーカー遺伝子の抽出効率が高いことを確認した。これは,Rank補正値を用いると,FC法ではノイズとなりやすい低発現領域の遺伝子変動の抽出感度が抑えられたためだと考えられた。これらの結果から,遺伝子発現値の順位は、マイクロアレイデータの解析対象の一つとなりうると考えられた。
     現在,抽出された遺伝子について,毒性に関与している可能性があるいくつかの既知パスウェイを用いた解析を行っており,その結果についても報告する。
  • 清澤 直樹, 塩飽 恒史, 廣出 充洋, 上原 健城, 大村 功, 清水 俊敦, 宮城島 利一, 小野 敦, 漆谷 徹郎, 長尾 拓
    セッションID: P-119
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】トキシコゲノミクスプロジェクト(TGP)では,代表的な肝障害惹起化合物を中心とした多数の化合物を選抜し,これらを暴露したラット肝臓・ラット肝細胞・ヒト肝細胞に関し,Affymetrix社のGeneChipアレイを用いたデータベース(DB)を構築している.本検討では,(A)発がん関連遺伝子,(B)グルタチオン枯渇応答性遺伝子,(C)PPAR alpha標的遺伝子,にそれぞれ関係する遺伝子セット(バイオマーカー:BM)に関する効率的な解析法の構築を目的とした.【方法】各々の遺伝子プローブセットに関する化合物投与群/対照群シグナル比の対数値(signal log ratio:SLR)を用いて,I)全体の発現量増減傾向の指標として{(SLRの和)/(BMに含まれる遺伝子数)}を計算し,II)全体の遺伝子発現変動レベルの指標として{(SLRの平方和)/(BMに含まれる遺伝子数)}を計算して,最後にI)とII)の両計算値を乗じたスコアを算出した.【結果および考察】いずれのBMにおいても,TGPDBに関する各化合物データのスコア算出結果は,既知の報告に照らして妥当なものと考えられた.本スコアは簡潔な計算により算出され,多数の化合物データに関する遺伝子発現変動レベルの大まかな傾向を1次元のスコアで表示可能とすることから,TGPDBのような大規模DBの解析に際して有用であり,また様々な活用法が期待される.例として,特定のBMに関してラット肝臓・ラット肝細胞・ヒト肝細胞のスコアをそれぞれ算出し,3次元の散布図を描くことで,異なる生物種・細胞種におけるBMの互換性・妥当性を評価することができるなどの活用法を紹介する.この他,スコアの精度をさらに高めるために,GeneChipデータのS/N比の指標であるPresence/Absence情報を考慮したスコアの検討結果に関しても議論する.
生殖・発生・幼若毒性
  • 古川 賢, 臼田 浩二, 阿部 正義, 小川 いずみ
    セッションID: P-120
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々はインドール酢酸(IAA)を妊娠12_-_14日のラットに投与することにより、胎児に小脳症が誘発されることを報告した(Tox Pathol 2004、 32: 659)。本発表ではIAAのマウス胎児の神経上皮細胞に対する影響を検討した。【材料及び方法】妊娠CD-1マウス96匹を用いて以下の3試験を実施した。IAAはオリーブオイルに懸濁し、強制経口投与を行った。摘出胎児は重量測定後、ホルマリン固定し、妊娠18日胎児は脳重量を測定した。1)器官形成期投与:妊娠7_-_15日に0、500及び1000mg/kgにて投与し、妊娠18日に剖検した。2)小脳症の感受期:妊娠9、10、11、12、13ないし14日のいずれか1日に1000mg/kgにて投与し、妊娠18日に剖検した。3)神経上皮細胞に対する影響:妊娠11-13日に0、500及び1000mg/kgにて投与し、妊娠12.5、13.5、14、15及び18日に剖検し、病理組織検査を実施した。【結果】IAAによる母動物への影響はいずれの群においても認められなかった。1)器官形成期投与:1000mg/kg群で胎児重量及び脳重量は低下した。 処理群では口蓋裂が発現した。2)小脳症の感受期:胎児重量は妊娠10、11ないし12日投与群で、脳重量は妊娠10、11、12ないし13日投与群で低下した。3)神経上皮細胞に対する影響:脳室帯においてアポトーシスが認められ、細胞密度は低下していた。アポトーシスは中間層、背側層及びプレパレートに主座しており、重篤な胎児では腹側層は消失し、脳室内にアポトーシス細胞が剥離脱落していた。病変は妊娠12.5日が最も重篤で、それ以降減少し、15日には消失した。【結論】IAAはマウスにおいてラットと同様に脳室帯で新生された神経細胞にアポトーシスを惹起し、小脳症を誘発し、その感受期は妊娠10-13日であることが明らかとなった。
  • 江馬 眞, 藤井 咲子, 松本 真理子, 広瀬 明彦, 鎌田 栄一
    セッションID: P-121
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    加硫促進剤1,3-di-o-tolylguanidine (DTG)のラットを用いた簡易生殖試験において催奇形性を疑わせる結果が得られたことから、DTGのラットにおける催奇形性について検討した。ラットの妊娠6-19日に0, 10, 20, 40 mg/kg/dayのDTGを強制経口投与し、妊娠20日に帝王切開して胎児への影響を調べた。40 mg/kg/dayで妊娠ラットの自発運動低下が認められ、24例中4例のラットが死亡した。20 mg/kg/day以上の妊娠ラットに散瞳が観察された。20 mg/kg/day以上で母体体重増加抑制、40 mg/kg/day妊娠ラットの摂餌量減少がみられた。さらに、40 mg/kg/dayでは、妊娠子宮の重量低下、着床後胚死亡率上昇、生存胎児数の減少、雌雄の胎児体重及び胎盤重量の低下が認められた。外表奇形を有する胎児の総数が40 mg/kg/dayで増加し、骨格奇形を有する胎児の総数が20 mg/kg/day以上で増加した。40 mg/kg/dayの胎児では短指、短尾、指節骨の欠損または癒合、尾椎の欠損または癒合等の異常が増加し、化骨遅延も認められた。胎児の内臓所見には投与の影響はみられなかった。以上の結果から、DTGはラットにおいて母体毒性発現用量で催奇形作用を示すことが明らかとなった。
  • 島田 信, 萩原 美代子, 桜井 健, 下村 和裕, 加藤 道幸, 古濱 和久
    セッションID: P-122
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】DE-310はトポイソメラーゼI阻害作用を持つカンプトテシン誘導体であるDX-8951f、ペプチドスペーサーおよび多糖キャリアーからなるDDS抗癌剤である。本剤をラット胎児器官形成期に投与すると、脳髄膜瘤が約半数の胎児にみられた。そこで、1)DDS製剤であることを考慮して器官形成期以前の投与による催奇形性、2)頭部異常発現の臨界期、3)DE-310の各構成物質の催奇形性、4)組織学的検査による頭部異常発現過程について検討した。【材料よび方法】雌Slc:SDラットの妊娠5、6、7、9、11、13、14、15または17日にDE-310の0.125、0.25、0.5または1.0 mg/kg/dayを尾静脈内単回投与した。妊娠21日に胎児摘出を行い、胎生期死亡、胎児の外部、内臓および骨格の観察を行った。また、DX-8951f、スペーサーおよびキャリアーを別々に妊娠13日に投与して、同様に観察を行った。さらに、DE-310を妊娠13日に投与して、妊娠14、16、18および21日に胎児を摘出し、頭部を組織学的に検査した。【結果および考察】胎生期死亡率は妊娠5日の0.125、0.25、0.5または1.0 mg/kg/day投与で、5.0、58.9、100および100%であったが、頭部異常は認められなかった。胎生期死亡は妊娠初期で高く、妊娠13日以降は10%以下に減少した。臨界期に関しては、妊娠13、14および15日の頭部異常出現率は100、98.3および0%であり、妊娠13日の程度がより重度で、最も感受性が高かった。頭部異常はDX-8951fの1.0 mg/kg/dayのみで見られ、スペーサーおよびキャリアー投与では、観察されなかった。組織学的には、投与3日以降、頭頂部皮下に循環障害を示すうっ血および出血が起こり、次いで脳実質および脳室にも認められ、頭頂部では大きいのう胞が形成された。以上、DX-8951fをDDS化することにより、胎生期死亡率が低下するため、脳髄膜瘤がより高頻度に発現することが示された。
  • 福島 亮, 金森 進, 兼藤 雅子, 中村 和市, 加藤 育雄
    セッションID: P-123
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    Leflunomide(LEM)はpyrimidineヌクレオチドのde novo合成に必須なDihydroorotate dehydrogenase(DHODH)およびチロシンリン酸化酵素の阻害作用を持つ免疫抑制剤である.これまでの実験で,妊娠マウスへのLEM投与により,外脳,口蓋裂,四肢および尾部の異常といった多様な奇形が発現することが明らかになった.そこで本実験では,LEMの催奇形性とDHODH阻害作用との関連を検討するために,uridine併用投与により奇形発現が抑制されるかどうかを調べた.LEMの催奇形性の原因がDHODH阻害であれば,uridineを併用投与することによってsalvage経路からヌクレオチドが供給されることにより,LEMによる奇形発現が抑制されると推察される.妊娠10日のマウスにLEM 70 mg/kgを単回経口投与し,uridine併用投与群では,LEM投与の0.5,4,9および24時間後(4回)に,または0.5および4時間後(2回)に,uridine 1000 mg/kgを反復腹腔内投与した.結果,LEM投与群では全胎児で異常が見られたが,uridine併用によって異常児発現率の低下が認められた.また,4回併用群の発現率が2回併用群よりも顕著に低値であった.以上の結果から,uridine併用によって,LEMの奇形発現が抑制されること,およびその抑制はuridineの投与回数に依存することが示された.本実験の結果,LEMによるDHODH阻害が催奇形性の原因であることが明らかになった.
  • 東山 太輔, 才津 浩智, 滝川 俊也, 石橋 誠, 塩田 浩平
    セッションID: P-124
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    全前脳胞症(holoprosencephaly, HPE)は、発生初期における前脳の左右への分割不全によって起こる頭部顔面の発生異常である。ヒトで、妊娠初期のエタノール摂取は、全前脳胞症(holoprosencephaly, HPE)の一因と考えられている。エタノールにより誘発されるHPEを詳細に解析するために、妊娠7日のC57BL/6Jマウスにエタノールを腹腔内注射し、その胎児を調べた。その結果、エタノール投与群においてHPE様の頭部顔面異常が誘発され、終脳正中部の形成異常がみられた。さらに、whole-mount in situ hybridizationを行ったところ、エタノール群の胚ではSonic hedgehog (Shh)の発現が減弱していた。以上から、マウス器官形成期早期のエタノール投与がShh signalingを修飾することにより、頭部顔面正中部の発生異常を誘発し、HPEが引き起こされる可能性が示唆された。
  • 園淵 了慈, 村口 太一, 松永 充博, 森 智裕, 木下 勉, 今岡 進
    セッションID: P-125
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    ビスフェノールA(BpA)は内分泌かく乱化学物質の一つに挙げられ、弱いながらもエストロゲン様作用があることが明らかになっているが、最近では性ホルモンかく乱作用以外にも中枢神経発達阻害の可能性なども報告されている。最近我々は、BpAが低酸素応答系の遺伝子発現を阻害することを見いだした。低酸素応答は低酸素感受性因子(HIF-1)が、低酸素状態で安定化されることで起こる。我々はBpAがHIF-1を不安定化させることを明らかにした。HIF-1は発生過程においても、循環器系の形成など様々な形態形成に関わっていると推測されている。今回は、アフリカツメガエル(Xenopus)を用いて、BpAの発生過程における影響、特にHIF-1系を介した影響について検討した。受精卵をBpAで処理すると、神経胚までにおいて、動物極側にアポトーシスが観察され、さらに神経管形成不全が見られた。神経胚期にBpAで処理すると頭部や目の形成不全が起こった。一方受精卵にHIF-1α antisense RNAを導入すると、胚は神経管形成不全で死亡した。また、目の形成不全については、Notch signal系に注目して検討を行った。その結果、BpAはNotch signalの伝達を阻害することを明らかにした。さらに、最近HIF-1αがNotch signalと相互作用することが報告された。現段階では、これらの結果は断片的なものであるが、お互いに深く関わっている可能性が考えられ、BpAの作用とともに発生過程での低酸素応答機構の役割の解明にもつながると考える。Kubo, T. and Imaoka, S. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 318, 1006-1011 (2004).
  • 橋本 翔子, 山崎 絢子, 幸田 秀紀, 岡田 和嗣, 木下 勉, 舩江 良彦, 今岡 進
    セッションID: P-126
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    先行研究によって、ラット脳のシナプトゾームからビスフェノールA(BpA)結合因子として、protein disulfide isomerase (PDI)が精製された。PDIは多機能因子で、ジスルフィド結合を形成して、タンパク質の構造を保つシャペロンとして働くほか、甲状腺ホルモンT3と結合したり、コラーゲンのプロリンヒドロキシラーゼのサブユニットとしても働くことが明らかにされている。今回は、アフリカツメガエル(Xenopus) PDI cDNAを新規クローニングし、ラットやヒトPDIと比較した。また、発生過程におけるPDIの機能についても検討した。まず、xPDIタンパク質を大腸菌で発現させ精製した。T3およびBpAとの結合を検討した結果ラットやヒトのPDIと同じようにxPDIはこれらの化合物と結合した。さらに、PDI抗体を用いて、初期発生過程におけるxPDIの発現を検討した。このタンパク質は受精卵から存在していたが、発生の進行に伴って徐々に増加した。特に、神経胚期以降xPDIの発現は増加した。一方、xPDI sense RNAおよびPDIのシャペロン活性ドメインに変異を導入したmxPDI sense RNAを受精卵にマイクロインジェクションして、影響を調べた。その結果、神経胚マーカーに影響が現れた。さらに、PDI mRNAおよびタンパク質の発現が顕著にみられた尾芽胚期におけるPDI mRNAの空間的局在をwhole mount in situ hybridization法により検討した。その結果、PDI mRNAはセメント腺および目を含む頭部領域に多く局在していた。このことはPDIが発生過程において神経系形成に重要であることを示唆するものである。
  • 福西 克弘, 永岡 隆晴, 今井 統隆, 立石 大志, 福崎 好一郎
    セッションID: P-127
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】最近幼若動物試験が注目を集めている.幼若動物では各の器官成長は動物種により異なることから試験結果のヒトへの外挿は注意を要する.今回演者らは,カニクイザルの乳歯歯式が切歯:犬歯:乳臼歯=2:1:2とヒトと同じであることから,サル出生児の乳歯発育状態並びに肝臓及び腎臓について観察し,乳歯萌出状況がカニクイザル成長指標となる可能性さらにはヒトとの成長の比較指標となる可能性について検討した.【材料及び方法】カニクイザルは,株式会社新日本科学の安全性研究所で母動物から出産された出生児を用いた.乳歯萌出の観察は生後1ヶ月齢から6ヶ月齢まで1ヶ月間隔で行い,一部の出生児については約8ヶ月齢まで観察した.また,生後6ヶ月齢では,肝臓及び腎臓を摘出し,10%ホルマリン固定後,HE染色し組織学的に観察した.【結果及びまとめ】乳歯の萌出時期の観察では切歯,犬歯,臼歯及び臼歯の萌出時期は数ヶ月単位で個体差があることが確認された.また,生後6ヶ月齢では観察児の9割で全乳歯が萌出しており,追加観察した生後約8ヶ月齢では観察児の全例で乳歯が萌出していた.生後6ヶ月齢の肝臓及び腎臓は概ね成獣の組織構造を有していた.これらのことから,カニクイザルでは通常生後6ヶ月齢で出生児が離乳されているが,大部分の個体で概ね乳歯が萌出すること,肝臓及び腎臓の組織形態学的構造も概ね成獣型となることから,器官生育状態の視点からは生後6ヶ月は離乳可能時期と考えられる.また,乳歯萌出時期からみたカニクイザルとヒトの幼若児の相対年齢比較についても考察する. 以上
  • 王 瑞生, 須田 恵, 大谷 勝巳
    セッションID: P-128
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    Ethylene glycol monoethyl ether (EGEE) is one of a family of glycol ethers widely used as an organic solvent for resins, paints and dyes, and as a thinner in industry. It is known that EGEE can cause damage in the testes of several animals, as demonstrated by the testicular atrophy and decreased sperm count. In the present study, we examined the dose-related effects of chronic inhalation of the solvent on reproduction and sperm motion in male rats, and the recovery after termination of the exposure. Male Sprague-Dawley rats at 8 weeks old were exposed to EGEE at 0, 80, 250 and 700 ppm by inhalation, 8 hr/day, 6 days/week, for 9 weeks. The body weight gain was not affected in any EGEE groups. However, the weight of testes and epididymides and their ratio to body weight were significantly lower in the high EGEE group than in controls. The percentage of motile sperm in the cauda epididymis was dose-dependently decreased in EGEE groups, and the differences between medium- and high-EGEE groups and control group were significant. For the progressive sperm, a similar tendency was also demonstrated. The percentage of sperm with rapid motion was lower in medium- and high-EGEE exposure, while that of the static sperm was significantly increased in the two groups. With the sperm from spermaducts, similar results were obtained as in the cauda epididymides. Part of the animals were mated with female rats after the termination of exposure, and the pregnancy and fetus were checked. Also, the recovery of the male rats 10 weeks after the termination of EGEE exposure was studied.
  • 大谷 勝己, 小林 健一, 久保田 久代, 三枝 順三
    セッションID: P-129
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    We are reporting the influence to the sperm of Dibromochloropropane (DBCP) which has strong action as an example, comparing six tetrazolium salt color-producing methods (MTT, MTS, XTT, WST-1, WST-3 and WST-8, all are abbreviations) as an index of mitochondria metabolic capacity in sperm with the other methods including computer assisted sperm analytical method (CASA). Significant decrease of absorbance was found by tetrazolium salt methods except WST-1 method in the 75 and 100mg/kg treated groups of DBCP. Furthermore, significant sperm decrease by CASA was confirmed in the same treated groups, and even sperm quality analyzer (SQA) method recognized a fall of sperm motility index (SMI) value equally. On the other hand, no such significant differences with control group were recognized by all measurement methods except WST-8 method in the 25 and 50mg/kg treated groups of DBCP. .Based upon the foregoing, most tetrazolium salt color development methods make it possible to get the results that are similar to CASA and SQA method. We does not have to deny the utility of CASA which can measure several quantitative parameters about motility of sperm, but tetrazolium salt color-producing method has characteristics superior at a point of the simpleness and easiness, specimen processing capacity and economy, and there is an advantage at the point that is suitable for qualitative analysis to be able to judge sperm normality by the naked eye.
  • 稲若 邦文, 樋口 敏浩, 岡本 隆行, 川村 聡
    セッションID: P-130
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]生殖試験における抗アンドロゲン作用の検出は、ラット胎児の肛門生殖突起間距離(AGD)の測定が一般的であるが、他の動物種、たとえばウサギでは、AGDの雌雄差が小さく、有意に測定することが困難であった。今回、ウサギにおける抗アンドロゲン作用の検出方法を検討したので、その結果を報告する。
    [方法]Kbl:NZW種ウサギ(N=8-9)の妊娠13日から24日の間、抗アンドロゲン剤である酢酸シプロテロン(CA)を、10 mg/kg/dayで1日1回連日筋肉内投与した。妊娠29日に帝王切開し、得られた胎児は内生殖器により性判別を行った後、外生殖器部分を摘出し、10%中性緩衝ホルマリン液で固定した。固定した外生殖器から横断切片を作製し、顕微鏡下で亀頭層の直径(a)、亀頭層の開放間距離(b)および亀頭層の開放率(b/a×100)を測定した。また、感受期を調べる目的で、CA(2.5 mg/kg)を妊娠20、21、22、23あるいは24日のいずれか1回投与し、同様の測定を行った。
    [結果]対照群おける亀頭層の直径、亀頭層の開放間距離および亀頭層の開放率は、雄胎児は1015±83.5 μm、26±8.2 μmおよび2.6±0.78%であり、雌胎児は856±64.0 μm、437±72.3 μmおよび51.2±8.13%であった。いずれも測定項目においても、雄胎児と雌胎児の間に統計学的な差が認められた。CA投与群の雄胎児における亀頭層の直径、亀頭層の開放間距離および亀頭層の開放率は865±72.6μm、318±59.4μm、および36.7±5.13%であり、対照群の雄胎児に対し、統計学的に有意な差が認められた。また、亀頭層の直径、亀頭層の開放間距離および亀頭層の開放率のCAに対する感受期は、妊娠21日から24日と推定され、特に妊娠21または22日のCA投与に対し、最も鋭敏に反応した。
  • 横山 篤, 秋田 正治, Fuss R.D.
    セッションID: P-131
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々が開発してきたラットの胎児を体外に取り出し培養し、医薬品の毒性を観察する方法は長期間の正常培養が目標である。これら哺乳類の全胚培養が失敗するのは、ラットの母体外へ胎児を摘出する時の出血量が原因である。今回の報告はこれらの出血を止血する化合物の培養ラット胎児への影響を観察した。
    【方法】妊娠11日目のラット胎児を体外に取り出し48時間の培養を行った。検査化合物はカルバロスルホン酸ナトリウム(CSN)10,50,100μg/mlとし、培養液内処理とした。
    【結果】CSN全処理群は培養ラット胎児の成長指標である、胎児頂殿長、胎児心拍動数、総体節数、胎児蛋白量において対照群と差は無かった。また、外表形態においても異常は認められなかった。
    【考察】このCSNの低用量処理が止血効果を生み出し培養全体の時間を長期化できる可能性が出てきた。
  • 横山 篤, 秋田 正治, Fuss R.D., 西部 修
    セッションID: P-132
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々が開発してきたラットの胎児を体外に取り出し培養し、医薬品の毒性を観察する方法は長期間の正常培養が目標である。これら哺乳類の全胚培養が失敗するのは、ラットの母体外へ胎児を摘出する時の出血量が原因である。今回の報告はこれらの出血を止血する化合物の培養ラット胎児への影響を観察した。
    【方法】妊娠11日目のラット胎児を体外に取り出し48時間の培養を行った。検査化合物はイプシロン30,50,100μg/mlとし、培養液内処理とした。
    【結果】イプシロン全処理群は培養ラット胎児の成長指標である、胎児頂殿長、胎児心拍動数、総体節数、胎児蛋白量において対照群と差は無かった。少し培養初期段階で培養ラット胎児の心拍動数にばらつきが観られたが直ぐに修復した。また、外表形態においても異常は認められなかった。
    【考察】このイプシロンの低用量処理が止血効果を生み出し培養全体の時間を長期化できる可能性が出てきた。
  • 横山 篤, 秋田 正治, Fuss R.D.
    セッションID: P-133
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々が開発してきたラットの胎児を体外に取り出し培養し、医薬品の毒性を観察する方法は長期間の正常培養が目標である。これら哺乳類の全胚培養が失敗するのは、ラットの母体外へ胎児を摘出する時の出血量が原因である。今回の報告はこれらの出血を止血する化合物の培養ラット胎児への影響を観察した。
    【方法】妊娠11日目のラット胎児を体外に取り出し48時間の培養を行った。検査化合物はヘモコアグラーゼ(HMA)10,50,100μg/mlとし、培養液内処理とした。
    【結果】ヘモコアグラーゼ(HMA)全処理群は培養ラット胎児の成長指標である、胎児頂殿長、胎児心拍動数、総体節数、胎児蛋白量において対照群と差は無かった。また、外表形態においても異常は認められなかった。
    【考察】このHMAの低用量処理が止血効果を生み出し培養全体の時間を長期化できる可能性が出てきた。
  • 横山  篤, 秋田 正治, Fuss R.D.
    セッションID: P-134
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々が開発してきたラットの胎児を体外に取り出し培養し、医薬品の効果を観察する方法は哺乳類胎児の脳神経系の発達を解析するのに最適の実験系である。今回、MAM誘発性小頭症を改善あるいはその発現を防ぐ医薬品の検索目的でIFPの培養ラット胎児への影響を観たので報告する。
    【方法】妊娠11日目のラット胎児を体外に取り出し48時間の培養を行った。検査化合物はイフェンプロジル(IFP) 50μg/mlとし、培養液内処理とした。
    【結果】イフェンプロジル(IFP)全処理群は培養ラット胎児の成長指標である、胎児頂殿長、胎児心拍動数、総体節数、胎児蛋白量において対照群と差は無かった。また、外表形態においても異常は認められなかった。
    【考察】このIFPの臨床血中量処理がMAM処理培養ラット胎児の発現小頭症にどのような影響を及ぼすか併用実験を現在進行中である。
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