日本トキシコロジー学会学術年会
第33回日本トキシコロジー学会学術年会
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環境毒性・リスクアセスメント
  • 佐藤 至, 河本 光祐, 西川 裕夫, 齋藤 憲光, 大網 一則, 金 一和, 津田 修治
    セッションID: P-035
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)ならびにパーフルオロオクタン酸(PFOA)は界面活性剤の一種であり,合成樹脂原料,撥水・撥油剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されていることから残留性有機汚染物質に区分される。これらの物質の毒性については肝障害や発癌性などが指摘されているが,未だ十分な情報が得られていない。このため本研究ではPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。
    【方法】Wistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,PFOSを50-200 mg/kg経口投与したラットの大脳皮質,海馬および小脳にニッスル染色を施し,病理組織学的検索を行った。
    【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSを投与した動物では超音波刺激によって強直性痙攣が誘発された。この痙攣は超音波刺激前にジアゼパムを投与しても抑制されなかった。一方ゾウリムシにおいてPFOSと同じ後退遊泳作用を有したSodium Dodecyl Sulfate(SDS)ならびにSodium Dodecanoylsalcosinateは痙攣を引き起こさなかった。PFOS投与24時間後の脳組織(大脳皮質,海馬,小脳)において,神経突起の短縮または消失,ニッスル小体の減少などの変化が用量依存性に認められた。これらの結果からPFOSは神経毒性を有すると結論される。
  • 閔 姫源, 岡島 史絵, 谷川 力, 石塚 真由美, 藤田 正一
    セッションID: P-036
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】クマネズミは人獣共通感染症を媒介する害獣である。その駆除のために殺鼠剤ワルファリン(WAR)が用いられたが、近年WARに耐性を持つクマネズミが東京近郊に増え、問題になっている。本研究ではWARを代謝するチトクロムP450(P450)を中心にクマネズミのWAR耐性機構を明らかにすることを目的とした。【方法】クマネズミは東京周辺で採取し1ヶ月間WAR含有餌を与え、生存個体を耐性とした。感受性クマネズミは小笠原諸島で採取し、系統化した。ビタミンKエポキシド(VKO)還元酵素(VKOR)の活性は肝ミクロソーム(Ms)反応混合液中のVKOをHPLCで測定した。耐性および感受性個体にWARを経口投与し、WARとその代謝物の血中および尿中濃度をHPLCで測定した。さらにMsにおけるWAR水酸化活性を測定した。また耐性個体にP450阻害剤SKF-525A(SKF)とWAR同時投与を行い、生存率を調べた。また肝MsのP450リダクターゼ(fp2)活性を測定した。さらに精製fp2にVKOR活性を調べ、耐性および感受性個体のfp2のVKOR活性を調べた。【結果および考察】WAR経口投与後、感受性個体と比較して耐性個体の血中WAR濃度は低く、尿中WAR代謝物の濃度は高かった。さらに耐性個体の肝MsのWAR水酸化活性も高く、CYP3A2含量も高かった。またSKFとWARの同時投与によって、耐性個体が20~75%死亡したことから、P450によるWAR代謝亢進が耐性機構に関与していると示唆された。fp2活性は感受性より耐性個体で3~8倍高い結果が得られ、耐性におけるP450依存のWAR代謝亢進の一要因となっていると考えられた。また精製fp2にVKOR活性が見られたことから、VKOR活性へのfp2 の関与も示唆された。従ってP450およびfp2の活性が高いことがWAR耐性の原因であると考えられた。
  • 木林 加奈, 新野 竜大, 小野寺 祐夫
    セッションID: P-037
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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     高濃度の有機物を含む河川水などを塩素処理すると、塩基対置換型の直接変異原性物質の生成することが報告されている。この変異原性物質は光や熱に不安定であり、還元剤の存在で容易に分解するため、社会的関心度の低い毒質であった。しかし、パルプ漂白廃液中の強変異原性ハロゲン化ヒドロキシフラノン(MX)が水道水からも検出され、近年、社会的関心度の高い毒性物質として注目されている。本研究では、直接変異原性物質を含むモデル塩素処理水を調製し、その変異原性の強度に及ぼす脱塩素法を検討した。 既報に従ってフェノールを含む弱酸性の緩衝液に、化合物に対して15倍モル量の次亜塩素酸ナトリウムを加え、1 時間振とうしてモデル塩素処理液を調製した。これに1 mMの亜硫酸ナトリウム溶液の添加または窒素ガスを吹き付けて未反応の塩素を除去し、ジエチルエーテルで振とう抽出し、K・D濃縮装置で1 mℓまで濃縮して試料とした。変異原性試験はTA100株を用いS9 mix非存在下でプレインキュベション法により行い、容量ー反応曲線における初期段階の傾きから変異原性強度を評価した。試料中の反応生成物はキャピラリーGC/MSによって解析した。 モデル塩素処理液に乾燥窒素ガスを静かに5分間吹きつけと、溶液中の残留塩素は全て除去された。コノエーテル抽出物について変異原性試験を行ったところ、680revertants/10μg(出発物質換算)の変異原性強度となった。これに対して、脱塩素剤として亜硫酸ナトリウムを添加した場合、約1/3 程度の変異原性強度が得られた。この変異原性強度の低下をGC/MSで解析したところ、亜硫酸ナトリウムの添加により塩素消毒副生成物のうち、塩素化シクロブテノンやペンテンジオンなどの消失することがわかった。
腎・泌尿器系
  • 名和 徹, 吉田 千春, 柴崎 義明, 仲野 善久, 平塚 一幸, 黒沢 亨
    セッションID: P-038
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    小児適応医薬品の開発には幼若動物を用いた毒性評価が必要であるが、幼若動物の生理機能や毒性発現には不明な点が多く、その関連情報も少ない現状である。今回、我々はアミノ配糖体系抗生物質の腎毒性に関して興味深い知見を得たので報告する。Arbekacin(ABK)とGentamicin(GM)を幼若(2週齢)および成獣(6週齢)ラットに9日間反復筋肉内投与したところ、成獣ラットではABK、GMともに200mg/kgで同程度の明らかな腎毒性(血中BUN、Creの上昇と近位尿細管上皮細胞の壊死・脱落)がみられたが、ABKでは100mg/kgで腎毒性はみられず、GMでは25mg/kgから腎の組織障害がみられた。一方、幼若ラットではABKは200mg/kgでも腎毒性はみられなかったが、GMでは6.25mg/kgから腎の組織障害、50mg/kgで明らかな腎毒性がみられた。また、ABKとGMの各用量における腎中濃度を検討したところ、両剤ともに幼若ラットの腎中濃度は成獣ラットよりも高く、ABKの腎中濃度は幼若、成獣ラットともにGMよりも明らかに高値を示した。なお、GMでは幼若および成獣ラットの毒性発現用量での腎中濃度はほぼ同値であった。この様に幼若ラットは成獣ラットに比べて腎臓中にアミノ配糖体を蓄積しやすいことが明らかとなった。また、一般にアミノ配糖体の腎毒性は腎中濃度に依存すると言われている通り、GMでは腎中濃度が高くなる幼若ラットで低用量から腎毒性がみられたが、ABKでは幼若ラットで腎中濃度が高いにもかかわらず、腎毒性は弱かった。以上より、幼若ラットと成獣ラットは、アミノ配糖体の腎毒性に関して薬剤間で異なる反応性を示し、その原因を明らかにすることは幼若ラットを用いた毒性評価に有用な情報になると考えられた。
  • 大平 隆史, 高橋 幸久, 花見 正幸, 池田 尚隆, 佐々木 稔, 佐村 恵治, 錦辺 優
    セッションID: P-039
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    目的:腎臓は毒性評価において重要な臓器のひとつであり、中でも糸球体はネフロンの中で薬物暴露を受ける最初の部位である。ピューロマイシン アミノヌクレオシド(PA)やドキソルビシンなどは糸球体基底膜に障害を与え、サイズ選択性、電荷選択性を変化させる。これら腎糸球体障害は早期に見いだすのが難しいケースが知られており、簡便な指標の測定が望まれる。今回、我々はピューロマイシンを投与したラットを用いて抗ラットアルブミン抗体を含んだ試薬Testant(株式会社BL社製)が腎障害の指標である尿中アルブミン分析に有用かどうか検討した。方法:雌のCrl:CD(SD)ラットに、PA(150mg/kg)を静脈内投与した。投与後、24、48、72時間後(投与1、2、3日)に6時間掛けて尿採取した。各ポイントの尿採取に続いて、頸静脈採血を行った。これらの検体を用いて尿中アルブミン分析を含む尿検査および血清生化学検査を行った。また、投与後78時間に腎臓を摘出し病理評価に供した。なお、尿中アルブミン分析についてはTestantの検出感度を抗ヒトアルブミン抗体含有試薬のそれと比較した。結果と考察:PA投与群の尿中アルブミンはコントロール群と比較し、投与1、2、3日で3倍、6倍、30倍と増加した。また、尿中総タンパクは投与3日で増加した。一方、血清中尿素窒素、クレアチニンは投与3日においても増加が見られなかった。また、PA投与群の腎臓には肉眼的および病理組織的変化は観察されなかった。抗ヒトアルブミン抗体含有試薬との比較においてTestantの感度は約4倍を示した。以上のことから、ラットを用いた毒性試験において、Testantを用いて尿中アルブミンを測定することにより、通常の検査項目では検出されない早期の糸球体障害の指標となる定量的データが得られることが示唆された。
  • 二井 愛介, 田代 俊文, 松永 敏幸, 堀井 郁夫
    セッションID: P-040
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】Prostaglandin E2(PGE2)は,腎臓における水と電解質の再吸収や血圧調節などを含む多様な生理学的作用に関与しており,そのreceptorとしてEP1からEP4の4つのサブタイプが知られている。これらのうちEP4 receptorについて,ヒトとラットで発現の報告があるがイヌではみられないことから,ラットとイヌの腎臓における局在を免疫組織化学的に比較した。【方法】通常の方法(10%中性緩衝ホルマリン固定,パラフィン包埋)で作製した無処置ラットおよびイヌの腎臓の組織切片を用い,標識ポリマー法によるEP4 receptorの免疫組織化学的染色を行った。また,傍糸球体細胞における局在を検討するため,レニンを染めるPASあるいはBowie染色とEP4 receptor免疫染色の重染色を施した。【結果と考察】ラット,イヌ共に尿細管では遠位尿細管が最も強い陽性を示し,次いで集合管,乳頭管,ヘンレのループなどが強く陽性であった。これらに比べて近位尿細管は両種共に染色性は弱く,ラットでは特に弱かった。糸球体では両種共に足細胞とボーマン嚢上皮が陽性で,血管内皮とメサンギウム細胞は陰性であった。傍糸球体装置のうち,緻密斑は両種共強い陽性を示したが,傍糸球体細胞はラットでは微弱,イヌではほぼ陰性であった。小葉間動脈では,両種共に内皮細胞と中膜平滑筋の核が陽性であった。このように,ラットとイヌの腎臓におけるEP4 receptorの発現・分布は類似していた。ラットの腎臓において,遠位尿細管と集合管および輸入細動脈にEP4 receptor mRNAの発現が報告されており,イヌの結果も含めて今回の免疫組織化学的検討結果と概ね一致すると考えられた。傍糸球体細胞はラット・イヌ共に発現が弱かったが,強い発現を示した緻密斑と共にPGE2の作用の一つであるレニンの放出に関与していることから,さらに詳細な検討が必要と考えられた。
  • 日比 大介, 谷内 三郎, 玉木 理衣, 廣瀬 正晃, 幸田 祐佳, 河合 悦子, 玄番 宗一
    セッションID: P-041
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    [目的]多くの慢性腎疾患では、腎機能が進行的に低下し、腎間質線維化が認められる。腎間質線維化は、腎不全進展に関っており、予後と相関するといわれている。慢性腎不全に活性酸素(ROS)の関わりが報告されているが、ROSの役割についてはまだ不明な点が多い。そこで我々は、慢性腎不全ラットを用いて、腎不全進展へのROSの関わりを検討するために、ヒドロキシルラジカルスカベンジャーエダラボンの影響を調べた。
    [方法]7週齢SD系雄性ラットの左腎動脈3本分枝中2本を結紮し、その1週間後に右腎を摘出することで、慢性腎不全ラットを作製した。慢性腎不全ラット作製後、4、6、8週目で採尿、採血、腎摘を行った。エダラボン(6 mg/kg)は、慢性腎不全ラット作製後、6週目より1日2回12時間毎に腹腔内投与し、8週目まで続けた。腎障害の指標として、尿中蛋白排泄量、クレアチニンクリアランスを調べた。また、マッソントリクローム染色による組織学的検討を行うことで、腎間質線維化を調べた。
    [結果]慢性腎不全ラット作製後、4週目で尿中蛋白排泄量の増大、クレアチニンクリアランスの低下、間質線維化領域の増大がみられ、8週目では尿中蛋白排泄量、間質線維化領域のさらなる増大がみられた。エダラボンは、8週目における間質線維化領域の増大を抑制したが、尿中蛋白排泄量の増大、クレアチニンクリアランスの低下には影響を及ぼさなかった。
    [考察]慢性腎不全ラットにおいて、腎間質線維化の進展にROSが関与している可能性が示唆される。また、エダラボンは、すでに間質線維化領域の増大がみられた、慢性腎不全ラット作製後、6週目より投与したにもかかわらず、その進行を抑制した。このことから、エダラボンは慢性腎不全における間質線維化進展に対して有効な薬物である可能性が考えられる。
  • 高山 淳二, 高岡 昌徳, 杉野 洋子, 西川 満則, 佐竹 藍子, 北野 圭祐, 松村 靖夫
    セッションID: P-042
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】雌性ラットにおける腎虚血再灌流障害の程度は、雄性ラットの場合と比較して軽度であることが知られている。今回我々は、虚血性急性腎不全における性差を明らかにする目的で、虚血再灌流初期から発現変動に雌雄差が認められる蛋白質をプロテオーム解析により探索した。【方法】8週齢の雄性および雌性SD系ラットを用いた。右腎摘除2週間後、左腎を45分間虚血状態とした後、2時間の再灌流を施したラットを虚血再灌流処置群とした。また、虚血再灌流処置を除く同様の操作を行ったラットをsham群とした。虚血再灌流処置群およびsham群の左腎から抽出した蛋白質を二次元電気泳動法により分離し、蛍光標識ディファレンスディスプレイにより蛋白質発現を比較した。また、MALDI-TOF質量分析計を用いて、分離された蛋白質の同定を行った。なお、同定する蛋白質は、1)sham群において雄性並びに雌性ラットの間に1.5倍以上かつ有意な差がある蛋白質スポット、2)雄性または雌性ラットの一方で、sham群と虚血再灌流処置群の間に1.5倍以上かつ有意な差がある蛋白質スポットとした。【結果】雄性および雌性ラットのsham群の蛋白質発現パターンを比較したところ、雌性ラットにおいて23および20スポットが増加並びに減少し、それぞれの蛋白質の一部はornithine aminotransferase並びにregucalcinとして同定された。また、虚血再灌流により雄性ラットにおいて特異的に増減を示した蛋白質スポットは60および6個検出され、そのうち増加した蛋白質の中にmeprin alfaが含まれていることを確認した。一方、虚血再灌流により雌性ラットでのみ増加した4スポット並びに減少した3スポットにおいては、これまでにglobin並びにaspartoacylase-3を同定した。以上、虚血再灌流初期から雌雄特異的に増減する蛋白質が新たに同定されたため、今後、本病態の性差発現と同定タンパク質との関連性について検討する予定である。
  • Jutabha Promsuk, 武藤 朋子, 遠藤 仁, 金井 好克
    セッションID: P-043
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    Renal proximal tubule is the primary site for renal secretory elimination of drugs, toxins and their metabolites from the body. It is particularly susceptible to the damage by the toxicants. Cephaloridine, a first-generation of cephalosporin antibiotic, was known as nephrotoxicant transported into the renal proximal tubular cells by organic anion transporters (OATs). The mechanisms of nephrotoxicity induced by this compound have not yet completely understood. In this study, we examined the toxicity of low concentration of cephaloridine in OAT3-expressing renal proximal tubular cells (S2-OAT3) using cell viability assay. Transporter-mediated toxicity of cephaloridine was assessed at the molecular level using microarray analysis. The low concentration of cephaloridine and short exposure to the drug were used in this study to examine the early response of gene expression. The DNA microarray analysis revealed that the proliferative response and oxidative stress were involved in the toxicity process induced by cephaloridine. The transcription factors that participate in the regulation of functional changes were also predicted. This study would indicate an important direction of the genome wide analysis of transporter-mediated toxicity.
肝・消化器系
  • 安藤 洋介, 牧野 俊彦, 清沢 直樹, 伊藤 和美, 山内 秀介, 渡辺 恭子, 柴谷 由佳梨, 古川 忠司, 寺西 宗広, 高崎 渉, ...
    セッションID: P-044
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】肝薬物代謝酵素誘導剤を投与したラット肝臓での薬物代謝酵素誘導パターンはGeneChipによる網羅的な遺伝子発現解析により予測が可能となった。今回phenobarbital (PB)およびclofibrate (CPIB)を投与したラット肝臓について,網羅的なタンパク質発現解析を実施し,その有用性について検討した。【方法】F344ラット(雄,9週齢)にPB (100 mg/kg),CPIB (200 mg/kg)を14日間強制経口投与した。投与1,2,4,7,14日目に採取した肝臓を実験に用いて,病理学的検査,薬物代謝酵素活性測定,GeneChipによる遺伝子発現解析,ならびにwestern blotおよび2次元電気泳動(2D-DIGE)によるタンパク質発現解析を実施した。【結果および考察】これまで報告されているように,肝細胞肥大(PB,CPIB),滑面小胞体増生(PB),ペルオキシソーム増生(CPIB)を認めた。2D-DIGE解析では,PBおよびCPIBで300個程度のタンパク質スポットに発現変動が認められ,それらの変動パターンを明確に区別できた。薬物代謝酵素に関しては,GSTタンパクの発現が遺伝子発現に追従して,PBで増加し,CPIBで減少した。また,CPIBでは,脂肪酸β酸化系酵素の増強および糖新生の抑制が知られているが,2D-DIGE解析において脂肪酸β酸化系酵素を含む脂質代謝関連酵素の発現増加,および糖新生関連酵素の発現低下が検出された。加えて,ミトコンドリアのエネルギー産生関連酵素や薬剤ストレスによると推察される分子シャペロンの発現増加,尿素サイクルや酸化還元の関連酵素の発現低下も認められた。また,これらのタンパク質の発現変動はGeneChip解析とほぼ相関していた。以上のことから,2D-DIGE解析は肝機能の網羅的,定量的な評価に有効である。
  • 松本 朱美, 平井 加津子, 中下 幸江, 森 郁生, 堀之内 彰, 北崎 直
    セッションID: P-045
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    フェノバルビタール 60 mg/kg/日を雌雄のCrl:CD (SD) ラットに経口投与し、単回投与4及び24時間後並びに3回投与24時間後の肝臓を用い薬物代謝に関する酵素について活性及びリアルタイム定量PCR (qPCR) 法により遺伝子の発現量を測定した。また、3回投与24時間後の肝臓について免疫組織化学染色 (IHC) 及びin situ hybridization (ISH) 法を用いて酵素蛋白及び遺伝子の発現並びに局在を調べた。CYP3A1/2の酵素活性及びqPCR法による遺伝子発現量は、両者ともに単回投与24時間後から高値が見られたのに対し、CYP2B1/2では遺伝子発現量の高値が単回投与4時間後からみられ、酵素活性の高値は遅れて単回投与24時間後からみられた。いずれの遺伝子についても発現量の増加は3回投与24時間後のサンプルで実施したISH法で確認され、IHCの成績と同様に小葉中心性に発現増加が認められた。フェノバルビタールによる肝薬物代謝酵素活性の変動とqPCR法による遺伝子発現量の変動に一致がみられ、IHC及びISH法によりその分子種別の局在変化が明らかとなった。また、CYP2B1/2においてはqPCR法の方が酵素活性に比べて変動を早期に検出できた。qPCR法とISH法を組み合わせることにより、分子種別の肝薬物代謝酵素の遺伝子発現変動及び局在変化を検出することができ、肝細胞肥大がみられた場合の毒性評価において、有効に活用できると考えられる。
  • 牧野 俊彦, 安藤 洋介, 伊藤 和美, 荒川 真悟, 木下 順三, 寺西 宗広, 矢本  敬, 真鍋 淳
    セッションID: P-046
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】種々の肝薬物代謝酵素誘導剤を投与した実験結果が蓄積されてきた今日では,ラット肝臓での薬物代謝酵素誘導に関してはGeneChipを用いた網羅的な遺伝子発現解析で予測が可能である。今回,イヌ肝臓の薬物代謝酵素誘導の評価に網羅的な遺伝子およびタンパク質発現解析を応用し,その有用性について検討した。【方法】イヌ(ビーグル,雄)にphenobarbital (PB, 10→20→30 mg/kg×2/日),clofibrate (CPIB, 25→50→75 mg/kg×2/日)を14日間漸増経口投与した。投与終了後に肝臓を採材し,病理学的検査,薬物代謝酵素活性の測定,GeneChipによる遺伝子発現解析ならびにwestern blotおよび2次元電気泳動(2D-DIGE)によるタンパク質発現解析を実施した。【結果および考察】これまで報告されているように肝細胞肥大(PB,CPIB)と滑面小胞体の増生(PB)およびミトコンドリアの増加(CPIB)を認めた。薬物代謝酵素活性ではPBおよびCPIB投与群でP450含量の増加と,MCD,ECD,PCD活性の上昇が認められた。GeneChip解析では,PBで第I相および第II相酵素関連遺伝子の発現増強を認め,CPIBでは脂肪酸代謝関連遺伝子の発現増強が認められたが,脂肪酸β酸化系遺伝子の誘導は認められなかった。2D-DIGE解析では両化合物でその変動パターンが明確に区別され,GeneChip解析と相関も認められた。遺伝子発現プロファイルと薬物代謝酵素活性の変化とは良い相関がみられたこと,CPIB投与群ではラットの場合とは異なりペルオキシゾームの増生は認められなかったが,GeneChip解析においても脂肪酸β酸化系酵素遺伝子の誘導は認められなかったことから,薬物代謝酵素誘導や形態学的変化の違いがGeneChip解析により予測可能と考えられた。以上の結果より,イヌにおいても遺伝子/タンパク質発現解析データを蓄積することで,薬物代謝酵素誘導および誘導に伴う病理形態学的変化の予測が可能になるものと判断する。
  • 熊谷 和善, 伊藤 和美, 安藤 洋介, 斉藤 有司, 鈴木 洋子, 石川 加代子, 渡辺 恭子, 清沢 直樹, 矢本 敬, 寺西 宗広, ...
    セッションID: P-047
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    グルタチオン (GSH)が解毒に関与する化合物では,大量投与によるGSHの枯渇が毒性発現の一因となると考えられている。L-Buthionine (S,R)-sulfoximine (BSO)はGSH生合成を阻害することでGSH枯渇を惹起する。BSOによるラットGSH枯渇モデルを用いてGSHが解毒に関与するとされる薬剤について,GSH量が毒性発現に及ぼす影響を検討した。【材料および方法】 9週齡の雄性F344ラットにBSO (20mM)を4日間飲水投与した後, Allyl alcohol (AA, 60 mg/kg, p.o.),Acetaminophen (APAP, 300 mg/kg, p.o.),Bromobenzene (BB, 150 mg/kg, i.p.),Valproic acid (VA, 500 mg/kg, i.p.)を単回投与した。BSOを4日間前処置後に,AA (20 mg/kg),APAP (100 mg/kg),BB (50 mg/kg),VA (500 mg/kg)を同様の投与経路にて4日間反復投与する群も設けた。さらにBSOを前処置せずに, AA,APAP,BB,VAをBSO併用群と同条件で単回,あるいは4日間反復投与する群を別途設けた。投与後に肝臓を採材し,総GSHおよびGSSG量測定,病理学的検査およびGeneChip (Affymetrix, Inc.)を用いた遺伝子発現解析を実施した。【結果および考察】 BSOを4日間投与後に肝臓の総GSHおよびGSSG量を測定した結果,対照群と比べ,それぞれ75%および85%の減少を示したが,肝臓に形態学的な変化は認められなかった。以前から報告のあるAPAPの投与に加え,AAおよび BBの投与でもBSO前処置によるGSH枯渇により肝毒性の増強が確認されたから,GSH含量が肝障害発現に寄与すると示唆された。一方,VAの500 mg/kg投与では単回および4日間反復投与した群において,GSH枯渇に関わらず肝毒性の増強を認めなかったことから,GSH枯渇以外に代謝物産生亢進などの付加因子が肝毒性発現に必要であると推察された。GSH枯渇下における薬剤毎の毒性発現の差異について,遺伝子発現解析結果を含め考察する。
  • 田 迎, 前田 和哉, 杉山 雄一
    セッションID: P-048
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】近年、PPARをターゲットにした薬物が、生活習慣病領域で汎用されている。一方、PPAR gamma agonistであるtroglitazoneについては、重篤な肝障害のため市場より撤退を余儀なくされた。その原因の1つとして、troglitazone sulfateによる胆汁排泄トランスポーターBSEP(bile salt export pump)の強力な阻害による肝内胆汁うっ滞が提唱されている。一方で、他のPPAR gamma agonistに関しても、case reportとして肝障害が報告されている。そこで我々は、一連のPPAR alpha, PPAR gamma およびPPAR alpha/gamma dual agonistについて、トランスポーター阻害の観点から毒性、薬物間相互作用の可能性を検討するため、各種肝取り込み、排泄トランスポーターに対する阻害能を決定した。さらに、PPAR gamma agonistについて、胆汁うっ滞能をrat in vivoで評価を行った。
    【結果および考察】in vitro実験で、PPAR gamma agonistは、他のカテゴリーの薬物と比較して、取り込み・排泄いずれのトランスポーターに対しても比較的強力な阻害をかけることが示唆された。一方、rat, humanの間での阻害能の種差について検討したところ、pioglitazone, rosiglitazoneの両方で、human BSEPに対する阻害のほうが、rat Bsepに対する輸送阻害より強い傾向が示され。さらに、rat in vivo実験では、troglitazone投与群で有意に血清中の胆汁酸、taurocholate濃度の上昇が見られたが、pioglitazone,rosiglitazone投与群では、pioglitazoneで軽度の総胆汁酸濃度の上昇が認められたが、taurocholate濃度は変化がなかった。しかしながら、先のin vitro実験の結果を考えると、ヒトにおいては胆汁排泄トランスポーターBSEPの阻害能が強いため、注意が必要であるといえる。
  • 五十嵐 功, 前嶋 孝典, 熊谷 和善, 本多 久美, 間 芳江, 荒川 真悟, 柴田 勝好, 安藤 洋介, 伊藤 和美, 矢本 敬, 寺西 ...
    セッションID: P-049
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】Gap junction(GJ)を介する細胞間コミュニケーション(GJIC)は,化学物質が誘発する細胞障害を隣接する細胞に伝播し毒性を拡大させると考えられている.しかし,この作用は主としてin vitroの実験により裏付けされてきたものであり,in vivoで調べた報告は少ない.そこで,本実験では化学物質の毒性に対するGJICの関わりをin vivoで検討することを目的とし,肝臓におけるGJの構成蛋白であるCx32の遺伝子をノックアウトしたマウス(Cx32KO)と野生型マウス(Wild-type)にAcetaminophen(APAP)を投与し,両系統での肝障害発現の違いを調べた.【材料および方法】20週齢のCx32KOおよびWild-typeにAPAP 100,200および300 mg/kgあるいは溶媒(生理食塩液)を単回腹腔内投与した.投与24時間後,血液および肝臓を採取して血液化学的および病理組織学的検査を行なった.また,溶媒投与群では,肝臓中の薬物代謝酵素(CYP,GST,UDP-GT)およびGSH量についても測定した.【結果および考察】Wild-typeでは,300 mg/kgでのみALTとASTが顕著に上昇した。これに対して,Cx32KOでは,全ての投与量でALT,ASTの上昇が認められ,これらの値は投与量の増加に伴って増加した.また,病理組織学的検査では,これらの変化に相関して肝細胞の壊死および変性が小葉中心性に認められ,特に300mg/kgでの病変の程度はWild-typeに比べてCx32KOの方が強くその領域が広範囲であった.一方,溶媒投与群の薬物代謝酵素活性およびGSH量には,両系統間で差は認められなかった.本結果は, in vitroあるいはdominant negative TGラットで報告されているGJICを介する毒性の拡大とは異なるものであり,in vivoの実験で化学物質による肝障害がGJICによって抑制されていることを示唆した初めての報告である.
  • 三輪 恵理, 尾崎 晴茂, 須山 由美, 川崎 一哉, 吉岡 豊晃, 福井 英夫
    セッションID: P-050
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    薬物誘発性流涎がいずれの唾液腺から主に分泌されるか、またその流涎の発現機作検討方法の確立を目的として、麻酔下でイヌの各唾液腺にそれぞれカニューレを装着し、薬物を直接投与した後に各唾液腺からの唾液分泌量を連続的に測定できる動物モデルを作出した。既知薬物として、全身曝露で流涎が惹起されるピロカルピン(ムスカリン3作動薬)、メトキサミン(α1作動薬)及びサブスタンスP(NK1作動薬)を用いた。その結果、ピロカルピンでは全ての唾液腺から、サブスタンスPでは主に耳下腺からの唾液分泌亢進が認められたが、メトキサミンでは変化はみられなかった。これらの結果から、本モデルを用いることにより、既知薬物の主たる作用部位を特定することが可能となり、各唾液腺の反応性の相違を明らかにすることができた。次に、流涎とNK1受容体との関係を明らかにするため、NK1作動薬GR73632を用いて流涎の発現機作を検討した。その結果、GR73632は静脈内投与で唾液分泌の亢進が認められたが、その作用はアトロピンでは抑制されず、NK1拮抗薬MK-869で著明に抑制された。また、各唾液腺へのGR73632の直接投与によりサブスタンスPと同様に耳下腺での唾液分泌を亢進したが、MK-869の前処置により抑制された。従って、GR73632の耳下腺での唾液分泌亢進は、中枢のNK1受容体への直接作用あるいはムスカリン受容体を介する副交感神経の興奮によるものではなく、主に耳下腺に局在するNK1受容体への直接作用によると推察された。以上、本動物モデルは流涎の発現機作解明には有用であることが示された。
  • 川村 祐司, 中桐 朱理, 柴崎 義明, 下郡 望, 藤島 和幸, 庄司 陽子, 黒沢 亨, 竹内 孝治
    セッションID: P-051
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    幼若ラットを毒性試験に用いる上で、その生体機能を知ることは重要である。本研究では、幼若ラット(2週齢)の消化管機能の特徴を明らかにするため、成熟ラット(8週齢)との比較を行った。1)形態学的な特徴:幼若ラットの胃は、成熟ラットと比較すると胃粘液層が菲薄であり、また粘膜上皮厚が成熟ラットの1/2以下であった。2)生理的な特徴:幼若ラットの胃排泄能(ガラスビーズ粉)及び消化管輸送能(炭末)は、成熟ラットと比較してやや遅いものの大きな差は認められなかった。また、アトロピン(100 mg/kg)投与により幼若ラット、成熟ラットともに胃排泄能及び消化管輸送能は有意に抑制され、明確な週齢差は認められなかった。3)胃粘膜障害時の特徴:ウレタン麻酔下で切開した胃をex-vivoチェンバーに装着し、20mMタウロコール酸(TC)を30分間チェンバー内に適用し、粘膜電位差(PD)を粘膜障害性の指標及び粘膜血流(GMBF)を防御反応の指標として経時的に測定した。TCの適用により、成熟ラットでは急激なPDの低下とGMBFの増大がみられた。適用20分後にはPD、GMBFともに回復傾向を示し、TCの除去後にはPD及びGMBFは速やかに適用前値まで回復した。一方、幼若ラットのGMBFは成熟ラットとほぼ同様な推移を示したが、PD低下の程度は成熟ラットより強く、TC適用中はPDの低下が持続した。また、TC除去後のPDの回復は緩やかで適用前値までには回復しなかった。以上から、幼若ラットは、副交感神経系を介する消化管運動の制御機能やGMBFが関連する粘膜防御機能は備わっているものの、粘膜障害に対してはやや脆弱であることが示唆された。
  • 清末 正晴, 堀 正敏, 木下 一哉, 藤澤 正彦, 尾崎 博
    セッションID: P-052
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【背景】慢性炎症性腸疾患に関する研究は、粘膜免疫応答を主体として展開されてきたが、その炎症は消化管筋層部にもおよぶことが知られており、慢性腸炎疾患時に併発する消化管運動機能障害の分子機構を究明するには、消化管筋層部での炎症応答を解析することが必須である。【目的】TNBS誘発結腸炎モデルラットを用いて、腸炎に伴う消化管筋層部炎症応答と消化管運動機能障害との関係について解明することを目的とした。【結果】TNBS投与2日後において、粘膜上皮は脱落し、多数の炎症性細胞の浸潤が粘膜と筋層に認められた。TNBS投与7日、14日と次第に炎症像は軽減した。好中球浸潤の指標としてMPO活性を粘膜と筋層に分けて測定したところ、TNBS投与により粘膜、筋層の両者で顕著なMPO活性の上昇が認められ、TNBS投与14日目でも有意に増加していた。TNBS投与後2日目における各種炎症性メディエーターのmRNA発現は、筋層部、粘膜部ともに同等に上昇していたが、TNBS投与後7日目では完全に消失していた。筋原性の収縮は、TNBS投与2日目から顕著な抑制が認められ、この抑制はTNBS投与14日目でも持続していた。これに対して、ペースメーカー細胞であるカハール介在細胞(ICC)の機能の指標となる平滑筋の自発性収縮頻度は、TNBS投与7日目までは消失していたが、14日目では有意に回復していた。ICCのネットワークはTNBS投与により崩壊したが、機能の回復に合わせてTNBS投与14日目ではネットワークの回復が認められた。【考察】TNBS誘発腸炎において筋層部でも粘膜部に匹敵する炎症応答が生じていることが明らかになった。しかし、炎症性メディエーターの発現は病態初期で顕著であった。ICCと筋原性の機能障害は、この炎症性メディエーターの発現に対応して生じるが、筋原性の機能障害はICCの機能障害に比べて長期にわたり持続することが明らかになった。
変異原性
  • 中園 聡, 池畑 政輝, 根岸 正, 重光 司
    セッションID: P-053
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    [背景]近年、様々な電気機器の発達により、中間周波数帯の電磁界の利用が増加しており健康影響に関する関心が高まりつつある。しかし、中間周波電磁界(300Hz_から_10MHz)の生物影響については、ほとんど研究されていない。[目的]中間周波磁界の変異原性、および化学物質の変異原性を増強する助変異原性について評価する。[方法]当所で開発した中間周波磁界曝露装置を用い、2kHz、20kHzおよび60kHzの正弦波磁界を、それぞれ最高0.91mTrms(国際非電離放射線防護委員会ガイドラインの146倍)、1.1mTrms(同176倍)および0.11mTrms(同18倍)で、48時間曝露した。試験菌株として、サルモネラ菌4菌株(TA1535、TA1537、TA98、TA100)および大腸菌2菌株(WP2 uvrA、WP2 uvrA/pKM)を用いた。助変異原性試験では、BH(ラジカル生成)、ENNG、AF2(DNA反応性)、BaP、2AA(代謝活性化によりDNA反応性)を用い、磁界を同時曝露した。対照群と磁界曝露群の復帰変異コロニー数の差は、t-検定で評価した。各試験は、対照群および曝露群それぞれ6枚ずつのプレートを用いた。再現性を確認するため、各試験を5回行った。[結果]いずれの菌株でも再現性のある有意な復帰変異コロニー数の変化は見られなかった。また、化学変異原を添加し、磁界を同時曝露した場合も、いずれの菌株でも再現性のある有意な復帰変異コロニー数の変化は見られなかった。以上のことから、本研究で検討した高磁束密度の中間周波磁界には、変異原性および助変異原性がないことが明らかとなった。
  • 梅村 隆志, 岡野 圭太, 黒岩 有一, 神吉 けい太, 児玉 幸夫, 能美 健彦, 西川 秋佳, 広瀬 雅雄
    セッションID: P-054
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】昆虫成長調節剤のdicyclanil(DC)は非変異原性ながら雌マウス肝に催腫瘍性を有し、その発がん機序に酸化的ストレスの関与が示唆されている。そこで今回、DCの発がん用量を雌雄のgpt deltaマウスに投与して、酸化ストレスマーカーの変動ならびにin vivo 変異原性を検索した。【方法】雌雄6週令のgpt deltaマウスに0.15%の濃度に混じた飼料を13週間自由に摂取させ、肝臓中のチオバルビツール酸反応物質(TBARS)ならびにDNA中の8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)レベルを測定した。また、gpt およびSpi- mutation assayを実施した。【結果】TBARSレベルはいずれの群においても変化は観察されなかった。8-OHdGレベルは雌雄ともに投与群で有意に高値を示した。Spi- mutant frequency(MF)には投与による変化は観察されなかったが、gpt MFが雌の投与群で約5倍と有意に増加した。【考察】今回の結果から、非遺伝毒性発癌物質に分類されているDCは、標的臓器のマウス肝において酸化的DNA損傷を引き起こし、点突然変異を誘発することが明らかとなった。特に、in vivo変異原性は雌においてのみ認められ、発がん性試験結果と一致したことは、DCの発がん機序を考える上で興味深い結果となった。
  • 五十嵐 美由紀, 瀬戸口 まゆみ, 高田 早苗, 伊東 悟, 古濱 和久
    セッションID: P-055
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    肝臓小核試験は、代謝の主要な場であり薬物分布量の多い肝臓における染色体異常を検出する試験である。これまで主として構造異常誘発物質を用いた研究が多くなされ、結果として、肝部分切除前に投与を行うと、切除後投与するよりも高い小核誘発率を示すことが報告されている。一方、数的異常誘発物質では、細胞分裂装置に作用して異常を誘発することから、肝部分切除後に投与すること、すなわち分裂中の細胞に化合物を暴露させることが必要であると推察されるが、未だ報告は殆ど見当たらない。
    そこで本研究では、その検証を行った。実験には、7週齢の雄Slc:ddYマウス(26-37 g) を用い、代表的な数的異常誘発物質であるcarbendazimの125-1000 mg/kg(経口)およびpaclitaxelの1-100 mg/kg(静脈内)を肝部分切除の前日または翌日に単回投与し、肝部分切除5日後に小核の観察を行った。
    その結果、2化合物とも肝切除前投与ではほとんど小核を誘発せず、肝切除後投与で著しい小核誘発作用を示し、構造異常誘発物質とは全く異なっていた。このことから、肝臓小核試験で未知化合物の染色体異常(構造異常および数的異常)誘発作用を検出するには、肝切除前および肝切除後投与の両方を実施する必要があることが明らかとなった。また、核による細胞分類(単核、2核、多核および分裂中期細胞)では、当初増加することを予測していた分裂中期細胞の割合に変化は認められなかったが、数的異常誘発化合物では2核以上の細胞が明らかに増加しており、数的異常の指標となる可能性が示唆された。
  • 三島 雅之, 竹入 章, 田中 健司, 原田 麻子, 渡部 一人
    セッションID: P-056
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    西川らが開発した皮膚小核試験は、経皮投与した化学物質の遺伝毒性評価として有用であることが期待されている。今回、抗乾癬経皮剤として開発中の活性型ビタミンD3誘導体(Cpd-1)について、ラット皮膚小核試験を実施したところ、染色法により異なる成績が得られたので報告する。皮膚小核試験は、西川の方法を一部改変したKrulの方法により実施した。Cpd-1のエタノール溶液をラット背部皮膚に塗布し(n=5)、72時間後に投与部位皮膚を採取して酵素処理により表皮細胞を単離した。これを洗浄、固定してスライドグラスに滴下し、ギムザ染色を施して各サンプルにつき2,000個の細胞を観察した。その結果、小核保有細胞頻度はCpd-1 20 mg/kg処置群で1.15  0.11 % となり、溶媒対照群 の0.55  0.14 %と比較して有意な増加(p<0.01)が認められた。このとき、陽性対照群(Mitomycin C)では小核保有細胞頻度は1.62  0.29 %だった。これらのスライドをアクリジンオレンジ(AO)で染色して、ギムザ染色で認められたそれぞれの小核についてDNA特異蛍光の有無を観察した。その結果、DNA特異蛍光を有する小核保有細胞頻度は、溶媒対照群で0.44  0.13 %、Cpd-1 20 mg/kg処置群で 0.48  0.10 %、陽性対照群で 1.49  0.31 %となり、Cpd-1による小核の増加は認められなかった。Cpd-1 20mg/kg投与72時間後のラット皮膚組織切片で、ギムザ染色により形態的に小核に類似するケラトヒアリン顆粒の誘発が観察されたことから、これを誤って小核としてカウントしたことが考えられる。これらより、表皮の分化増殖に作用する化学物質の場合、皮膚小核試験においてDNA特異性の高い染色法が必要であることが示唆された。
  • 小田 美光, 戸塚 ゆ加里, 若林 敬二
    セッションID: P-057
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]Aminophenylnorharmanは、タバコ煙や加熱食品中に存在するノルハルマンとアニリンがS9 mix存在下で反応することによって生じる発がん性変異原物質である。今回、この物質の水酸化代謝活性物質であるN-hydroxyaminophenylnorharman(N-OHAPNH)がさらにヒト型硫酸転移酵素(SULT)のいづれの分子種により代謝的活性化を受けて遺伝毒性を示すかどうかについて、ヒト型SULTを発現するumu試験菌株を用いて検討したので報告する。[方法]umu試験菌株は新規に開発したSalmonella typhimuriumNM7000(親株)、NM7001(ヒト型SULT1A1産生株)、NM7002(ヒト型SULT1A2産生株)、NM7003(ヒト型SULT1A3産生株)を用いた。化学物質によるumuC遺伝子発現は、β-ガラクトシダーゼ活性を測定した。[結果および考察]N-OHAPNHは、SULT1A2産生株で最も強い細胞毒性およびumuC遺伝子誘導を示し、次いで、SULT1A1産生株が続いた。SULT1A3産生株と親株は、ほとんど同じ誘導を示した。また、SULTの特異的阻害剤である2,6-dichloro-4-nitrophenolは、SULT1A2とSULT1A1の産生株においてN-OHAPNHによるumuC遺伝子誘導を強く抑制することがわかった。これらの結果から、N-OHAPNHの遺伝毒性には、主にヒト型SULT1A2とSULT1A1による代謝的活性化が関与していることが考えられる。
  • 林 真, Aardema, Marilyn, Casciano, Daniel, Dellarco, Vicki, Gollapudi, B ...
    セッションID: P-058
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    Assessing genotoxicity is a critical part of safety assessment. The rate of positive results in in vitro genotoxicity tests has been reported to be relatively high. Because positive outcomes in vitro are considered a demonstration of the intrinsic genotoxic properties of compounds, other data, including results from in vivo tests, are needed to determine the biological significance of the in vitro positive result. Further, because some compounds are genotoxic via indirect mechanisms, the possibility of establishing a safe exposure level exists. The relevance of in vitro positive results obtained under extreme experimental conditions (e.g., severe cytotoxicity) is often debated, and threshold and weight-of-evidence approaches are currently not well-accepted by some regulatory authorities. Accordingly, HESI has created an international subcommittee involving recognized experts from industry, academia and government (i.e., the tripartite approach) which will work to provide a framework for the integration of in vitro testing results into a risk-based assessment of the effects of chemical exposures on human health. Recommendations developed may lead to improved testing procedures, or to modifications in risk assessment (e.g., weight of evidence and threshold concept vs. qualitative decision-making). This effort will advance the scientific basis for the interpretation of positive results in in vitro genetic toxicity tests, and will facilitate the development of follow-up testing strategies and criteria for determining the relevance of findings to human health.
発がん性
  • 阿部 正義, 鈴木 紀子, 吉田 緑, 五十嵐 麻希, 臼田 浩二, 古川 賢, 植松 史行, 高橋 正一, 前川 明彦, 中江 大
    セッションID: P-059
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    食品成分として繁用されるカテキンは,遺伝毒性を示すことより,現在,ラットを用いて長期安全性試験が行われているが,in vitroにおいて銅イオンの存在下で酸化性DNA傷害を生成する.一方,グルコン酸銅は,機能食品の成分として使用の拡大が予想される.以上より,本研究は,カテキンと銅化合物の単独または複合投与の及ぼす影響について,ラット中期多臓器発がん性試験法を用いて検索した.実験は,BrlHan:WIST@Jcl (GALAS)系雄性ラット(6週齡)を,N-nitrosodiethylamine (100 mg/kg)腹腔内投与1回,N-methylnitrosourea (20 mg/kg)腹腔内投与4回・1,2-dimethylhydrazine(40 mg/kg)皮下投与4回・0.05% N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine混水投与2週間・0.1% 2,2-dihydroxy-di-n-propylnitrosamine混水投与2週間より成る計4週間の発がん起始処置を施した後,無処置またはカテキン(5000 ppm,混水)とグルコン酸銅(10・300・3000・6000・12000 ppm,混餌)の単独または併用投与下に25週間飼育して屠殺し,主要臓器の組織学的変化と胎盤型glutathione S-transferase陽性肝前がん病変の発生について検索した.肝前がん病変の発生個数は,グルコン酸銅単独投与群の300 ppm以上にて有意に増加したが,グルコン酸銅・カテキン併用投与群で増加しなかった.一方,前胃過形成の発生頻度は,グルコン酸銅単独投与群の6000 ppmにて顕著に増加したが,グルコン酸銅・カテキン併用投与群で増加程度が減弱した.グルコン酸銅単独またはカテキンとの併用下の他臓器への影響や,カテキン単独による全臓器への影響は明らかでなかった.以上より,本試験法の条件下で,グルコン酸銅は肝と前胃に増殖性病変誘発リスクを有するのに対し,カテキンは単独でリスクを示さず,むしろグルコン酸銅のリスクを減弱するものと判明した.
  • 伊藤 格, 本 光喜, 高橋 美和, 酒井 洋樹, 三森 国敏
    セッションID: P-060
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    キノロン系抗菌剤は、医薬品あるいは動物用医薬品として広く用いられている。我々は第31回トキシコロジー学会において、第二世代キノロン系抗菌剤であるノルフロキサシンに対して、ヒトリンパ腫由来のWTK-1細胞を用いたin vitroコメットアッセイおよび小核試験、さらにin vivo中期発癌性試験であるラット肝イニシエーション活性検索法を2-アセチルアミノフローレン(2-AAF)の混餌投与および四塩化炭素の単回経口投与によるプロモーション処置で実施した結果、全てにおいて陽性を示し、ノルフロキサシンが遺伝毒性発癌物質である可能性が高いことを報告した。そこで、そのノルフロキサシンの遺伝毒性が、発癌に導かれるか否かを現在検索中である。雄のF344ラットに3分の2肝部分切除を実施し、その後3週間ノルフロキサシンを1500mg/kgあるいは750mg/kgの用量で1日1回経口投与した。2週間の休薬期間後、非遺伝毒性発癌物質であるフェノバルビタールを0.05%の濃度で飲水投与した。フェノバルビタールを17週間投与後、エーテル麻酔下で放血致死させ、肝臓を摘出し、肉眼的検索および胎盤型グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-P)一次抗体を用いて免疫染色を実施した。その結果、フェノバルビタール17週間投与後では、肉眼的病変は観察されず、GST-P陽性巣の有意な増加も認められなかった。フェノバルビタールを34週間投与する実験を現在継続中であるが、その結果も併せて報告する。
  • Yoshizawa Katsuhiko, Sobol Robert W., Foley Julie F., Nyska Abraham, W ...
    セッションID: P-061
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    DNA polymerase B (pol-B) is an important contributor to genomic stability through its function in the DNA base excision repair pathway. Mutations in the pol-B gene have been associated with high levels of pol-B expression in human colorectal 1) and gastric cancer 2). We carried out histopathological examinations of 15 male and 21 female 2-year old transgenic mice engineered to over-express pol-B and maintained on a C57BL background. There was a high incidence of Brunner’s gland and mucosal hyperplasia in the duodenum seen in 27% of the males and 47.6% of the females. These proliferative lesions were mainly located in the area of Vater's papilla or at the junction of stomach and duodenum. Herniation / diverticulation of proliferating epithelial cells into muscular and serous layers of the affected intestines was also noted. Adenomas were diagnosed in 4.8% of the females. The incidence of proliferative duodenal lesions in these pol-B transgenic mice is considerably higher than previously reported incidences in aged C57BL mice 3,4). These findings may provide new insights relative to the relationship between pol-B expression and duodenal carcinogenesis.
    (References)
    1. Wang, L., et al. Cancer Res., 52, 4824-4827, 1992.
    2. Tan, X.H., et al. Cancer Lett., 220, 101-114, 2005.
    3. Rowlatt, C., et al. J. Nat.Cancer Inst., 43, 1353-1364, 1969.
    4. Ward, J.M., et al. Cancer Res., 35, 1938-1943, 1975.
  • 金 美蘭, 高橋 美和, 本 光喜, 六車 雅子, 剣持 佑介, 河野 太一, 三森 国敏
    セッションID: P-062
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    目的】PPARγアゴニストやα・γのデュアルアゴニストには、長期発がん性試験において多臓器発がん性を示すものがある。しかし、p53ノックアウトマウスではその発がん性は検出できないとのことから、米国FDAは、遺伝子改変マウスではこれらの化合物の発がん性評価は困難であるとの見解を示した。一方、血管肉腫が自然発生するrasH2マウスは遺伝毒性発がん物質のみならず非遺伝毒性発がん物質にも感受性を示すことが知られているが、PPARγおよびデュアルアゴニストについての発がん感受性については検討されていない。そこで、長期発がん試験において血管肉腫の誘発が報告されているPPARγアゴニストtroglitazoneのrasH2マウスにおける発がん感受性を検討するため以下の実験を行った。【方法】7週齢、雌雄のrasH2マウスに、troglitazone 0、3000、6000ppmを26週間混餌投与した。解剖時には肝臓および褐色脂肪重量を測定し、遺伝子発現解析用サンプルとして脾臓、皮下に認められた腫瘤の一部を採取した。また、全身諸臓器の病理組織学的検索を実施した。【結果】Troglitazone 3000ppm群の雄1例、6000ppm群の雌3例が実験期間中に死亡した。解剖時の重量測定では、肝臓および褐色脂肪重量が有意に増加した。組織学的には、troglitazone投与群の雄全例と雌数例では、肝細胞壊死を伴った小葉中心性肝細胞空胞変性が認められた。褐色脂肪では、用量依存性に細胞質内の脂肪滴が大型化する傾向が認められた。脾臓や皮下に認められた暗赤色腫瘤は、いずれも血管腫/血管肉腫であり、雌の6000ppm群では6例に血管系腫瘍の発生が認められた。血管系腫瘍についての遺伝子発現解析では、ras/MapKの活性化血管新生関連遺伝子や細胞周期、細胞増殖関連の遺伝子などの発現増加が認められた。
  • 本 光喜, 高橋 美和, 六車 雅子, 金 美蘭, 伊藤 格, 三森 国敏
    セッションID: P-063
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は昨年本会において、非遺伝毒性発がん物質dicyclanil(DC)がマウス肝の前腫瘍性病変を増強し、その発がん機序の一部には、長期間の酸化的ストレス暴露が関与している可能性を報告した。そこで本研究では、DCによる発がん増強がフリーラジカル補足型抗酸化剤N-tert-Butyl-α-phenylnitrone(PBN)により抑制されるか否かについて検討した。【方法】正常マウス、あるいはdiethynitrosoamine(DEN)の単回腹腔内投与によりイニシエーション処置した部分肝切除マウスへ、0 ppm DC、1500 ppm DC(混餌)、0.13% PBN(飲水)ないし1500 ppm DC + 0.13% PBNを12週間投与し、投与終了後、その肝について病理学的に解析した。【結果】正常マウスの肝重量に関しては、無処理群に比べ、PBN群、DC群、PBN+DC群で有意な増加が認められ、PBN+DC群では顕著な重量増加が認められた。病理組織学的には、DEN未処置マウスにおいて肝細胞肥大がPBN群、DC群、PBN+DC群で観察された。一方、DEN処置マウスにおいては、DEN群、DEN+PBN群、DEN+DC群、DEN+DC+PBN群での変異肝細胞増殖巣発現頻度は、11%、0%、23%、61.5%であり、DEN+DC+PBN群で顕著な増加が見られた。肝細胞腫瘍はDEN+DC+PBN群(15.4%)にのみ観察された。【結論】本濃度のPBN投与では、DCと同時投与することにより、DCによる肝腫瘍促進作用を抑制するものと予測していたが、逆に肝細胞増殖性病変を増強させた。PBN単独投与により肝重量増加および肝細胞肥大が認められたことから、DCとPBN併用によるこの増強作用には、肝薬物代謝酵素の誘導変動による可能性が疑われ、その関与について現在解析中である。
  • 黒岩 有一, 石井 雄二, 梅村 隆志, 神吉 けい太, 西川 秋佳, 中澤 裕之, 広瀬 雅雄
    セッションID: P-064
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】フェノール系抗酸化物質は亜硝酸との併用投与によりラット前胃発がんを増強することから、類似の分子構造を有するカテキン類についても同様の発がんプロモーション作用が懸念される。今回、2段階胃発がんモデルを用いて、茶抽出物及び亜硝酸ナトリウム(NaNO2)併用投与の胃発がんに対する修飾作用ならびに前胃粘膜上皮の酸化的DNA損傷の有無について検索した。
    【方法】雄6週齢のF344ラットに、腺胃および前胃に対するイニシエーション処理として、MNNGと食塩をそれぞれ0.01%飲水ならびに5%混餌で10週間併用投与し、さらに実験9週目に100 mg/kg MNNGを単回強制経口投与した。その後、茶抽出物とNaNO2をそれぞれ1%混餌ならびに0.2%飲水で32週間併用投与し、腺胃および前胃の病理組織学的検索を行った。また、カテキン類とNOとの反応により生じるラジカル種をin vitroでESRにより同定した。さらに、併用投与後のラット前胃粘膜上皮DNA中の8-OHdG量をLC-ECDにより測定した。
    【結果】茶抽出物とNaNO2の併用投与により、MNNGで誘発された乳頭腫および扁平上皮癌の発生頻度ならびに多発性が有意に増加し、扁平上皮癌の深達度も上昇した。一方、腺胃腫瘍には併用投与の影響は認められなかった。ESRでは、NO発生剤NOC-7の存在下でエピガロカテキンガレートおよびエピカテキンガレートがOHラジカルを発生することが明らかになった。前胃粘膜上皮DNA中の8-OHdGレベルは併用投与24時間後に高値を示した。
    【考察】主にカテキン類により構成される茶抽出物はNaNO2と併用投与することで、ラット前胃に対する発がんプロモーション作用を有することが示された。その機構には、カテキン類と亜硝酸由来のNOとの反応により生じる酸化的ストレスの関与の可能性が考えられた。
  • 山中 秀徳, 美濃部 安史, 矢可部 芳州, 関島 勝, 斎藤 幸一, 白井 智之
    セッションID: P-065
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    変異発がん物質、非変異発がん物質ならびに変異非発がん物質、非変異発がん物質の4種類の物質群について28日間反復投与後のラット肝タンパク質の定量的プロテオミクス解析を2D-Differential Gel Electrophoresis(2D-DIGE)法を用いて行った。変異原性、発がん性に関する物質の分類はUS National Toxicology Program(NTP)やCarcinogenic Potency Data Base (CPDB)の情報をもとに動物種、発がん部位により3種類に分類し、各々の4群の中で各群に特徴的な発現タンパク質を統計的に解析した。また、ラット肝の2-DデータベースをESI QTOF MSを用いて作成し、各物質群に特徴的な発現変動を示すタンパク質を特定した。例として、変異発がん物質に特徴的な変動を示すタンパク質としてLaminA、非変異発がん物質に特徴的な変動を示すタンパク質としてDiphor-1などが特定された。さらに、作成した2-Dデータベースを用いて定量プロテオミクスの新規な解析手法として、翻訳後修飾の定量評価を行う上で、二次元電気泳動で検出される同一タンパク質由来のスポット間の増減バランスを指標とすることを試みた。この翻訳後修飾変化の定量評価値と発がん物質の与える影響との関係を解析し、発がん性予測に使用したところ単純なスポットの増減値を使用した場合に比較して予測率が向上することが確認された。
  • 齋藤 新, 加納 浩和, 笠井 辰也, 西沢 共司, 山本 靜護, 松島 泰次郎
    セッションID: P-066
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ブチル 2,3-エポキシプロピル エーテルはエポキシ樹脂などの反応性希釈剤、含塩素化合物の安定剤など広く用いられている。変異原性を示す物質であり、長期混水試験で発がん性の報告はあるものの、実際の労働環境での主たる暴露経路と考えられる吸入による長期毒性試験の報告はない。我々は同物質の長期吸入毒性を明らかにする目的で吸入暴露による2年間の試験を実施した。【方法】F344ラットとBDF1マウスの雌雄各群50匹にブチル 2,3-エポキシプロピル エーテル(和光試薬1級)をラットは雌雄とも10、30及び90 ppm(公比3)、マウスは雌雄とも5、15及び45 ppm(公比3)の濃度で、1日6時間、1週5日間、104週間、全身暴露した。一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、剖検、臓器重量測定及び病理組織学的検査を行った。【結果及び考察】ラットでは、雌雄とも90 ppm群で生存率が低値を示し、死因は鼻腔の腫瘍であった。90 ppm群では雌雄に扁平上皮癌の発生がみられた。また、雄に扁平上皮乳頭腫、鼻腔神経上皮腫、雌に腺扁平上皮癌、鼻腔神経上皮腫及び肉腫の発生もあった。さらに、30 ppm群では雌雄とも鼻腔の腺腫の発生がみられた。マウスでは、雌雄とも生存率に差異を認めなかったが、45 ppm群では体重が低値であった。腫瘍性病変として、雌雄とも鼻腔に血管腫の発生が認められた。血管腫が発生した濃度は、雄は5 ppm以上、雌は15 ppm以上であった。45 ppm群の雌雄に少数ではあるが、鼻腔の扁平上皮癌の発生が認められた。腫瘍以外の鼻腔病変は、ラットでは呼吸上皮の扁平上皮化生等が雌雄の30 ppm以上の群、マウスでは、呼吸部移行上皮の結節状過形成等が雌雄の15 ppm以上の群で観察された。本試験は厚生労働省の委託により実施した。
  • 西村 次平, 出羽 康明, 六車 雅子, 安野 弘修, 島 智美, 金 美蘭, 高橋 美和, 三森 国敏
    セッションID: P-067
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】PPARα agonistはげっ歯類特異的に肝発癌を誘発するが、そのメカニズムは明らかになっていない。そこで、我々は発癌メカニズム解明の一助とするため、代表的なPPARα agonistであるfenofibrateを用いて以下の予備的検討を行った。【方法】6週齢の雄性F344/N slcラットに0ないし6000ppm のfenofibrateを3週間混餌投与し、エーテル麻酔下で屠殺後、血液化学的検査、肝臓の重量測定、病理組織学的検査、CodeLinkTM Bioarray RAT WG(GE Healthcare Bio-Sciences)による網羅的遺伝子発現解析、酵素活性測定(CAT、CPT、FAOS、Catalase、Superoxide dismutase)を行った。 【結果・考察】投与群では、対照群に比較し、肝臓相対重量が3.0 倍に増加し、病理組織学的にも肝細胞の肥大や好酸性化が顕著にみられた。血液化学的検査では肝障害を示唆する変化はみられなかった。網羅的遺伝子発現解析では、対照群と比較し、投与群で2倍以上の発現増加を示したものが1044遺伝子、0.5倍以下の発現低下を示したものが430遺伝子みられた。それらの中で脂肪酸輸送蛋白、脂肪酸代謝の他、酸化還元(DECR1: 3.0倍、DECR2: 2.1倍、CYP4A1: 4.0倍、CYP2J4: 2.7倍、CYP2J3: 2.1倍、CYP4F4: 2.2倍、Catalase: 2.8倍)、酸化ストレス(GSTα2: 8.4倍、GSTmu5: 2.3倍、GSTθ1: 2.8倍)、細胞周期、細胞増殖、転写因子(Cyclin D1: 2.4倍、MAPKK 1: 2.0倍、ATF-4: 2.0倍、NF I/X:0.5倍)に関連する遺伝子の発現が増加或いは減少した。酵素活性測定では、CAT、CPT、FAOS活性はそれぞれ38、15、27倍に増加した。またCatalase活性も1.7倍に増加したが、総SOD活性は0.8倍に減少した。以上の結果、fenofibrateはラット肝臓に対して酸化ストレスを惹起している可能性が考えられた。現在、in vitro ROS測定やTBARS測定とともに更に投与期間を延長した実験も行っており、これらの解析結果も併せて報告する。
  • 出羽 康明, 西村 次平, 六車 雅子, 松本 明, 高橋 美和, 金 美蘭, 三森 国敏
    セッションID: P-068
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    動物用駆虫薬であるoxfendazole (OX) は非遺伝毒性発がん物質であり、げっ歯類肝に対して発がん性を示すことが報告されているが、その発がんプロモーション過程における分子メカニズムは不明である。そこで本研究では、OXの肝発がんメカニズムを解明することを目的として以下の予備的検討を行った。6週齢の雄性F344/N slcラットにOXを0及び500 ppmの濃度で3週間混餌投与した。投与終了後に動物をエーテル麻酔下で採血し、殺処分後肝臓を採取し、血液生化学検査、病理組織学的検索、CodeLinkTM Bioarray Rat WG (GE Healthcare Bio-Sciences) を用いた網羅的遺伝子発現解析並びにreal-time RT-PCRによる遺伝子発現の定量的解析を実施した。血液生化学検査では、肝障害を示唆する変化は認めらなかった。病理組織学的検索では、OX投与群において小葉周辺性の肝細胞肥大並びに脂肪変性が観察され、肝相対重量の有意な増加 (130%) が確認された。網羅的遺伝子発現解析の結果、OX投与群では基礎飼料のみを与えたラット肝臓と比較して2倍以上の発現増加が認められたものが426遺伝子、0.5倍以下の発現低下が認められたものが121遺伝子得られ、酸化的ストレス[glutathione S-transferase, Yc2 (Gsta2; 4.8倍)、NAD(P)H dehydrogenase, quinone 1 (Nqo1; 2.5倍)]、細胞間連絡・細胞骨格[Signal transducer and activator of transcription 3 (Stat3; 2.3倍)、β-catenin (Catnb; 0.4倍)]、アポトーシス[Calpain 2 (Capn2; 2.6倍)、Tumor necrosis factor (ligand) superfamily, member 10 (Tnfsf10; 2.3倍)] に関連した遺伝子等の発現変動が認められた。以上の結果から、OXの3週間投与では肝臓に種々のストレス応答性反応が惹起されていることが示唆された。本研究では、投与期間をさらに9週間まで延長した実験を行っており、これらの動物についての解析結果も併せて報告する。
農薬・金属・工業化学品・自然毒ほか
  • 丹羽 貴子, 黄 基旭, 大橋 一晶, 永沼 章
    セッションID: P-069
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、途上国の一部でのヒ素による地下水汚染とそれによる健康障害が大きな社会問題となっているが、ヒ素による毒性発現機構は不明な点が多い。そこで、我々は酵母の遺伝子欠損株ライブラリーを用いて欠損によって酵母の亜ヒ酸感受性に影響を及ぼす遺伝子の検索を行った。【結果及び考察】酵母の遺伝子は約6000であるが、その中で欠損しても酵母が生存可能な遺伝子を一つずつ欠損させた酵母株(約5000株)について亜ヒ酸に対する感受性を調べた。その結果、野生酵母と比較して欠損することによって酵母の亜ヒ酸感受性に影響を及ぼす遺伝子が合計142種同定された。その中には、チュブリンやアクチンの折畳みに関与するGim複合体構成因子(Pac10、Gim4、Gim5、Pfd1)やストレスに応答して細胞骨格の重合を調節する因子(Rom2、Bck1、Slt2、Bni1)などが含まれており、それぞれを欠損した酵母が野性酵母に比べて高い亜ヒ酸感受性を示したことから、亜ヒ酸の毒性において細胞骨格の調節が何らかの役割を果たしている可能性が考えられる。酵母には熱などのストレスに応答して細胞骨格の制御を行うシグナル伝達経路が存在し、その経路において細胞膜蛋白質であるSlg1が重要な役割を果たすことが知られている。そこで、Slg1と亜ヒ酸毒性との関係を調べたところ、Slg1を欠損させた酵母は亜ヒ酸に対して高い感受性を示し、Slg1高発現酵母は強い亜ヒ酸耐性を示した。このことから、Slg1は亜ヒ酸に対してセンサー蛋白質として働き、細胞骨格を制御することで亜ヒ酸毒性の軽減に関与している可能性が考えられる。また、酵母は熱処理に対する防御機構としてアクチン凝集体を形成することが知られており、亜ヒ酸で処理した酵母でも同様のアクチン凝集体が観察された。以上の結果から、亜ヒ酸毒性に対する生体の防御機構としてアクチン凝集体の形成を始め、細胞骨格の制御が重要な役割を果たしている可能性が考えられる。
  • 栗田 尚佳, 佐藤 雅彦, 永瀬 久光
    セッションID: P-070
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】カドミウム(Cd)は胎仔毒性を引き起こすが、その毒性発現メカニズムについてはほとんど解明されていない。そこで、Toxicogenomics手法を用いて、Cdの胎仔毒性に関与する遺伝子を解析した。<BR>【方法】C57BL/6JマウスにCd(5,10 mg/kg)を、妊娠1日目から18日間強制経口投与し、妊娠19日目に胎仔毒性の指標として胎仔の体重および身長を測定した。さらに、胎仔から肝臓を摘出し、遺伝子発現の変動をDNAマイクロアレイ法を用いて解析した。<BR>【結果および考察】Cdを妊娠期に曝露した胎仔の体重および身長は、Cd 5 mg/kg投与群においてコントロール群に比べて有意な変化は認められなかったが、Cd 10 mg/kg投与群ではコントロール群に比べて有意に抑制された。胎仔毒性が認められなかったCd 5 mg/kg投与群の胎仔肝臓についてDNAマイクロアレイ解析を行った結果、コントロール群に比べて255種の遺伝子発現が50%以下に減少した。このようにCdの胎仔毒性にさきがけて多くの遺伝子の発現が抑制されたため、これらの変動遺伝子の中にはCdによる胎仔毒性に関与する遺伝子が存在する可能性が高いと考えられる。現在、DNAマイクロアレイ解析により変動した遺伝子のうち、Cdの胎仔毒性に関わると考えられる遺伝子に注目し、Cdの胎仔毒性と遺伝子発現との関連について検討中である。
  • 黄 基旭, 村井 康高, 松尾 拓洋, 永沼 章
    セッションID: P-071
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、何らかの蛋白質がVps27-Hse1複合体によって認識された後にエンドソーム内へ取り込まれるという現象がメチル水銀毒性を増強していることを見出した。また、Vps27-Hse1複合体と結合することが報告されている蛋白質の中で、Ubi4 (ubiquitin polyprotein) およびYnr005c (機能不明) が、それぞれを欠損させることによって酵母にメチル水銀耐性を与えることも明らかにしている。そこで、メチル水銀毒性の増強機構における両蛋白質の役割について検討した。【結果および考察】Vps27欠損酵母はメチル水銀耐性を示すが、Ubi4またはYnr005cを同時に欠損させてもそのメチル水銀耐性の程度は増強されなかった。したがって、Ubi4およびYnr005cは共にVps27と同一の経路においてメチル水銀毒性の増強に関与していると考えられる。蛋白質がエンドソーム内に取り込まれるためには予めユビキチン化を受ける必要があるが、Ynr005cは細胞内でユビキチン化を受けることが確認された。一方、ユビキチンの前駆体であるUbi4はエンドソーム内へ取り込まれる蛋白質というわけではなく、ユビキチンの供給源として機能している可能性が考えられる。UBI4の発現は通常状態においては非常に低いが、heat shockなどのストレスによって誘導されて様々なストレスに対して防御的に働くことが知られている。そこで、メチル水銀添加がUBI4の発現に及ぼす影響を検討したところ、メチル水銀による濃度依存的なUBI4の発現の増加が認められた。Ubi4はメチル水銀毒性を増強させる蛋白質であることから、少なくともメチル水銀毒性に対しては、防御的に作用するというこれまでの報告とは逆の作用を示すことになる。メチル水銀はこのUBI4の発現を誘導することによって、Ynr005cのユビキチン化を介したエンドソーム内への取り込みを亢進し、その結果としてメチル水銀の細胞毒性が引き起こされている可能性も考えられる。
  • 今井 則夫, 市原 敏夫, 萩原 昭裕, 玉野 静光, 今吉 有理子, 岩渕 久克, 鈴木 幸雄, 中村 幹雄, 白井 智之
    セッションID: P-072
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】亜酸化窒素は、無色、無臭のガスで、日本を含めた20カ国以上で食品添加物(噴射剤)として用いられている。日本薬局方にも収載されており、吸入による安全性試験は多数報告されているが、経口投与による報告はない。そこで今回、F344ラットに亜酸化窒素を28日間経口投与し、毒性学的影響を検討した。
    【方法】亜酸化窒素は気体でそのまま経口投与することは不可能であるため、米国で市販されている亜酸化窒素を含有するホイップクリームを6週齢のF344ラット(雌雄各群6匹)に0, 2.5, 5.0および10 g/kg/day(亜酸化窒素として0、16.8、33.6、67.1 mg/kg/day)の用量で28日間強制経口投与した。また、亜酸化窒素だけではなく、クリームそのものおよび気体の容積による影響が考えられることから、亜酸化窒素を含まないクリームだけを10 g/kg/dayで投与する群、クリーム10 g/kg/dayに亜酸化窒素量にほぼ相当する容積の空気を加えた群も設定した。投与期間中、体重、摂餌量および摂水量を週1回測定した。投与最終週に尿検査および眼科学的検査を行った。投与期間終了後、腹部大動脈より採血し、得られた血液および血漿を用いて血液学的検査、血清を用いて血液生化学的検査を行った。また、放血致死させた後に剖検を行い、採取した主要器官の重量を測定するとともに、全身諸器官の肉眼的病理学検査および病理組織学的検査を実施した。
    【結果】亜酸化窒素含有ホイップクリームの10 g/kg/day(亜酸化窒素67.1 mg/kg/day)投与で、いずれの検査項目においても亜酸化窒素投与による毒性学的影響を認めなかった。
    【結論】亜酸化窒素の無毒性量(NOAEL)は雌雄とも67.1 mg/kg以上であると結論した。
その他-1
  • 小田 康雅, 宮本 樹美代, 大江 みどり, 宮崎 智成, 坂田 孝
    セッションID: P-073
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、一昨年度、ヒト用血液分析装置XT-2000iの動物血測定への適用について検討し、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、サルの5種類の動物種について適用可能であることを報告した。一方、モルモットはアスコルビン酸の生合成能をもたないこと、結核菌に対する感受性が高いこと、補体量が豊富であること、アレルギーを起こしやすいことから各種の基礎研究および生物学的製剤の検定に用いられている。また、遅延型過敏症やアナフラキシーショックを起こしやすく、細胞性免疫や体液性免疫反応がヒトのそれによく似ていることから、アレルギー、喘息の研究や鎮咳剤の開発に利用されている。今回、対応動物種としてモルモットを追加するために基礎的検討を行ったので、その結果を報告する。
    【内容】週齢3,6,9週齢およびリタイア群のモルモット(Std:Hartley)雌雄合計20匹を用いて、対照法との相関,測定モード間差,同時再現性,希釈直線性,検体経時安定性について評価を実施した。
    【結果】相関は、ADVIA120対照として、各項目(CBC, DIFF, RET)で良好な相関を示した(WBC r=1.0 , RBC r=0.99 , PLT r=0.87 , LY% r=0.98 , RET% r=0.95)。モード間差は、各測定モード間に良好な相関を認めた。同時再現性は、各項目ともに良好な再現性(CV%)を示した(WBC 1.3% , RBC 0.6% , PLT 3.6% , LY% 2.3% , RET% 5.9%)。希釈直線性は良好な結果を得た。検体経時安定性は室温、冷蔵保存ともに採血後24時間まで安定であった。
    【まとめ】XT-2000iVの対応動物種として、モルモットを追加可能である。今後、気管支炎症モデル実験など、モルモットを用いた動物実験においても、XT-2000iVが有効活用されることを期待する。
  • 山本 健一, 稗田  孝弘, 千々波 公生, 藤村 洋, 森安 眞津子
    セッションID: P-074
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    ビアコアは抗原抗体反応等の生体分子の相互作用を迅速に検出できる装置である.抗原あるいは抗体を金属薄膜に蒸着したセンサーチップ表面に固定化し,固定化された抗原あるいは抗体に作用する物質を含む試料を一定量流し,センサーチップ上で抗原抗体反応を起こさせ,この時に生じる微妙な金属表面の変化を表面プラズモン共鳴により検出する.従来のELISA法と異なり,光学的な変化を直接検出する手法であるため標識を行う必要が無く,短時間で測定できるとともに少量の試料で検出することが可能という特徴を有している.
    <我々はアジュバントとともにオボアルブミン(OVA)を投与したマウス血清を用いてビアコア3000による抗体検出系の条件検討を行った.
    <センサーチップ固定化条件,流速,血清の希釈倍率,検出限界,測定値の直線性の範囲等について検討し,最適な測定条件を決定した.
    <また,OVAをマウスに経口投与して,投与前及び投与後血清中のOVAに対する反応性を測定し,OVA投与による抗OVA抗体産生の有無についても確認し,ELISA法との比較を行った.
  • 長瀬 孝彦, 富岡 三和, 松井 ゆかり, 渡邊 ゆかり, 太田 隆雄
    セッションID: P-075
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】糖尿病における血糖コントロールの指標として広く使用されているGAは過去1から2週間、HbA1cは過去1から2ヵ月の血糖変動を反映すると言われている。今回、ヒト用ラテックス凝集試薬(富士レビオ社製)を用いたラットにおけるHbA1c測定の妥当性を検証する目的で、標準法のHPLC法(動物用自動グリコヘモグロビン分析計、東ソー)との相関性について検討を行った。また、このキットを用いてSTZ糖尿病モデルラットの血糖変化に対するHbA1cの経日変化を確認し、さらにGA(オリエンタル酵母社製)の推移と比較検討した。【方法】ラットHbA1cについてヒト試薬法とHPLC法との相関性を確認した。次に約9週齢のSlc:WistarラットにSTZ(SIGMA)の40mg/mLを1mL/kg単回静脈内投与して糖尿病モデルラットを作製し、投与前、投与後6hr,1,3,7,10,14dayのHbA1c,GA,Glu,FRAを測定した。【結果】ヒト測定法とHPLC法との相関係数はr=0.994であった。経日推移では、Gluの急激な上昇に伴いHbA1c及びGAとも投与後1日から有意な高値がみられた。その後、HbA1c及びGAはGlu及びFRAと同様に投与後14日まで継続して上昇傾向がみられた。また、HbA1cとGA、GluとHbA1c及びGluとGAとも良好な相関がみられた。【結論】HbA1cでは、ヒト測定法とHPLC法との有意な相関が得られ、交差性に大きな問題はなかった。また、HbA1cとGAの経日変化から血糖値の変化に対し両者が鋭敏に反応することが確認できた。したがって、ヒト用試薬を用いたラットにおけるHbA1c及びGAは、十分応用可能であると考えられる。今後は、糖尿マウスでのGA及びHbA1cの変化及び糖尿病治療過程における両者の変動について検討する予定である。
  • 飯開 順子, 中島 幸博, 上田 智哉, 福田 康成, 深澤 清久, 佐久間 善仁, 那須 昌弘
    セッションID: P-076
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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     近年,薬物の安全性評価において内分泌器官に対する影響の有無を評価しておくことが一般的になってきている.各種実験動物のうちラットについてはホルモン測定試薬の入手が比較的容易であり,背景データも蓄積されてきている.しかし,サルの各種ホルモンの背景データについてはまだ不充分な状況である.
    その理由として:
     1. サルのホルモン標準品や測定試薬が入手困難であり,一方,入手可能なヒト用試薬の抗体は種特異性の点からサルのホルモンに対する反応性が低く使用できない場合が多いこと.
     2. 人畜共通のステロイドホルモンについても,ヒトとサルでは血中成分が異なり,ヒト用試薬では充分な精度で測定できない項目が少なくないこと.
    などが挙げられる.
     我々は「市販の測定試薬を用いて雌性サルの性周期における血中ホルモンの変化および雄性サルの血中ホルモンの日周性の背景データを採取すること」を目的として,市販のradioimmunoassay (RIA) 法の測定試薬を用いて,定量性能の検証(バリデーション)を実施し,血中のホルモン濃度を測定した.
     雌性サルの性周期のホルモン濃度変化を捉えるために,生理日(menstrual period)を含む約1ヵ月間,3日に1回の頻度で採血し,血漿中のluteinizing hormone (LH),follicle-stimulating hormone (FSH),17β-estradiol (E2) およびprogesteroneを可能な限り測定した.
     また,雄性サルの日内のホルモン濃度変化を調べるために,9am,11am,1pm,3pm,5pm,7pmおよび11pmに採血し,血漿中adrenocorticotrophic hormone (ACTH),LH,FSH,thyroid-stimulating hormone (TSH),thyroxine (T4),triiodothyronine (T3),testosterone,aldosteroneおよびcortisol濃度を測定した.
  • 黒沢 亨, 伊藤 富美, 下郡 望, 柴崎 義明, 田中 正志, 白石 明, 庄司 陽子, 生江 弘志, 神藤 康弘
    セッションID: P-077
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗血小板薬候補化合物(糖タンパク質GP_II_b/_III_a拮抗物質)のイヌを用いた毒性試験において、個体差の大きな内因性ヒスタミン遊離作用に基づく毒性変化(皮膚の発赤、浮腫、血圧低下等)を経験した。そこで、このイヌにおけるヒスタミン遊離反応について詳細に検討した。
    【方法および結果】一定用量の上記化合物XまたはCompound 48/80をイヌに単回iv投与し、ヒスタミン遊離反応がみられた個体を高感受性(HR)、みられなかった個体を低感受性(LR)とした。HRとLRの皮膚マスト細胞の形態、染色性および細胞密度に明らかな違いはなかった。皮内投与試験では種々濃度の化合物X、Compound 48/80(非免疫性刺激)、A23187(Caイオノフォア)、Concanavalin A(免疫様刺激)およびヒスタミンについて検討した。化合物XとCompound 48/80では、HRでのみ低濃度から血管透過性が亢進し、HRとLRの発現濃度の差はおよそ100倍であった。A23187、Con A、ヒスタミンではHRとLRの差はなかった。一方、LR同士の交配の仔は全てLRであり、低感受性を劣性遺伝と仮定し交配試験を行ったところ、Hetero×HomoのHR:LR出現数は20:26、Hetero×Heteroは8:4で、HRとLRは雌雄ともに出現した。出現率は理論値Hetero×Homo=HR:LR(1:1)、Hetero×Hetero=HR:LR(3:1)に近似した。
    【結論】イヌにおけるCompound 48/80等の非免疫性ヒスタミン遊離刺激に対する反応性の個体差は、マスト細胞のGタンパクから細胞内Ca上昇までのシグナル伝達に原因があると推測され、それらは遺伝的に制御されていると考えられた。
  • 伊藤 富美, 黒沢 亨, 下郡 望, 柴崎 義明, 白石 明, 田中 正志, 神藤 康弘
    セッションID: P-078
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】我々は、Compound 48/80のヒスタミン遊離刺激に対するイヌの反応性が遺伝的に制御されていることを見出した。このCompound 48/80に対する高感受性(HR)と低感受性(LR)のイヌを用いて、ヒスタミン遊離作用がよく研究されている各種薬物に対する反応性を比較検討した。【方法】麻酔下でエバンスブルー(EB)を静脈内投与したのち、各濃度(0.1 - 104 µg/mL)のCompound 48/80、レボフロキサシン(LVFX)、セフォチアム(CTM)、バンコマイシン(VCM)、HCO-60およびTween 80を0.05mL皮内投与し、一定時間後に投与部皮膚のEBを抽出定量して、ヒスタミン遊離作用を血管透過性により評価した。
    【結果および考察】Compound 48/80によるEB漏出は、HRでは1 µg/mL、LRでは102 µg/mLで観察され、HRとLRの反応性の差は100倍であった。LVFXおよびCTMのEB漏出発現濃度は、HRではそれぞれ102および103 µg/mLであったが、LRではそれぞれ10倍量の103および104 µg/mLでEB漏出はみられず、その反応性はCompound 48/80に近いと考えられた。VCMのEB漏出発現濃度は、HRでは103 µg/mL、LRでは104 µg/mLで、その差は10倍であった。一方、HCO-60およびTween 80のEB漏出発現濃度は、HR、LRともに10µg/mLで、 HRとLRの間で差はみられなかった。以上のように、薬物のヒスタミン遊離作用に対するHRとLRの反応性は、薬物の種類によって異なることが明らかとなった。HRおよびLRは薬物による非免疫性のヒスタミン遊離作用の研究に有用と考えられた。今回は、さらに静脈内投与での検討と合わせて報告する。
  • 山田 恭史, 岩崎 栄, 田中 勝幸, 浅野 育子, 久木 浩平, 有馬 和範
    セッションID: P-079
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    目的 前回、貼付剤による皮膚刺激性の動物種による差異を報告したが、引き続き一般に使用されている抗菌剤について、皮膚構造がヒトに似ているミニブタを用いて皮膚刺激性の強度をウサギおよびモルモットと比較検討した。
    方法 ウサギ、モルモット、ミニブタの背部皮膚に9種の抗菌剤を1日1回、計21回開放塗布した。初回投与後から毎日塗布後23時間に被験物質を拭き取り、その30分後に皮膚反応を観察して、皮膚累積刺激性を検討した。
    結果 1種の抗菌剤による皮膚累積刺激性は、ウサギで強度、モルモットでは中等度であったが、ミニブタでは軽度であった。他の8種の抗菌剤ではウサギおよびモルモットともに中等度の皮膚累積刺激性がみられた。一方、ミニブタでは内3種の抗菌剤で軽度、4種ではごく軽度の皮膚累積刺激性がみられた。残りの1種ではまったく皮膚反応がみられなかった。また、ヒトにおいてもこれら抗菌剤の使用において重篤な副作用の報告はされていない。
    以上の結果、ミニブタの皮膚の感受性はウサギおよびモルモットに比して非常に弱く、ミニブタの抗菌剤における累積刺激性はヒトとほぼ同様か若干強いと推測される。このことからミニブタとヒトとはほぼ相関していると考えられ、ミニブタで皮膚刺激性を評価することにより、ヒトへの外挿性において信頼性がより高くなると考えられる。
  • Lesley Earl, CS Auletta, HF Bolte, SJ Gosselin
    セッションID: P-080
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    The minipig is a laboratory animal used as an alternative to dogs or monkeys for the evaluation of drugs. Thrombocytopenic purpura (TP) has been reported to occur spontaneously in sexually mature Göttingen minipigs (GM) at a low incidence (0.1%) in a closed breeding colony. It is of unknown etiology and is rarely reported in conventional pigs. In our US laboratory, TP was noted in two GM of 306 (0.65%) tested between 2000 and 2003, a high incidence relative to that reported previously. However, there were no cases in 503 GM or in 500 Large White Hybrid pigs tested between 2000 and 2006 in the UK laboratory. The disease was characterized by disseminated hemorrhage associated with low circulating platelets. Clinical signs included pallor, lethargy, coalescing petechiae on the abdomen, face, neck and limbs, palpable swelling under the jaw and blood beneath the cage. Clinical pathology revealed thrombocytopenia, anemia, hematuria, proteinemia and glycosuria. Interstitial hemorrhages were present in most organs and most lymph nodes contained large amounts of free erythrocytes in the subcapsular and medullary sinuses. The bone marrow was hypercellular and had many degenerating megakaryocytes with granulocytic hypereosinophilic cytoplasm and pyknotic nuclei. Kidneys had minimal focal membranous glomerulonephritis. As the use of minipigs increases, it is possible that more cases of TP will be observed.
循環器系
  • 片山 義三, 中野 浩司, 津崎 智子, 鶴渕 裕治
    セッションID: P-081
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    薬物が引き起こすQT延長症候群を調べるため,今日までに多くの試験方法が確立され,実施されている.In vitroでの電気生理試験において現在広く行われている手法としては,hERG発現細胞を用いた電流抑制作用を評価するものや,モルモット乳頭筋標本を用いた活動電位持続時間(APD)の延長を検出する実験が挙げられる.しかし,これら両試験間において,作用の検出に相関の得られない薬物も存在し,偽陽性・偽陰性として,薬物によるQT延長作用を調べるうえで大きな問題となっている.今回検討したモルモットの単離心室筋細胞を用いたパッチクランプ法による実験では,活動電位を形成するすべてのイオンチャネルに対して,個別に薬物の作用を確認することが可能であり,複数種のイオンチャネルへの影響やイオンチャネル間での相互作用なども考察することができる.またモルモットの心室筋細胞には,人間の心筋細胞に存在するイオンチャネルのほとんどが発現しているということからも,非臨床段階の試験において,薬物によって引き起こされるQT延長作用を検出するには有用な標本であると考えた.本実験では,QT延長を誘発することが広く知られている数種の化合物を,hERG発現細胞及び単離モルモット心室筋細胞を用いたパッチクランプ法とモルモット乳頭筋標本を用いた微小電極法により電気生理学的に評価し,その作用の相関性を比較した.今回得られた結果から,モルモットの単離心室筋細胞を用いたパッチクランプ法試験が,薬物によるQT延長作用を評価する安全性薬理試験において,非常に有効な手法であることが示めされた.
  • 津崎 健二
    セッションID: P-082
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
    会議録・要旨集 フリー
    安全性薬理試験においてる薬物の心電図QT間隔延長作用の評価系としてhuman ether-a-go-go-related gene(hERG)発現細胞を用いたホールセルパッチクランプ法がある。パッチクランプ法はhERGチャネルを通過するカリウムイオン電流を直接測定できるため、薬物のhERGチャネルへの影響を評価する上で、信頼性の高い評価系として広く用いられている。現在多くの自動パッチクランプシステムが開発されているが実験条件によっては、従来のパッチクランプ法と自動パッチクランプシステムの評価結果に違いが生じることが報告されている。これまでに、自動パッチクランプシステムで得られた濃度依存曲線が従来のパッチクランプ法で得られたそれと相関性が得られない化合物がいくつかあることを明らかとなった。しかし、その原因として化合物のチャンバー等への吸着を含めて本研究ではPatchXpress 7000Aに続く第二の自動パッチクランプシステムであるQPatch 16について検討を行った。その結果、Thioridazineで得られたIC50値が従来のパッチクランプ法で得られた値と相関性が低いことが明らかとなった。Thioridazineが従来のパッチクランプ法で得られた濃度依存曲線と相関性が低いことについては先に導入したPatchXpress 7000Aでも同様であるため、化合物のチャンバーや化合物貯蔵用ブレート等への吸着以外の問題について、従来のパッチクランプ法を含めて検討を行った。
  • 榊原 基嗣, 槙田 由美, 安東 賢太郎, 山下 保志
    セッションID: P-083
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    昨年、ICH S7BガイドラインがStep 4となったことにより、医薬品開発において早期に薬物が心室再分極過程におよぼす影響を検討することがより重要となっている。今回、我々は薬物の心室再分極過程におよぼす影響を評価する試験系として、ランゲンドルフ心臓灌流法を用いた単相性活動電位(MAP)および心電図測定の有用性についてIKrチャネル阻害作用が報告されている薬物を用いて検討した。雄性モルモットより常法に従ってランゲンドルフ心臓標本を作成し、Krebs-Henseleit液を用いて灌流した。摘出した心臓には、sotalol (0.3-30µmol/L)、verapamil (0.1-10µmol/L)、terfenadine (0.03-3µmol/L)、cisapride (0.01-1µmol/L)、risperidone (0.1-10µmol/L)を灌流した。適用20分後に、洞調律、周期長300 msおよび200 msの心室ペーシング下で左心室MAPおよび心電図を記録した。得られた記録からQTc (Bazett’s formula)、20、90%再分極時のMAP持続時間(MAPD20、90)を算出した。Sotalol、terfenadine、cisapride、risperidoneはMAPD90とQTcを延長した。CisaprideとsotalolではMAPD90の延長率に逆頻度依存性が認められた。カルシウムチャネルを阻害するverapamilは、MAPD20およびMAPD90とQTcを短縮し、MAPD20とMAPD90の差を延長した。以上より、ランゲンドルフ心臓灌流法は薬物の心室再分極過程におよぼす影響を詳細に評価できるin vitroの試験系として有用であり、また、IKr以外のチャネルへの影響を検討する事も可能な試験系であると考えられた。
  • 原田 拓真, 塩谷 元宏, 阿部 純子, 浜田 悦昌
    セッションID: P-084
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/06/23
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    【目的】QT間隔の延長は、torsades de pointes等の心室頻脈性不整脈のリスクを増加させると考えられている。一方、開発薬物が心血管系へ及ぼす影響をスクリーニングしたり、多面的に評価する場合には薬物の持続注入法(infusion technique)が有用である。これらのことから、今回、我々はQT延長を示す薬物が心血管系パラメーターにどのような影響を及ぼすかを薬物の持続注入法を用いてモルモットで検討した。【方法】isoflurane麻酔下で、methoxamine (α1 agonist, 15 mg/kg/min)、QT延長薬物 (gatifloxacin 4 mg/kg/min,nifekalant 0.3 mg/kg/min,clofilium 0.05 mg/kg/min,E-4031 0.1 mg/kg/min)およびchromanol 293B (0.1 mg/kg/min) を単独または併用投与した。血圧および心電図はテレメトリー計測システムで記録した。【結果】nifekalantまたはE-4031の静脈内持続注入ではQT間隔は10%延長した。nifekalant, clofiliumまたはE-4031とchromanol 293Bの併用投与ではQT間隔は10_から_19%延長した。生理食塩液またはchromanol 293Bのみの持続注入ではQT間隔には変化は認められなかった。いずれの薬物によっても心室頻拍は認められなかった。nifekalant, clofiliumあるいはE-4031処置の時には-28%_から_-40%の心拍数の低下が認められ、生理食塩液の持続投与によっても心拍数が低下(-15%)した。いずれの薬物によっても収縮期血圧のわずかな上昇が認められた。
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