本研究では,市販の洗口剤がウシエナメル質の衝突摩耗性に及ぼす影響について検討した.常温重合レジンで包埋した30 本のウシ歯冠部を耐水性SiC ペーパーで研削し,これを試験用エナメル質試片とした.試片を浸漬する溶液は,市販の洗口剤5 製品;ConCool F(CF,pH5.4),Check-Up(CU,pH5.8),Listerin(LR,pH4.2),Listerin
Zero(LZ,pH4.2),シュミテクト(SH,pH6.8)およびコントロールとして蒸留水(DW,pH7.2)を使用した.
溶液に浸漬した試片に,ステンレスアンタゴニストを用いて荷重25N を負荷し1,000 回まで衝突摩耗試験を行った.その後,衝突摩耗(ISW)量の測定,摩耗部の三次元レーザー顕微鏡およびSEM 観察,さらにエナメル表面のヌープ硬さ測定を行うことによって衝突摩耗挙動を評価した.
その結果,ISW 量は,衝突摩耗100 回負荷後で7.5 ~ 24.3×104 μm3 であり,500 回負荷後のISW 量は11.8 ~ 80.9×104 μm3,そして1,000 回負荷後は16.2 ~ 137.8×104 μm3 であった.2 種の酸性洗口剤(LR およびLZ)のISW量はその他の洗口剤に比べ有意に高かった(p<0.05).また,LR およびLZ では,その他の溶液に比べてヌープ硬さの低下が認められた.これらの成績から,マウスリンスの組成および溶液のpH によって衝突摩耗量が異なることが示された.また,凝着磨耗および摩擦化学的摩耗などの機序の異なったwear が衝突摩耗性のtooth wear に関与していることが示唆された.
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