接着歯学
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26 巻, 1 号
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  • 森上 誠, 杉崎 順平, 宇野 滋, 山田 敏元
    2008 年 26 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    近年, レジンボンディングシステムは操作を短縮するために簡略化されてきている. 1ボトル1ステップ型レジンボンディング材Bond ForceTR (以下Bond Force) が, トクヤマデンタルにより開発された. 本研究の目的は, BondForceと歯質との接合界面をSEMおよびTEMにより観察し, 併せてウシ前歯に対する引張り接着強さ (TBS) と, ヒト歯に対する微小引張り接着強さ (μTBS) を測定し, Clearfil Mega Bondを比較対照としてBond Forceの歯質接着性能について検討することである. 接合界面のSEM観察には, ヒト歯エナメル質, 健全象牙質 (ID) およびう蝕除去後の象牙質 (CAD) が用いられ, TEM観察にはヒト歯健全象牙質 (ID) が用いられた. 健全なヒト新鮮抜去大臼歯の歯冠中央部を歯軸に垂直に切断し, #1,000耐水シリコンカーバイドペーパーで研削した面をエナメル質および健全象牙質の被着面とした. さらに, 象牙質う蝕を有するヒト新鮮抜去大臼歯に対して, う蝕検知液をガイドとしてスチールラウンドバーを用いてう蝕象牙質第一層を除去した面をう蝕除去後の象牙質 (CAD) の被着面とした. SEM観察では, Bond Forceとエナメル質, 健全象牙質およびCADの接合界面にはギャップ形成は認められず, ハイブリッド層と思われる層は認められなかった. TEM観察では, 象牙質表層に200~300nmの幅の界面構造が認められ, ナノレベルの接着機構が生じているものと推測された. ウシ前歯に対するTBS (SD) は, エナメル質に対して21.9 (3.6) MPa, 象牙質に対して23.3 (2.5) MPaであり, ヒト歯象牙質に対するμTBSは50.0 (9.8) MPaであり, 49.4 (10.0) MPaを示したClearfil Mega Bondとの間に統計学的有意差は認められなかった (p;0.05). 本ボンディング材は歯質に対する良好な接着性能を有しており, 臨床で使用するうえでも有望なボンディング材であることが示唆された.
  • 大竹 志保, 五島 健一, 遊佐 耕一郎, 福井 雄二, 駒田 亘, 小椋 直樹, 三浦 宏之
    2008 年 26 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    試作PMMA系レジンセメント開発コード: PRC-01 (PRC) について, 被膜厚さ, 曲げ特性, 接着強さを市販の3製品 (マルチボンド (MB), スーパーボンドC&B (SB), スーパーボンドクイック (SBQ)) と比較, 検討を行った. 被膜厚さは, ISO4049に準拠した方法および0, 1, 2, 3分後の被膜厚さを独自の方法により測定した. 曲げ特性は, ISO4049に準拠して試料を作製し3点曲げ試験を行い, 試料完成24時間後の最大応力と曲げ弾性係数を測定した. 歯質への接着強さは, ステンレス棒をウシ歯エナメル質および象牙質に接着後, 5分, 10分, 24時間に引張り試験を行い測定した. PRCを含むすべてのセメントの被膜厚さは, ISO4049の基準を満たしていた. また, 3分後に被膜厚さが増加しなかったのはPRCのみであった. 最大応力はMBを除きi類似しており, 曲げ弾性係数はSBQが最も低く, 他の3試料問に有意差は認められなかった. PRCのエナメル質, 象牙質に対する接着強さは, 5分後にMBと同様の高い値を示した. また24時間後の接着強さは, 全4試料において有意差が認められなかった. これらの結果より, PRCは優れた機械的性質を有する新規PMMA系レジンセメントであると考えられる.
  • 鈴木 貴規, 奈良 陽一郎
    2008 年 26 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, Er: YAGレーザー照射が歯頸部コンポジットレジン修復の接着信頼性に及ぼす影響と, 抗菌性セルフエッチングプライマー接着システムの有効性について検討することである. ヒト抜去下顎小臼歯の歯頸部に, Er: YAGレーザー (L) または回転切削器具 (R) を用いて最終形成したそれぞれ20窩洞の規格化V字状窩洞を形成した. それら窩洞を2種のセルフエッチングプライマー接着システム, すなわち1種抗菌性システム;クリアフィルメガボンドFA (F, クラレメディカル) と従前システム;クリアフィルメガボンド (M, クラレメディカル), および1種コンポジットレジンを用い, 製造者指示に従い修復した. 4種修復試料, それぞれ10試料を口腔内環境を想定した複合ストレス負荷試, 験に供した. 複合ストレス負荷後の試料における象牙質窩壁に対するmicro-tensile bondstrength (μ-TBS) 値を測定した. データは分散分析ならびにワイブル分析により解析した. LF/RF/LM/RM修復のμ-TBS値 (SD) は, それぞれ7.0 (4.6)/12.4 (4.8)/9.0 (4.9)/15.4 (6.1) MPaを示した. L修復のμ-TBS値は, システムにかかわらず, R修復の同値より危険率1%で有意に小さかった. ワイブル係数においては, システムにかかわらず, L修復とR修復との間に危険率1%で有意差を認め, L修復の接着信頼性はR修復より有意に劣っていた. また, 最終窩洞形成に用いた器具にかかわらず, F修復とM修復との間のワイブル係数に有意差は存在せず, 両修復における同等の接着信頼性が認められた.
  • 宇野 滋, 森上 誠, 杉崎 順平, 山田 敏元
    2008 年 26 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    試作ワンボトル・ワンステップレジンボンディング材SI-R20603の歯質との接合界面を, SEMおよびTEMにて観察し接着性を評価した. SEM観察には象牙質う蝕を有するヒト抜去大臼歯を用いた. う蝕象牙質を除去後, う蝕除去後の象牙質 (CAD) が露出するように歯冠を水平に切断した. この面を#1,000の耐水研磨紙で研削し, SI-R20603にて処理後コンポジットレジンを充填した. 試料を半切し包埋した後切断面を鏡面研磨し, アルゴンエッチングおよび白金蒸着を施し, エナメル質, 健全象牙質およびCADとの接合界面のSEM観察を行った. TEM観察には, #1,000の耐水研磨紙で研削したヒト抜去大臼歯の健全象牙質を用いた. 同様に作製した接着試料より未脱灰の超薄切片を作製した. SEM像ではエナメル質, 象牙質およびCADに対して強固に接合していた. TEM像では健全象牙質と密接に接着している様相が観察された. SEMおよびTEM観察では象牙質との接合界面に樹脂含浸層は認められず, 厚さ約0.5μmの歯質との移行層が観察された. 以上より, 本試作ボンディング材の歯質に対する接着性能は十分に期待できるものと思われる.
  • 島田 康史, 岡田 浩, 田上 順次
    2008 年 26 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は1ステップ接着材のセメント質に対する接着強さを調査し, 2ステップ接着材と比較することにある. 2種類の市販接着材, 1ステップ接着材 (クリアフィルトライSボンド) と2ステップ接着材 (クリアフィルメガボンド) とを実験に使用した. 抜去したヒト臼歯の近心と遠心面から, セメント質ならびに象牙質領域を選択し, それぞれの接着材により接着操作を行った.直径約0.7mm, 高さ0.5mmの微小なシリンダー状コンポジットレジンを歯面に接着させ, 微小剪断接着試験により接着強さを測定した. 剪断接着試験の結果, セメント質に接着させた場合, 2種類の接着材の接着強さは象牙質の場合より低かった (p<0.05).2ステップ接着材は1ステップ接着材よりも高い接着強さを示した (p<0.05).
  • 池田 考績, 神島 奈穂子, 中沖 靖子, 佐野 英彦
    2008 年 26 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, レイヤリングテクニックにおけるオペークシェードが, 暗い背景色の影響下におけるコンポジットレジンの色に及ぼす影響を明らかにすることである. フィルテックTMシュープリーム (FS) およびグラディアダイレクト (GD) のA2のオペークシェードとボディシェードを使用した. 厚さ1mmの円柱状のボディシェードの下に厚さ2mmの円柱状のオペークシェードかボディシェードを置き, 黒背景上で測色を行いL, a, bの値を比較した. オペークシェードを使用した場合, FSにおいては高いLおよびb値が, GDにおいては高いaおよびb値が観測された. レイヤリングテクニックにおいてオペークシェードを使用することにより, 高い明度および彩度が得られることが明らかとなった.
  • 會田 雅啓, 田部井 直子, 金子 珠美, 大村 祐史, 若見 昌信, 渡辺 官, 西山 典宏
    2008 年 26 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究では, 陶材破折の修理に際し, 陶材表面の粗さの違い, および, ボンディング材を併用した場合のシラン処理時間の違いが, 陶材とコンポジットレジンとの接着耐久性に与える影響を検討した.
    エアータービンに装着したダイヤモンドポイントおよび#100または#1,000耐水紙を用いて研削した陶材面の形状を測定した.
    メーカー指示に従い焼成した焼付用陶材を#100または#1,000耐水紙で研削し, 10, 30秒, 1, 3, 10, 60分シラン処理後, コンポジットレジンを接着させた場合, または, ボンディング材を塗布し, コンポジットレジンを接着させた場合の24時間後およびサーマルサイクル負荷後の圧縮せん断接着強さを測定した.
    その結果, #100陶材研削面はダイヤモンドポイントを用いて研削した陶材面より, わずかに粗さが細かく, #1,000研削面に比べて接着耐久性が高かったことから, 陶材破折修理におけるダイヤモンドポイントでの破折面の削除は効果的であることが示唆された. 一方, ボンディング材を併用した場合, シラン処理時間の延長とともに接着耐久性は高くなる傾向を示したが, 各処理時間で比較した場合, シラン処理のみを行った場合と同程度か低い値であったことから, ボンディング材の使用は効果的でなかった.
  • 川本 千春, 福岡 杏理, 星加 修平, 田中 享, 佐野 英彦
    2008 年 26 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    近年, 各種ワンステップ接着システムが開発・市販されている. この接着システムは, 操作過程を減らすことで操作時間を短縮することができる. その一方で, 臨床試験では接着性能が低下するとの報告がある. また, in vitroでもほとんどのワンステップ接着システムで2ステップや3ステップの接着システムに接着力で及ぼないとの報告もある. 本研究の目的は, 微小引張り接着試験より各種ワンステップ接着システムの接着性能を評価することである.
    ヒト抜去大臼歯の咬合面を, #600の耐水研磨紙にて注水下で研削したエナメル質および象牙質を被着面とした. 市販のワンステップ接着システム3種, クリアフィルトライエスボンド (S3), OptiBond All・In・One (OB), トクヤマボンドフォース (BF) と2ステップのクリアフィルメガボンド (MB) を用いた. 被着面を接着処理を行った後, コンポジットレジンを築盛・硬化した. 37℃ の水中下で24時間浸漬後, スティック状の試料を作製し微小引張り接着試験を行った. 得られた値はKruskal WallisとGames-Howellにて統計処理を行った. エナメル質に対する引張り接着強さはMBとBFにおいて有意差を認めたが, ワンステップ接着システム間で有意差を認めなかった. 一方, 象牙質では, BFがS3より有意に高い接着力を示した.本実験より, 2ステップ接着システムはワンステップのそれよりも常に接着強さが高いとは限らないことが示唆された.
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