接着歯学
Online ISSN : 2185-9566
Print ISSN : 0913-1655
ISSN-L : 0913-1655
24 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 丸岡 令奈, 二階堂 徹, 田上 順次
    2006 年 24 巻 3 号 p. 105-110
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ヒト抜去大臼歯に対してレジンコーティングを行い, コロナルリーケージの抑制効果について検討することである.試料としてヒト抜去大臼歯72本を用い, エナメル-セメント境で歯冠を切断し, 各根管を通法に従って35号まで根管拡大した後, 根管充填を行った.すべての試料は37℃ 水中にて24時間保管の後, ポスト形成の有無により2群に分け, さらにコーティングの有無で2群に分け, すべての副群で仮封の有無により2群に分けた.すべての試料は48時間の色素浸透試験の後, 歯軸方向に割断し, 根管口から左右の根管壁に沿って染色液の浸透長さを実体顕微鏡により測定し, コロナルリーケージのスコアとした.得られた結果はThree-way ANOVAとFisher's PLSDにより有意水準5%にて統計処理を行った.その結果, レジンコーティング, ポスト形成, 仮封ともにコロナルリーケージの値に影響を及ぼすことが認められた.また, Clearfil Mega BondとProtect Liner Fの組み合わせによるレジンコーティング法が, 大臼歯根管処置歯におけるコロナルリーケージの抑制に最も有効であることがわかった.
  • 趙 暁華, 吉山 昌宏
    2006 年 24 巻 3 号 p. 111-119
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究では, ワンステップ接着システムのアクティブ処理がう蝕象牙質への接着性に及ぼす影響を評価する目的で, アクティブ処理を採用するOne-Up Bond F Plus (OB-P) およびアクティブ処理を行わないOne-Up Bond F (OB) を用いて検討した.咬合面う蝕を有するヒト抜去大臼歯を用いて, う蝕検知液で染色した後, 被着象牙質面を作製し, 染色程度の違いにより健全象牙質部, う蝕影響象牙質部およびう蝕感染象牙質部に分類した.OB-PおよびOBを用いて業者指示に従って歯面処理を行い, 接着試料体を作製した.24時間水中保管後連続切片を作製し, 微小引張り接着強さを測定した.また, OB-P, OB処理後の象牙質表面および象牙質接着界面をSEM観察した.その結果, 各種象牙質におけるOB-Pの接着強さはOBより有意に高い値を示した.両システムともに, う蝕感染象牙質およびう蝕影響象牙質への接着強さは健全象牙質より有意に低下した.処理後の象牙質表面および象牙質接着界面のSEM観察では, OBと比較しOB-Pの脱灰能やレジンモノマーの浸透能が向上することが判明した.以上のことから, OB-Pはアクティブ処理によりう蝕象牙質への接着性が向上したことが示唆された.
  • 柳田 廣明, 田上 直美, 熱田 充, 中村 光夫, 松村 英雄
    2006 年 24 巻 3 号 p. 120-124
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, イオウ化合物含有金属接着性プライマーが金銀パラジウム合金の接着耐久性に与える影響を評価することである.
    プライマーとして貴金属接着性モノマーの10-メタクリロオキシデシル-6, 8-ジチオオクタノエート (MDDT) および非貴金属接着性モノマーの6一メタクリロキシヘキシルポスホノアセテート (MHPA) を含むメタルリンク (ML) と, 貴金属接着性モノマーの6-(4-ビニルベンジル-n-プロピル) アミノ-1, 3, 5-トリアジンー2, 4一ジチオール, -ジチオン-互変異性体 (VTD) を含むV-プライマー (VP) の2種を用いた.鋳造した試験片をアルミナサンドブラスト処理した後, 2種のレジンセメント (マルチボンド, スーパーボンドC&B) で接着した.これにプライマー処理なしをコントロールとした群を加えて, せん断接着強さの比較を行った.スーパーボンドを用いた場合, 2種類のプライマー処理はともにサーマルサイクリング後 (100,000回) の接着耐久性に効果的に作用した.しかしながら, マルチボンドのML処理試料はサーマルサイクリング後に処理なし試料と同等の接着強さを示した (p>0.05).
  • 神島 奈穂子, 池田 考績, 中沖 靖子, 佐野 英彦
    2006 年 24 巻 3 号 p. 125-129
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, コンポジットレジンの透明度と厚みの関係を明らかにするとともに, 背景色の影響を排除するために必要な厚みを決定することである.クリアフィルマジェスティのA2シェード (MJ A2), オペークA2シェード (MJOA2), エステライトΣ のA2シェード (ESA2), オペークA2シェード (ESOA2) およびソラーレのA2シェード (SL A2), オペークA2シェード (SL OA2) を使用した.厚みが0.5, 1.0, 2.0, 3.0, 4.0mmの試料を白および黒背景上で測色し, 得られたL*, a*, b*値よりtranslucency parameter (TP) を算出した.試料の厚みとTPの関係は, 指数関数による近似が最も高い相関係数を示した (0.983<R2<1).得られた指数関数においてTPが人間の色の識別限界とされる2となる試料の厚みを算出した結果, MJ A2, ES A2, SLA2ではそれぞれ3.18, 3.00, 2.82mm, MJ OA2, ES OA2, SL OA2では2.77, 2.57, 2.39mmであり, OA2がA2に比べ, 薄い層により背景色の遮蔽が可能であった.
  • 宇野 滋, 森上 誠, 杉崎 順平, 山田 敏元
    2006 年 24 巻 3 号 p. 130-135
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    フロアブルコンポジットレジン・エステライトフロークイック (EFQ, トクヤマデンタル) の硬化特性を検討した.
    円柱形スプリットモールドにEFQのシェードA2, A4あるいはIncのペーストを充填後, 5または20秒間ハロゲンランプにて光照射し硬化させた.試料の長軸断面を研磨後, 照射面より50, 100, 500μmさらに1, 2, 3mmの深さにおいて超微小押し込み硬さ試験法により内部硬さを測定した.
    Inc-5秒照射群は深さにかかわらず硬さに変化はなかった (Tukey HSD, p>0.05).いずれのシェードにおいても5秒照射群は20秒照射群に比べ低値を示した (p<0.05) が, 5秒照射群であっても対照群のMedium Flow-20秒照射群と同等の硬さであった (p>0.05).A4-5秒照射群では2mm以上の深さでは硬さが減少した.
    以上より, ラジカル増幅型光重合開始剤によりEFQの光硬化性は向上したが, 暗いシェードを用いる場合, 照射時間が短いと深部での重合が不十分になることが危惧される.
  • 坪田 有史, 深川 菜穂, 北村 茂, 大祢 貴俊, 西村 康, 橋本 興, 福島 俊士
    2006 年 24 巻 3 号 p. 136-144
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    築造体ごとの歯冠修復物の脱落は, 日常臨床で比較的高い頻度で遭遇するトラブルの一つである.本研究は, ヒト下顎切歯に形成したポスト孔に各種接着材でグラスファイバーポストを接着した試料を製作し, グラスファイバーポストの引き抜き試験を行い, 引き抜き強さと引き抜き試験後の様相について比較検討した.
    その結果, 引き抜き試験後の様相で有意な差が認められ, 接着材とファイバーポスト, 接着材と象牙質との接着力の違い, および接着材自体の物性が影響していることが示唆された.一方, 各種接着材により, 引き抜き強さに顕著な差は認められなかった.
  • 英 將生, 秋本 尚武, 山本 雄嗣, 桃井 保子
    2006 年 24 巻 3 号 p. 145-157
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    近年, 臨床にて使用され始めたワンステップ接着システムのエナメル質接着耐久性を1年間の臨床成績から検討した.4種類のワンステップ接着システム (AQボンドプラス: サンメディカル, アドパーTMプロンプトTMエルポップTM: 3MESPE, アブソリュート: デンツプライ三金およびG-ボンド: ジーシー) と1種類のツーステップセルフエッチングシステム (インパーパフルオロボンド: 松風) を使用し, 臼歯部咬合面齲蝕173歯のI級コンポジットレジン修復を行った.修復直後と1年後に, 口腔内診査, 口腔内写真の撮影およびレプリカ模型の採得を行い臨床的に評価した.口腔内診査は, USPHS変法により各修復物の辺縁部着色, 辺縁適合性, 二次齲蝕および歯髄反応にっいて診査し, 採得したレプリカ模型はSEMにより辺縁適合性の変化を詳細に観察した.1年後, 全症例において二次齲蝕と歯髄反応は皆無であった.辺縁適合性において51症例にわずかな変化が観察されたが, 臨床的に再修復を必要とする状態ではなかった.1年後の短期臨床成績から, ワンステップ接着システムのエナメル質に対する臨床的接着耐久性は良好であることが示唆された.
  • 飯田 麻理子, 秋本 尚武, 原 麻由子, 桃井 保子
    2006 年 24 巻 3 号 p. 158-166
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ワンボトルセルフアドヒーシブの象牙質接着界面をFE-SEMにより観察することである.新鮮ヒト抜去第三大臼歯から象牙質板を切り出し, 表面を耐水研磨紙#600で注水下にて研削した.4種の市販ワンボトルセルフアドヒーシブ (アブソリュート, Gボンド, iボンド, およびクリアフィルトライエスボンド) を用い, メーカー指示どおりに接着処理を施し, フロアブルレジン (レボリューション2) を築盛した.試料の接着界面に対し垂直に切断し1日あるいは1カ月間, 水中と大気中にそれぞれ保管した.保管期間終了後, 接着界面にアルゴンイオンエッチング (EIS-200ER) を加速電圧1kVで30, 60秒施し, 象牙質接着界面をFE-SEMにより詳細に観察した (ERA-8900FE).すべての材料で, ボンド層はアルゴンイオンエッチングにより粗縋になり, その形態は材料ごとに異なっていた.しかし, 各材料とも象牙質接着界面の形態は, 1カ月間水中保管の影響を受けず変化を示さなかった.以上より今回観察した4種のワンボトルセルフアドヒーシブにおいて, 1カ月水中保管後も象牙質接着界面の構造は安定していることが示唆された.
  • 神島 奈穂子, 池田 考績, 中沖 靖子, 佐野 英彦
    2006 年 24 巻 3 号 p. 167-171
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, オペークシェードコンポジットレジンの色における特徴を明らかにすることである.クリアフィルマジェスティのA2シェード (MJA2), オペークA2シェード (MJOA2), エステライトΣのA2シェード (ESA2), オペークA2シェード (ESOA2) およびソラーレのA2シェード (SLA2), オペークA2シェード (SL OA2) を使用した.各製品の各シェードの厚さが4.0mmの試料を白背景上で測色して, 得られたL*, a*, b*値のそれぞれに対しTukey testを行い, 色の違いを比較した.さらに各製品, 各シェード間の色の違いが人間の感覚で識別できるかを検討するために, 色差 (ΔE*) を算出した.その結果, L*は, すべての材料においてOA2シェードがA2シェードより大きかった. a*は, MJ OA2がMJ A2より小さな値を示したが, 他の2材料では差はなかった.b*は, ES OA2を除いてOA2のb*が大きかった. 各製品, 各シェード間での色差はすべて色の識別限界の2以上であった.臨床ではそれぞれの製品におけるオペークシェードの色の特徴を把握しておくことが必要と思われる.
  • 第2報サーマルサイクリングの負荷が曲げ特性に及ぼす影響
    高見澤 俊樹, 色川 敦士, 前田 徹, 山口 佳奈子, 安田 源沢, 森 健太郎, 渡邉 孝行, 宮崎 真至
    2006 年 24 巻 3 号 p. 172-178
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    暫間修復処置は, 最終修復物が装着されるまでの期間に機能, 審美および周囲軟組織との調和を図る目的で行われている.この処置に用いるレジンとして, PMMAを基材とした材料以外に, 無機フィラーを添加したペースト系の製品が市販されている.ペースト系の暫間修復用レジンは, PMMA系レジンと比較して重合時の発熱が低減化されるなどの利点を有するとされているが, 口腔内の環境を勘案した長期耐久性については不明である.そこで, 口腔内環境を想定したサーマルサイクリングの負荷が, 暫間修復用レジンの曲げ特性に及ぼす影響について検討した.その結果, 供試した製品の曲げ強さおよび曲げ弾性係数は, サーマルサイクリングの負荷によって上昇する傾向を示した.破断面のSEM観察からは, ペースト系レジンにおいては, サーマルサイクリングの負荷によって波状の亀裂進展が認められた.一方, PMMA系レジンにおいてはペースト系レジンに比較して複雑な破断面を呈しており, サーマルサイクリングの負荷によってさらに粗な破断面として観察された.
  • 浅井 哲也, 風間 龍之輔, 興地 隆史, 福島 正義
    2006 年 24 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    歯科用CAD/CAMCEREC3システムによるラミネートベニア修復物の適合性をCEREC2システムによる修復物と比較検討した.上顎左側中切歯のレジン歯にラミネートベニア修復の窩洞形成を行った後, CEREC2およびCEREC3にて, おのおの10個の修復物を製作し, シリコン印象材によるセメントレプリカ法を用いて適合試験を行った.間隙量は, レプリカ試料を切縁歯頸側方向に半切し, 切断面上の3点 (切縁部, 唇面中央部, 歯頸部) におけるシリコン印象材の厚みを計測して求めた.その結果, CEREC3群の間隙量は切縁部で26±16μm, 唇面中央部で95±35μmおよび歯頸部で30±20μmであったが, これに対してCEREC2群の間隙量は切縁部で185±49μm, 唇面中央部で245±37μmおよび歯頸部で212±87μmであり, 3計測点すべてにおいてCEREC2群とCEREC3群の間に統計学的有意差を認めた.したがって, CEREC3ではCEREC2と比較してラミネートベニア修復物内面の適合精度が向上していることが示唆された.
  • 島田 康史, ウザマン アルカート, 笹渕 康敬, 大槻 昌幸, 田上 順次
    2006 年 24 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    本研究は, レジン強化型グラスアイオノマーセメントIonotite Fにより接着したレジンインレーの歯髄刺激性の評価を目的として行われた.サルの歯の頬側歯頸部にV級窩洞を形成した.レジン強化型グラスアイオノマーセメントを練和・塗布し, 窩洞にコンポジットレジンインレーを接着させた.3, 30, 90日後に歯を抜去し, 10%中性緩衝ホルマリンに固定し, 通法に従い病理標本を作製した.5μmに薄切した切片に, ヘマトキシリン・エオジン染色とBrown&Brenn法によるグラム細菌染色を行った.結果, すべての実験期間において壊死や膿瘍形成などの重篤な歯髄反応は観察されず, また, Ionotite Fによりレジンインレーを接着させた場合, 窩壁に細菌の侵入はみられなかった.サルの歯髄において, Ionotite Fの刺激性は問題のない程度と考えられた.
  • 會田 雅啓, 後藤 治彦, 西山 典宏, 大村 祐史, 若見 昌信, 渡辺 官, 桜田 俊彦
    2006 年 24 巻 3 号 p. 190-195
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    市販のセラミックプライマーを長期に保管した場合, 保管条件の違いが被着体とレジンセメントとの接着性に与える影響について検討した.
    セラミックプライマーはポーセレンライナーM, ラミナボンドポーセレンプライマーとし, 購入直後に冷蔵庫または室温に20カ月保管した.被着体はCAD/CAM用GN-1コンポジットブロックおよびグラディアとし, 耐水研磨紙#1,000にて研磨し, 被着面とした.被着面に塩化ビニル製リングを仮着し, セラミックプライマーで処理後, レジンセメントを接着し, 24時間後の圧縮せん断接着強さを測定した.また, 購入直後および20カ月間室温保管したセラミックプライマーの29SiNMRスペクトルを測定した.
    その結果, 以下の結論を得た.
    1.ポーセレンライナーMは, 購入直後または保管条件の違いによる接着強さの差はなかった.
    2.ラミナボンドポーセレンプライマーは, 20カ月保管すると接着強さが低下し, 冷蔵庫保管に比べて室温保管した場合に, 有意に低下した.
    3.ポーセレンライナーMのB液に含まれるγ-MPTSは, 室温に20カ月保管しても変質しなかった.
    4.ラミナボンドポーセレンプライマーに含まれるγ-MPTSは, 室温に20カ月保管すると, 購入直後に比べて, シラン分子種の分子量が増大した.
feedback
Top