本研究の目的は,金銀パラジウム合金および純チタンに対する4META-MMA-TBBOレジンの接着におよぼす多目的プライマーと金属用プライマーの影響を検討することである.被着体は,金銀パラジウム合金(MC)と純チタン(Ti)の2種類で製作した.多目的プライマーとしてG-マルチプライマー(GM),金属接着プライマーとしてメタルプライマーZ(MZ)を使用した.4META-MMA-TBBOレジンセメントとして,スーパーボンドC&Bを使用した.MCとTiの両者ともプライマーの種類と熱サイクルの有無により4群(n=6)に分けて,計24個の試験片を製作した.続いて熱サイクル50,000回前後でのせん断接着強さを測定した.その結果,MC,TiのいずれにおいてもGMとMZとの間に有意差は認めなかった.
本研究では,補綴装置に対する接着前処理として紫外線(UV)照射の効果を明らかにする目的で,セルフアドヒーシブレジンセメントの接着強さにUV照射時間が与える影響について,せん断接着試験法を用いて検討した.因子Aとして被着体を金合金(Au),試作コンポジットレジンブロック(CB),セリア安定化ジルコニアセラミックス(Zr)の3条件,因子BとしてUV照射時間を0,60,120,180分間の4条件とした.被着面に対して各所定時間のUV照射を行った後,セルフアドヒーシブレジンセメントにて装着,圧縮せん断試験を行った.せん断接着強さの二元配置分散分析の結果,主効果A,Bおよび交互作用効果A×Bは有意であった(p<0.05).AuではUV照射時間の増加に伴いせん断接着強さの向上が認められた.CBではわずかに向上したものの,その値に有意な差は認められなかった.ZrではAuと同様に120分照射まではせん断接着強さが向上したものの,180分でわずかに減少した.せん断接着強さの最大値は,Auで20.3 MPa,CBで7.2 MPa,Zrで27.2 MPaを示した.以上の結果から,せん断接着強さは,被着体材料と照射時間の組合せにより差が認められた.臨床応用に際し,補綴装置被着面に対するUV照射によって接着強さが向上するため,有用な被着面処理となり得ることが示唆された.