日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成21年度日本調理科学会大会
選択された号の論文の214件中201~214を表示しています
ポスタ-セッション
  • 佐藤 靖子, 鈴木 惇
    セッションID: 2P-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 廃鶏は長期間の飼育により結合組織が発達して肉質は硬くしまっている。この硬い肉は食酢およびキウィにおける前処理により軟化するが、酸味が残り好ましくなかった。このため希釈した前処理液により廃鶏の肉の組織構造の変化を調べた。
    【方法】 廃鶏のムネ肉を2.5×2.5cm、厚さ1.2cmで切り取り、食酢およびキウィを25~75%に希釈して15%の上白糖を加えた浸漬液に2時間漬けた。浸漬後は、未加熱および15分間茹でた後、10%ホルマリン液で固定しパラフィンに包埋して薄切した。標本は筋線維と膠原線維を染め分けるピクロシリウス染色で染めた。
    【結果】 25%の食酢に浸漬した廃鶏の未加熱肉では、筋上膜の一部が分離していた。内部の筋周膜においては変化がなかった。75%浸漬液では筋上膜の結合が壊れて部分的に剥離した。内部の筋周膜は部分的に分離していた。キウィに浸漬した未加熱肉の筋上膜は、25%では部分的に分離して、75%では一部が剥離した。肉の内部の筋周膜では変化はみられなかった。加熱肉では、食酢に浸漬した肉の筋上膜は溶解して部分的に分離した。キウィにおいても同様の変化であったが、75%浸漬液ではほとんどが剥離した。
  • 阪中 專二
    セッションID: 2P-49
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 鶏卵は古くから食品として利用され,今や生活に不可欠な食品となっている。卵黄には固形物換算約30%のタンパク質が含まれ,抽出されたタンパク質は栄養価が高いことから畜産用や水産用飼料として一部利用されている。本研究は,鶏卵卵黄タンパク質を酵素分解により水溶性化し,得られる酵素分解物の有する抗酸化能を試験管内試験と牛肉・魚肉に添加した際の有効性により明らかにすることを目的とする。
    【方法】 1. 卵黄タンパク質の酵素分解物の調製:脱脂した卵黄粉末を市販プロテアーゼにより分解し酵素分解物を得た。酵素分解物は構成アミノ酸組成とゲル濾過クロマトグラフィーによる分子量分布を調べた。2. 卵黄タンパク質酵素分解物の抗酸化能:β-カロテンの退色抑制およびDPPHラジカル,ヒドロキシラジカル,スーパーオキシドラジカルに対する消去活性を測定した。3. 食品への利用:牛肉およびマグロの脂身磨砕物に卵黄タンパク質酵素分解物を添加し保存後の過酸化物の生成をチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)測定により比較した。
    【結果】 酵素分解物の構成アミノ酸組成は,原料とした卵黄タンパク質とほぼ同等であり,分子量分布からみた最大ピークは1000以下であった。ラジカル消去活性では,DPPHラジカル,ヒドロキシラジカル,スーパーオキシドラジカルのすべてのラジカルに対して酵素分解物は強い消去活性を示した。牛肉・マグロ脂身磨砕物の過酸化脂質生成に対しても酵素分解物は強い抑制効果を示した。以上の結果から,卵黄タンパク質酵素分解物は畜肉・魚肉の保存性向上素材としても有用であると考えられる。
  • 仲 克己, 渡来 仁
    セッションID: 2P-50
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 食品媒介性病原菌であるカンピロバクタ−は、鶏の腸管に持続感染を起こすため、菌に汚染された食品(肉や卵など)が食中毒の原因となり、公衆衛生上重要な問題となっている。これまで我々は、タンパク分解酵素、脂質分解酵素、キチン分解酵素などを産生する好気性微生物群が病原微生物の増殖を抑制することを明らかにしている。本研究では、カンピロバクター排除の新たな方策として、この好気性微生物群が有用であるか否かを明らかにするために、好気性微生物群添加飼料投与によるカンピロバクター排除効果について検討した。
    【方法】 Campylobacter jejuniC. jejuni)を実験的に感染させた白色レグホンに好気性微生物群を2%添加した飼料を与え、定期的に糞便を採取し、採取された糞便中のC. jejuni数を計測し、C. jejuni排除に対する好気性微生物群の効果について調べた。
    【結果】 好気性微生物群を添加していない飼料を与えられたC. jejuni感染鶏群は、実験期間中(61日間)、高濃度のC. jejuniが糞便から検出された。一方、好気性微生物群を2%添加した飼料を与えられたC. jejuni感染鶏群においては、好気性微生物群投与後、8日目までは高いC. jejuniの菌数が検出されたが、11日目以降検出されるC. jejuniは減少した。40日目以降では、検出されるC. jejuniは有意に減少し、54日目以降実験終了までC. jejuniは検出されなかった。これらの結果から、C. jejuni感染鶏に対して好気性微生物群を飼料に添加し与えることにより、C. jejuniを排除できる可能性が示された。
  • 野呂 渉, 佐藤 和人, 赤石 隆一郎, 本間 紀之, 吉井 洋一, 山本 和貴
    セッションID: 2P-51
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】新潟県の主要な食品産業の一つに餅があり、おでんなどの煮込み用途がある。この場合、高温下で長時間加熱されるために煮溶けが問題となっている。
    高圧処理は、食品成分中の特にタンパク質、澱粉の変性をひきおこすことが報告されているが、食品の形状を含むマクロ物性に及ぼす影響については十分に検討されていない。
    そこで、本研究では高圧処理が、餅のマクロ物性(比重、気泡含有量、煮溶け率等)に及ぼす影響について検討を行った。
    【方法】餅は常法により製造し、厚さ15 mmに圧延した後に、4 ℃で12時間静置して硬化させ、4 cm×6 cmとなるよう切断した。次に樹脂袋に餅を入れ真空包装で脱気し、常温100 MPaで所定時間高圧処理を行い、物性測定に供した。餅の比重及び気泡含有量は、10 gの大きさに切り出した餅の空気中重量と水中重量とを測定し算出した。また、餅の煮溶け率は、30 gの大きさに切り出した餅を10倍量の沸騰水に入れて3分間加熱し、浸漬水の乾燥後重量を測定し、溶出物重量から算出した。餅の物性測定は、テンシプレッサー(タケトモ電機TTP-50BX2)を用いて行い、硬さ、弾力性、付着性を評価した。
    【結果】高圧処理により、餅の比重、気泡含有量、煮溶け率ともに減少した。特に煮溶け率が減少したことから、切り餅の高圧処理は、煮込み調理性の向上に有効と考えられた。いずれの測定項目も処理時間とともに減少したが、10分間以上の高圧処理による変化はわずかであった。テンシプレッサーによる餅の物性測定では、高圧処理により付着性の低下が認められた。
  • 津田 淑江, 小池 恵, 大家 千恵子
    セッションID: 2P-52
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 近年のわが国の温室効果ガス排出増加傾向が止まらず、家庭部門は2006年度では民生部門の42%を占めている。用途別家庭消費エネルギーのエネルギー源別内訳を見ると、電気は48%を占め、家庭で最も留意すべきポイントは消費電力削減であることが分かる。家庭での食に関わるCO2排出量を算出し、明確にすることを目的とした。
    【方法】 食品の電子レンジによる加熱試験を行い、消費電力を実測し、家庭使用電力量に対しての消費電力量比率とCO2排出量を検討した。経産省資源エネルギー庁の電子レンジ使用実態のアンケート報告書による、電子レンジの使用目的、食品の重量、年間使用回数から、食品の電子レンジによる加熱試験を行い、所要電力量を測定し、家庭使用電力量に対しての消費電力量比率を検討した。加熱対象食品はイモ類、野菜類、冷蔵飯の温め・冷凍飯の解凍・冷凍挽肉の解凍・オーブン加熱利用などとした。加熱対象別に食品の食味や仕上がり具合等の調理性を考慮して加熱条件を設定し、電子レンジの電力消費量、ガス消費量の実測を行った。
    【結果】 1日の摂取目標のイモ類100g、野菜350g(加熱野菜250g、生野菜100gと仮定)を加熱した場合の1世帯(3人家族と仮定)の年間電子レンジ使用消費電力量は、2004年度の家庭消費電力に対し2.6%であった。電子レンジ加熱のCO2排出量は、ガスコンロ加熱と比較すると一人暮らしでは年間51.4 Kg、1世帯当たりでは13.8Kg削減される。これは、食材の量により電子レンジ加熱消費電力が異なるためである。また一般的な家庭の電子レンジ使用状況に基づいた加熱対象(冷凍飯の解凍・冷凍挽肉の解凍・茶碗蒸しの加熱調理を仮定)を、アンケート結果に従って電子レンジ加熱を行った場合の所要電力量は家庭消費電力に対し1.0%となった。
  • 戸田 雅之, 鈴木 徳子, 佐藤 清夏, 小林 秀, 藤津 雅子
    セッションID: 2P-53
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 食生活の変化によって脂肪の摂取量は年々増える傾向にあり、現在では理想とする摂取量よりも過剰に摂取されているのが実情である。また、いわゆる「中食」と称される惣菜の購入・利用頻度は増加傾向にあり、家庭においてこれらを温め直す機会は増えていると考えられる。そこで、惣菜として利用頻度が高く且つ油分を多く含む揚げ物を電子レンジで温め直す際に、不織布シートの特性が揚げ物の脱油に及ぼす影響について検討を行った。
    【方法】 市販又は自ら調理した揚げ物惣菜を不織布シートに載せた後、電子レンジで所定時間加熱し、食材から漏出した油をシート重量増加分として計測することで食材からの脱油量を求めた。また、シートが吸収した油からガスクロマトグラフ法にてコレステロール量を測定した。
    【結果】 無加工の不織布シートではそのシートの持つ飽和吸油量が多いものほど揚げ物惣菜からの脱油量が多く、またシートに油を平面的に拡散させる加工を施すと脱油量は更に増大した。このことから、揚げ物惣菜の温め直しにおける脱油はシートの持つ吸収能力に依存して増加し得ることがわかった。また、市販コロッケ及び自らが調理した鶏唐揚を温め直ししたときの脱油成分を分析したところ、それぞれの惣菜に元々含まれていたコレステロール量に対し、コロッケで約20%、鶏唐揚で約12%のコレステロールが検出され、不織布シートを用いることによる脱油は揚げ物惣菜の衣中の揚げ油だけでなく食材自体からも起こっていることが示唆された。
  • 鈴木 徳子, 戸田 雅之, 小林 秀, 藤津 雅子
    セッションID: 2P-54
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 家庭で煮物を調理する頻度は比較的高く、当社の調査結果によると、煮物をよく調理する主婦の9割以上が、調理中に浮いてくる油を気にしていることがわかった。そこで、不織布シートを煮物調理に使用した場合の、不織布シートが油やアクを除去する効果について検討を行った。
    【方法】 (1)脂質:煮物調理(肉じゃが及びカレー)の際に不織布シート(ポリプロピレン製)を煮汁上面に載せ、所定時間加熱した後、取り出したシートを乾燥し、常法に従って脂質を抽出・溶媒留去し、脂質重量を計測して食材からの脱油量を求めた。また、シートの吸収成分からガスクロマトグラフ法にてコレステロール量を測定した。(2)アク:上記と同様の調理操作を行なった後、アクのシートへの付着状況を目視にて評価した。
    【結果】 煮物調理における不織布シートの吸油量は、シートを構成する繊維の平均繊維間距離を広げるに従い増加することがわかった。また、不織布シートの円周部に切り込みを付与すると、煮汁との接触効率が向上して油やアクの吸収量が増加した。直径20cmの不織布シートを用いて肉じゃが(4人分)を調理した場合は、約220kcalの油をシートが吸収することを確認した。また、シートの吸収した脂質成分を分析したところ、食材として使用した肉由来と推察される飽和脂肪酸やコレステロールが検出され、不織布シートを用いた煮物調理は、脂質のみならずコレステロールの摂取を低減する観点で有用であることを見出した。
  • 山下 満智子, 松原 秀樹, 中島 貴志, 上田 奈穂, 山本 一恵, 大槻 馨, 梅岡 俊二, 正田 一貴, 宮藤 章, 市川 恵, 鵜飼 ...
    セッションID: 2P-55
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 加熱調理機器(IHクッキングヒーター[IH]・ガスコンロ[ガス])による調理特性の相異を究明する目的で、本研究では鍋物調理に着目し、加熱調理機器の違いによる土鍋の昇温特性について検討した。
    【方法】 IH・ガス兼用土鍋[兼用土鍋]に、鍋肌測定用として鍋胴部の鍋肌最高温到達部(鍋底よりIH 39mm、ガス49mm)にシート熱電対、水温測定用として鍋中央部で鍋底より17.5mmにシース熱電対をあらかじめ設置した。IHは、定格出力が得られるように電圧はコンセント電圧のまま(強使用時 99.5~100.6V)、ガスはガス圧をガスガバナで3段階に調圧(強使用時 0.78kPa、1.44kPa、2kPa)した。1400ccの水道水を入れ、IHならびにガスを用いて加熱し水温と鍋肌温度を連続的に20分間計測した。同条件で、加熱開始15分後の土鍋の状態(水温100℃に到達)を赤外線サーモグラフィ装置で撮影した。
    【結果】 IHとガスの加熱開始20分後の鍋肌温度は、それぞれ84℃、125℃(ガス圧0.78kPa)、 156℃(ガス圧1.44kPa)、170℃(ガス圧2kPa)となり、IHとほぼ同じ時間で水が100℃に昇温したガス圧0.78kPaでも、ガスはIHより41℃高くなった。サーモグラフィ画像からも、IHでは鍋肌温度が上昇せず、加熱中鍋肌が水温を超えないことが確認できた。別種の兼用土鍋でも同様の傾向であった。また、ガス専用土鍋を用いて、ガス圧1kPa(ガス専用土鍋中の水温上昇が兼用土鍋とほぼ同様になる条件)にて実験したところ、兼用土鍋と比べ鍋肌温度上昇が抑えられたが、常に水温より高く加熱開始20分後115℃に到達した。このような昇温特性の相違が鍋物調理のおいしさに及ぼす影響は今後の検討課題である。
  • -障害者が使いやすい調理器具とは?-
    中村 眞理子, 後藤 葉子, 廣田 真由子, 濱中 香也子, 小林 和幸
    セッションID: 2P-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【はじめに】 障害者が家庭内役割を持つことの必要性については様々な報告がある。特に「調理・料理」は日常生活に大きな時間を占めるとされ、障害等級に関わらず、実施したい希望が高い活動である。しかし、自宅で家族と生活する場合、障害者本人のみに使いやすい特殊な器具の導入や環境設定は家族に抵抗がある場合も多く、リハビリテーションでの調理訓練が実際にいかされない現状もある。このような背景から,ユニバーサルな手段としてのIHに注目し、実際の調理活動の評価や訓練の視点を焦点化することを目的に、身体障害者の調理活動の困難点を動作分析とインタビューから分析した。
    【対象】 慢性関節リウマチ(10名),パーキンソン病(8名),片麻痺(10名)。事前に内容を説明し同意を得られたものとした。
    【方法】 野菜炒めと、切り身魚を焼く動作を、一機種終了ごとに十分な休憩をとりながら対象者一人につき異なる3機種のIHで実施した。事前に工程分析により抽出したチェックポイントと観察事項を記載できる評価表を用い、6名の作業療法士による観察評価と分析をおこなった。また、機種毎の使いやすさを聞き取り調査した。
    【結果と考察】 データは、一般化を図るため、疾患別ではなく問題点を共通カテゴリー分けした。「立位バランス」や「関節可動域」では、加熱操作時のダイヤル操作およびスイッチやグリルの位置関係、「精神機能面」では複合スイッチやスイッチの階層に、「筋力」ではグリル引き出し時のスライド操作に課題が確認された。 状態にあわせた評価の視点をより明確に詳細に示していくことは、障害者本人および家族が共有して使用しやすい器具の選択や使用方法の工夫につながり、障害者の活動も広がるものと考える。
  • 四宮 陽子, 大賀 春奈, 小林 恵利香, 森村 咲子
    セッションID: 2P-57
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 介護食とは、摂食機能に障害があり誤嚥を起こしやすい事例に対して、飲み込みやすく必要栄養量を摂取できる食事である。その形態とテクスチャー的特徴の基準は厚生労働省によって定められ、日本介護食品協議会ではその基準に合わせて介護食品を4段階に区分し、ユニバーサルデザインフードとして市販している。現在数多くの介護食品が市販され、今後さらに需要は増加すると思われる。介護食品は我々一般市民が利用する可能性の高い食品である。そこで実態を知るために官能評価による調査を行った。
    【方法】 初めに、研究室において区分1~4の製品25食(8社)の試食を行った。その中から区分1~4の8食を選択し、20代7名と40~50代11名による官能評価を行った。パネルは実践女子大学調理学第3研究室ゼミ生および教職員、実践女子大学後援会メンバーである。質問項目は料理の外観の印象、口に入れた時の舌触り、付着性、咀嚼、のど越し、味付け、また食べたいか、などで区分によって質問項目を若干変えた。
    【結果】 25食の試食の結果、区分1はやわらかい食事程度であるが、区分が上がるにつれて具材が小さく刻まれ4はペースト状になり、全体として改善が必要との感想であった。官能評価の結果も約6割が再び食べたくない、であった。外観は区分が上がるにつれて茶色くドロドロした印象となり、悪い結果になった。しかし舌でつぶせるか、噛まずに飲み込めるか、などの咀嚼の程度や、のど越し、飲み込みやすさなどの評価は高かった。したがって全体の評価が低いのは、外観によるところが大きいと思われる。
  • 綾部 園子, 本間 千裕
    セッションID: 2P-58
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 咀嚼・嚥下機能の低下した方の介護食に適したハンバーグを開発する目的で、副材料と配合割合を変えて調製し、物性および嗜好性に及ぼす影響を検討している。先に、山芋入りのハンバーグが軟らかく凝集性が小さく、官能検査においても飲み込みやすいと評価されたことを報告した。今回は、真空調理法を用いて、加熱温度・時間および副材料が物性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】 試料はA:肉(牛豚合びき)+塩、B:A+卵、C:A+卵+牛乳+パン粉の3種とした。試料を混捏・成形・表面焼成後、プラスチック製袋に入れて脱気・シールして、加熱温度70℃・80℃・90℃・100℃、加熱時間30分・45分・60分間の12条件で一次加熱した。急速冷却後、冷蔵庫で一日保存し、二次加熱した試料について、重量変化率、保水率(3000rpm、30min遠心分離)および物性(テクスチャーアナライザー)の測定を行った。
    【結果】 重量変化率は試料Aで大きく100℃30分加熱が最大であった。一方、試料Cで小さく70℃30分加熱で最小であった。保水率は試料Aで低く、試料Cで高かった。試料Cは重量保持率が高く保水率も高かった。肉の硬さは試料Aで硬く、試料Cで軟らかかった。肉の硬さと重量保持率の間には負の相関(r=0.73)が認められた。重量保持率と保水率の積が最大となる加熱条件は試料によって異なり、試料Aでは70℃、試料Bでは90℃で大きかった。試料Cは加熱温度による違いが少なかった。試料Cは卵やパン粉などの保水性の高い材料の添加により軟らかく重量保持率も高く、加熱温度や時間の影響が小さかった。
  • 米浪 直子, 松澤 ちひろ, 福島 史乃, 吉田 紗由美, 後藤 文子, 吉野 世美子, 伊藤 知子
    セッションID: 2P-59
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 デンプンはブラマンジェ、カスタードクリーム、くず湯などの調理をはじめ、咀しゃく・嚥下障害に応じたトロミづけに利用されている。本研究では、ブラマンジェ様デンプンゲルを調製し、タンパク質、脂質の添加条件による物性の違いについて検討し、官能検査により嗜好性について評価した。
    【方法】 コーンスターチ8%(w/w)にスクロース8%(w/w)、水または牛乳を加えて、加熱糊化させ、ブラマンジェ様デンプンゲルを調製してクリープメータ(山電 RE2‐3305S)で物性を測定した。タンパク質と脂質の影響を検討するためにブラマンジェ様デンプンゲルにスキムミルク、生クリームを添加して同様にゲルを調製し、物性を測定した。健康な高齢者(平均年齢76才)12名と女子大生46名を対象に官能検査を行った。
    【結果】 牛乳を添加したデンプンゲルは水添加のものに比べて破断強度、かたさ、付着性が増す傾向が認められた。タンパク質添加に伴い、かたさ、凝集性が増し、脂質添加に伴い、かたさ、付着性は減少し、凝集性は増加する傾向が認められた。女子大生の官能検査の結果、かたさと付着性でクリープメータとの有意な相関が得られ、食べやすさについては、女子大生では低タンパク高脂肪のデンプンゲルを食べやすいとした人が多く、有意差(p<0.05)が認められたが、高齢者では有意差は認められなかった。以上のことから、ブラマンジェ様デンプンゲルに生クリームなどの脂質を添加することにより、食べやすいテクスチャーに改良できることが示唆された。しかしながら、高齢者ではさらに検討する必要がある。
  • 山田 恭正, 喜多 晃子, 小泉 亜希子, 山根 美保
    セッションID: 2P-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】最近、高齢者が咀嚼し易い食べ物として、また携帯に便利な食物として寒天、ゼラチン、カラギーナンなどを用いたゲル状食品が用いられるようになって来た。しかし、加工・調理に使用される食品用フレーバーのゲル中における挙動、特に拡散現象に関する基礎的な研究はほとんど行われていない。そこでバニリンなどのフレーバーを取り上げて、寒天ゲル中における拡散現象をFID-GCおよびGCMSにより追跡することを目的とした。
    【方法】バニリンをエタノールに溶解し、滅菌した寒天溶液に無菌的に添加して撹拌後、円筒形のシリンダーに流し込んで固化させた。(寒天第1層)次に、この上へ1.5%寒天のみを無菌的に重層して固化させた。(寒天第2層)これを一定期間置いた後、プランジャーで寒天第2層を押しだして薄片(厚さ5mm)を切り出した。各薄片を摩砕してからエタノールで抽出し、FID-GCおよびGCMSでフレーバーを同定して拡散距離に対するフレーバーの濃度を求めた。
    【結果】フレーバーを寒天第2層中に充分拡散させるために最長4ケ月間、無菌的にシリンダー内で寒天をインキュベーションし、FID-GCでオイゲノールを内部標準としてバニリンを定量した。寒天第2層までフレーバーが拡散していることが確認された。第1層との界面からの距離が1.0cmまでは急激に濃度が減少したが、1.0cmから3.5cmの間では距離に応じて濃度が直線近似的にゆるやかに減少した。
  • 井上 悠季, 平野 有香, 森高 初惠
    セッションID: 2P-61
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
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    【目的】 超高齢社会へと移行している日本では、身体機能の低下した高齢者による誤嚥の問題が深刻となっている。嚥下は咀嚼後の食塊の物性と深い関係にあるため、咽頭部での食塊の移動特性と食塊の物性との関連性を研究することは、嚥下について考える上で重要である。これまで、寒天ゲルとゼラチンゲルについて咀嚼回数、摂取量と咽頭部での食塊の移動特性について検討してきた。食塊の移動速度は、寒天ゲルでは摂取量が多く、咀嚼回数の少ない硬いゲルで高く、ゼラチンゲルでは摂取量が少なく、咀嚼回数の多いゾル状のものが高い値を示した。このように試料の状態は異なっていても、食塊の移動速度は両ゲルともに上昇したが、飲み込む時の頬や喉の筋肉の力の入れ方には差が見られると考えられる。咀嚼・嚥下時の一連の筋肉の運動強度を解析することにより、筋活動量、咀嚼後の試料の状態および飲み込みやすさとの関係性について検討した。
    【方法】 筋電位計を用いて、咀嚼・嚥下時の咀嚼筋・嚥下筋の動きを測定した。筋肉の筋活動量は区間面積として解析した。試料は、1.0%寒天ゲル、3.0%ゼラチンゲルを用い、摂取量を各々3、6、9、12gとした。咀嚼条件は、自由咀嚼、5回、10回、30回、50回咀嚼とした。自由咀嚼では、各摂取量の試料嚥下直前までに、何回咀嚼を行ったかを計測した。
    【結果】 同一咀嚼回数において、摂取量ごとに見ると、摂取量が大きくなるにつれて、咀嚼筋の区間面積は大きくなった。同一摂取量において、咀嚼回数ごとに見ると、咀嚼回数が増加するにつれて、咀嚼筋の区間面積は小さくなった。自由咀嚼の場合、嚥下までに要した咀嚼回数において、摂取量が増加するにつれて、咀嚼回数も増加した。
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