自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
60 巻, 4 号
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第75回日本自律神経学会総会
  • 大平 英樹
    2023 年 60 巻 4 号 p. 144-150
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    意思決定とは価値に基づく行動の選択であり,脳の線条体,眼窩前頭皮質,前部帯上皮質などがその機能を担っていると考えられている.一方,自律神経の活動は意思決定において重要な役割を果たす.選択肢と結果の随伴確率により自律神経活動が修飾されること,アドレナリン分泌に反映される身体の覚醒状態が島皮質の活動を媒介として探索的な意思決定を促進すること,などが示されている.近年,認知神経科学において優勢となっている予測的処理の理論は,こうした意思決定を支える脳と自律神経の機能を統一的に説明する可能性を持っている.本稿では,この問題に関連する研究知見と,そこでの脳と身体の機能を表現する計算論モデルを紹介する.

  • 橋本 洋一郎
    2023 年 60 巻 4 号 p. 155-160
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    国際頭痛分類では第1版(1988年)から低髄液圧,あるいは低髄圧性頭痛が示されている.第3版(2013年β版,2018年)では典型的起立性頭痛で明らかな原因のない患者において,体位性頻脈症候群を除外した後に,自家血腰椎硬膜外注入療法を施行することは臨床診療において理にかなっていると記載された.2007年に脳脊髄液減少症ガイドライン2007,2011年に脳脊髄液漏出症の画像診断判定基準・画像診断基準,2019年に脳脊髄液漏出症診療指針が出された.頭痛の診療ガイドライン2021に低髄液圧による頭痛はどのように診断し治療するかという項目が取り上げられた.脳脊髄液減少症/脳脊髄液漏出症を低髄液圧による頭痛としてガイドラインに記載され低髄液圧および/または脳脊髄液漏出に続発する起立性頭痛を特徴とする臨床状態と定義して,診断・治療を進めていく道筋が示されている.

  • ―進化するMRIと読影法―
    大澤 威一郎
    2023 年 60 巻 4 号 p. 161-171
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    脳脊髄液減少症の診断は難しく,その理由の1つに多彩な画像所見がある.MRIの進歩は目覚ましく,新たな知見が次々と生まれている.これがまた画像所見の複雑さに拍車をかける要因となっており,過去と最新の知見を今一度整理する必要がある.本疾患のMRI所見は,脊髄と頭部の2つに大きく分けられる.脊髄MRIでは主に脳脊髄液の漏出を,頭部MRIではそれによる2次的変化を評価する.漏出の特徴的なsignとして,floating dural sac sign (FDSS)やNarwhal signなどがある.いずれの領域にもMRIの進化は恩恵をもたらし,ここでは3D撮像とFLAIR像の2つを取り上げる.診断に適したMRI所見を得るには,適切な撮像法の選択が必須になる.しかし,実際には不十分な撮像法のことも少なからずある.本稿では,このような困難な状況下でも可能な限り診断へ導くための診断ポイントを解説する.

  • 平井 利明, 黒岩 義之
    2023 年 60 巻 4 号 p. 172-180
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    脳室周囲器官(circumventricular organs,CVOs)は血管に富むが血液脳関門を欠き,生命の恒常性を制御する重要な器官である.CVOsには感覚性CVOsと分泌性CVOsがある.前者には脳弓下器官,終板脈管器官,最後野があり,それらによって感知されるアンギオテンシンIIやNaイオン濃度などの環境ストレスシグナルは,視床下部室傍核に神経伝達される.後者には神経下垂体,松果体,交連下器官,正中隆起があり,ホルモン分泌機能を介して体液・浸透圧,睡眠・性ホルモン,免疫・エネルギー代謝,摂食行動などの調節を担う.脈絡叢は厳密にはCVOsに含まれないが,自律神経の支配によって脳脊髄液を分泌し,COVID-19の障害器官としても重要である.黒岩らはCVOsと視床下部の制御破綻によっておこる病態を脳室周囲器官制御破綻症候群あるいは視床下部症候群と呼ぶことを提唱し,これについても概説する.

ミニレヴュー
  • 榊原 隆次
    2023 年 60 巻 4 号 p. 182-185
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    重症筋無力症(MG)は,神経筋接合部の自己免疫性疾患である.MGでは通常,眼瞼下垂・複視・四肢嚥下呼吸筋の麻痺・筋力低下等が主訴となり,排尿障害が患者から訴えられることは稀である.一方,著者らの検討では,軽度~中等度の全身型MG患者の約30%に排尿障害がみられ,健常対照群よりも有意に高頻度であり,生活の質(QOL)の障害も高頻度にみられた.内容は,女性患者では腹圧性尿失禁が多く,MGによる骨盤底筋・外括約筋群の脆弱化が疑われた.一方,男性患者では過活動膀胱が多く,MG治療薬の副作用(ステロイドによる多尿,抗コリンエステラーゼ薬[排尿障害治療薬でもある]による膀胱刺激)も考えられた.以上から,MGでは,骨盤底筋・外括約筋の障害などによる排尿障害がみられる場合がある.特に腹圧性尿失禁は,MGの女性患者では,注目すべき症候の一つであると思われる.

原 著
  • 松山 実緒, 吉岡 優海, 堀内 城司
    2023 年 60 巻 4 号 p. 186-191
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/25
    ジャーナル フリー

    アナフィラキシー低血圧時の圧受容器反射(圧反射)や交感神経出力は抑制されるという報告の一方,圧反射機能は亢進するという相反する報告がされている.本研究では,麻酔下ラットを用いてアナフィラキシー反応時の心血管反応および腎臓交感神経活動の変化を検証した.卵白アルブミン(OVA)による感作を行ったOVA感作群では,OVA再感作によりアナフィラキシー反応の初期段階において圧反射に基づく心拍数および交感神経活動の増加反応に有意な抑制が見られた.さらに,意識下ラットを用いてOVA再感作によってアナフィラキシー低血圧を誘発した際の心血管反応と延髄内の神経興奮性を検証した結果,血圧の著しい低下に伴う心拍数の増加および圧反射の中枢である吻側延髄腹側野に分布するニューロンの興奮性が対照群に比べ抑制されていた.以上の結果から,アナフィラキシー低血圧時の圧反射機能は中枢性に抑制されている可能性が示唆された.

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