理学療法学Supplement
Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
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理学療法基礎系
  • 波之平 晃一郎, 井上 達朗, 松居 和寛, 村上 まゆ, 戸口田 武史, 土田 和可子, 河原 裕美, 藤村 昌彦, 弓削 類
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 213
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】腰痛の予防方法については,様々報告されている.その方法の1つとして,スタティック・ストレッチ(以下,ストレッチ)がある.しかしながら,ストレッチの効果判定において,質的な変化を報告しているものは少ない.本研究では,ストレッチ前後での立位体前屈距離(Finger Floor Distance;以下,FFD),その際の筋活動量,腰痛の指標となる屈曲弛緩現象(Flexion Relaxation-phenomenon;以下,FRP現象)時の筋活動量,および立位時の骨盤傾斜角度の変化から,ストレッチ効果を検討した.

    【方法】腰痛の既往の無い健常人男性20名(年齢:22.9±2.2歳,身長:169.8±5.6cm,体重:60.3±5.1kg)を対象とした.電極は,腰部傍脊柱筋に設置した.ストレッチは,背臥位の状態で臥床させ,その後,股・膝関節および体幹を屈曲させ,痛みがなく屈曲を行える肢位を2分間保持させる方法にて実施した.ストレッチ群は,ストレッチ前に静止立位写真を3回撮影し,FFDおよびその際の筋放電量も3回計測した.ストレッチ後,同様な手順で計測した.また,コントロール群には,ストレッチ時間と同じ時間の休憩をあたえ,休憩前後で同様な計測を行った.解析は,各項目3回の加算平均した後,対応のあるT検定行い,Spearmanの順位相関係数にて相関を求めた.

    【結果】コントロール群の前後比較においては,FFD変化量のみ有意差があった.ストレッチ群の前後比較においては,FFD変化量,立位体前屈時およびFRP現象時の筋放電変化量に有意差があった.コントロール群とストレッチ群の変化量の比較では,FFD変化量・立位体前屈時およびFRP現象時の筋活動量に有意差があった.骨盤傾斜角度変化は,すべてにおいて有意差がなかった.FFDと立位体幹前屈動作時およびFRP現象時の筋活動量の相関性はなかった.

    【考察】FFDは,ストレッチを行うことにより著明に増大することが確認された.FFDおよび立位体前屈動作時の筋活動の相関性がないことより,ストレッチは効果があるものの個人差があり,一定の基準がないことが示唆された.これは,個人によって体幹筋の柔軟性および組織構成に違いがあるために,筋放電量に影響が生じたものと考えられる.さらに,ストレッチ後の筋放電量は,実施前の80%以下にならないことが示された.今後は,同様の方法を用いて,腰痛患者の変化を検討していきたいと考えている.
  • 体幹屈曲角度の違いによる変化
    石田 裕保, 堀 信宏, 大場 かおり, 長谷部 武久, 山田 みゆき, 河合 克尚, 藤橋 雄一郎, 曽田 直樹, 田島 嘉人
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 214
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】腹筋群の強化は,様々な疾患に対し運動療法の一部として実施されていることが多い。中でも腹直筋は,起き上がり,寝返り,歩行などの基本動作時に大切な働きを担っている。本研究では,「腹筋運動」いわゆる「腹筋を使った起き上がり」を3つに区切ったものを各課題とし,上部・中部・下部腹直筋がどのように働いているか筋電図学的に分析し比較検討することを目的とし,若干の考察を加え報告する。
    【方法】対象は,健常成人男性11名(年齢23.3±6.0歳,身長170.3±4.5cm,体重62.5±6.6kg,BMI21.5±1.9kg/m 2)とした。腹筋運動を,課題A:背臥位から頸部を屈曲させ床から離れるところで保持,課題B:肩甲骨下角が床から離れるところで保持,課題C:第4腰椎が床から離れるところで保持,の3課題に分け,各課題時に表面筋電図を測定した。導出筋は右側の上部腹直筋,中部腹直筋,下部腹直筋とした。電極貼付部位は,上部腹直筋が臍より5cm上方で白線より3cm外側,中部が臍の高さで白線より外側3cm,下部が臍より5cm下方で白線より3cm外側とした。筋電計はMyoSystem1200のMyoResarch2.02を用いた。表面筋電図信号はA/D変換しコンピュータに取り込み,積分値(IEMG)を求めた。はじめに上部と中部,下部腹直筋の最大等尺性収縮(MVC)を5秒間施行し,同時に筋電図を記録した。次に各課題時に得られた腹直筋筋電図のIEMGをMVCの積分値で補正した相対値(%MVC)を算出して腹直筋の上部・中部・下部の値を比較検討した。また,各筋に分け課題間の比較も行なった。統計学的処理にはSPSS13.0 for Windowsを用い Tukeyの多重比較を行なった。有意水準は5%未満とした。
    【結果】各腹直筋の%MVCは課題Aで最も低い値であり,課題B,Cと増大する傾向が見られた。但し上部腹直筋に関しては,課題BとCの間に有意な差は認められなかった。また,課題Cで下部腹直筋は上部腹直筋に比べて有意に高い値を示した。
    【考察】課題Aより順次%MVCが増加していくのは,運動軸が頭側から尾側に移動し離床部分が多くなり腹直筋にかかる負荷量が増大した事が原因として考えられた。また,課題Aで%MVCが低い値となったのは,頭部を離床させる時,主に胸鎖乳突筋が働き,腹直筋は胸郭の固定に働いたためと考えられた。最後に上部腹直筋は課題BとCで大きな変化がなかったこと,課題Cで下部腹直筋が上部腹直筋に対し有意に高くなったことは,腱画に区切られている腹直筋が一様な収縮をしないことを示唆した。
    【まとめ】各腹直筋の働きは異なり,その要因を解明していくことでより効果的な筋力増強が可能になる。また,効果的な起き上がりなど基本的動作訓練が行えると考える。
  • 探索前後の閉眼片脚立位保持時間の変化による検討
    三上 恭平, 野中 一成, 小倉 隆輔
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 215
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】臨床では下肢関節可動域制限が立位バランスの低下に影響を与える例が散見される。また可動域改善後も、すぐには能動的動作に汎化しない例も多い。星は足関節運動に制限がある場合の戦略の変化から、運動戦略の決定が個人の内的環境によってもなされることを述べている。そこで本研究では、探索段階で運動戦略が決定されるのではないかという仮説を立て、足底探索課題時の足関節内外反制動の有無が身体図式に与える影響について、閉眼片脚立位保持時間を用い検討することとした。
    【方法】対象は研究の趣旨に同意を得た健常成人12名(男性7名 女性5名 年齢27.1±23)。試行は探索時にテーピング(幅38mm 非伸縮性テープ)で固定をした場合(固定時)としない場合(非固定時)の2回行い、探索前後で閉眼片脚立位保持時間の測定を3回ずつ行った。なお固定は探索時のみとした。テーピングは1.第5中足骨頭~内果~外果 2.第1中足骨頭~外果~内果 3.第1中足骨頭背側~第5中足骨頭背側の3本を用い、足関節内外反制動を行った。探索が阻害されないよう足底へのテープは通さなかった。被検脚は任意側とし、保持時間の計測はストップウォッチにて行った。探索課題として、太さ6mmのロープを踵から第2指に通るように設定し「ロープの丸みを感じるよう探索してください」と指示し、閉眼立位にて1分間行った。統計処理には対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付き順位検定を用い、5%未満を有意水準として行った。
    【結果】足関節制動率は内反42.5%、外反38.6%であった。探索前後による保持時間の変化は、非固定時では探索前3回の平均値と探索後1回目との間で有意な向上を示したが、固定時では有意差を示さなかった。また探索後平均値は探索前平均値に比べ両試行とも高い傾向を示した。非固定時では探索後1回目~3回目にかけ徐々に低下していく傾向を示した(65.3秒→48.7秒→44.2秒)が、固定時では徐々に向上していく傾向を示した(38.4秒→44.6秒→52.7秒)。しかし探索後各回の間では有意差を示さなかった。
    【考察】Neisserは知覚循環理論の中で、知覚活動は環境及び知覚者自身の情報ももたらすと述べている。本研究の固定時では1分間という時間の中で探索活動を繰り返し、足関節運動制限のある身体図式に修正がなされたと考えられる。それにより固定時の探索後1回目では姿勢応答における足関節戦略の比重が減少し、有意な向上が見られなかったのではないかと考えられる。また固定時で探索後1回目~3回目にかけ増加する傾向が見られたのは、足関節運動制限の中で構築された身体図式の影響が探索後1回目で最も大きくみられた結果と考えられる。それに対し非固定時では、探索による足底刺激増加の効果が探索後1回目で最も大きく見られた結果、有意な向上を示したと考えられる。しかし今回の研究では、立位保持時間のみの測定であり戦略の変化は予測にすぎないため、今後検討が必要である。
  • 周期的な聴覚刺激に対するタッピング様式の相違による検討
    伊藤 正憲, 嘉戸 直樹, 岩城 隆久, 藤原 聡, 鈴木 俊明, 嶋田 智明
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 216
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】本研究は、周期的な聴覚刺激の呈示に対する同期タッピング課題と分割タッピング課題における同期誤差の誤差変動を比較し、運動と刺激の時間的誤差の自覚的な認識の有無が、時間的予測に基づく運動出力と運動の自動化に及ぼす影響について検討することを目的とした。
    【対象と方法】本研究の趣旨を理解し、参加に同意の得られた右利きの健常者6名、平均年齢25.8±5.6歳を対象とした。対象者を周期的な聴覚刺激に同期してタッピングする群(synchronization tapping:以下ST)と周期的な聴覚刺激に対して刺激と刺激の中間でタッピングする群(division tapping:以下DT)に振り分けた。聴覚刺激の入力にはViking Quest(Nicolet)、タッピングの記録にはスイッチセンサー(キッセイコムテック株式会社)を用いた。被験者は椅子座位とし、右示指をスイッチセンサーに位置させた。聴覚刺激の刺激条件は、刺激頻度1Hz、刺激強度70dB、刺激周波数1KHzとし、刺激の入力にはヘッドホンを用いた。60回のタッピングを1試行とし、各被験者に5試行実施した。ST群は入力された聴覚刺激とタッピングのずれを同期誤差として算出し、DT群は刺激と刺激の中間である目標値とタッピングのずれを同期誤差として算出した。得られたデータより両群の同期誤差の誤差変動を算出した。最初の1試行を除く合計4試行を検討の対象とし、4試行の平均値をもって個人の代表値とした。検討項目は、両群におけるタッピングの誤差変動の差とした。統計処理には対応のないt検定を用いた。
    【結果】ST群とDT群の誤差変動に有意な差は認められなかったが、DT群はST群と比較して誤差変動が小さくなる傾向を示した。
    【考察】ST群とDT群における課題特性は、周期的に入力される聴覚刺激に基づいて刺激の時間間隔を認識するという点では共通しているが、入力される聴覚刺激と運動の時間的誤差を自覚的に認識することが可能かどうかという点で相違がある。今回の結果より、ST群のような聴覚刺激と運動の誤差の認識に基づいた運動の出力は、運動の自動化を阻害する可能性が推察される。刺激の時間間隔を認識している状況下では、外部刺激によって運動を修正するより内部刺激に基づく自己ペースな運動の方が、運動の自動化にとっては有益であることが推察される。
  • 陸上選手における運動イメージとパフォーマンスの効果について
    渡邊 愛子, 山手 千里
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 217
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Jeammerodや森岡らにおいて、運動イメージの有効性についてさまざまな報告がされている。パフォーマンスに及ぼすmoter imagery(以下MI)のうち、外的イメージと内的イメージでは後者において重要であるとされている。スポーツ分野では、新しい運動技術やフォームの修正・向上などに有効とされ、今回、陸上選手を被験者とし、動画を手がかりにした外的イメージから内的イメージへの変換過程がパフォーマンスの修正に及ぼす影響について検討した。
    【対象】陸上経験5年以上の健常陸上選手25歳女性。安静時心拍数(単位:回/分)62。
    【方法】MI訓練前に外的イメージとして用いる動画は、模範とする選手のフォームとし、それを基に修正するフォームを設定した。MI訓練中は外的イメージにより得られたフォームを内的イメージにて想起させ加速するよう指示を与え、MI訓練後、実際に走行させ、動画を撮影し被験者のパフォーマンスを確認した。また、内的イメージ想起の指標として、ジョギングレベル時と加速時の心拍数を走行時とイメージ想起訓練時のそれぞれで測定し、MI訓練前,MI訓練中およびMI訓練後の3条件にて心拍数の測定を行い、比較検討した。動画撮影にはOLYMPUS750、心拍数測定にはNIKEWATCHを使用。
    【結果】安静時心拍数62、訓練前(1)ジョギングレベル時100、(2)加速時124。訓練中(1)72、(2)81、訓練後(1)96、(2)114であった。パフォーマンスの変化としては、被験者が修正フォームとして設定したフォームに変化が得られた。訓練終了後被験者より、訓練中において「地面に足が接地する感覚が得られた」等の内省報告が得られた。
    【考察】今回、陸上選手に対しMIを用いることで走行フォームを改善させることが可能であった。パフォーマンスの変化が得られた要因として内的イメージ時に心拍数が上昇していること及び実験後上記の内省報告が得られており、活動時と同様の筋感覚を得ることが可能であったことが考えられる。この内的イメージに対し内藤は、スポーツ選手において前頭前野や一次運動野を活動させイメージ想起することに優れていることや、運動を学習し、運動を脳内シミュレーションすることで使用される四肢に対応した運動領野の再現ネットワークが賦活することを明らかにしている。内省報告と心拍数上昇から内的イメージの鮮明性が得られ、MI訓練による運動領野の再現ネットワークの賦活が修正フォームを獲得する要因となったと考えられる。しかし、中込らにより、イメージ想起は個人差として前提条件があり、課題に対する先行体験の有無やイメージ能力が影響すると報告されており、今回MI訓練時の心拍数の変化が少なかったことから、被験者のイメージ想起の経験不足による内的イメージの鮮明性の低下が考えられる。
  • 岩城 隆久, 嘉戸 直樹, 伊藤 正憲, 鈴木 俊明
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 218
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】学習を向上させるには結果の知識(knowledge of results:KR)が必要である。運動学習においてKRのタイプや付与する時期、回数などは学習に影響を与えると言われている。そこで今回、KR頻度が握力学習に与える影響について検討している。
    【方法】対象は、本研究の参加に同意を得た健常人23名(男性16名、女性7名、年齢25.3±2.1歳)とした。本研究では被験者の利き手最大握力の50%握力を目標値とした。KRは目標値の上下2%誤差範囲を正答KRとし、その範囲内の試行であれば「正答」、目標値より低い場合は「下」、目標値より高い場合は「上」という言語的KRを用いた。対象者は学習の全試行にKRを付与する群(100%KR群)、2試行に1回KRを付与する群(50%KR群)、3試行に1回KRを付与する群(33%KR群)、KRを付与しない群(0%KR群)に無作為に分けた。実験手順は学習前試行、学習試行、学習後試行の順に行った。学習前試行はKR付与のない状態で目標値握力を5試行し、次の学習試行では4種類の異なるKR付与頻度条件に準じて10試行を3セット行い、その後、学習後試行は学習前試行と同様に5試行実施した。握力測定はデジタル握力計GRIP-D(竹井機器工業株式会社)を使用し、文部科学省の体力測定における握力測定法に準じて実施した。学習前・後試行の目標値と実測値とのずれとしてConstant Error(CE)を算出し、目標値に対するパーセンテージとなるようにNormalized Constant Error(NCE)への正規化を行った。統計学的分析は一元配置分析法と多重比較検定法(Tukey‐Kramer法)を用いた。
    【結果】学習前試行の群間比較は有意差を認めず、各条件の学習効果の比較は意味のあるものと言える。学習後試行のNCEは50%KR群、33%KR群、100%KR群、0%KR群の順に小さいことが示された。なお、50%KR群と0%KR群のみ有意差(p<0.05)を認めた。
    【考察】結果から学習を向上させるには言語的KRが必要であるため、0%KR群は学習として成立せず、基準の無い予測のみで試行していることになる。100%KR群は学習試行中の過剰なKRによってKRに依存的になるため、学習に必要な内的モデルとの照合と誤差の検出が不十分となり学習が進まないという傾向を示した。50%KR群に関してKRの付与が有効的に働いたと推測された。学習の成立には、まず内部モデルによって試行し、KRの付与によって内的モデルで試行した運動感覚との照合、誤差の検出を行う。そして新たに内部モデルを修正し、次の試行へと進む。50%KR群は2試行に1回のKR付与であるため、内的モデルとKRの確認が交互に行われ、より正確な学習が効率的に強化されたと考えられた。
  • 千鳥 司浩, 平井 達也, 村田 薫克, 下野 俊哉
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 219
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】術後の症例は術侵襲による疼痛や疼痛に対する不安から十分な筋出力が発揮できないことが少なくない。こうした筋出力不全を呈する症例では反射性抑制などの神経生理学的な影響だけではなく、筋収縮を行う上での運動イメージが変容し、筋収縮が困難になっていることが考えられる。本研究では運動イメージを想起する作業が即時的な筋出力に及ぼす影響について検討した。
    【対象】ACL再建術(BTB)を施行した患者8名(男3名、女5名)を参加者とした。平均年齢20.9±5.7歳、平均身長164.7±5.2cm、平均体重67.4±21.7kgであった。すべての患者に本研究の主旨を十分に説明し、同意を得た。
    【方法】すべての患者は術後スケジュールに沿い、術後2週より5日間にわたり膝90度屈曲位にて疼痛の許容範囲内で膝伸展筋の等尺性最大収縮の筋力強化練習を30分間行った。毎回の筋力強化練習直後にHand Held Dynamometerにて練習時と同肢位における膝伸展筋の最大等尺性筋力を3回測定し、最大値を代表値とした。同時に膝伸展筋力発揮時の主観的疼痛強度をVASにて測定した。運動イメージを想起する介入は5日目の筋力強化練習の終了直後に行った。介入の方法は精度の高い運動イメージを形成させることを目的に健側の筋収縮における感覚を言語化し、そのイメージを患側に転移させ、比較照合する作業を繰り返し行った。また言語化を援助するために筋収縮の感覚を物に例える隠喩や擬態語で表現するように指示し、筋感覚を符号化する手続きを20分間行い、その直後に筋力とVASについて介入前と同様の測定を行った。分析はデータ収集初回の筋力値、VASの値を基準値として、2~5日および介入後の値の変化率(%)を算出し、標準化を行った。統計学的分析には一元配置分散分析、多重比較検定(Scheffe)を用い、有意水準を5%未満とした。
    【結果】2~5日の練習後の筋力には変化が認められなかった。一方、5日目における筋力の増加は平均32.4±24.9%、その直後の介入では平均81.3±30.6%であり、介入による有意な筋力増強の効果が確認できた。またVASは介入前後における変化は認められず、介入により疼痛が減少もしくは変化のないものが7例であった。介入後はすべての者が身体に生じる筋収縮の感覚について言語化することができ、筋出力の増大を実感した内省報告が得られた。
    【考察】運動イメージ想起の介入直後では筋出力が増加し、疼痛の増大は認められなかった。このことより介入前における筋出力の低下は疼痛強度とは直接的な関係がないことが示唆された。今回の即時的な筋出力の増加は健側の運動イメージを参照することで、術侵襲により変容していた筋収縮イメージが修正され、運動ユニットの動員、発射頻度そして同期化による神経性の要因が変化を起こしたものと考える。
  • 加速度計を用いた平均情報量の算出による検討
    奥埜 博之, 福本 貴彦, 中野 英樹, 三鬼 健太, 信迫 悟志, 塚本 芳久, 森岡 周
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 220
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】動作の円滑さを客観的に示す指標として、小島ら(2006)は動作中の加速度変化の周波数解析結果を、確率曲線に見立てて算出する平均情報量(entropy)を用いることで、加速度計単独で動作の円滑さを客観的に示す視標になりえることを報告している。平均情報量とは、ある事象における情報の無秩序さ・あいまいさ・不確実さをあらわす尺度であり、運動中の平均情報量が高値を示すほど「なめらかさ」が損なわれていることを意味する。先行研究において、若年健常者と高齢者の検討やパーキンソン病患者での検討、外部の対象物の違いによる検討が行われているが、感覚情報の変換過程による違いは十分検討されていない。そこで、今回は視覚誘導性の課題と視覚情報から体性感覚情報への変換課題において、運動の「なめらかさ」ついて検討したので報告する。
    【方法】本研究に同意を得た20代の健常者10名が実験に参加した。開始肢位は躯幹座位にて下腿下垂位で行い、課題1、2ともに外部観察上同様の運動となるように設定した。プロトコールは実験者の合図を基に任意に行なうものとした。課題1;目標点(膝が完全伸展位となる位置)につま先をあわせるように膝の伸展運動を行う。(視覚誘導性課題)課題2;閉眼にて股関節・膝関節・足関節が一直線上になるよう指示し、膝の伸展運動を行う。(視覚情報から体性感覚情報への変換課題)あらかじめ、脛骨外果に3軸加速度センサー(MicroStone社製)を取り付け、運動中の5秒間をサンプリング周波数100Hzにて測定した。得られた3軸の加速度データの二乗平方根和を算出したものを解析の対象とし、高速フーリエ変換にて周波数解析し、平均情報量を算出した。課題1と課題2の比較に関してはWilcoxon signed-rank testを用いて、それぞれ5施行の平均値を用いて行なった。統計処理計算は、Dr.SPSS2(SPSS社製)を用い、周波数解析および平均情報量の算出にはTRIAS(DKH社製)を用いた。
    【結果】平均情報量を用いたなめらかさは、課題1は4.05±0.54(bit)、課題2は4.30±0.54(bit)と課題1が課題2と比較して有意になめらかな運動であった(p<0.05)。
    【考察】課題1の平均情報量が有意に低かったことから、課題2よりも1がなめらかな運動であることが判明した。これは視覚誘導性課題がなめらかに遂行可能であったことを示しており、健常者を対象にした場合は、視覚座標系から関節座標系への座標変換とそれに基づく運動の出力が非常に円滑に行なわれていると考えられる。課題2のなめらかさが損なわれた要因としては、視覚を遮断することによって視覚情報を体性感覚情報へと変換する過程が困難であったと考えられ、このような情報処理過程の違いが運動のなめらかさに影響を及ぼすことが示唆された。
  • 小松 由実, 大平 雄一, 大西 和弘, 西田 宗幹
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 221
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【はじめに】
    近年の脳イメージング研究により運動イメージの脳内表象が明らかになっている。日常生活動作には単純な運動制御のみではなく、運動の認知的制御が要求される。高齢者では運動制御そのものよりも、運動の認知的制御における能力が低下することが明らかになっている(Welford,1982)。また、運動の認知的制御を要求される行為は単純な運動制御に比べて小脳が賦活することが報告されている(Kim,1994)。運動イメージにおける時間的側面の評価指標として心的時間測定法がある。心的時間が運動実行時間と一致し心的時間においてもFittsの法則が認められる(Decety,1996)。加齢による運動の認知的制御における心的時間への影響を検討した報告は極めて少ないのが現状である。本研究では、加齢と運動の認知的制御における心的時間との関係について調査することを目的とした。
    【対象及び方法】
    対象は21歳~71歳の健常者63名(男性22名、女性42名)とした。各年代の内訳は20代35名、30代5名、40代6名、50代6名、60代10名、70代1名であった。
    運動課題にはペグボード(酒井医療社製SOT-2101)を用い、単純運動課題(以下、単純運動)、認知的制御を要求される運動課題(以下、認知運動)を設定した。単純運動は10本のピンを単にボードの穴に挿す課題とし、認知運動は数字でマーキングされた10本のピンをボードの対応する数字の穴に挿す課題とした。デジタルストップウォッチを用い、それぞれ実際の運動実行時間、心的時間を測定した。心的時間は被験者の合図をもとに検者が測定した。各々の測定を3回実施しその平均値を採用した。運動実行時間と心的時間の一致度として心的時間/運動実行時間の比率を求めた。年齢と単純運動、認知運動の実効時間及び心的時間、一致度との関係にピアソンの相関係数を用い、有意水準5%とした。
    【結果】
    年齢と単純運動の実行時間には有意な相関関係は認められなかった。年齢と認知運動の実行時間には有意な正の相関関係を認めた(r=0.37, p<0.0025)。年齢と単純運動及び認知運動の心的時間には有意な相関関係は認めなかった。年齢と実行時間、心的時間の一致度との関係については、単純運動では有意な相関関係は認めないものの、認知運動では有意な負の相関関係を認めた(r=-0.29, p<0.022)。
    【考察】
    本研究結果より、認知運動の実行時間は加齢に伴い延長するのに対し、心的時間は加齢に伴う延長は認められず、実行時間と心的時間との間に乖離が生じていることが示唆された。そのため認知運動において実行時間と心的時間の一致度は加齢に伴い低下した。認知的な制御を必要とする環境、課題設定下での治療介入をする必要性があり、実際の運動機能と運動イメージのズレを認識することが重要であると考える。
  • 脳卒中片麻痺患者・健常青年・健常老人の比較
    森垣 浩一, 西村 聡二, 片岡 保憲, 八木 文雄
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 222
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    ヒトは空間にある目標物に対して到達運動が可能か否かを実際に運動することなく判断することができる.これは運動をせずとも運動中および運動後の自己身体位置を空間に表象できるためである.本研究の目的は,下肢の振り出し運動における到達距離の予測機能とその再現性が加齢および脳損傷により,どのように変化するかを検証することである.
    【方法】
    平行棒内歩行が可能な脳卒中片麻痺患者(以下片麻痺患者)9名(平均年齢74.22±12.06)と健常青年9名(平均年齢23±1.41)および健常老人9名(平均年齢73.22±9.27)を対象とした.著明な高次脳機能障害を有する者,または認知症を有し実験の内容を理解不能な者は対象から除外した.なお対象にはあらかじめ実験の内容を説明し同意を得た.測定はまず,両下肢を肩幅程度に離した静止立位から,バランスを崩したり跳んだりせずに最大限下肢を振り出した際に到達可能と感じる距離の予測を求め,これを予測距離とした.次に,予測距離を基準に,+5cm,+10cm,+15cm,+20cm,±0cm,-5cm,-10cm,-15cm,-20cmの位置を算出し,それぞれの地点に到達可能か否かという問題に解答させる課題を実施した.問題は全45問で,各地点が5問ずつ,ランダムに割り振られるよう設定した.問題の正誤の判断は,予測距離と同じ地点および予測距離よりも近づいた地点で「到達可能」,遠ざかった地点で「到達不可能」と回答することを正解とした.出題時は対象には閉眼を求め,回答時には開眼を求めた.最後に,実際の到達距離を測定した.なお,振り出す下肢は,片麻痺患者は非麻痺側とし,健常青年および健常老人は利き足とした.片麻痺患者の測定はすべて平行棒内で行い,歩行時にT-caneなどを使用している者には平行棒を把持させ測定した.
    予測距離と実際の到達距離との比較にはpaired t-testを用い分析した.また課題で得られた問題の正解数を問題数で除した値を正解率とし,課題の正解率の比較にはMann-Whitney検定を用い分析した.なお,有意水準は5%未満とした.
    【結果及び考察】
    予測距離と実際の到達距離の比較においては,片麻痺患者では有意差を認めたが(p<0.05),健常青年および健常老人では有意差を認めなかった.課題の正解率の比較では,片麻痺患者と健常青年(P<0.01),片麻痺患者と健常老人(p<0.05),健常青年と健常老人(p<0.05)において有意差を認め,健常青年が最も高値を示し,次いで健常老人,次いで片麻痺患者の順であった.
    以上の結果から,健常青年および健常老人に比べ,片麻痺患者は予測の精度とともに予測の再現性も低下していることが示唆された.また,健常者においても加齢に伴い予測の再現性が低下する可能性が考えられた.
  • 西上 智彦, 大迫 洋治, 田中 健二朗, 由利 和也, 石田 健司, 谷 俊一, 牛田 享宏
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 223
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】近年,保存療法に伴う四肢の不動化やそれに伴う廃用が痛みなどの感覚系の機能異常の原因となっていることが指摘されている.我々はこれまでに関節不動化モデルラットを用いた解析において,関節不動化(右手関節最大掌屈位にて固定)により,不動化側を歩行やグルーミングに使用せず,paw withdrawal reflexの閾値は対照群より低下することや不動化側の脊髄後角浅層におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin-gene related peptide:CGRP)の免疫反応性が低下することを明らかにしてきた.そこで本研究では,この脊髄後角浅層でのCGRPの免疫反応性の低下のメカニズムを明らかにする目的で,関節不動化によって脊髄後根神経節(dorsal root ganglion:DRG)ニューロンに生じるCGRP陽性細胞の量的・質的変化について免疫組織化学的解析を行った。
    【方法】8-10週齢のSD系雄性ラット7匹を用いた.関節不動化は右手関節を最大掌屈位としギプス固定を4週間行った.ギプス除去24時間後に4%パラホルムアルデヒドにて灌流固定し,C7,C8,Th1のDRGについて.12μmの凍結切片作成後にCGRP抗体にて免疫組織学的染色を施した.解析は乱数表を用いて無作為に100個の画像を健側,不動化側でそれぞれ抽出し,CGRP陽性細胞数を計数した.ついで,CGRP陽性細胞群の断面積を画像解析ソフトウェア(NIH Image)にて計測した.統計解析はCGRP陽性細胞数の差についてはStudent t-testを,CGRP陽性細胞群における断面積の分布の差についてはKolmogorov-Smirnov testをそれぞれ用いて健側と不動化側で比較した.なお,有意水準は5%未満とした.
    【結果と考察】CGRP陽性細胞数については,健側で279.5±33.7個,不動化側で282.7±33.5個であり,有意な差は認められなかったものの,不動化側のCGRP発現細胞は健側に比べて,有意に大型化していることが認められた(p<0.0001).これらのことから,関節不動化によりDRGレベルでCGRP発現細胞のサブポピュレーションの変化が誘導され,ひいては脊髄後角においてCGRPの免疫活性が低下することが示唆された。また,このようなDRGにおけるCGRP発現細胞のサブポピュレーションの変化は軸索切断モデル動物でも認められることから,関節不動化により発症するアロデニアや痛覚過敏症は軸索切断モデル動物と同様に脊髄後角深層や延髄後索核が関与している可能性が示唆され,今後,これらの解析により関節不動化による痛みのメカニズムを明らかにする必要がある.
  • 井上 貴行, 萩原 竜佑, 吉川 香菜, 沖田 実, 鈴木 重行
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 224
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々はラット足関節を4週間ギプス固定した後にギプスを除去し,再荷重を行うとヒラメ筋に筋線維損傷が発生し,再荷重の過程で伸張運動を行うとその発生が軽減されることを報告してきた.しかし,そのメカニズムは不明で,課題となっていた.一方,培養筋細胞を用いた先行研究では伸張運動によってheat shock protein(HSP)72が発現すると報告されており,そのファミリーであるHSP25は筋線維損傷の予防に作用するといわれている.そこで,本研究ではHSP72・25の発現に着目し,伸張運動による筋線維損傷の発生軽減効果のメカニズムを検討した.
    【方法】Wistar系雄性ラットを無処置の対照群(C群)と両側足関節を最大底屈位で4週間ギプス固定する実験群に振り分け,実験群は1)固定のみの群(I群),2)固定終了後にギプスを除去し,後肢を非荷重とした状態で4時間飼育する群(IH群),3)ギプス除去直後に伸張運動を行い,4時間飼育する群(ISH群),4)固定終了後にギプスを除去し,1,2,3,5,7日間通常飼育する群(NS群),5)同期間の通常飼育中にヒラメ筋に対し伸張運動を行う群(S群)に振り分けた.伸張運動には小動物用他動運動機器を用い,その日の足関節最大背屈角度から底屈方向へ40°の範囲で,4秒に1回のサイクルの足関節底背屈運動を1日30分間,固定除去直後から麻酔下で実施した.各群の実験終了後は両側ヒラメ筋を採取し,左側は正常筋線維数に対する壊死線維数の割合の計測に,右側はWestern blot法によるHSP72・25含有量の計測に用いた.なお,本実験は名古屋大学動物実験倫理委員会保健部会の承認を得て実施した.
    【結果】壊死線維がI群,IH群,ISH群に散見され, NS群ではその発生が顕著であった.一方,固定除去後1,2,7日目のS群の壊死線維数の割合はNS群よりも有意に低値であった.HSP72・25含有量はC群,I群,IH群,ISH群の4群間に有意差は認められず, NS群は固定除去後2日目から増加が認められた.また,S群のHSP72・25含有量は固定除去後も有意な変化はなく,各検索時期でNS群とS群を比較するとS群が低値であった.
    【考察】今回の結果より,本実験で用いた伸張運動の負荷ではHSP72・25の発現は認められないといえよう.そして,固定除去後の壊死線維の発生とHSP72・25の発現はNS群がSt群より顕著で,HSP72・25の発現は壊死線維の発生に準拠してみられる可能性が高いと思われた.これらのことから,伸張運動による筋線維損傷の発生軽減効果にHSP72とHSP25の発現が影響しているとは考えにくく,今後は他の因子について検討する必要がある.

  • 岩田 晃, 増原 光彦, 淵岡 聡, 奥田 邦晴
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 225
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】骨格筋の損傷は日常生活やスポーツ活動において、最も頻繁に遭遇する外傷とされているが、その治療法は十分に確立されていない。その理由の一つとして、筋損傷後に施す種々の治療法が、筋再生の促進に有効であることを証明するための科学的基準が十分に確立していないことが挙げられる。そこで、本研究は筋挫傷後の再生過程における筋組織および歩行動作の回復状態を観察することによって、その基準を作成することを目的とした。
    【方法】9週齢のウィスター系雄ラット32匹を実験動物とし、ラットは損傷後2日、7日、14日、21日に損傷群(4群)および、それぞれの時期に週齢を合わせたコントロール群(4群)の計8群に分けた(各群4匹)。筋損傷は、麻酔下で640gの重りを25cmの高さから下腿三頭筋の筋腹部に置いた直径1cmのプレートへ自由落下させるドロップ・マス法により誘導した。筋組織の観察は、摘出した下腿三頭筋に対してヘマトキシリン・エオジン染色を施し、光学顕微鏡にて観察した。筋横断面積は、筋摘出時の切片に含まれる全ての筋管細胞およびランダムに選択した200個の正常筋細胞を画像処理ソフトを用いて測定した。歩行動作の分析は、腓骨外側、外果、踵骨、第5中足骨の4点にマーキングしたラットを、分速20mに設定したトレッドミル上を歩行させ、デジタルビデオカメラ3台を用いて3方向から撮影して3次元動作解析を行った。統計処理に関して、まず筋管細胞の横断面積は分散分析後、TukeyのHSD分析を行い、また歩行動作の分析はt検定を用い、コントロール群の平均値±1SD以内に戻った場合を正常と定義した。
    【結果】筋損傷7日、14日、21日後の筋組織には再生筋である筋管細胞が観察され、その横断面積は損傷後7日で正常筋細胞の5割程度、14日で6割程度、21日で7割程度の回復を示した。歩行動作の分析では、損傷群の立脚期における足関節最大背屈角度および遊脚期における足関節最大背屈角度は、2日と7日後でコントロール群と比較して統計的に有意に高い値を示し、14日および21日後では正常レベルへの回復を認めた。同様に踵骨高の最小値は、挫傷後2日と7日でコントロール群と比較し有意に低い値を示したが、損傷後14日および21日では正常レベルに回復した。
    【考察】筋管細胞は損傷21日後にも観察され、その横断面積は正常筋細胞の7割程度の回復に留まったことから、この時点での筋の再生は完了していないことが分った。一方、歩行動作において損傷14日と21日後には、ほぼ正常状態に回復していたことから、動作の回復は組織の完全な再生に先行して生じることが明らかとなった。さらにこの両者の差が肉離れ等で頻発する再発を生み出す要因となる可能性を示唆するとともに、本研究の結果は筋損傷後に施す様々な治療法の有効性を判断する際の基準となりうる可能性も示した。
  • 骨髄由来細胞移植の有用性の検討
    井川 英明, 武田 正明, 佐々木 輝, 吉元 玲子, 真鍋 朋誉, 松本 昌也, 小川 和幸, 呉 樹亮, 河原 裕美, 弓削 類
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 226
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    脊髄損傷は重度の身体障害をもたらすが,これまで急性期のステロイド投与以外,根本的な治療法はなかった.また,リハビリテーションによる運動機能の回復にも限界があり,再生医療の応用が期待されている.骨髄中には,間葉系幹細胞などの成人幹細胞が存在し,これらを移植することにより,中枢神経系疾患の症状改善をもたらすことも報告されている.そこで本実験では,骨髄由来細胞を移植し,脊髄損傷モデルラットの運動機能改善を検討した.
    【方法】
    ラットの大腿骨および脛骨から骨髄細胞を採取し,増殖用培地にて,3週間培養した.Weight dropping methodにより挫傷性脊髄損傷モデルを作製し,損傷直後に尾静脈に培養細胞を移植し,これを移植群とした.またコントロール群は生理食塩水を注入した.移植群とコントロール群の運動機能を移植後1~7,14,21日に観察・評価した.評価方法は,Basso-Beattle-Bresnahan(BBB) locomotor rating scale,およびInclined plane methodにより測定した.21日間の評価終了後,ラットの灌流固定を行い,脳および脊髄を一塊として摘出した.損傷部脊髄の切片を水平断で切り取り,移植細胞の生着率と各組織のアポトーシスを観察し,局所の神経保護作用の有無を免疫染色で解析した.
    【結果】
    移植群では,早期の運動機能の回復がみられ,移植後7日には,コントロール群との間に有意差が認められた.しかし,移植後7日以降は両群の差は減少傾向にあり,移植後21日には両群の差はほとんどなくなった.また免疫染色をすることにより,移植群では組織のアポトーシスの減少が確認された.
    【考察】
    移植群では,コントロール群と比較して早期の運動機能回復がみられた.移植細胞が局所へ生着し,神経保護作用をもたらすことにより,運動機能の改善とアポトーシスの抑制に寄与していることが考えられる.また,移植後7日以降で両群の差が減少した原因として,ラットなどげっ歯類では歩行機能の自然回復がヒトと比較して良好であることが考えられる.今後これらの急性期における運動機能の回復が,リハビリテーションの継続による長期的な予後の改善につながっていくのか検討が必要である.
    【まとめ】
    骨髄由来細胞移植を行うことで,急性期脊髄損傷の急性期における神経保護作用と運動機能改善効果があることが示唆された.
  • 坂井 孝行, 折口 智樹, 坂本 淳哉, 片岡 英樹, 西川 正悟, 近藤 康隆, 横山 真吾, 中野 治郎, 沖田 実
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 227
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    不動で起こる筋線維萎縮には、様々な分子メカニズムの経路が関与しているが、我々は仮説として以下の経路の関与を予測している。すなわち、不動により骨格筋が低酸素状態に陥りマクロファージなどが活性化することでTNF-αなどの炎症性サイトカインが誘導され、これがMT1-MMPやMMP-2などのタンパク質分解酵素の活性化を招き、その結果として筋線維萎縮が発生するというものである。一方、我々はこれまで間歇的伸張運動は不動によって起こる筋線維萎縮の進行抑制に有効であると報告してきた。そして、このメカニズムの仮説として間歇的伸張運動によって骨格筋の低酸素状態が緩和さられること、ならびにIL-6などの抗炎症性サイトカインが誘導し、上記のタンパク質分解酵素の活性化が抑えられることが影響していると考えている。そこで、本研究では以上の仮説を検証することを目的とした。
    【方法】
    12週齢のWistar系雄性ラット15匹を対照群5匹(C群)と両側足関節を4週間最大底屈位でギプス固定する実験群10匹に振り分け、実験群はさらに不動のみの群(I群)と不動の過程で間歇的伸張運動を負荷する群(S群)に分けた。S群に対しては麻酔下でギプスを解除し、角速度10°/秒の足関節底背屈運動を30分間(週6日)行うことでヒラメ筋を間歇的に伸張した。実験終了後は両側ヒラメ筋を摘出し、左側試料の凍結横断切片にATPase染色(pH10.4)を施してタイプI・II線維の直径を計測した。また、右側試料は筋抽出液とし、組織の低酸素状態で誘導されるHIF-1αとMT1-MMP、MMP-2をWestern Blot法で、TNF-αとIL-6をELISA法で定量した。なお、今回の実験は長崎大学動物実験倫理委員会の規定に準じて行なった。
    【結果】
    タイプI・II線維の直径はC群に比べI群、S群は有意に低値で、S群はI群より有意に高値を示した。HIF-1α含有量はC群やS群に比べI群は有意に高値で、TNF-αやMT1-MMP、MMP-2の含有量も同様の結果であった。また、IL-6含有量はS群がC群やI群より有意に高値を示した。
    【考察】
    I群の結果から、HIF-1αの発現増加がうかがわれ、不動によってヒラメ筋は低酸素状態に陥っていると推測される。そして、TNF-αやMT1-MMP、MMP-2もその発現が増加しており、筋線維萎縮も発生していることから先の仮説は支持されると思われる。一方、S群はHIF-1αの発現が抑えられており、間歇的伸張運動は骨格筋の低酸素状態を緩和すると推察される。また、S群にはIL-6も発現しており、これらの相乗効果として筋線維萎縮の進行が抑制された可能性がある。ただ、不動による筋線維萎縮の発生や間歇的伸張運動による進行抑制効果には他の分子メカニズムの経路も関与していることから、今後さらに検討の必要がある。
  • 坂本 淳哉, 坂井 孝行, 折口 智樹, 中野 治郎, 片岡 英樹, 西川 正悟, 近藤 康隆, 横山 真吾, 沖田 実, 江口 勝美
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 228
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    これまで我々は、ラット距腿関節を4週間不動化すると軟骨下骨層から関節軟骨層への血管様構造の侵入を認め、不動の過程で持続的他動運動(CPM)を実施するとこの変化が抑えられることを報告してきた。一方、関節の不動は軟骨組織の低酸素状態を惹起することが予想され、先行研究によれば組織が低酸素状態に陥ると転写因子(Hypoxia-Inducible Factor-1a;HIF-1α)が発現し、これは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現を調節していると報告されている。つまり、血管様構造の侵入といった不動による軟骨組織の形態学的変化は、HIF-1αやVEGFの発現が関与しているのではないかと仮説でき、本研究ではこの点を明らかにするとともに、CPMの影響についても検討を加えた。
    【方法】
    実験動物には12週齢のWistar系雄性ラット14匹を用い、これらを無作為に1)対照群(C群、n=4)、2)両側後肢を膝関節最大伸展位、足関節最大底屈位で4週間ギプス固定する群 (I群、n=5)、3)ギプス固定の過程でCPMを実施する群(CPM群、n=5)に振り分けた。今回のCPMは角速度10°/秒の足関節底背屈運動であり、麻酔下で両側後肢のギプス固定を解除した後に30分間(週6回)行った。実験終了後は両側足関節を採取し、組織固定、脱灰処理の後にパラフィン包埋切片を作製し、H&E染色、ならびにHIF-1α,VEGFに対する免疫組織化学的染色を実施した。そして、検鏡像を用いて脛骨遠位端関節軟骨における血管様構造の出現数、ならびにHIF-1α,VEGFの陽性細胞の出現率を各群で比較した。なお、本実験は長崎大学動物実験倫理委員会の承認を得て行った。
    【結果】
    血管様構造の出現数はC群よりI群が有意に高値を示し、CPM群はI群より有意に低値で、C群との有意差も認めなかった。次に、HIF-1αとVEGFの陽性細胞の出現率は同様の傾向にあり、C群よりI群、CPM群は有意に高値で、I群とCPM群を比較するとCPM群が有意に低値であった。
    【考察】
    一般に、関節軟骨に対する酸素供給はpumping actionによる滑液の関節軟骨への浸透によってもたらされる。今回の結果から、I群にはHIF-1αの発現増加が推測され、関節の不動によって軟骨組織が低酸素状態に曝されていることは明らかであろう。そして、I群にはVEGFの発現増加もうかがわれ、血管様構造の出現数がC群より有意に高値を示した結果は、本研究の仮説を支持していると思われる。一方、CPM群の血管様構造の出現数はC群と有意差を認めず、HIF-1αやVEGFの発現増加もI群ほど顕著ではないと推測できる。つまり、CPMはpumping actionによる滑液の関節軟骨への浸透を促進し、不動による軟骨組織の低酸素状態の惹起を抑制する効果があると推察される。
  • 横山 真吾, 近藤 康隆, 片岡 英樹, 坂本 淳哉, 西川 正悟, 坂井 孝行, 中野 治郎, 沖田 実
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 229
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】組織内においてヒアルロン酸(HA)は、コラーゲン線維の間隙を満たし、水分を吸着することで組織に弾性を与えている。また、水分を吸着したHAは粘性が高く、組織の弛緩・伸張に対してコラーゲン線維間の摩擦や消耗を軽減させる滑剤としても機能するという。つまり、HAは組織の伸張性を司る一要因であり、組織の伸張性低下に起因する関節可動域(ROM)制限に影響している可能性がある。しかし、先行研究ではこの点を検討した報告は少なく、特に骨格筋については散見される程度である。その中で、後肢懸垂とギプス固定を併用したラットの実験モデルでの検討では、ヒラメ筋含有HAが減少すると報告されている。ただ、このモデルは微少重力環境と骨格筋の不動が同時に惹起されるため、筋線維萎縮の影響なのか、ROM制限の影響なのか定かではなく、本研究ではこの点を明らかにすることを目的とした。

    【方法】8週齢のWistar系雄性ラット21匹を対照群(C群、5匹)と3群の実験群に振り分けた。3群の実験群とは後肢懸垂群(HS群、6匹)、ギプス固定群(I群、5匹)、両者の併用群(HSI群、5匹)であり、各群とも実験期間は2週間とし、ギプス固定は両側足関節を最大底屈位で行った。実験終了後は体重を測定し、麻酔下で0.3Nの張力で足関節を背屈させた際のROMを測定した。また、両側ヒラメ筋を採取し、筋湿重量の測定の後に右側試料からの凍結横断切片をH&E染色し、筋線維直径を計測するとともに、HAに対する組織化学染色を実施した。左側試料からの筋抽出液に含有するHAはELISA法により定量し、総タンパク質量あたりに換算した。なお、本実験は長崎大学動物実験倫理委員会の承認を得て行った。

    【結果】相対重量比はC群より実験群は有意に低値で、実験群間には有意差を認めなかった。筋線維直径もC群より実験群は有意に低値で、実験群間ではHS群、HSI群、I群の順に有意に低値であった。ROMはI群とHSI群のみに制限を認め、C群やHS群より有意に低値であった。筋含有HAはC群とHS群に有意差を認めず、I群とHSI群はHS群より有意に低値であった。また、組織化学染色像を検鏡した結果、I群とHSI群はC群やHS群より淡染する傾向にあった。

    【考察】今回の結果から、筋線維萎縮は実験群すべてに認められたが、中でもHS群が顕著であった。一方、ROM制限はI群とHSI群のみに認められた。そして、筋含有HAはROM制限を認めたI群とHSI群がHS群より低値で、HS群とC群には有意差を認めなかった。また、先行研究ではI群やHSI群と同様のモデルのラットヒラメ筋に伸張性低下が生起すると報告されている。したがって、この先行研究の結果を併せて考えると、今回認められた筋含有HA の減少は筋線維萎縮との関連性は低く、ROM制限の発生に影響している可能性が高いと思われる。


  • 石田 和人, Arfaj A., Yates C., Garrison K., Skinner R.D., Garcia-Rill E.
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 230
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    脊髄損傷では、シナプス前抑制や上位中枢からの抑制が減少することによる下肢での過反射が起こり、筋緊張の亢進やそれに伴う不随意運動などを生じ、ADLの自立やQOLを妨げる大きな要因となる。またH反射の刺激周波数依存的な振幅低下は、過反射活動により抑制されることが知られているが、今回、脊髄損傷モデルラットを作成し、非侵襲的に電極を設置した状態でH反射を記録し、後肢の過反射を経時的に評価するとともに、自転車式他動運動による介入効果について検討した。
    【方法】
    実験動物および手術:雌SDラット(n=13)を用い、深麻酔下にて、椎弓切除後、脊髄を吸引しながら切断する方法で、第8胸髄レベルでの完全横断脊髄損傷のモデル動物を作成した。なお、下記の他動運動を実施する運動群(n=7)と非運動群(n=6)に分けた。H反射テスト:動物を固定装置に乗せ、アキレス腱をつまむような形で経皮的に電極を設置し脛骨神経を電気刺激した。また、足底部に双極性の表面電極を設置しH波を記録した。刺激周波数は0.2, 1, 5, 10 Hzとし、術前および7, 14, 21, 30, 45, 60, 75日目に測定した。運動介入:モーターによりペダルが自動的に回転運動する自転車式他動運動(Motorized Bicycle exerciser trainer: MBET)を用いた。脊髄損傷モデル作成後7日目から30日間、1回に60分間、週に5回の頻度で実施した。なお、動物実験に際して、アーカンソー大学医学部の動物実験指針を遵守して実施した。
    【結果】
    非運動群では、5 または10 Hzで刺激した場合のH波振幅が脊髄損傷モデル作成時から75日目まで、日数の経過とともに増加した(p<0.01)。また、7日目から30日間の自転車式他動運動を実施すると(運動群)、非運動群に比べ、5 または10 Hz刺激時のH波振幅増加が抑えられ、その効果は60日目まで継続した(p<0.05)。
    【考察】
    脊髄損傷モデルラットを用いて、非侵襲的な方法によりH反射の記録を経時的に75日目まで記録することができ、運動を実施せず自然経過を観察した非運動群では、各刺激周波数に対するH波振幅の増加がみられ、過反射の亢進を捉えることができた。また、脊髄損傷モデル作成後の急性期(7日目から30日間)に自転車式他動運動を実施すると、過反射が抑制されることがわかった。H反射の記録はヒトでも非侵襲的に実施可能であるので、脊髄損傷患者でも同様のデータを蓄積して、運動療法の効果を検証することができ、基礎研究と臨床研究を直接的に融合させた研究が可能であると考えられる。
    【まとめ】
    脊髄損傷モデルラットに対し、非侵襲的な方法でH反射を継続的に記録し、過反射活動が増悪することを示すとともに、急性期の他動運動介入が、過反射を抑制しうることを示した。
  • 廣瀬 美幸, 森山 紋由美, 鈴木 孝夫, 李 相潤
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 231
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】最近、患者一人ひとりの栄養状態が極めて重要視され、栄養状態の管理・改善を院内栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)で取り組んでいる病院もある。そこで、ラットを用いて運動と食餌・カロリー摂取量の違いが骨格筋にどのような影響を及ぼすかを比較・検討した。
    【方法】実験動物は生後8週齢の雄性Wistar系ラット15匹を用い、普通食自由摂取+運動負荷(CT)群、普通食制限摂取+運動負荷(LT)群、高カロリー食自由摂取+運動負荷(HT)群の3群各5匹に分けた。実験期間を通して、CT群には普通食、LT群にはCT群の餌摂取量の60%、HT群には普通食比カロリー120%、脂肪含有率332.6%の高カロリー食を与えた。その間、1日1回45分同時間帯に、最高速度25m/minのトレッドミル走行を5回/週、2週間実施した。実験終了後、対象筋である左右のヒラメ筋、足底筋、腓腹筋外側頭を摘出し、通常の方法、手順により筋線維横断面積を測定し、統計処理を行った。なお、運動負荷のない通常飼育の対照(C)群は先行研究の同週齢ラットの値を参考とした。
    【結果】体重:実験開始時には群間有意差は見られなかったが、実験終了時にはLT群はCT群に比較し78.1%の低値と有意差を示した。一方、CT群とHT群間には有意差は認められなかった。平均餌摂取量:HT群はCT群の摂取量の83.5%であった。筋線維横断面積:3種の筋においてCT群はC群と比較し有意の高値を示した。LT群はCT群と比較し有意の低値を示したが、C群と比較すると有意の高値を示した。HT群はヒラメ筋においてCT群と有意差が認められた。
    【考察】3筋の筋線維横断面積において、LT群はCT群、HT群と比較し有意の低値を示した。従って、栄養不良状態では筋萎縮が進行することが示唆された。これは、1)低栄養状態で筋内蛋白質の合成不良によること、2)筋線維横断面積は収縮の強度に関係するので、LT群は各筋の収縮の強さが飢餓の影響を受け低下したことが考えられる。一方、LT群はC群と比較すると有意の高値を示した。これはLT群は週5回の運動を実施したため、低栄養状態であっても運動負荷により筋萎縮予防、筋肥大が得られたと考えられる。
    今回、足底筋と腓腹筋においてはHT群とCT群間に有意差が認められなかった。これは筋肉の主要構成成分は蛋白質であり、運動時には蛋白質の必要量が増加するが、今回与えた高カロリー食は蛋白質含有量が普通食とほぼ同じであったためと考えられる。蛋白質を多く摂取することで、より効果的に筋力増強が得られると考えられる。
    【まとめ】低栄養状態であっても運動負荷により筋萎縮予防、筋肥大が得られ、また蛋白質を多く摂取することにより、より効果的に筋力増強が得られると考えられる。
  • 鈴木 美穂, 内藤 美幸, 大野 善隆, 後藤 勝正
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 232
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】運動はエネルギー消費量を高め、体脂肪量を減少させるのに有用な方法であることから、筋活動量の減少は体脂肪量を増加させる主たる要因となることは良く知られている。一方、様々な骨格筋疾患では骨格筋組織内脂肪量の増加や組織の脂肪化などが生じることが報告されている。後者の骨格筋組織の脂肪化は、骨格筋に存在する筋衛星細胞やその他の組織幹細胞が脂肪細胞へと分化したと考えられている。しかし、筋活動量の減少自体が骨格筋組織内の蓄積脂肪量にどのような影響を与えているかは明らかとなっていない。そこで、本研究では、筋活動量の変化に対する骨格筋組織内蓄積脂肪の応答と脂肪合成のポテンシャルについて検討することを目的とした。
    【方法】実験には生後8週齢の雄性マウス(C57BL/6J)を用い、対象組織はヒラメ筋とした。筋活動量はヒラメ筋に対する荷重の変化による実験モデルを作成した。筋活動量の減少モデルは、後肢懸垂によりヒラメ筋に対する荷重を除去させた不活動モデルを、活動量増加のモデルとしては、ヒラメ筋の共同筋である腓腹筋および足底筋の腱(協同筋腱)の切除による代償性過負荷モデルとした。マウスを後肢懸垂あるいは代償性過負荷の状態にて2週間飼育した後、両後肢よりヒラメ筋を摘出した。また、一部のマウスのヒラメ筋にカルディオトキシンを筋注し、ヒラメ筋に壊死-再生サイクルを惹起させ、さら後肢懸垂および代償性過負荷状態を2週間継続させた後、両後肢よりヒラメ筋を摘出した。摘出したヒラメ筋より連続凍結切片を作成し、HE染色、オイルレッドO染色、BODIPY染色を施し、病理学的評価ならびに骨格筋組織内脂肪分布を比較した。さらに、脂肪化ポテンシャルの指標としてPPARγの発現量を比較検討した。
    【結果】ヒラメ筋の筋湿重量は対照群に比して、後肢懸垂群では減少し、代償性過負荷群では有意に増加した。さらに、筋乾燥重量ならびに筋線維横断面積の結果から、本研究で用いた後肢懸垂により筋萎縮が、代償性過負荷により筋肥大が引き起こされたと考えられた。HE染色による筋組織の病理学的評価から、カルディオトキシン筋注により惹起された筋の壊死―再生サイクルは、筋注2週間後でも継続中であることが確認された。通常飼育に比べ、後肢懸垂により再生の遅延が、代償性過負荷により再生の促進が生じているのが確認された。BODIPY染色により、後肢懸垂により脂肪適量の増加が、代償性過負荷により脂肪滴量の減少が観察された。また、筋再生時に後肢懸垂することで脂肪合成ポテンシャルの増加が認められた。
    【考察】以上より、マウスヒラメ筋の筋活動量の減少は骨格筋組織内の脂肪蓄積のポテンシャルを増加させることが示唆された。したがって、運動が内臓脂肪蓄積によるメタボリックシンドロームの予防と改善に効果的であることがあらためて示唆された。
  • 生田 旭洋, 太田 友規, 大野 善隆, 後藤 勝正
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 233
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】骨格筋は、力発揮という力学的な仕事をする器官である。そのため、骨格筋を構成する骨格筋細胞は他の細胞とは異なった特有の形態と構造を持っている。形態的な大きな特徴の1つは、筋の収縮方向に(筋が力を発生する方向に)細く長いことである。この形態的特徴から、骨格筋細胞は骨格筋線維あるいは筋線維と呼ばれている。骨格筋は力学的な仕事の負荷に応じて機能的かつ形態的な適応を示すことは良く知られているが、組織としての適応は個々の筋線維の適応変化による。一般に、骨格筋線維は遅筋線維と速筋線維の2種類に大別される。例えば、遅筋線維はエネルギー産生オルガネラであるミトコンドリアを多く含むことから酸化系酵素活性が高く持久性に優れるが、ミオシンATPase活性は低く収縮速度が低いという性質を持つ。一方、速筋線維ではミトコンドリア含有量は少ないがグリコーゲン顆粒が多く含まれ、解糖系酵素活性値が高く、そしてミオシンATPase活性が高く収縮速度が高いという特性を持つ。さらに、筋線維の直径を比べると、遅筋線維に比べ速筋線維が太いとされている。しかしながら、ラットのヒラメ筋では遅筋線維は速筋線維に比べて太いことが知られており、必ずしも遅筋線維が速筋線維に比べて細いとは言えず、組織としての骨格筋の存在様式や収縮機能などの特性に応じて、筋線維の太さが決定されている可能性が指摘されている。そこで本研究では、異なる存在様式ならびに収縮機能を有する骨格筋における遅筋線維と速筋線維の形態的特徴を比較検討し、骨格筋の機能的特性と筋線維タイプの関係を明確にすることを目的とした。
    【方法】実験には、生後8週齢の雄性マウス(C57BL/6J)を用い、両後肢よりヒラメ筋、長趾伸筋、足底筋ならびに腓腹筋を摘出した。摘出した各筋は結合組織を除去後に秤量し、即座に液体窒素により急速凍結し、-80°Cにて保存した。凍結組織をクリオスタットにて、厚さ10 μmの連続凍結切片を作成し、HE染色ならびにミオシンATPase染色(前処置pH 4.35)を施した。染色した切片は顕微鏡にて観察・撮影し、筋線維タイプの同定ならびに筋線維直径の計測を行った。
    【結果】ヒラメ筋では遅筋線維が多数を占め、断面積に占める割合も大きいものであった。個々の筋線維の断面積を比較すると、ヒラメ筋では遅筋線維が、長趾伸筋、足底筋ならびに腓腹筋では速筋線維が高値を示した。
    【考察】以上より、速筋線維が太く遅筋線維が細いという法則は必ずしも全ての骨格筋に当てはまるものでなく、組織としての収縮機能に適合するように数的に多くを占める線維が大きな直径を有することが明らかとなった。
    【まとめ】リハビリテーションを行う上で筋機能に配慮した処置が必要になると考えられた。
  • 大野 善隆, 後藤 勝正
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 234
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】加齢に伴う筋肉量の減少ならびに筋力の低下(加齢性筋肉減弱症:サルコペニア)の予防と症状改善のため、高齢者に対して筋力トレーニングが奨励されている。しかし、筋力トレーニングは過負荷の原則に基づくため、高齢者にはリスクが大きい。したがって、安全かつ効率的な筋力トレーニング法の早期開発が望まれている。最近、過負荷の原則に依存しない筋力増強法が報告されている。その中の1つに、熱刺激の負荷による筋力増強法がある。熱刺激に対する筋細胞の応答に関しては、筋細胞の肥大と軽運動との組み合わせによる効果の増大、負荷除去に伴う筋萎縮の抑制、そして廃用性筋萎縮からの回復促進なども報告されている。したがって、熱刺激はサルコペニアの予防と症状改善に有効な方法であると考えられるが、熱刺激による筋肥大の分子機構は明らかでない。転写因子の1つであるnuclear factor-κB(NF-κB)は、サイトカイン(TNFα、IL-1)などの刺激によって活性化する。このNF-κBの活性化は、骨格筋分化の抑制およびタンパク質分解に関与することが報告されており、骨格筋細胞の可塑性発現に寄与していると考えられる。しかし、熱刺激に対するNF-κBの応答ならびに骨格筋肥大の関連性は明らかでない。そこで本研究は、熱刺激によるNF-κBの応答について検討し、熱刺激による骨格筋肥大におけるNF-κBの関与を明らかにすることを目的とした。
    【方法】実験対象には、マウス骨格筋由来筋芽細胞C2C12を用い、熱刺激群及び対照群を作成した。筋芽細胞を播種し、筋芽細胞に分化させ、筋管細胞に熱刺激を負荷した(熱刺激群)。熱刺激条件は41°Cの環境温に60分間の曝露とした。同じ期間に熱刺激を負荷せず、培養した細胞を対象群とした。この熱刺激後、直後および24時間後に細胞を回収した。回収した細胞のタンパク量、NF-κBの応答を測定し、評価した。また、細胞を分画ごとに回収し、各分画におけるNF-κBの応答を検討した。
    【結果】熱刺激負荷24時間後、筋タンパク量の有意な増加が認められた(p<0.05)。また、熱刺激後、NF-κBの発現量の有意な減少が認められた(p<0.05)。しかし、熱刺激負荷24時間後には対照群のレベルまで増加した。
    【考察】熱刺激によって引き起こされる筋タンパク量の増加は、NF-κBの発現量の減少を伴うものであった。熱刺激による筋タンパク量増加の一部は、NF-κBシグナルを介したものであることが示唆された。
    【まとめ】熱刺激による骨格筋肥大の分子機構の解明により、安全かつ効率的な筋力トレーニング法の早期開発が可能となり、高齢者の健康維持及びリハビリテーションへ貢献が大きいと考えている。
  • 岩田 全広, 早川 公英, 村上 太郎, 鈴木 重行
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 235
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】筋における糖の取込みを促進する刺激のひとつに伸張刺激がある。これまでに我々は、培養骨格筋細胞に周期的一方向伸張刺激を加えることができる実験システムを用いて、伸張刺激により糖の取込みが促進することを確認した。しかし、伸張刺激がどのようにして糖の取込み促進を引き起こすか、その詳細な分子メカニズムの解明には至っていない。一方、筋に成長因子の一種である insulin-like growth factor 1(IGF-1)刺激を加えると、糖の取込みが促進することが報告されている。また、筋に伸張刺激を加えると、IGF-1 が筋細胞自身から分泌(自己分泌)されることが明らかにされている。従って、伸張刺激による糖の取込み促進機構は、伸張刺激によって自己分泌された IGF-1 を介して起こる可能性がある。そこで今回は、伸張刺激による糖の取込み促進と IGF-1 の関連について探る手始めとして、IGF-1 刺激と伸張刺激の併用効果について検討した。

    【方法】実験材料にはマウス骨格筋由来の筋芽細胞株 C2C12 細胞を用い、I 型コラーゲンをコートした薄いシリコン膜上に筋芽細胞を播種し、筋管細胞に分化させた。伸張刺激は、培養開始後 7 日目の筋管細胞に、シリコン膜を一方向に伸張することによって加えた(伸張群)。刺激条件は、我々(2007)が糖の取込みに対して最大効果を得た条件(頻度1 Hz、伸張率 110% で 30 分間の周期的伸張刺激)とした。IGF-1 刺激は、IGF-1(1, 5, 10, 20 nM の 4 種類)を培養液に添加し、30 分間安静を保持した(IGF-1 群)。また、IGF-1(10 nM)を培養液に添加し、同時に伸張刺激を加えた(IGF-1+伸張群)。対照群は、同じ期間に刺激を加えず、通常培養した細胞とした。各刺激終了直後に tritium で標識された 2-deoxy-D-glucose を細胞に 15 分間負荷した後、細胞内の tritium 量を測定することにより細胞内への糖の取込み量を算出した。

    【結果】伸張群の糖の取込み量は、対照群の 1.3 倍に増加した。IGF-1 群では、1-5 nM で対照群の 1.3 倍に増加した。10 nM で対照群の 1.6 倍に増加してプラトーに達し、20 nM で処理しても反応の増強は認められなかった。また、IGF-1+伸張群の糖の取込み量は、対照群の 2.0 倍まで増加した。

    【考察】今回、IGF-1 刺激による糖の取込みを最大限に促進させた状態で伸張刺激を加えると、さらなる増強(IGF-1 刺激と伸張刺激の加算効果)が認められた。この結果から、IGF-1 刺激と伸張刺激は異なった機構を介して糖の取込みを促進する可能性が窺えた。以上のような糖輸送に関わる分子メカニズムが明らかにされることは、科学的根拠に基づく効果的で効率的な糖尿病運動療法の開発につながると考える。
  • 坂本 圭, 金子 雄紀, 石田 和人, 鈴木 重行
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 236
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】糖尿病 (DM) は1型と2型に大別され、2型はインスリンの分泌低下とインスリン抵抗性の両者が発症に関与する。DMモデルを使用した研究は多く行われてきており、自然発症モデルや遺伝子改変によるモデルなど様々なDMモデル動物が開発されてきた。しかし、これらの2型DMモデルは、DMの発症過程を再現しておらず、価格的にも高価である。近年、高脂肪食と少量のストレプトゾトシン(STZ)投与の併用による2型DMラットについての報告が見られる。このモデルは2型DM発症過程を再現しており、比較的短期間で作製可能である。そこで今回は、同様の方法で2型DMモデルラットを作製できるかを検討した。
    【方法】実験には6週齢のSD系雄性ラットを使用した。ラットを3群(HFD群・STZ群・CON群)にわけ、HFD群は高脂肪食(Fat kcal% 56.7%)を3週間与え続けて飼育し、実験開始より14日目にSTZ(35mg/kg)溶液を腹腔内投与した。STZ群・CON群は通常飼料により飼育し、HFD群と同様に14日目にSTZ群はSTZ溶液、CON群はSTZ溶液の溶解に使用した緩衝溶液をそれぞれ同量腹腔内投与した。実験期間中、飼料と水は自由摂取とし、体重、飼料摂取量、飲水量を測定した。随時血糖値は、0(飼育開始時)、14(STZ投与直前)、15、17、20日目に尾静脈より採血を行い、血糖値を測定した。経口糖負荷試験(OGTT)は21日目に実施し、OGTTの前日は絶食させた。OGTTによって得られた値より血糖曲線下面積(AUC)値を算出した。実験は名古屋大学医学部動物実験委員会の承認を得て行った。
    【結果】体重・飼料摂取カロリーについては各群間有意な差はなかった。飲水量はSTZ投与後、HFD群・STZ群において急激に増加し、多飲多尿傾向がみられた。随時血糖値はSTZ投与後、HFD群において高値を示し実験期間終了時においても高血糖を保っていた。21日目のOGTTでは糖負荷直前は3群とも正常血糖値を示したが、HFD群に置いて血糖値の上昇の程度が大きく、ピークの遅れがみられた。さらに。HFD群は120分時の血糖値が他の2群に比べて有意に高かった。また、AUC値はHFD群とCON群との間で有意差が認められ、HFD群において耐糖能の悪化が見られた。
    【考察・まとめ】HFD群では高血糖・耐糖能障害・多飲・多尿といったDMの徴候がみられたが、STZ群では著明な高血糖や耐糖能障害はみられなかった。以上のことからHFD群において2型DMモデルラットが作成できたと考えられた。

  • 久保田 雅史, 小林 茂, 佐々木 伸一, 嶋田 誠一郎, 野々山 忠芳, 竹野 建一, 宮崎 剛, 馬場 久敏, 岩本 久雄
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 237
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    今回,我々は頚髄症などでみられる慢性圧迫性脊髄障害の病態を解明する目的で,成長過程において脊柱管内操作を加えることなく緩徐に脊髄圧迫を発症するモデルを考案し,頚髄前角細胞の変化について検討した。
    【方法】
    生後3週齢のS-D系ラット20匹を使用し,後方アプローチにより気管支・食道及び神経根を損傷しないように第4頸椎(C4)腹側に長さ4mmのプレートを設置し,C4全周をワイヤーにて締結した。モデルラットは成長の過程において,プレートを支点としてワイヤーが椎弓内板とともに脊柱管の後壁を形成し,徐々に脊髄を圧迫するようになる。また,コントロール群は同様に後方アプローチのみ行った群とした。麻酔覚醒後,動物に四肢麻痺がないことを確認し,経時的に単純X線撮影を行い,脊柱管前後径の変化を観察した。作製したモデルは1年後に4%パラホルムアルデヒドを用いて灌流固定後,脱灰し,パラフィン包埋を行った。厚さ5μmの連続切片を各髄節において作成し,10枚ごとにH-E染色を行い脊髄前角細胞の総数を計測し,コントロール群と比較・検討した。なお,本研究は福井大学動物実験委員会の承認を得て行った。
    【結果】
    コントロール群のC4高位の脊柱管前後径は3.1±0.3mmであり,慢性圧迫モデル群では圧迫部位であるC4高位において2.1±0.3 mmと明らかに骨性の脊柱管狭窄が見られた。光顕下に観察したコントロール群のC4高位における前角細胞数は,平均880±52個であったが,慢性圧迫群では699±49個と明らかに減少していた。
    【考察】
    我々の考案した慢性脊髄圧迫モデルでは,生後3週齢において頚椎全周にワイヤーを締結することにより,成長に伴った脊柱管の増大は不可能となり,コントロール群に比し約30-40%の脊柱管狭窄モデルが作成できた。その慢性かつ漸増的な脊髄圧迫は,圧迫部における前角細胞数の減少に寄与していると考えられ,今後更なる検討が必要である。
  • 大渡 昭彦, 池田 聡, 原田 雄大, 上川 百合恵, 吉田 輝, 堀ノ内 啓介, 下園 由理香, 野元 佳子, 川平 和美
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 238
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    我々はこれまでの研究でPhotochemical infarctionモデルを使用して,運動による機能回復を確認し,組織学的な変化を検証した。その結果,GDNF(Glial cell line-derived neurotrophic factor)の発現が著名であることを報告した。そこで,今回の研究ではGDNFの発現を半定量的に分析することを目的に実験を行った。
    【方法】
    実験には7週令のWistar系ラットの雄42匹体重232±9.5gを使用し,自然回復群と運動群に無作為に振り分けた。全てPhotochemical infarctionモデルとし,運動群にはモデル作成の次の日から毎日20分間の棒渡り運動を灌流固定するまで行わせた。自然回復群は脳梗塞作成後1・3・5・7日にそれぞれ6匹ずつ,運動群は脳梗塞作成後3・5・7日にそれぞれ6匹ずつ灌流固定を行い、脳組織を採取した。Photochemical infarctionモデルは,麻酔下でラットを脳定位固定装置(SR-8N Narishige)で固定し,頭皮を剥離した状態で光源装置(MHF-G150LR Moritex)より誘導された波長560nmの緑色光線を照射しながら尾静脈より光感受性色素ローズベンガルを20mg/kg静注して作成した。照射部位は下肢の運動野に照射されるよう,Bregmaより右6mm・後方4mmを中心とした直径10mmの範囲とし,照射時間は20分で行った。なお,今回の実験は鹿児島大学動物実験指針に従い,鹿児島大学動物実験委員会の承認を得て行った。
    【結果】
    脳梗塞周辺の皮質におけるGDNF陽性細胞の和を,Scion Imageを使用してカウントした。ノンパラメトリックのKruskal-Wallis検定を行った結果,群間に5%の確率で有意差が認められた。どこに有意差があるか多重比較を行った結果,3日目の自然回復群と運動群に5%の確率で有意差が認められた。
    【考察】
    最近の研究で,LeddaらはGDNFとそのレセプターであるGFRα-1がシナプスの形成に関係していると報告している。今回の結果でも,運動機能の回復をあわせて考えると,運動機能が著しく改善している時期にGDNFの発現が多くなっている。このことは,運動によってGDNFの発現が誘発され,脳の可塑性を促していると考えられる。今後,さらに運動が神経栄養因子を誘導して脳の可塑性を促進する過程を検討していきたい。
  • 小幡 太志, 村上 慎一郎, 旭 重憲, 佐藤 三矢, 小幡 亜沙美
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 430
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】姿勢はすべての活動に対応するための基礎的な単位である.日常生活においてその人が置かれる状況や生活に適応するべく,経時的に変化を行う.また,私たちを取り巻く環境はすべての人間に適切なものではなく,姿勢の変化で対応することが求められる.そのため,腰痛などの脊柱疾患は途絶えることなく,理学療法の対象疾患として存在する.
    本研究では,環境,特に日々必ず遭遇する段差に注目し,その高さと脊柱との関係より,若干の知見を得たので報告する.
    【方法】対象は健康な大学生25名(男性13名,女性12名,年齢21.4±0.3歳)とした.身長は19歳~21歳の平均身長を参考にし,男性165cm~175cm(169.04±4.25),女性155cm~165cm(161.63±5.84)の学生を抽出し測定を行った.測定肢位はまず立位にて5kgの重錘を両肘関節90度屈曲位で水平に保持させ、脊柱のアライメントを測定した.次に,重錘を保持した状態から10cm,15cm,20cm,25cm,30cmのそれぞれの台に片足を上げた肢位にて測定,また同じ段差に対して片足を下げた肢位,さらに平地において片足を一歩前方に出した肢位にてそれぞれ測定した.脊柱のアライメントの測定には,Index社製Spinal Mousを使用した.この数値を用いて立位に対する各肢位での腰仙角,胸椎後弯角,腰椎前弯角をウィルコクソンの符号付き検定を用いて有意差判定を行った.なお統計処理には、SPSS15.0を用いた.
    【結果】統計処理を行った結果,有意に差があったのは男性腰仙角の立位に対するすべての段差の下肢上げ下ろしであり,男性胸椎では立位に対する10cm、20cm、25cm、30cmの下肢をおろした肢位,男性腰椎は立位に対するすべての下肢をあげた肢位および25cm、30cmの下肢をおろした肢位であった.また女性では腰仙角と腰椎でのまたぎを含むすべての下肢の上げ下ろしであり,胸椎はどの肢位でも有意な差はなかった(P<0.05).
    【考察】腰痛に関する研究は様々な分野で行われ,それぞれ日常の理学療法業務の指針として取り上げられている.しかしそれを脊柱全体でみた報告は少ない.本研究ではこの点に着目し,日常必ず行われる階段昇降,段差越えといった動作が,脊柱全体に与える影響を検討した.その結果は上述の通り,男性では段差をあがる動作で腰仙角増加および腰椎前弯増加が,降りる動作では腰仙角増加および胸椎後弯増加,25cm,30cmでの腰椎前弯増加が出現し,女性ではまたぎを含むすべての動作で腰仙角増加および腰椎前弯増加が出現した.前屈位より重量物を持ち上げる場合では腰椎骨盤リズムによる骨盤回転に続く脊柱安定が働く.今回の測定ではその動きの判定は不可能であるが,重量物を持って足を上げる場合には性別により動作を担う部位の相違がある可能性が示唆された.またすべての動きは骨盤の可動性を伴うことも推察される.このことは治療部位の選定に対し,一つの指標になるのではないか.

  • 五味 真也, 網本 和
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 431
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】移乗動作において一般的に車椅子とベッド間の角度設定は20°~45°が良いとされているがその根拠は必ずしも明らかでない。また脳卒中片麻痺患者では、体幹の可動性、下肢筋力等がこの角度設定の際大きな影響を及ぼすと考えられる。しかし、体幹の可動性や下肢筋活動との関係を考慮した車椅子とベッド間の角度設定については十分検討されていない。本研究の目的は、車椅子とベッド間の角度設定を変化させることによって体幹の可動範囲及び下肢筋活動に与える影響を明らかにすることであり、健常者での基礎的検討を行った。
    【対象】被験者は研究の趣旨を十分理解し書面にて参加の同意を得た健常成人男性11名であった。平均年齢は21.6歳、平均身長は171.5cm、平均体重は64.0kgであった。被験者を右片麻痺患者を模擬する者6名、左片麻痺患者を模擬する者5名としてランダムに振り分けた。
    【方法】1)実験方法は、非麻痺側として設定した下肢の内側広筋(以下:VM)、腓腹筋(以下:GC)の筋腹に表面電極を貼付し、筋活動を記録した。体幹回旋・側屈・屈伸の角度測定するため電気角度計を脊柱に沿って配置し、TRIASシステム(Biometrics社製)にて分析を行った。手順は、下記に示す2条件で合計4回課題(ABBAの順にて)を実施した。条件A:ベッドと車椅子との角度設定を水平(0°)とした条件、条件B:角度設定を45°とした条件、とした。2)分析方法:統計処理には、SPSSを用い条件AB間における比較を対応のあるt検定によって検討した。有意水準はいずれも5%未満とした。
    【結果】1)体幹角度範囲:体幹回旋・側屈・屈伸角度の範囲を各々条件ごとに平均化し、条件A,B間で検討したところ、体幹回旋角度範囲は、車椅子45°設定条件での回旋角度が大きく、有意差を認めた(p<0.05)。体幹側屈・屈伸角度範囲は条件間による有意差は認められなかった。2)筋電積分値: VM、GCの筋電積分値(以下:iEMG)を求め、条件AB間で検討したところGCにおけるiEMGにおいて、車椅子0°設定条件で筋活動が有意に大きかった(p<0.05)。
    【考察とまとめ】体幹角度範囲においては、体幹回旋時に条件Bの方が条件Aに比べ有意に回旋角度範囲が大きく、筋活動においては、GCにおけるiEMGにおいて条件Aで下肢筋活動が有意に大きいことが示された。したがって、片麻痺患者を想定した場合、車椅子とベッド間の角度設定は、体幹の可動性低下が見られても非麻痺側下肢筋力が保たれていれば、水平(0°)設定で行うことも有用であり、一方非麻痺側下肢筋力に弱化が見られても、体幹の可動性が確保されていれば45°設定で行うことも可能であると推測される。しかし今回は健常成人での結果であり、今後は症例での検討が必要であると考えられる。
  • 膝屈曲位と膝伸展位を比較して
    近藤 千愛, 金 誠煕, 別府 政敏, 国見 ゆみ子, 野村 進
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 432
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】脊髄損傷者や頸髄損傷者の床からのトランスファーは膝伸展位より膝屈曲位で行う方がより効率的であることを臨床で経験する。トランスファー指導をどのように進めるかを検討する為、膝屈曲位と膝伸展位で行う床からのトランスファー動作を力学的に分析した。若干の知見を得たので報告する。
    【目的】膝屈曲位と膝伸展位で行う床からのトランスファーを重心移動、関節トルク、筋活動の側面から客観的に分析することとした。
    【対象と方法】脊髄梗塞によるTh7以下の完全対麻痺を呈した24歳女性1名を対象とした。対象者には本研究の趣旨を説明し同意を得た。
    運動課題は床から40cm台へのトランスファーとし、一方の手掌は台、他方の手掌は床に接地、膝屈曲位と膝伸展位で左右両方向から行った。計測には3次元座標計測装置(VICON370)、床反力計測装置(アニマ社,G-3100S)、筋電テレメータ(日本電気三栄サイナアクトMT-11)を用いた。3次元位置計測用マーカーは頭頂、耳珠、肩峰、肘関節、手関節、Th10棘突起、股関節、膝関節、外果、第5中足指節関節に貼付した。被検筋は三角筋前部、三角筋中部、大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、広背筋、僧帽筋下部とした。3次元座標計測装置の計測値から重心位置と肩関節モーメントを計算し、床反力計測装置、筋電テレメータの計測値と共に各条件で比較した。
    【結果】動作時の重心移動は膝伸展位トランスファーでは前上方に移動した。臀部は動作終了時(臀部接地時)に最高点に達した。一方、膝屈曲位トランスファーの重心は上後方に移動した。臀部は台接地前に最高点となり、その最高点は膝伸展位より高かった。関節トルクは、左右肩屈曲、左肩内転で膝屈曲位の方が低い値を示した。また筋放電量も左三角筋、左上腕二頭筋、右大胸筋で減少していた。筋放電は膝伸展位では動作後半になるにつれどの放電量も増加していた。一方、膝屈曲位では動作前半は床に接地した側、動作後半は台に接地した側の放電量が増加していた。
    【考察】膝屈曲位では膝伸展位と比較して、より効率的に動作が遂行されていた。その要因として以下のことを考えた。
    両上肢と足部の3点で体重を分散するため、力源となる上肢の負担が減少すること。開始姿勢から足底接地しているため足部移動による摩擦抵抗がないこと。伸展位と比較すると重心位置が開始姿勢から高く、目標とする台までの移動距離が少ないこと。また力源となる肩関節に重心位置が近づくため、レバーアームが短くなったことなどが要因として考えられた。
    膝屈曲位と膝伸展位で筋放電のパターンに違いが見られた要因としては、重心移動の軌跡の違いが関与していると考えられる。
    【まとめ】今回、床から40cm台へのトランスファーを膝屈曲位と膝伸展位で行い分析した。膝屈曲位の方が効率的な動作が行えていることが力学的に明らかになった。
  • 安井 重男, 藤本 将志, 渡邊 裕文, 大沼 俊博, 赤松 圭介, 中道 哲朗, 鈴木 俊明
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 433
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】整形疾患患者や脳血管障害患者におけて、歩行の立脚中期に側方への体重移動が充分に見られず、支持側肩甲帯の後退や体幹の側屈といった代償動作を認めることがある。このとき広背筋の過活動や筋短縮がこの要因のひとつになっていることがあり、これらに対し我々は立位にて広背筋の調整とともに側方への体重移動練習を行うことがある。諸家らによる近年の筋電図学的研究において広背筋は、上部・下部線維に分けられると報告されている。そこで今回我々は立位での側方体重移動が広背筋上部・下部線維の筋電図積分値に及ぼす影響について検討し、若干の知見を得たので報告する。

    【方法】対象は整形外科学・神経学的に問題のない健常男性12名、平均年齢29.6歳であった。まず被験者に2つの体重計上へ両下肢をそれぞれ乗せた安静立位を保持させた。この状態にて筋電計ニューロパックを用いて、双極導出法により左右広背筋上部・下部線維の筋電図を10秒間3回測定した。電極位置は広背筋上部線維を肩甲骨下角から2横指下方、下部線維を第12胸椎レベルで腋窩中央と上後腸骨棘を結んだ線との交点から1横指外側とした。そしてそれぞれの筋電図積分値を求め、3回の平均値をもって個人のデータとした。次に安静立位の状態から体幹・骨盤を傾斜・回旋させずに側方への水平移動を行い、一側下肢への側方体重移動量を体重の60%、70%、80%、90%、95%へとランダムに変化させ、上記同様に筋電図積分値を求めた。そして安静立位での各筋線維の筋電図積分値を1として筋電図積分値相対値を求め、一元配置の分散分析とTukeyの多重比較を用いて検討した。なお被験者には本研究の趣旨を説明し同意を得た。

    【結果と考察】移動側・非移動側ともに、広背筋上部・下部線維の筋電図積分値相対値は、体重移動量を増加させても変化を認めなかった。生友らは広背筋上部線維については上肢運動時により関与し、下部線維については体幹側屈時により関与すると報告している。今回の研究課題では体幹・骨盤を傾斜・回旋させずに側方移動していることから、体幹部の姿勢については、安静立位時とほぼ同様であり姿勢の変化を認めなかった。また溝部らは立位での側方移動において、健常者では胸部から骨盤を直立に保ちながら、股関節周囲の筋活動により大腿骨頭上で骨盤を側方に動かすと報告している。これらのことから本課題である側方への体重移動では股関節周囲筋などの筋活動により対応し、広背筋上部・下部線維は立位保持時の活動レベルでこの姿勢保持に関与したと考える。
  • 片桐 由美子, 矢崎 高明, 井上 宜充, 高篠 瑞穂, 久合田 浩幸, 田村 拓也
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 434
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】臨床では腹臥位が困難な症例に対し、背側の筋を働かせる目的で背臥位でのブリッジ運動や膝関節伸展位での股関節伸展運動を行うことがある。今回はブリッジ課題と背臥位での股関節伸展課題の体幹・下肢の筋活動を比較・検討したので報告する。
    【方法】対象は健常男性10名(27.4±4.22歳)。筋活動電位は日本光電マルチテレメーターシステムWEB-5500を用い表面電極にて導出した。測定筋は右側の腹直筋、外腹斜筋、傍脊柱筋、大腿直筋、大殿筋、中殿筋、半腱様筋とした。測定課題は背臥位・両膝関節屈曲120°の両脚ブリッジ課題(WB)、背臥位・両股関節屈曲20°・膝関節伸展位で足部を台にのせた位置からの股関節伸展課題(HE)とした。最終肢位は両課題とも股関節が中間位まで殿部を挙上した位置とした。それぞれ最終肢位を5秒間保持し、その中から安定した3秒間のデータを採用した。各筋についてDanielsの徒手筋力テストの抗重力肢位での最大等尺性収縮値をMVCとし、WBとHEにおける各筋の%MVCを算出した。有意差の判定はWilcoxonの符号順位和検定を使用した(p<0.05)。
    【結果】各筋の筋活動はWBでは傍脊柱筋55.03±17.63%、中殿筋31.35±33.16%、大殿筋44.88±30.04%、大腿直筋14.78±16.24%、半腱様筋20.27±12.79%。HEでは傍脊柱筋83.83±28.76%、中殿筋49.13±30.36%、大殿筋64.43±42.70%、大腿直筋25.65±15.07%、半腱様筋77.23±51.75%。全ての筋でHEの方がWBよりも高い値を示し、有意差は傍脊柱筋、中殿筋、大腿直筋、半腱様筋で認められた。
    【考察】ブリッジ課題は股関節周囲筋へのトレーニング効果が少なく背筋群での効果が高いといわれているが、今回のわれわれの実験では大殿筋および中殿筋において、どちらも30%以上の高値を示し、筋力増強が期待できることが示唆された。HEでは傍脊柱筋83%、大殿筋64%、半腱様筋77%と全ての背側の筋で高値を示し、中でも半腱様筋と傍脊柱筋は有意に高かった。挙上する際の肩甲帯~足部の距離がHEはWBよりも長い。殿部を挙上する高さが異なるため一概には言えないが、この長さの影響で背側筋群に高値結果が出たと考えた。そのひとつとしてHEでは膝関節伸展位のため二関節筋である半腱様筋は股関節伸展筋としても働きWBより筋力が発揮されたと考えた。また、HEでは体幹を挙上させる際に、半腱様筋、中殿筋が股関節固定筋として働いたためWBよりも高値を示したと考えた。
  • 小幡 匡史, 川上 晶子, 南谷 晶
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 435
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】殿部挙上運動(以下ブリッジ動作)は、大殿筋よりハムストリングスや脊柱起立筋等の筋活動を高め、動作を行っていることが多く、また、個々によって様々な足部肢位をとっている。真鍋らは、足関節背屈位でのブリッジ動作がハムストリングスの活動を抑制すると報告している。この報告からclosed kinetic chain動作であるブリッジ動作の筋活動は、荷重面である足部からの影響を受けていると考えられる。そこで我々は、ブリッジ動作時の水平面での足部肢位の違いが、ハムストリングスに対する大殿筋の活動の比率にどのような影響を及ぼすか検討し、若干の知見を得たので報告する。
    【方法】対象は健常者8名(男性4名・女性4名、平均年齢29±3.8歳)であった。運動開始肢位は、背臥位にて骨盤と踵部の位置を一定とした膝立ち位とし、足関節は傾斜台を使用して背屈位とした。運動課題は3条件(1.足関節10度外転位、2.足関節中間位、3.足関節10度内転位)でのブリッジ動作を5秒間実施するものとし、各運動課題を順序は無作為に3回施行した。測定は蹴り足側とし、被験筋は大殿筋・大腿二頭筋・半腱様筋とした。測定機器はノラクソン社製テレマイオ2400(EM-401)を使用し、表面筋電図を記録した。データ処理は、表面筋電から全波整流平滑化筋電図を求め、ブリッジ動作開始2秒後から2秒間の積分筋電値を正規化した(%MVC)後、ハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋)に対する大殿筋の割合を算出した。統計処理は、Friedman検定と多重比較検定を実施した(p<0.05)。
    【結果】Friedman検定の結果3条件で有意差(p<0.01)が認められ、多重比較の結果、足関節外転10度と比較して足関節中間位 (p<0.05)、足関節内転10度(p<0.01)で有意に低値であった。
    【考察】統計結果から足部肢位を変化させブリッジ動作を施行した際、足関節10度外転位では足関節中間位、足関節10度内転位と比較してハムストリングスに対する大殿筋の%MVCの割合が高い傾向にあると認められた。これは足部を外転位にしたことで、距骨下関節は回内-外反位となり、足圧中心の内方移動に伴い膝関節外反傾向になる。この膝関節外反を制御するため、股関節での外転・外旋作用が必要となり、ハムストリングスに対する大殿筋の割合が増加したものと考える。よって、大殿筋の筋力増強を目的とした場合、足関節外転位に設定した方が選択的な筋力増強効果が望めることが示唆された。また、ブリッジ動作を行う際は足圧中心の制御を考慮し、足部肢位を決定することが選択的な筋活動を行う重要な要素であると推察される。足部肢位の違いによるブリッジ動作について、足圧中心の計測を含めた筋活動の検討が今後の課題となる。

  • 移乗動作自立度の違いによる比較
    大田 瑞穂, 渕 雅子, 山本 澄子
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 436
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】移乗動作には身体の向きを変えるという大きな特徴があるが、脳血管障害患者では方向転換が困難であることが多い。本研究では方向転換でのステップ動作に着目し、移乗動作自立者および非自立者の比較検討を行い、参考データとして健常者の計測も行った。
    【対象・方法】対象は実用移動が車椅子移動である脳血管障害患者2名(症例A・左片麻痺・女性・69歳・移乗動作自立、症例B・左片麻痺・女性・60歳・移乗動作監視)、健常者1名(女性・70歳)。計測は三次元動作解析装置VICON MX13と床反力計3枚を使用し、マーカーは13個貼付した。計測動作は静止立位から非麻痺側下肢を右斜め前方にステップしながら90°の方向転換を行う健側回りの動作とした。パラメーターは (1)COG・COP軌跡、(2)下肢関節モーメント(以下、MO)、(3)下肢関節角度、(4)ステップ側接地までの骨盤回旋角度を算出した。
    【結果】 (1)COG軌跡は症例A・健常者で、支持脚方向へ移動しながら緩やかなカーブを描き、ステップ側へ大きく移動していく軌跡であった。症例Bでも類似した軌跡が見られたが、初期からCOG位置がステップ側へ大きく偏位しており、ステップ時に支持脚まで移動することはなかった。COPはCOGが支持脚へ動き始める時期に、一度ステップ側へ移動する逆応答反応が健常者・症例Aでは見られたが、症例Bでは見られなかった。そこで、逆応答反応期間で(2)・(3)を抽出した。(2) 3名共に右股関節外転MOが増加し、症例A・健常者は左股関節外転MOの減少、症例Cは左股関節内転MOが増加した。(3)3名共に右股関節外転角度が増加し、左股関節内転角度は増加した。(4)骨盤の右回旋はCOGの支持脚への移動と同時に開始され、変化量は症例A24.7°、症例B12.4°、健常者35.5°であった。(2)・(3)の値について症例Bが最も左右差が大きく、右股関節外転MOや内転角度が高値を示した。
    【考察】逆応答反応は前後方向で起こらず左右方向でのみみられた。これは方向転換開始時にCOGの前進よりも側方移動が重要であり、同時期に骨盤の右回旋が起こっていることから、側方制御を骨盤の回旋により、斜め方向制御へと変更させているとことが示唆された。結果、症例Bでは側方制御が行えていないことで骨盤回旋角度の変化量が最も低値を示した。支持脚へCOGを押し出す股関節内外転MOは健常者・症例Aと同様な波形パターンを示すものの、初期よりCOG・COPがステップ側へ偏位している上に、右股関節内転角度が大きいため、それ以上に右側方へCOPを移動することが行えず、COGを支持脚へ押し出すための回転MOを発生させることが困難であったと考えられる。今回は方向転換ステップ初期では側方制御が重要であり、それには両側股関節の協調的な働きが必要であると示唆されたたが、今後は症例数を重ねていくとともに、前後・側方ステップとの関連性も検討して行きたい。
  • 金井 章, 斉藤 良太, 早川 友章, 吉倉 孝則, 種田 裕也, 小栗 孝彦, 小林 篤史
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 437
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】変形性股関節症は、股関節軟骨に変性、摩耗が生じることで関節に変形をきたす疾患である。それに伴う疼痛、可動域制限、筋力低下により歩行などの動作にも制限が認められ、特に関節症の進行に伴い股関節は屈曲拘縮を生じる。その理由として、股関節内圧の低下、臼蓋被覆の代償などが考えられる。しかし、それに伴う歩行時の股関節についての運動力学的検討は十分に行われていない。そこで今回、股関節に伸展制限をした場合の歩行の変化について検討を行ったので報告する。
    【方法】対象は、本研究について説明し、同意の得られた健常男性8名(平均年齢20.1±1.1歳)とした。被験者は、我々の作成した布製の股関節伸展制限装具を着用し、股関節伸展制限無しと有りの2条件で、8mの歩行路を快適速度で歩行させた。計測には、三次元動作解析装置VICON MX(VICON社製)と6枚のフォースプレート(AMTI社製)を用いた。股関節伸展制限角度の程度は、手すりを把持した立位にて、股関節最大屈曲、伸展の自動運動可動域を計測して確認した。統計学的検討には、T検定を用いた。
    【結果】股関節の自動運動可動域は、屈曲では制限無し平均92.7±8.4度、制限有り平均88.9±8.0度と有意な差は認められなかったものの、伸展では制限無し平均13.7±3.8度、制限有り平均-1.7±9.9度と有意(p<0.01)に制限有りで減少した。歩行速度、歩幅、歩行率は、制限無しと有りで有意な差は認められなかった。歩行時の関節可動域は、股関節屈曲では制限有りで有意(p<0.05)に増加し、股関節伸展では制限有りで有意(p<0.01)に減少した。膝関節では、屈曲において制限有りで有意(p<0.01)に増加し、伸展では制限有りで有意(p<0.01)に減少した。足関節底背屈角度には、有意な差は認められなかった。歩行時の関節モーメントは、股関節では屈曲モーメントにおいて制限有りで有意(p<0.05)に低下したが、伸展モーメントでは有意な差は認められなかった。膝関節では、立脚中期に見られる屈曲モーメントにおいて制限有りで有意(p<0.01)に低下したが、伸展モーメントには有意な差は認められなかった。足関節では、底屈モーメントにおいて制限有りで有意(p<0.05)に低下したが、背屈モーメントには有意な差は認められなかった。
    【考察】歩行速度、歩調、歩幅維持のために、股関節可動域を屈曲により代償し、それに伴い膝関節は屈曲位となっていた。また、立脚中期から後期にかけての股関節屈曲モーメント、足関節底屈モーメントが低下した一方、立脚中期に認められる膝関節屈曲モーメントが消失し、立脚期中は伸展モーメントが維持されていたことから、推進力の発揮は膝関節により代償されていると考えられた。
  • 斉藤 琴子, 菅原 憲一, 田辺 茂雄, 鶴見 隆正
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 438
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】リズム形成に障害を生じるパーキンソン病や脳血管障害を対象とし,リズムの改善を目的にペース音や口頭によるリズムに同調させた歩行練習を行っている.だが,歩行時に様々なリズムの変化をさせた場合,立脚期と遊脚期における時間の割合または筋出力については明らかにされていない.今回,リズムに同調して歩行パターンを様々に変化させたときの時間および前脛骨筋と腓腹筋の筋活動量について検討したので報告する.
    【方法】対象者は健常若年者8名(男性2名,女性6名)であった.被験者には研究の趣旨について十分説明を行い,同意の得られた後に施行した.測定方法は電子メトロノームから,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,200回/minの18種類のリズム音を発信し,リズムに同調した歩行を行わせた.その際,歩行中の右下肢の前脛骨筋と腓腹筋の活動を表面筋電図(NORAXSON社製)にてサンプリング周波数1.5kHzで記録した.また,同時に右側の足底(踵部と第一中足骨底)にフットスイッチを装着し,立脚期と遊脚期を同定した.分析は安定した15歩行周期について解析を行った.筋電図信号は全波整流後,歩行周期毎にRMS値を算出し,1歩行周期を100%とし遊脚期と立脚期から相対的な筋活動量(iEMG)(%)を求めた.時間についても1歩行周期時間を100%とし,立脚期と遊脚期から相対的な時間比(%)を求めた.統計処理にはStat View5.0(SAS社)を用い一元配置分散分析,多重比較検定,および対応のないt検定を行い,有意水準は5%とした.
    【結果】時間比に関しては多重比較検定を行い,その特徴をもとに150回/minを境に2相に分割されるA群と,70,150回/minの2つのテンポによって分割される3相からなるB群に分類された.前脛骨筋および腓腹筋のiEMG比もこの時間比による群に分類した.時間比,iEMGについてA群は対応のないt検定を行った結果,時間比およびiEMG比 ともに150回/minの前後には有意差がみられた.B群は多重比較検定を行った結果,時間比およびiEMG比には各相で有意差がみられた(前脛骨筋のみ150回/min前後では有意差はなかった).
    【考察】リズムに同調して歩行させた際に,時間比,iEMG比には幾つかの相が認められ,各相の間には有意な相違があることがわかった.しかし相の中は運動パターンも比較的に安定していると考えられた.今回行った全てのテンポは同一の歩行プログラムによって遂行される同一歩行形態ではなく,幾つかの相に分割され,それぞれの相に特有の相対タイミングが存在していることが示唆された.臨床上リズムに同調させ歩行練習を行う場面は多いが,単一のリズムだけでなく,様々なリズム変化を伴った歩行練習の必要性が示唆された.



  • 磯野 めぐみ, 伊藤 純一, 金井 章, 元田 英一, 鈴木 康雄
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 439
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】吊り上げによる体重免荷装置は,両下肢に均等な荷重をかけることが可能であり,免荷量のコントロールも容易である.そのため,歩行パターンを大きく崩さない免荷歩行訓練が可能となるのではないかと考えた.本研究の目的は,免荷に伴う下肢関節の角度,関節モーメントの変化から,体重免荷が歩行パターンに及ぼす影響を検討することである.
    【方法】本研究を理解し,同意の得られた健常成人男性8名(平均年齢21.4±0.2歳,平均身長170.3±2.1cm,平均体重60.7±1.6kg)を対象とした.吊り上げ装置Partner(MEIDEN社製)を用い,免荷量を全荷重,1/3免荷,2/3免荷に設定し,2mのフォースプレート(キスラー社製)が中央に設置された10mの歩行路を歩行させた.歩行率は90歩/分とし,歩幅は被験者が歩行しやすい歩幅とした.被験者に反射マーカーを貼付し,三次元動作解析装置Vicon250(oxford metrics社製)および床反力計(キスラー社製)で歩行の計測を行った.その結果から,筋骨格モデル(労災リハビリテーション工学センター製)を用いたシミュレーションにより,股関節・膝関節・足関節モーメント,角度を算出した.統計は分散分析を用い,各群内の多重比較にはBonferroniの方法を用いて免荷量ごとの比較を行い,有意確率は5%未満とした.
    【結果】吊り上げに伴い骨盤の高さ位置は有意に増加し,骨盤上下移動,床半力は有意に減少した.股関節・膝関節・足関節モーメントは,免荷量の増加とともに有意に減少した.股関節角度は,免荷量の増加に伴い最大屈曲角度と最大伸展角度が有意に減少したが,膝関節角度では有意な差が見られなかった.足関節角度は,免荷量の増加に伴い最大背屈角度が有意に減少した.歩幅は,各免荷量間で有意な差は認められなかった.
    【考察】吊り上げることで骨盤位置(重心)が上がると同時に,下がりにくくなるため上下移動も減少し,全荷重歩行時よりも高い重心位置での歩行が,歩行周期全体で強いられる.そのため,床半力が減少し,HC時の衝撃や立脚後期時の床反力(推進力)が減少する.正常歩行では,両脚支持期に重心の高さは最も低くなる.しかし,今回はつり上げられていることにより,両脚支持期における重心の下降が生じないため,両脚支持期に下肢長が長くなる必要がある.そのため,股関節伸展角度を減少させることで相対的に重心下降の減少を代償したと考えられる.また,吊り上げ装置は天井に設置されたレールを滑走するため,水平面上でのレールの進行方向に対しての抵抗が少なく,慣性により推進力が維持される.そのため,床反力に現れる推進力が低下したのにも関わらず,歩幅の減少が見られなかったと考えられる.吊り上げによる免荷により,低負荷(床半力・関節モーメントの軽減)での歩行訓練ができることが確認された.
  • 健常若年者における検討
    小宅 一彰, 三和 真人
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 440
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    歩行の効率を評価するひとつの方法として,立脚相における重心の運動を振り子運動に見立て,位置エネルギーと運動エネルギーの交換率を算出する方法がある.本研究の目的は,健常若年者の立脚相における力学的エネルギー交換率に影響する要因を検討することである.
    【方法】
    健常若年者12名(男性6名,女性6名,平均年齢21.3歳,平均身長1.65m,平均体重56.7kg)を対象とした.対象者は床反力計を設置した5mの歩行路を自由な速度で歩行し,3試行のデータを収集した.従属変数を立脚相の力学的エネルギー交換率,独立変数を立脚相における足関節・膝関節・股関節の関節運動,および関節モーメントとしStepwise回帰分析を行った.また変数間の相関をPearsonの相関係数により検討した.
    【結果】
    独立変数として,踵接地直後の足関節背屈モーメント(平均0.11N・s/kg)および膝関節屈曲運動 (平均15.6°),立脚中期の膝関節伸展運動 (平均10.8°)が選択され,いずれも力学的エネルギー交換率(平均53.6%)の増加に寄与していた(R2=0.93,p<0.01).股関節伸展運動 (平均34.5°),膝屈曲運動時膝関節伸展モーメント(平均1.00N・s/kg),膝伸展運動時膝関節伸展モーメント(平均1.86N・s/kg)は力学的エネルギー交換率と相関を示した(それぞれr=0.73,r=0.65,r=0.79).またこれらの変数は,回帰式の独立変数に選択された膝関節伸展運動とも相関を示していた(それぞれr=0.80,r=0.58,r=0.68).
    【考察】
    踵接地直後の足関節背屈モーメントや膝関節屈曲運動は,重心落下の運動量を前進運動へ変換するために必要な要因である.また引き続いて膝関節が伸展することで位置エネルギーを十分に回復することができる.それゆえ,振り子運動を効果的に用いた歩行が可能となり,立脚相における高い力学的エネルギー交換率が維持されると考えられる.股関節伸展運動や膝関節伸展モーメントは選択された独立変数と相関があるため,回帰式からは除外されてしまうが,股関節伸展運動は体幹の前進運動,膝関節伸展モーメントは膝関節の安定化に寄与することで力学的エネルギー交換率に影響すると考えられる.今回得られた知見は,力学的な効率という視点から歩行能力改善を図る際に着目すべき項目を示したものであり,臨床上必要な情報であると考えられる.
  • [18F]fluorodeoxyglucoseを用いたPositron Emission Tomographyによる検討
    島田 裕之, 金子 文成, 古名 丈人, 石渡 喜一, 鈴木 隆雄
    専門分野: 理学療法基礎系
    セッションID: 441
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    本研究の目的は、成人と高齢者の長時間歩行時の下肢筋活動を、[18F]fluorodeoxyglucoseを使用したPositron Emission Tomography(FDG PET)によるグルコース代謝評価から分析し、歩行時に主要な働きをする筋を明らかにすることである。
    【方法】
    対象は成人男性10名(平均年齢24.1±2.1歳)と高齢者男性6名(平均年齢75.5±2.1歳)であり、50分間のトレッドミル歩行を実施し、FDG PET撮影を医師の立合の下で行った。ベルト速度は4.0 km/h (66.7 m/min)に設定し、4.0 km/hの歩行を安全に保持することができない場合にはベルト速度を減速させた。関心領域(regions of interest: ROI)の設定は、PET画像上、筋の同定が可能であった股関節、膝関節、足関節の屈曲、伸展、外転の主動作筋を対象とし、各ROIにおける糖代謝は標準化集積値(standardized uptake value: SUV)を用いて評価した。SUVは体重あたりのFDG投与量に対する関心領域の放射能の割合を現すもので、定量指標として筋間の糖代謝の比較に用いることが可能であり、高値ほど高い糖代謝状態を示す。分析は、成人と高齢者それぞれにおいて関節運動ごとのSUVの差を検討するために多重比較検定を用いて比較した。また、各関節運動筋内における筋間の活動を一元配置分散分析および多重比較検定にて比較した。なお、研究の実施前には、被検者に研究の説明を実施し、書面にて同意を得た。また、本研究は東京都老人総合研究所の倫理委員会からの承認を受けて実施した。
    【結果】
    各関節運動筋間でFDG取り込み量のSUVを比較すると、成人の平均値では股関節外転筋、足関節底屈筋、足関節背屈筋のSUVが有意に高く、高齢者では、股関節外転筋が、その他すべての関節運動筋よりも有意に高いSUVを示し、股関節伸展筋が膝関節伸展筋より有意に高いSUVであった。成人で高値を示した足関節底背屈筋は、高齢者では低いSUVを示した。
    両群ともに有意に高いSUVを示した股関節外転筋では、成人では小殿筋が中殿筋の約3倍の値を示し有意に高値を示した。一方、高齢者では筋間に有意差を認めず股関節周囲筋全般にわたる高い糖代謝が観察された。
    【まとめ】
    長時間の歩行遂行には、股関節外転筋が重要な役割を果たし、高齢者では足関節底背屈筋の活動が成人と比較して相対的に低く、これらの筋群に着目した理学療法が歩行持久性を向上させる効果的な介入方法となりえる可能性が示唆された。
  • 小栢 進也, 建内 宏重, 佐久間 香, 市橋 則明
    セッションID: 442
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】整形外科術後や脳卒中片麻痺患者の患者では、toe-inやtoe-outで歩行することが多い。立位ではtoe-inにより中殿筋、toe-outにより大腿直筋の筋活動が増加すると言われているが、動作時の変化を検討したものは少ない。歩行中の筋活動量を調べることは、運動プログラムの設定、評価を行う上で重要と考えられる。本研究の目的は、toe-in・toe-outによる歩行時の筋活動量変化を明らかにすることである。
    【方法】対象は本研究に同意した健常成人13名(男7名、女6名)とした。平均年齢23.5歳、身長165.8cm、体重60.1kgであった。筋電図は表面筋電図計(Noraxon社製)を使用し、中殿筋、大臀筋、大腿直筋、内側広筋、長内転筋、腓腹筋、ヒラメ筋を測定した。下肢をtoe-in(30°内旋位)、neutral(内外旋中間位)、toe-out(30°外旋位)と変化させて歩行した際の筋活動量を計測した。歩行率はメトロノームで110歩/分に規定した。体幹は垂直位で前方を向き、膝と足部が同方向になるよう指示した。またフットスイッチを踵、第一中足骨、第五中足骨に取り付けて立脚時間を計測した。測定値は立脚期5歩行分の平均値を採用し、各筋の最大等尺性収縮時の値を100%として正規化した%RMS(Root Mean Square)で表した。筋活動量は立脚期全体の平均値および立脚期を10%ごとに分割した区間の活動量を算出した。なお統計学的分析として、立脚期全体および区間別の筋活動量に対して一元配置反復測定分散分析および多重比較を用いた。
    【結果と考察】立脚期全体の筋活動量にてneutralより有意に高い値を認めた筋は、toe-inで長内転筋(toe-in 6.7%、neutral 4.7%、toe-out 4.6%)、toe-outで大腿直筋(toe-in 4.0%、neutral 4.0%、toe-out 6.7%)であった。立脚期の区間別で比較すると、立脚初期にtoe-inで腓腹筋(toe-in 10.3%、neutral 6.5%、toe-out 6.8%)、ヒラメ筋(toe-in 21.2%、neutral 12.4%、toe-out 12.8%)がneutralに対して有意に高い活動を示した。立脚中期ではneutralに対してtoe-in、toe-outともに中殿筋(toe-in 13.5%、neutral 5.9%、toe-out 19.1%)、toe-outで大腿直筋(toe-in 2.2%、neutral 2.4%、toe-out 5.6%)がそれぞれ有意に高い値を示した。さらに立脚後期はneutralに対してtoe-inで長内転筋(toe-in 16.1%、neutral 12.1%、toe-out 9.4%)が有意に高い活動を示した。toe-in歩行で高い活動示した筋の役割としては、立脚期初期の下腿三頭筋は衝撃吸収、中期の中殿筋は姿勢保持、後期の内転筋は推進力にそれぞれ働いたと推測される。一方、toe-outでは立脚中期に中殿筋と大腿直筋の筋活動が増加するが、衝撃吸収、推進力に関わる立脚初期と後期にはneutralと同等の筋活動であることが示された。
  • 金井 秀作, 島谷 康司, 長谷川 正哉, 吉川 夕貴, 田坂 厚志, 遠藤 竜治, 前岡 美帆, 小野 武也, 大塚 彰
    セッションID: 443
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】理学療法における歩行練習において床面状態は考慮すべき項目であるが,一般に平地を用いて実施されている.その上で歩行時の応用性を向上させるために簡易なスポンジブロック等を使用することはあるが多くは障害物を超えるという運動スキルの向上を目的としている.一方で運動負荷としての歩行路状態の影響についての検証は数少ない.そこで不安定歩行路としての砂浜に着目し,下肢筋群への運動負荷の影響について検証した.

    【方法】健常成人男性7名と女性6名を対象とした.なお,対象者全員に対し研究の主旨を説明し参加・協力の同意を得ている.実験は瀬戸内海に面した鷺島海岸で実施し,計測歩行路として,陸上平地と砂浜海側および岸側とした.陸上平地および砂浜では10m歩行を行なわせ,各条件3回ずつ計測を行なった.運動負荷量の計測として動作表面筋電計(Noraxon社製マイオリサーチXp)を用いた.また,歩行周期の確認のため,デジタルビデオ(DV)による動画も同期計測した.得られた筋電波形の解析では3歩行周期を平均化し,RMS処理を行い,%MMTを用いて3条件での比較を行った.なお,計測対象となる下肢はすべて右下肢とし,対象筋は,前脛骨筋,腓腹筋,大腿直筋,外側広筋,大腿二頭筋,中殿筋,母趾外転筋の7項目とした.計測結果の統計検定では,一元配置の分散分析および多重比較を行った.

    【結果】有意差を認めたのは半腱様筋における海側砂浜と陸上との間のみであった.全体的には岸側砂浜>海側砂浜>陸上の順で筋活動が高い傾向を示した.なお,今回有意差は認めなかったが母指外転筋において前述した傾向が最も強かった.

    【考察】筋電図波形では砂浜歩行について歩容にばらつきが多く,砂浜という特殊な立地条件ではバランスを保つスキルにおいて個々の能力が大きく異なることが考えられた.つまり定性歩行には至らなかったケースがほとんどであった.その定性歩行にいたらない特殊な状況においてハムストリングによる緩衝作用としての役割が大きかったと考えられる.砂浜での歩行では足指の筋である拇指外転筋の活動が他に比べ大きく,立地時の特異な負荷がうかがえる.通常、不安定な地面において正中位を保とうとする場合,重心は前足部に移行し足指による補正が求められることから同じ現象が砂浜での歩行において負荷として生じていると考えられる.

    【まとめ】本実験結果からいわゆる平地歩行とは異なる砂浜歩行の特異な運動負荷(筋活動)が確認された.
  • 臨床応用の勧め
    柊 幸伸
    セッションID: 444
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    理学療法臨床場面で実施される動作分析は観察を中心とした評価手法が主流となっている。臨床環境に適した簡便でコストがかからない手法であるが、評価者の主観的解釈に依存する部分があるという欠点を内包している。本研究では、小型の3軸角速度センサを用いて、臨床動作分析のこの欠点を補完する客観データを得ることができ、臨床環境に適応する動作分析手法を開発、検討することを目的とした。
    【方法】
    被験者は理学療法学科2年在籍の学生47名(男性24名、女性23名)であった。3軸角速度センサを2セット用い、下腿および大腿の外側に貼付した。歩行周期を同定するため、足底に4枚の感圧センサを貼付した。各センサをA/D変換器を経由してパソコンにケーブルで接続した。平地上での自由歩行を課題とし、計測時間は10秒間、サンプリング周波数は100Hzとした。計測後、下腿部のセンサの値より大腿部のセンサの値を減算し、膝関節の動きを算出した。計測データより3歩行周期を抽出し、各1歩行周期分のデータが100個となるよう統一し、分析した。
    【結果】
    級内相関係数(ICC)で分析した3歩行周期間の再現性は、屈曲・伸展0.960、外転・内転0.943、外旋・内旋0.830であった。全被験者の1歩行周期中の屈曲と伸展の最大角速度はそれぞれ、313.1±70.7度/秒、297.7±54.9度/秒であり、その出現時期は歩行周期の85.8±3.4%と59.7±3.1%の時点であった。男女間での級内相関係数(ICC)は0.991であった。外転・内転の最大角速度は、91.6±44.4度/秒、84.8±47.7度/秒であり、その出現時期は歩行周期の55.7±23.2%と77.5±16.9%の時点であった。外旋・内旋の平均角速度は各々、113.5±42.2度/秒、124.3±44.2度/秒であり、その出現時期は歩行周期の58.5±35.4%と61.7±10.2%の時点であった。
    【考察】
    角速度センサと感圧センサを利用した今回の歩行分析手法で、簡便な操作で膝関節の歩行周期単位の動きの客観データを入手することができた。自由歩行での膝関節の動きの中で矢状面上の屈曲伸展運動は、同年齢層の被検者では近似しており、個人差や男女差も少なかった。外転・内転運動や外旋・内旋運動は個人差が認められた。しかし、各個人内での運動パターンは歩行周期毎に差は少なく、歩行時の膝関節の運動は健常青年被験者個人内ではパターン化された運動であるといえる。これら運動パターンを計測記録し、健常者と有疾患者の比較、有疾患者の経時的変化の比較は、理学療法評価に有益である。当機器構成による動作分析は、その信頼性・妥当性も先行研究により評価されている。機器の大きさや操作性、経済性の条件を付加して考えても臨床使用が可能な評価技法であり、広く利用されることを期待する。
  • 戸村 雅美, 浦辺 幸夫, 神里 巌, 宮里 幸, 宮下 浩二
    セッションID: 445
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】高齢者の歩行能力を含めた運動能力の評価は、健康維持において重要である。一般的に高齢者の運動能力は、10m最大歩行、開眼片脚立位、握力、下肢筋力などが測定される。臨床では、運動能力が低下した高齢者は後への歩行が困難となり、なかには大きくバランスを崩す例を経験する。この臨床経験から後への歩行が、運動能力のひとつである歩行能力・バランス能力を総合的に評価できる可能性があると考えた。本研究の目的は、高齢者における10m最大後向き歩行の有用性について一般的な測定項目との関係を明らかにすることとした。
    【方法】対象は外来通院中で自立歩行可能な高齢者34名(男性13名、女性21名)とした。年齢76.2±4.1歳、身長155.5±9.0cm、体重53.9±9.8kgであった。また歩行に支障をきたすような変形性膝関節症、変形性脊椎症などの骨関節疾患を有するもの、脳血管障害の既往があるものは対象から除外した。測定項目は、10m最大後向き歩行、10m最大歩行、開眼片脚立位、握力、30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)とした。10m最大後向き歩行と10m最大歩行の統計学検定にはPeasonの相関係数を用い、10m最大後向き歩行および10m最大歩行と、開眼片脚立位、握力、CS-30の各要因の検定には重回帰分析(ステップワイズ法)を用いた。危険率5%未満を有意とした。本研究は、H大学大学院保健学研究科倫理審査委員会の承認を得て行われた。
    【結果】10m最大後向き歩行の平均時間は11.2±4.5秒、10m最大歩行は6.0±1.2秒、開眼片脚立位は45.3±42.2秒、握力は25.5±8.6kg、CS-30は18.4±4.2回であった。10m最大後向き歩行と10m最大歩行の間に有意な相関を認めた(r=0.69、p<0.01)。10m最大後向き歩行を目的変数とした結果、選択された因子は開眼片脚立位(p<0.05)、CS-30(p<0.01)であった。同様に、10m最大歩行を目的変数とした結果、選択された因子は握力(p<0.01)、CS-30(p<0.05)であった。
    【考察】歩行能力を反映しているとされる10m最大歩行と10m最大後向き歩行との間に相関を認めたことで、10m最大後向き歩行が同様に歩行能力を反映することが示された。また、10m最大後向き歩行との関連において開眼片脚立位とCS-30が選択されたことは、運動能力のなかでもバランス能力と下肢筋力を反映していると考えられる。一方、10m最大歩行では握力とCS-30が因子として選択され、筋力とのみ関連を認めたが、バランス能力と関連があるとの報告があることからも再検討の必要があると考える。本研究により、10m最大後向き歩行が高齢者の運動能力である歩行能力、バランス能力、筋力を総合的に評価できる可能性があることが示唆された。今後は対象数を増やしさらなる詳細な検討を行っていきたい。
  • 7年間の縦断研究より
    滝澤 恵美, 岩井 浩一, 伊東 元
    セッションID: 446
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    我々は、これまでの研究で重複歩距離が若年者と同程度保たれている高齢者であっても、重複歩距離のばらつきを示す変動係数は有意に高い特徴があることを示唆した。そこで本研究では、地域在住高齢者について、重複歩距離の加齢変化について縦断研究から検討することを目的とした。

    【方法】
    本研究の対象者は、2001年度から2007年度に対象者の居住地区公民館で開催した体力測定に2回以上参加した高齢者64名(2001年度平均年齢72.3±3.8)であった。なお、本体力測定は2001年度、2004~2007年度の7年間に5回、同時期・同会場で実施した。7年間に本体力測定に参加した高齢者は104名であった。104名中参加回数1回であった者が40名であり本研究の対象からは除いた。なお、体力測定に2回参加した者が19名、3回が24名、4回が16名、5回が5名であった。2回以上参加した64名中2001年度の参加者数は22名、2004年度は45名、2005年度は48名、2006年度は39名であった。なお、いずれの年度の測定においても対象者への十分な説明と同意を得た後に行なった。
    10m歩行における重複歩距離の測定は、靴底にスタンプ(2cm×2cm)を貼付した同一規格の靴を履いてもらい、平坦な歩行路に敷かれた幅0.9m・全長16mの記録紙上を自由歩行速度で歩いてもらった。その後、スタンプ跡から記録紙上の前後3mを除く中10m区間の重複歩距離を測定し、平均値・SD・CVを算出した。なお、対象者64名の7年間・5回計測における重複歩距離の時系列データ欠損部分(不参加年度)については、トレンド法を用いて予測値を割当てた後、測定年度を要因とした反復測定による一元配置分散分析および多重比較(Bonferroni)を行い観察変数の縦断的変化について検討した。

    【結果】
    重複歩距離の平均値は、初年度(平均年齢72歳)と比べると5年後(平均年齢77歳)以降有意に低下することが確認された。初年度と比べ、5年後には対象者の重複歩距離の平均値は3.9cm、6年後には5.1cm短縮していた。しかし、重複歩距離のSD、およびCVについては、年度間で有意な差を認めなかった。

    【考察】
    諸家の加齢による歩行能力低下の研究結果では、75歳から歩行速度の低下が加速すると報告されている(Gibbs et all. 1996)。本研究は、歩行速度と関連する重複歩距離の平均値が75歳以降に低下したことからそれらの報告を支持するものであった。一方、重複歩距離のSDおよびCV値については、平均値と比べ経過を観察した7年間に有意な加齢変化は確認されなかった。若年者と比べると有意に高値を示す重複歩距離のSDやCVの値は、70歳以降は加齢変化によって有意な変化をみせず維持されていた。加齢歩行に関連する変数において、老年期に加齢変化が現れやすいものと加齢要因のみでは変化せず制御・維持されている変数があることが推察された。
  • 平塚 智康, 鈴木 由佳理, 才藤 栄一, 大塚 圭, 村岡 慶裕, 伊藤 慎英, 加賀谷 斉, 青木 健光
    セッションID: 447
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    三次元トレッドミル歩行分析は,省空間で任意の速度設定で連続多数歩記録できるという特長を有しており,臨床での活用に優れている.本分析法においては,通常,身体10箇所に設置されたマーカ(10マーカ法)を4台のカメラで撮影する.この10マーカ法においては,解析時,4方向からの映像につき,各10個のマーカを認識・追尾させる必要があり,この作業が解析時間の大半を占めていた.今回,解析の効率を向上させるために,基本的指標(時間・距離因子及び重心軌跡)の解析に必要と考えられる最小限のマーカを2台のカメラにて計測する簡易歩行分析法(最小限マーカ法)を考案し,その有用性について検討した.
    【方法】
    対象は,本研究の目的を説明し,参加の同意の得られた健常者5名(年齢:26.8±5.3歳,身長:164.4±8.6cm,体重:57.0±9.6kg)とした.本研究計画は当大学倫理委員会の承認を得た.被験者に歩行速度2.0km/hのトレッドミル上を正常歩行および2種類の模擬片麻痺異常歩行(左上肢屈曲歩行,左下肢分廻し歩行)をさせ,三次元動作解析装置(KinemaTracer,キッセイコムテック社製)を用いて,サンプリング周波数60Hzにて20秒間計測した.撮影はトレッドミル空間の対角線上の4隅に設置したCCDカメラで行い,最小限マーカ法では左右後方の2台の映像を使用した.マーカは,両側の肩峰,大転子,大腿骨外側上顆,外果,第5中足骨頭の10箇所,腰部(身長の55%),両側の踵部後面の3箇所を加えた計13箇所に貼付した.時間・距離因子に関しては,10マーカ法では外果マーカ,最小限マーカ法では踵部後面マーカから算出し,両者をWilcoxonの符号順位検定を用いて比較した.重心軌跡に関しては,10マーカ法では各肢節の重心から算出した合成重心とし,最小限マーカ法においては腰部マーカを仮想重心とし,左右(X軸)・前後(Y軸)・上下(Z軸)方向の波形相関と移動距離についてSpearman順位相関係数を用いて検討した.
    【結果】
    10マーカ法と最小限マーカ法の重複歩時間と歩行率は,3試行パターン全てで有意差を認めなかった.しかし,重複歩距離は3パターンとも最小限マーカ法で有意に延長(差1.14~1.25cm)し,歩幅は正常歩行で最小限マーカ法が有意に長い傾向(差2.21~2.41cm)となった.歩行周期にて加算平均したX,Y,Z軸の重心軌跡の波形相関は,3パターン全てで高い相関を認めた.重心の移動距離はX,Y軸において高い相関を認め,Z軸は劣っていた.
    【考察】
    最小限マーカ法で算出した時間因子は,10マーカ法と等価と考えられたが,奥行き計測である距離因子には単純な手法では一定の限界があると考えられた.マーカ装着部位やCCDカメラ高さに更なる検討が必要であると考えられた.重心軌跡に関しては,X,Y軸の軌跡の類似性が高く,臨床的指標への応用が期待できると考えた.今後,さらに解析精度を高め,簡易歩行分析を有用なものにしたい.
  • 3軸加速度計を用いた歩行解析
    土井 剛彦, 平田 総一郎, 小松 稔, 中楚 友一朗, 島村 雅徳, 勝 真理
    セッションID: 448
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】歩行の定常性を示す指標として、stride regularity(SR)を検討することが有用であるとされている。SRは加齢や性別などの生物学的特性による影響を受けず、身体機能などと正の関係があるという報告がされている。一方で、靴の適合性が歩行にどのような関係性を有しているかは未だ明らかになっていない。そこで、本研究の目的は靴の適合・不適合が歩行とどのように関係するか3軸加速度計を用いた歩行解析により検討する事とする。
    【対象・方法】対象者は地域に在住し、平成18年度歩行支援プログラムに同意の得られたボランティアの中から適合基準を満たした83名(女性36名、男性47名、平均年齢67.7±4.0歳)とし、介入研究を行った。普段履きの靴の適合性を(1)母趾の爪先部に余裕がある(2)踏付部の厚さ(3)踏付部内側(4)踏付部外側(5)踵の脱げ易さ、の5項目別に5段階評価し両側のいずれか少なくとも1箇所に過小または過大と評価された者を不適合群、それ以外を適合群とした。足に適合した運動靴(ASICS製)の選択と装着を介入とし、各群に対し行った。歩行解析は介入前後2回行い、介入前は普段履きの靴、介入後は適合した靴を装着の上、自由歩行の条件下に計測した。計測には小型の3軸加速度計(サンプリング周波数は200Hz)を用い、加速度計は第3腰椎棘突起部付近に接するようにゴムベルトにて装着した。SRは垂直方向の加速度波形約10秒間における自己相関係数から算出し、値が1に近いほど定常性が高いことを示す。統計解析は各群に対しpaired designを用い、5%未満を統計学的有意とした。
    【結果】適合群は47名:57%(女性25名、男性22名、67.2±3.7歳)、不適合群は36名:43%(女性22名、男性14名、68.3±4.4歳)であり、不適合の割合は高かった。介入前のSRは適合群で0.76±0.07、不適合群で0.72±0.07(P=0.01)であり有意に適合群が大きく、介入後のSRは適合群で0.77±0.06、不適合群で0.77±0.05(P=0.99)であり有意差は認められなかった。介入前後における?儡Rは適合群で0.01±0.08、不適合群で0.05±0.06(P=0.017)であり、不適合群の方が介入により優位にSRが改善した。
    【考察】本研究から適合群におけるSRは高値をとり、介入により不適合群のSRが優位に改善したことから、靴の適合性は 歩行の定常性に関連し 、適合した靴を履くことで歩行の定常性が改善することが示唆された。歩行の定常性が改善することにより身体機能が向上し、転倒リスクが軽減するとも考えられるが、それらを明らかにするには今後更なる研究が必要であると考える 。
  • 遠藤 優喜子, 高橋 俊章, 神先 秀人, 南澤 忠儀, 須藤 沙弥香
    セッションID: 449
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】ステップ動作は、支持脚股関節周囲や体幹の安定性を高める方法として、理学療法では多く用いられている。しかし、ステップ動作時の筋活動を解析した研究は行われているが、ステップ動作時の体幹と股関節の運動について同時に解析したものはなく、また、さまざまなステップの方向における運動の違いについて詳細に検討した報告はない。そこで本研究の目的は、6方向のステップ動作における体幹・股関節の運動角度を定量的に分析し、各ステップ動作の特徴を比較・検討することである。

    【方法】対象は、文書でインフォームドコンセントを得た、健常成人10名(男性5名、女性5名、平均年齢21.8±0.6歳)である。計測は、三次元動作解析装置(Vicon370)を用い、反射マーカーを、第7頚椎棘突起、第12胸椎棘突起、第1正中仙骨稜、両肩峰、両上前腸骨棘、両大転子、両膝関節外側、左膝関節内側、両外果、両第5中足指節間関節に付け、サンプリング周波数60Hzで記録した。ステップは左下肢を支持脚として、前方、右斜め前方、右側方、後方、前方交叉、後方交叉の6方向に随意的に行った。開始肢位は自然立位で、ステップ長は身長の25~30%とし、それぞれ9試行を行った。各マーカー座標より、体幹屈伸・側屈・回旋、立脚側左股関節屈伸・内外転・内外旋の運動角度を算出し、それぞれの最大運動角度の平均値を6方向のステップ間で比較した。統計処理は、一元配置分散分析の後、多重比較検定を行った。有意水準は5%とした。

    【結果】体幹屈曲は後方(12.4±5.6)と後方交叉(11.7±5.7)で大きく、いずれも前方、右斜め前方、右側方と比較して有意な差が認められた(p<0.01)。体幹右回旋は後方交叉(17.0±8.3)で大きく、他の全方向より有意に大きかった(p<0.01)。股関節屈曲では前方(13.5±5.3)、伸展では後方(23.5±5.8)、内転では後方交叉(9.3±3.0)、外転では右側方(18.1±4.4)で最も高い値を示した。股関節内旋では後方交叉、股関節外旋では前方交叉で最も高い値を示したが、個人によるばらつきが大きかった。

    【考察】ステップ方向別でみると、前方交叉と後方交叉で各運動角度の最大値をとることが多く、6方向の中ではより複雑な運動を必要とすると考えられた。また、6方向のステップ全てにおいて、体幹屈曲の最大角度の値が伸展と比較して著しく高い値を示した。このことから、健常人に見られる安定したステップ動作には、体幹の屈曲を保障するための腹筋群の活動の重要性を示唆するものと考えられた。今後、本研究の結果から臨床におけるステップ動作の誘導方法について、さらに検討を行いたい。
  • 高齢者と若年者の比較
    大沼 剛, 島田 裕之, 阿部 勉, 吉松 竜貴, 橋立 博幸, 奥田 敏仁
    セッションID: 450
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】高齢者の転倒は大腿骨頸部骨折など重篤な傷害を引き起こす。転倒の約70%は滑りやつまずきといった外乱刺激が加わった時に生じており、外乱負荷応答が破綻した場合に転倒が発生する。高齢者ではその姿勢応答が低下しているために、軽度な外乱刺激に対しても転倒してしまう。従来、外乱負荷応答を調べるために、床反力計、筋電図、3次元動作解析などの実験装置を用いて検討が行われてきた。しかし、保健活動や病院で転倒予防を目的とした調査を行う際には、大規模な実験装置を利用することが困難である。そこで本研究では、持ち運びが可能で簡便に実施可能な、側方傾斜外乱刺激を与えたときの反応動態を観察できる装置を用いて、外乱負荷応答を測定し、高齢者と若年者の反応の違いを検討した。
    【方法】対象は地域在住高齢者13名(E群:年齢77.9±3.9歳、身長148.7±5.3cm、体重50.0±8.2kg)及び健常若年者16名(Y群:年齢20.0±3.0歳、身長156.4±5.3cm、体重50.3±5.2kg)であった。対象者は自立歩行が可能な女性で、本研究の充分な説明を行い、同意の得られた者を対象とした。重度の整形外科的疾患、神経疾患、心疾患を有する者、および認知症により検査の同意が困難と判断された者は除外した。測定方法は、歩行路に側方傾斜外乱刺激装置(アニマ社製)を設置し、歩行中に不意に側方外乱刺激を与え、その際の反応を重心動揺計(アニマ社製,G-6100)にて計測した。外乱刺激側は左下肢とし、外乱刺激ありを5試行、外乱刺激なしを5試行の計10試行を無作為に実施した。外乱刺激を与えた場合で、介助を有さずに保持可能であり、データの採取が可能であった初めの試行を測定値として採用した。重心動揺計の測定値は、単位軌跡長(cm/秒)、X方向(左右方向)単位軌跡長(cm/秒)、X方向最大振幅(cm)、X方向最大振幅時間(秒)、X方向動揺分布の歪度、X方向動揺分布の尖度を用いた。解析方法は、高齢者と若年者の比較をMann-WhitneyのU検定を用いた。
    【結果】高齢者と健常若年者で比較した結果、単位軌跡長 (E群:17.14±4.14、Y群:27.62±8.48)は若年者が有意に高値を示し、X方向動揺分布の歪度 (E群:0.98±0.71、Y群:0.21±0.29)、X方向動揺分布の尖度 (E群:3.71±2.32、Y群:1.95±0.34) においては高齢者が有意に高値を示した。
    【考察】本研究では、X方向重心動揺分布の歪度および尖度に有意差がみられた。歪度とは分布の偏りの方向と程度を表す指標であり、0に近いほど対称分布である。尖度は重心点の度数分布の尖りの程度を示す指標であり、3に近いほど正規分布を示す。X方向最大振幅や最大振幅時間には有意差がみられなかったことから高齢者の反応は若年者より正の非対称性で鋭峯なX方向動揺の分布を示し、負荷応答がなめらかでない可能性が示唆された。この測定値が転倒の予測因子になりうるかは今後さらなる検証が必要である。
  • 骨盤傾斜角変化量と長座位体前屈測定値との関連性に関する検討
    小沼 亮, 高梨 晃, 烏野 大, 藤原 孝之, 永井 啓太, 吉田 智貴, 吉村 正美, 藤井 顕, 藤崎 壽路, 阿部 康次, 小駒 喜 ...
    セッションID: 451
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【はじめに】現在,文部科学省は,国民の体力・運動能力を調査する目的で「新体力テスト」を推奨している.そのテスト項目の中で,全身的な柔軟性を測定するテスト項目として長座位体前屈がある.長座位体前屈に影響を与える要因は多彩で賛否両論であるが,高齢者においては,特に二関節筋(以下,ハムストリングス)の伸張性の影響が大きく関与していることが多いかと考える.そこで,本研究では基礎的研究として健常男性を対象に,ハムストリングスの伸張性をみる1つの指標である骨盤傾斜角(以下,骨盤角)を用いて骨盤傾斜角変化量(以下,骨盤角変化量)を算出し,長座位体前屈測定値との関連性ついて検討したので以下に報告する.
    【方法】対象は,協力の同意を得た健常男性13名,平均年齢21歳(19~28歳)とした.方法は,骨盤角は傾斜角度計(シンワ測定社製,マルチレベルA-150)と金属板を使用し,両側の上後腸骨棘を結んだ線上にあてて測定した.また,長座位体前屈は長座位体前屈測定器(竹井機器工業社製,T.K.K.5112デジタル長座体前屈計)を使用し,「新体力テスト」を一部変更して測定した.なお,実施手順は長座位にて基本姿勢を設定した上で骨盤角(以下,静止時骨盤角)を3回測定し,その後,長座位体前屈の測定と同時に骨盤角(以下,前屈時骨盤角)を3回測定した.統計学的分析は,傾斜角度計による検者内信頼性について,同一検者間の級内相関係数(以下,ICC)を用いて検討した.また,各測定値の平均値±標準偏差を算出し,骨盤角変化量については,前屈時骨盤角と静止時骨盤角との差を算出した.そして,Spearmanの順位相関係数を用いて長座位体前屈測定値との相関性を検討した(p<0.01).
    【結果】静止時骨盤角ではICC(1・3)=0.98で,前屈時骨盤角ではICC(1・3)=0.99であり高い信頼性を示した.また,静止時骨盤角は67±5°,長座位体前屈は37.9±10.3cm,そして,前屈時骨盤角は92±13°であった.骨盤角変化量は25±10°であり,長座位体前屈測定値とは有意な相関性を示した(r=0.846).
    【考察】本研究の結果より,骨盤角変化量と長座位体前屈測定値とは有意に高い正の相関性を示した.中俣らは,長座位体前屈の測定における骨盤角測定は,ハムストリングスの柔軟性検査法として有用であると述べている.したがって,本研究では,独自の骨盤角測定方法であるものの,骨盤角変化量の程度がハムストリングスの伸張性にも反映している結果となり,ハムストリングスが長座位体前屈に影響を及ぼす1つの要因となることが推察された.今後の課題としては,本研究で用いた独自の骨盤角測定方法と他のハムストリングスの柔軟性検査法との関連性を検討し、独自の骨盤角測定方法の有用性を立証できればと考える.
  • 中俣 修, 山﨑 敦, 具志堅 敏, 古川 順光, 金子 誠喜
    セッションID: 452
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】腹筋群のもつ上下肢運動時に体幹姿勢を維持する機能は重要である。筋線維の走行の相違により、体幹部に加わる負荷方向の変化に腹筋群の筋活動は追従すると考えられる。本研究では、上肢運動を介して体幹に負荷を加えた際の腹筋群の活動を分析することを目的とした。
    【方法】対象は、大学生男性6名(平均年齢19.4歳、平均身長172.0cm、平均体重60.8kg)であった。十分な説明を行い、被験者から実験参加の同意を得た。腹筋群の筋活動の計測にマルチテレメーターシステム(日本光電社製)、上肢運動時の発揮張力の計測に筋力計測器(BTE社製)を用いた。被験者は端座位となり、肩90度屈曲位、肘30度屈曲位で筋力測定器のアームを把持させた。実施課題は両手での押し動作とし、1)体幹長軸に直交する方向へ負荷を加える前方への押し動作(前方押し動作)、2)体幹長軸と平行に負荷を加える下方への押し動作(下方押し動作)を最大等尺性トルクの60%強度で等尺性に維持することとした。被験筋を腹直筋(RA)、外腹斜筋(EO)、内腹斜筋(IO)とし、全て右側にて計測を行った。課題実施時の筋電図と筋力計測器からの張力値を、AD変換器(AD instruments社製)を経てパーソナルコンピュータに取り込んだ。課題が安定して行われていた1秒間の積分筋電図を算出し、徒手筋力テストNormalの姿勢を保持した際の積分筋電値で正規化した。課題間の各筋の筋活動における相違をMann-Whitney 検定により分析した。また下方押し動作に対する前方押し動作時の筋活動の比率(前方/下方比)における筋間の相違をKruskal Wallis 検定により分析した。有意水準は5%未満とした。【結果】前方押し動作の積分筋電図の平均値(標準偏差)は、RA:7.7(5.1)%、EO:17.3 (9.1)%、IO: 29.5(17.8)%であった。下方押し動作では、RA:72.6(16.1)%、EO:41.1(12.9)%、IO:73.8(29.6)%であった。3筋全てにおいて前方押し動作の筋活動が小さかった(p<0.05)。前方/下方比はRA:0.11(0.07)、EO:0.43(0.20)、IO:0.43(0.26)であった。RAの活動はEO・IOと比較し、前方押し動作で大きく減少する傾向を認めた(p=0.055)。
    【考察】前方押し動作では、腹筋活動、特に腹直筋活動の減少を認め、上肢の運動方向による腹筋活動への影響が示された。腹直筋は体幹長軸と平行する線維走行であるのに対して腹斜筋群は体幹長軸に対して斜めに走行する。この形態的特徴により前方押し動作では、腹直筋活動の著明な減少が生じたと考える。
    【まとめ】上肢運動を介して体幹に加わる負荷の方向が、腹筋群の活動に影響する可能性が示された。
  • 小澤 拓也, 大野 博司
    セッションID: 453
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
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    【目的】我々は下肢荷重比率を改善させるための最適な中殿筋トレーニング強度について、その回数の違いから検討を行い、下肢荷重比率はBorg scaleでいう軽度から中等度の負荷回数においては改善を示すものの、高度負荷では悪化することを明らかにした。しかし、この高度負荷にて下肢荷重比率が悪化する要因については十分に検討できていない。そこで今回、高度負荷中殿筋トレーニングが股関節の可動性及び骨盤周囲筋へどのような影響を及ぼすのかについて検討を行った。
    【方法】対象は健常成人(男性8名、平均年齢21±0.8歳)を対象とした。中殿筋トレーニングは仰臥位でセラバンドを用いた両股関節同時の等張性外転運動とし、股関節屈曲、伸展、外転、内転、および回旋が0度の肢位から外転角度20度、速度は2秒で1回、実施回数は70回とした。
    計測は筋電図および3次元動作解析を行い、それぞれ日本光電社製WEB-5500およびユニメック社製UM-CATを用いた。筋電図での測定筋は両側中殿筋、脊柱起立筋、腹斜筋群とし、3次元動作解析時のマーカーは両上前腸骨棘、肩峰、膝蓋骨中央に貼付した。
    筋電位は最大随意収縮に対する割合として算出し、動作解析では股関節外転・内転、屈曲・伸展の可動域を算出した。対象肢は左右ではなく、股関節外転角度の大小によって二群に分類した。データは事前に計測したBorg scaleに応じた股関節外転回数、すなわち、軽度(20回、Borg scale 3)、中等度(35回、Borg scale 5)、高度(70回、Borg scale 10)時点での値、および開始時を加えた条件にて筋ごと、股関節の運動範囲ごとに比較検討した。
    【結果】筋電位(単位は%)は股関節外転の可動域の大きい側の中殿筋で、開始時、軽度、中等度、高度の順序で23±8、30.2±18.3、27.8±13.4、31.2±13.7、腹斜筋では26.1±21.7、35.5±30.8、37.7±35.6、48.3±53.7、脊柱起立筋では15.3±6.9、21.8±7、23.4±7.2、27.6±9.3であった。股関節外転の可動域の小さい側の中殿筋は23±19、30.5±24.7、31.2±23.4、37.2±26.9、腹斜筋は17.2±8.8、22.8±11.8、23.9±14.4、31.7±22、脊柱起立筋は13.5±11.7、14.8±12.9、14.3±12.9、17.4±17.3であった。可動域の大きい側の脊柱起立筋の筋電位の開始時と中等度(P<0.05)、開始時と高度(P<0.01)には有意差を認めたが、その他は有意差を認めなかった。股関節の可動域について、外転、内転、屈曲、伸展ともに有意差は見られなかった。
    これらのことから中殿筋トレーニングの回数が多くなることで片側脊柱起立筋の活動が高まるといえる。


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