E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
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調査報告
  • 中村 努, 西島 文香, 深山 誠也, 執印 太郎, 宮野 伊知郎, 玉里 恵美子, 下村 珠美
    2021 年 16 巻 2 号 p. 201-218
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー

    本稿では,中山間地域における生活支援ニーズと,社会福祉協議会による地域福祉活動の特徴を明らかにした.高知県いの町吾北地区では,生活支援ニーズが存在するにもかかわらず,市町村合併を背景として,見守りが必要な在宅生活を支援するための人材が不足している.この問題に対して,行政の事業を受託した社会福祉協議会は町内出身者を中心とする人材を確保して,送迎付きの集いを実施し,介護保険や共助によってカバーされない生活支援ニーズに対応していた.サービス利用者への聞取り調査によると,利用者同士の会話や行事といった活動自体に楽しみを見出すととともに,サービス利用の合間や送迎途中における小売店や金融機関,医療機関へのアクセスの確保が,重要な生活支援の機能として指摘された.

  • 田中 耕市, 若月 泰孝, 木村 理穂, 伊藤 哲司, 大塚 理加, 臼田 裕一郎
    2021 年 16 巻 2 号 p. 219-231
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー

    本稿では,2019年台風第19号による大規模な浸水被害を事例として,地理的条件が住民の事前避難に寄与した要因を明らかにした.茨城県水戸市の那珂川右岸を事例対象地域として,アンケート調査によって,住民の当時の避難行動等に関する情報を得た.はじめに,以前から検証されてきた住民の基本属性等,情報取得,避難躊躇,事前対策の4側面の計43項目について,事前避難の有無に与える影響を明らかにした.次に,個々の住宅を単位として,地理的条件を定量化した変数を加えて分析を行った.その結果,自宅立地点の標高が低いほど,また,標高20 m地点までの道路距離が長いほど,住民は事前避難により積極的であることが明らかになった.事前避難をより促進させるためには,浸水の危険性がある範囲内で標高が相対的に高い場所の居住者,台地等の高所に比較的近い場所の居住者に,重点的に働きかけることが肝要である.

  • 小泉 諒, 杉山 和明, 荒又 美陽, 山口 晋
    2021 年 16 巻 2 号 p. 232-261
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー

    本稿は,2018年の平昌冬季五輪で浮き彫りとなった五輪招致と南北関係,セキュリティ,環境問題,そして跡地や競技施設の利用にかかわる論点を,ボイコフの「祝賀資本主義」の議論を踏まえ検討した.平昌の五輪招致活動は3度にわたったが,会場計画を含めて,その時々の国内および国際的な政治状況に大きく左右されてきた.国家的なセキュリタイゼーションは平昌でも見られ,東京五輪の関係者による視察が行われたことから,レガシーとして引き継がれる点も多いと考えられる.また平昌冬季五輪開催において国際的な批判の対象となった環境問題は自然林の伐採であり,46年前の札幌冬季五輪と比較しても環境負荷には改善が見られない.長野では大会後の利用困難が見通されていたにもかかわらず競技施設の建設が進められ,平昌もまた同様の事態となった.

提言
  • 畠山 輝雄, 駒木 伸比古
    2021 年 16 巻 2 号 p. 262-275
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/03
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う移動規制では,「都道府県をまたいだ移動の自粛」が要請された.本稿では,この移動規制に対して地域概念から考察した.COVID-19感染拡大地域は,等質地域とみなせる.また感染拡大要因は,人間の移動という結節地域単位で生じる事象である.しかし国による移動規制は,法的強制力がない中での都道府県境という明確な境界設定による形式地域単位での対策であった.その結果,地方圏を中心に地域的な差別の助長を生んだ.本稿は,法的強制力がない中では,「日常的な生活圏の範囲内での移動」という結節地域単位の考えに基づく移動規制が現実的であることを提言する.

地理紀行
調査報告
  • 相馬 拓也
    2021 年 16 巻 2 号 p. 287-309
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    モンゴル西部アルタイ山脈に暮らす遊牧民は,ユキヒョウとの長年にわたる接触体験から,さまざまな動物民話のオーラルヒストリーを蓄積・継承してきた.ユキヒョウと遊牧民との接触により語り継がれた民間伝承・伝説・語りなどの伝承《ナラティヴ》は,科学的成果《エビデンス》とも十分に照応できるローカルな生態学的伝統知T.E.K.でもある.本研究では, 2016年7月19日~8月25日および2017年8月2日~16日の期間,ホブド県ジャルガラント山系,ボンバット山系,ムンフハイルハン山系のユキヒョウ生息圏に居住する,117名の遊牧民からオーラルヒストリーの記録・収集を実施した.在来の動物民話の記録やその科学的検証は,地域住民をユキヒョウ保護のアクターとして統合する新しい保全生態のかたちを提案できると考えられる.本論では,野生動物を取り巻くエコロジーの多面性と重層性を,複合型生物誌として整備することを提案する.

  • 和田 崇
    2021 年 16 巻 2 号 p. 310-326
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,平和都市広島でスポーツイベントを開催することが,平和メッセージの発信と積極的平和に向けた取組み,平和学習の効果,市民啓発の4点からみて,どのような意義があるのかを検討した.その結果,平和都市としての国際的知名度があり,また原爆遺産など負の遺産が立地し,そこからさまざまな学びを得ることができる広島市のような都市においては,世界平和の実現を目的に掲げてスポーツイベントを開催する意義が大いにあり,それを政策として展開することもスポーツ振興と平和推進に有効であることが確認できた.それは,スポーツイベントの開催を通じて参加者や観客を迎え入れるスポーツツーリズムと,人類の負の遺産からの学びを得ることを目的に旅行するダークツーリズムを組み合わせたものといえる.そして,これを実効化させるには,スポーツと平和学習による教育プログラムの充実が必要である.

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