E-journal GEO
Online ISSN : 1880-8107
ISSN-L : 1880-8107
4 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特別寄稿論文
  • 成瀬 敏郎
    2010 年 4 巻 2 号 p. 47-51
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/06
    ジャーナル フリー
    2009 年8 月8 日に島根県出雲市多伎町に発達する海洋酸素同位体ステージ(MIS)5e の海成段丘堆積層を覆う古土壌3(VIb)から玉髄製の剥片1点を発見した.さらに同年8 月22 日から3 日間の予備調査において露頭面に表れた同層中から5 点の人工的に打ち欠いた石片が確認されたのを受けて,同年9 月16 日~29 日にトレンチ掘削による本調査が実施された.この結果,約12 万年前のMIS 5e に形成された古土壌層中から流紋岩や石英製の石器,石核,砕片,破砕礫など15 点が出土した.これらは日本で最も古い石器である可能性がある.今後,出土遺物の年代や古環境復元など,さらなる調査・分析が急務である.
調査報告
  • 荒木 一視
    2010 年 4 巻 2 号 p. 52-68
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/06
    ジャーナル フリー
    中国からの輸入農産物や食品は食の安全性や品質に関わって近年大きな関心を集めている.その反面,中国の農業生産や流通の実態に関する情報や知識は決して十分とはいえない.とくに巨大な国土を持つ中国の農業生産や食品流通は決して一様ではなく,それらの地域的なパターンを認識することが,中国からの輸入農産物・食品に対する理解の上で求められているのではないかと考えた.こうした観点から筆者のこれまでの中国調査で得られた情報の一端を報告する.1960年代以降中国の農業生産は拡大を続けてきたが,とくに果実や野菜,畜産物などで1990年代以降に飛躍的な伸びが認められ,その過程で短期間での新興産地の台頭,首位産地の入れ替わりなど産地の地域的なパターンにも変化が起こっている.これは主食食材や工芸作物での変化が比較的緩慢なこととは対照的である.さらに,農産物・食品の各部門,品目別の国内市場の取引額および輸出額の省別の集計からは,双方の地域的パターンと生産の地域的パターンがそれぞれ異なるものであることが明らかになった.
  • 宮澤 仁
    2010 年 4 巻 2 号 p. 69-85
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,介護保険の開始以降,民間事業者により急増をみてきた有料老人ホームの立地特性を全国と都市圏の二つのスケールで分析し,供給の拡大要因について地理学的観点から考察した.その結果,近年,有料老人ホームは大都市を中心に供給され,特に東京大都市圏には全国定員の約4割が集中していることが明らかになった.そこで,東京大都市圏を事例地域に分析したところ,有料老人ホームは既成市街地に立地する傾向とともに,供給量と入居費用には大きな地域差が確認された.また,供給量とニーズの関係は弱く,むしろニーズの大きな地域で入居費用が高いことや,企業のリストラにより閉鎖された社員寮等を転用した施設が多数みられ,その多寡が地域的な供給量を左右したことが明らかになった.以上の結果から,(1)有料老人ホームの供給は,不動産流動の活性化といった経済動向の影響を受けやすいこと,(2)有料老人ホームは,近年の急増によりはからずも行き場のない高齢者の受け皿となっているが,入居費用には大きな地域差がある,といった問題点が指摘される.特に後者の問題に関しては,生活困窮高齢者の周縁化を社会的-地理的に強化しかねないことが危惧される.
提言
  • 西野 寿章
    2010 年 4 巻 2 号 p. 86-102
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/06
    ジャーナル フリー
    本稿は,過疎化によって高齢化の進展が著しい山間集落の現状について,主に群馬県における実態調査を通して考察し,山村政策への視点を考察するものである.日本の山村は,都市と農山村の地域格差が拡大した高度経済成長期に若年層を中心として,著しい人口減少を経験した.その背景には,都市における重化学工業を中心とした経済成長と,山村における製炭,養蚕の衰退があったが,林業がまだ山村を支えていた.しかし木材価格の高騰を要因として1964年に木材の輸入自由化が進められると,瞬く間に外材が日本市場を席巻し,国産材価格は1980年をピークに下降の一途をたどった.一時的に先端技術産業やリゾート開発によって,山村にも光が差したように思えたが,今日の山村は経済的基盤を失い,若年層人口は定住動機を見出せず,多くの山間集落では高齢化が進み,このままいけば集落の自然消滅が頻発する可能性が高い.高齢化の進んだ現状から,政府は集落支援員による新たな過疎対策に乗り出し始めた.しかし,産業論的アプローチを欠いた過疎対策が山間集落問題を改善できるとは思えず,山村の持続性を形成するには,山村に固有な農業,林業の振興に取り組むことが必要である.
2008年秋季学術大会シンポジウム記事
2009年春季学術大会シンポジウム記事
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