本研究の目的は,北京市の什刹海歴史文化保護区を事例に,北京オリンピック開催後における観光空間の変容を,観光主体(観光客),観光客体(観光資源,観光施設),観光政策(観光に関連した政策),および外部環境(社会・経済環境)の視点から明らかにすることにある.什刹海は北京市の重要な水辺空間であり,かつ湖岸に伝統的な四合院や胡同が連なる風光明媚な地域である.当該地域は,2002年に「北京旧城25片歴史文化保護区」の一つに指定された.また, 国際オリンピック委員会が2008年夏季オリンピックの北京市での開催を決定した2001年以降,什刹海地区では地方出身の若年層によるバーなど店舗の開業が相次ぎ,北京を代表する観光空間の一つへと成長した.
しかし,オリンピックが閉幕した2008年以降,地価の高騰や観光開発に対する規制の強化,競合地域の増加といった外部環境の影響により,什刹海の観光空間は大きく変容している.本研究では,2008年以降における什刹海の変化とその要因を実証的に明らかにした.
抄録全体を表示