要旨:ヒメコマツは東北南部から九州の山地の冷温な地域に天然分布するが、房総丘陵では標高350m以下の温暖な丘陵帯に自生しており、貴重な存在とされている。しかし、1970年代以降、マツ材線虫病等による個体数の急激な減少が起こっている。そこで、千葉県では遺伝子資源の保存活動として天然木の接ぎ木によるクローン増殖を行ったが、数年後には接ぎ木個体が多数枯死し、長期的な系統保存が難しくなっている。こうした現状に対し、著者らは天然木の挿し木クローンが長期的な系統保存に効果的だと考えた。一般に高齢母樹からの挿し木は発根困難とされる。しかし高齢母樹から一度接ぎ木苗を作出し、その苗から挿し木を行うと発根率が高まるという報告がある。本研究では、天然木やその接ぎ木クローンから挿し木や接ぎ木を実施して活着率や発根率を調べることで、接ぎ木クローンからの挿し木クローン作出の可能性を検討した。その結果、天然木の接ぎ木クローンをさらに接ぎ木して得られた2年生の苗を穂木とすれば、挿し木の発根率が比較的高くなることが明らかとなり、これをもとに高齢の天然木から挿し木クローン作出に至る手順を考察した。
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