樹木の萌芽力(萌芽の発生のしやすさや萌芽枝の発生量)には樹種間差があり、一般に多雪地や崩壊地など攪乱が多い立地に生育する樹種の萌芽力が高い。しかし、萌芽力の種内変異に関する知見は少なく、攪乱の多い地域に由来する個体群の萌芽力が高いといった地理変異が存在するのかどうかはよく分かっていない。産地試験地では、異なる産地に由来する種苗を同一場所で育成して産地間比較を行うことにより、地理的変異を検証することができる。ブナでは全国各地に産地試験地が設定され、開葉フェノロジーや葉のサイズに産地間差があり、遺伝的に異なっていることが知られている。山梨県山中湖村に 1991年に設定されたブナの産地試験地を2014年に皆伐したところ、翌年、一部の伐根から萌芽枝が出現した。そこで、産地間で比較した結果、ブナの萌芽力に地理的変異が認められ、萌芽枝の発生量と産地の積雪深に有意な正の関係が見出された。
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