植生史研究
Online ISSN : 2435-9238
Print ISSN : 0915-003X
11 巻, 1 号
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  • 沖津 進
    2002 年 11 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2002年
    公開日: 2021/06/16
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    最終氷期の本州に分布していた,チョウセンゴヨウ,エゾマツ,バラモミ節樹木の針葉樹と落葉広葉樹との針広混交林の成立にはたすチョウセンゴヨウの生態的役割を考察した。最終氷期の本州では,チョウセンゴヨウやバラモミ節樹木が現在よりも豊富に分布し,チョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林が低標高域を中心に広く分布していた。最終氷期の針広混交林の成立にはたすチョウセンゴヨウの生態的役割を理解するために,シホテ-アリニ山脈北部アニュイ川流域の現生針広混交林でチョウセンゴヨウと主要混交樹種との種間関係を整理した。そこでは,チョウセンゴヨウが介在することによって落葉広葉樹の分布が抑制され,チョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林が卓越し,チョウセンゴヨウ-エゾマツ林が落葉広葉樹林域にまで広がっていた。さらに,バラモミ節樹木の生態的性質を理解するために,北海道阿寒湖畔の現生針葉樹林における本節のアカエゾマツとエゾマツの樹形と樹高成長を比較した。湿潤立地では,エゾマツはアカエゾマツを凌駕して優占するが,乾燥立地では,アカエゾマツはエゾマツと混交した場合でも一定の優占度を確保することが明らかとなった。最終氷期には,チョウセンゴヨウは,種間関係を通じて落葉広葉樹の分布を抑制し,エゾマツおよびバラモミ節樹木の分布量が増加する方向に作用し,最終氷期の針広混交林の成立に対して大きな生態的役割を果たしていたと考えられる。
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