植生史研究
Online ISSN : 2435-9238
Print ISSN : 0915-003X
12 巻, 2 号
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  • 大井 信夫, 北田 奈緒子, 斉藤 礼子, 宮川 ちひろ, 岡井 大八
    2004 年 12 巻 2 号 p. 61-73
    発行日: 2004年
    公開日: 2021/06/16
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    福井県中池見の堆積物は下部砂礫層と上部有機質層に二分され,上部有機質層は阿多(Ata),鬼界葛原(K-Tz),姶良Tn(AT),鬼界アカホヤ(K-Ah)などの火山灰をはさむ後期更新世以降の有機質に富んだシルトである。堆積盆中の北部2地点,中央部1地点,南部2地点において,上部有機質層のATより下位について花粉分析を行い,盆地および周辺における植生分布の様式を復原し,環境変遷を議論した。上部有機質層は堆積盆中央部で堆積がはじまり,全般にスギ属花粉が優占する。北部ではスギ属花粉に伴ってコナラ属コナラ亜属花粉が産出し,中央部ではハンノキ属花粉が多く,南部ではスギ属花粉が優占することから,北部の山地にはコナラ亜属の森林が,中央部にはハンノキ湿地林が,南部の谷筋にスギ林が復原される。約8万年前には,湖沼が南部にまで広がったクリ属/シイノキ属花粉が優占する時代と,落葉広葉樹花粉が産出する時代とがあり,その後,湖沼が北部に広がった。約5万年前にアジサイ属花粉が一時的に多産し,これを境にハンノキ属とミズバショウ属花粉が増加し,コウヤマキ属花粉の減少とヒノキ科花粉の増加が見られる。堆積物にも有機物が増え,中央部と南部を中心に湖沼環境が卓越していたのが,堆積盆全体にハンノキ林が広がった。AT降下前には,最終氷期最盛期へ向かう寒冷乾燥化を示唆するようにツガ属や,マツ属,カバノキ属花粉が増加し,中央部はカヤツリグサ科を中心とする湿原となった。
  • 鈴木 伸哉, 能城 修一
    2004 年 12 巻 2 号 p. 75-86
    発行日: 2004年
    公開日: 2021/06/16
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    東京都中央区八丁堀三丁目遺跡の17世紀前半を主体とする一般都市住民層の墓域より出土した円形木棺と方形木棺について,当時の身分・階層差の影響と,森林資源枯渇の影響を評価した。円形木棺・桶製骨蔵器484基と方形木棺41基の部材,および卒塔婆23本をあわせて1418点の樹種を同定し,木棺材の木取りおよび厚さを計測した。円形木棺・桶製骨蔵器にはサワラを中心とした材が用いられていた。方形木棺にはスギや,ヒノキ,サワラなどの材が用いられており,使用される樹種にばらつきがあることから,転用棺である可能性が高いと考えられた。こうした用材は,将軍家・大名家の墓の用材と異なっており,当時の身分差・階層差が木棺の用材に反映したと考えられる。円形木棺は,側板・底板・蓋板の各部材が時期が下るにつれて薄くなる傾向にあり,とくにサワラ製とヒノキ製の部材に著しかった。古植生の研究や文献史料研究の成果と対比すると,八丁堀三丁目遺跡より出土した17世紀前半の円形木棺・桶製骨蔵器は,おもに木曽川・天竜川流域にまとまって分布するサワラなどの移入材によって製作された量産品であると想定された。また,都市における木材需要の増大による木材供給源の枯渇が,円形木棺の用材の厚さの低下および樹種の多様化に反映していると想定された。遺跡内の木製埋葬施設の間には,身分・階層差の影響は認め難いことから,八丁堀三丁目遺跡の墓域は身分制度確立の過渡期的様相を示していると考えられる。
  • 百原 新
    2004 年 12 巻 2 号 p. 88-89
    発行日: 2004年
    公開日: 2021/06/16
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