人の輸送・移動を対象とすると、動力を有した輸送手段(乗り物)は登場順に、船(蒸気船)、鉄道(蒸気機関車)、自動車、航空機となるが、自家用輸送の容易さは自動車が群を抜いている。個人所有の船(釣り船、漁船など)や航空機(セスナ機やプライベートジェットなど)を用いて移動することもできるが、自家用の移動手段としてのシェアは無いに等しい。ここに、タクシーか、ライドシェアかという選択問題が生じる本質がある。本稿では、わが国における自動車輸送の創成期におけるタクシー誕生から論考を始め、公共交通手段としてのタクシーの位置づけおよび政策対応を概観し、「日本版ライドシェア」導入の含意を論じる。
日本ではタクシーが法的に公共交通と位置付けられているものの、事業運営は商業的な態様をとっているため、社会的な期待との乖離が生じている。また、乗務員不足により、今後の事業継続に懸念がある。本稿では、タクシー事業の態様や近年の変化について説明し、それらを踏まえつつ地域・自治体と連携して公共交通としての役割を果たすこと、そのためにさまざまな新しい取り組みを行っていく必要性について論じ、将来の方向性を提示する。
2024年4月に「日本版ライドシェア」が導入され、6月にはTransportation Network Company(TNC)型ライドシェア解禁の可否が議論されることになっている。本論では、まず、ライドシェアと呼ばれているモビリティサービスには種々のタイプがあること、それらの特徴と適正な分類、世界での普及状況について述べる。さらに、独自に開発したシミュレーションモデルを用いて、市場の厚みや採算性の視点からライドシェアサービス市場の成立可能性について検討した結果、条件によってはかなり厳しいことになるかもしれないことを明らかにした。最後に、公共交通サービスを維持、改善するための包括的で本質的な方策について提案した。
旅客運送事業における自家用車の活用をめぐり、最近ルール改正の動きが活発となっている。これらの法的措置は、地域の移動の足不足という政策課題に対する的確な解決策となっているか、検証が必要である。特に地方の交通空白地域における課題を解決する手段としてライドシェアを活用するとすれば、規制当局および地方自治体はじめ、地域の多様な関係者との連携・協働の下に制度設計をする必要がある。
昨年来、ライドシェアの解禁を巡りさまざまな議論がなされている。しかし、議論の多くは“どのような制度にするのか”といった手段の話に終始しており、本来の目的である将来の公共交通をどのような姿にするのかといった展望が見えない。本稿では、ライドシェアに関する議論を行う上での一つの視点を提供し、それに基づき、筆者が創案した公共交通サービスの枠組みと社会実装に際しての留意点を紹介する。次いで、旅客運送を念頭に置いたこの枠組みの拡張可能性を検討し、過疎地域における今後の交通社会のあり方を展望する。
日本初のマイカーを活用した公共ライドシェア「ノッカル」の開発リーダーが、地域交通再編の裏側と最新情報を報告する。全国各地で展開されている地域交通(コミュニティバス、デマンドバス、デマンドタクシーなど)を、どのように再編していくのか?また、ライドシェアとどのように役割分担していくのか?地域交通に関わるコスト削減とサービスレベル向上を両立する考え方や、交通再編にマーケティング思考を導入するステップを解説する。また、将来構想として、運転免許証やマイナンバーカードと連携した地方創生プラットフォームや地方版MaaS開発にも焦点を当てる。
本稿では、日本での本格的な導入に先立ち、海外のライドシェアの市場環境、事業者の競争状況、法整備、運転手の雇用関係、事業者の脱炭素化に向けた取り組みを整理した。2010年代は、ライドシェアの急速な普及と、それに併せて、法整備、雇用環境の整備が進められた時代であった。2020年代は、コロナ禍で一時的にライドシェア企業の業績が下がったが、その後は、企業によるビジネスモデルの多角化や車両の脱炭素化が進められている。日本では、2024年から部分的にライドシェアを解禁している段階にあり、特に海外における法制度や雇用関係などの規則は、日本での全面解禁を検討する上で、参考になると思われる。
本稿では、わが国の現行法上、フリーフロート型シェアリングサービスの導入を検討した場合の法的足枷が何処に所在するのか、どのような範囲におけるシェアリングサービスの導入は法的に可能か、さらには、その導入した場合における法的課題が何処に存在するのかを明らかにする。路上駐車の法的可能性を確認した後、歩道における駐車に触れ、公道における駐車空間の創設を取り上げてから、行政による乗り物の移動および撤去について論じていく。
日本でラウンドアバウトの本格的な導入が始まって10年余りが経過した。これまでに導入されたラウンドアバウトにおいては、導入経緯や適用場面、構造などにおいてさまざまな特徴を有しているが、それらの実態は十分に明らかになっていない。本研究では、現在までのラウンドアバウトの導入状況を概観するとともに、導入事例に関する各種情報を網羅したデータベースとして取りまとめ、これらの情報を発信するためのWeb公開システムを開発した。さらに、データベースを基に、日本のラウンドアバウトの外径の実態を分析した。
自動車事故対策に中心的な役割を果たしてきた自動車損害賠償保障法が、2022年に改正された。本改正は、被害者支援および事故防止対策について、持続的な財源を確保するために、賦課金の額の充実と使途拡大を図るとともに、被害者支援等を法律の本則に位置付け、恒久的な事業とするものであった。被害者支援等は、自賠責保険等による損害賠償では対応できない部分を補完するものだが、本改正に至る制度の変遷等について、長年にわたる関係者間の調整や財源に着目しつつ、整理、分析する。
近年、わが国では新たな小型電動モビリティの導入や検討が進む中、今後の普及には、利用者視点に加え、必要なインフラ整備を進める自治体視点での評価も重要となる。本研究では、地方自治体へのアンケート調査により、自治体の地域課題の重要度や小型電動モビリティサービスの導入状況を把握した。また、地域課題への貢献期待度と地域特性の関連性を分析し、郡部に位置する自治体では、小型電動モビリティによる課題貢献期待度が高く、観光の振興を目的とした導入事例もあるが、採算性への懸念を払拭する課題があることがわかった。
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