日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2017年年会
選択された号の論文の197件中101~150を表示しています
R3:高圧科学・地球深部
  • 小野 重明
    セッションID: R3-09
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    本研究において、室内実験で頻繁に利用される数種類の圧力校正用相転移反応について、相転移圧力の再決定を行い、従来から使われている相転移圧力データの再評価を行った。室温圧力校正の用いられる物質として、ZnS、 GaP、Zrの3種類に注目し、高温圧力校正に用いられる物質としては、CaGeO3、Fe2SiO4、SiO2の3種類に注目した。GaPとZrにおいては、低温での相転移カイネティクスの影響は小さく、明確な相転移ヒステリシスは確認できなかった。一方、ZnSにおいては500K以下で明確なヒステリシスが確認された。このことは、ZnSがGaPとZrに比べて、室温圧力校正物質として不適格であることが示唆される。CaGeO3、Fe2SiO4、SiO2の相転移境界を再決定して、過去に報告されているデータと比べたところ、比較的低温条件でのデータには、無視できない食い違いが確認された。すなわち、過去の研究における相転移境界決定では、相転移カイネティクスの影響を完全に排除できなかったため、熱力学的相転移境界からのずれを含んでいることが明らかになった。
  • 西原 遊, 土居 峻太, 柿澤 翔, 肥後 祐司, 丹下 慶範, 入舩 徹男
    セッションID: R3-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    熱電対は高温高圧実験における温度測定法として最も広く用いられているが、圧力によって起電力-温度の関係は変化することが知られている。しかし、実験的な困難から熱電対の圧力効果の絶対値の理解は40年以上にわたり4 GPa以下にとどまってきた。我々は最近、熱電対起電力の圧力効果を決定するための新しい実験手法を開発した (Nishihara et al., 2016)。この手法では川井型マルチアンビル装置を用いることにより従来の圧力を越える高圧下で単線法により起電力測定を行い、同時に放射光X線を用いることにより熱電対線上の圧力経路の定量的測定を実現した。今回我々は、この手法によりW3Re-W25Re熱電対起電力の圧力効果を最高900℃、16 GPaまでの温度圧力条件で測定した。その結果、900℃、16 GPaで見かけ温度は真の温度よりも約27℃低いことが明らかになった。結果を外挿すると、この温度差は1500℃、23 GPaでは約70℃にも達する。これはポストスピネル相境界を始めとした多くの物質の高温高圧物性の理解に見直しを迫る結果である。
  • 坂巻 竜也, 寺﨑 英紀, 柴﨑 裕樹, 戸邉 宙, 下山 裕太, 肥後 祐司, 鈴木 昭夫
    セッションID: R3-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    惑星核を模擬した鉄-珪素合金に対して、圧力6 GPa、温度1873 Kまでの条件下で物性(密度・弾性波速度)測定に成功し、その温度・圧力依存性を決定した。本実験で用いたFe-10at%Si系では、体心立方格子構造(bcc)のみ1相と面心立方格子構造(fcc)のみ1相、bcc+fccの2相共存の3つの状態が観察された。bcc単相とfcc単相の物性比較から、結晶構造由来による違いを明らかにした。bcc構造においては同じ密度条件で純鉄とも比べ、珪素の付加による弾性波速度の上昇を確認した。また、fcc構造は水星や火星核条件下で安定であると考えられるため、本研究で得られた弾性特性と将来観測されるデータの比較から惑星核に対する新しい知見を得られることが期待される。
  • 大谷 栄治, 坂巻 竜也, 生田 大穣, 田中 遼介, 福井 宏之, バロン アルフレッド
    セッションID: R3-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    ケイ素と酸素は金属鉄液体中でお互いに排他的な性質を持っている。金属鉄の冷却に伴いケイ酸塩が固体として析出する。FeOはPREMに比較して、軽く非常に速い音速をもつ。従って、酸素は内核中の主要な軽元素ではない。すなわち、コアには酸素は存在せず、主な軽元素はケイ素および硫黄である。ケイ素や硫黄の金属鉄中での固液分配と鉄軽元素系の縦波速度と密度の測定によると、PREMを満足する内核の組成は、ケイ素3-6 wt.%、硫黄 ~0.1wt.%、Niの濃度は、0-8 wt.%となる。
  • 赤荻 正樹, 橋本 紗季, 糀谷 浩
    セッションID: R3-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    ジルコンの高圧相のエンタルピー、熱容量を測定し、それらを基に高圧相平衡境界線を熱力学的に計算した。その結果、ジルコンは約10GPaでレイダイトに転移し、約22GPaでコチュナイト型ZrO2とスティショバイトに分解することが示された。
  • 糀谷 浩, 小島 芽子, 山崎 萌波, 濱田 隆宏, 赤荻 正樹
    セッションID: R3-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    TiO2ルチルとその高圧多形であるα-PbO2型TiO2の相境界は、高圧高温実験を用いた多くの研究により決定されてきた。しかしながら、800℃より低温側における相境界は、相転移反応の非常に遅い反応速度のため研究者ごとに大きく異なる。本研究では、ルチルおよびα-PbO2型TiO2の双方について、熱量測定により決定された熱容量に基づき内部調和した熱力学データセットを再評価し、ルチル-α-PbO2型TiO2相転移の相平衡境界線の熱力学計算を行った。計算結果は、800℃より低温側におけるα-PbO2型TiO2の安定領域が従来考えられてきたよりももっと低圧側に広がっていることを示している。
  • 米田 明, 謝 龍剣
    セッションID: R3-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    ダイヤモンドは絶縁体であるが、ホウ素を添加することにより半導体に転換し、高圧実験用のヒーター材として使用可能になる。最初の確認実験は愛媛大GRC研で行われた。岡山大学惑星研では2009年頃から半導体ダイヤモンドヒーターの開発に取り組んできた。その結果、W-Re熱電対が溶断する温度(~2500℃)以上の高温が発生できるようになった(推定~3700℃)。半導体ダイヤモンドヒーターのもう一つの利点はX線の透過性である。その特性に着目し“落球法その場粘性測定実験”のヒーター材としても活用している。本講演では半導体ダイヤモンドヒーターの開発過程、現状、将来性等を紹介する。
  • 藤野 清志, Liu Xum, 真下 茂
    セッションID: R3-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    異なった結晶方位方向で衝撃圧縮したMgOの変形挙動を見るため,それぞれ<100>と<110>方向で衝撃圧縮変形したMgO単結晶の転位組織を,透過電子顕微鏡で観察した.<100>方向で圧縮の場合は,{110}<110>のすべり系のみが観察されたのに対し,<110>方向で圧縮の場合は,{110}<110>に加え圧力の増加に伴って{100}<110>のすべり系も観察された.また,これまでに報告例のないすべり面なども,観察された.
  • 桂 維彬, 飯塚 理子, 鍵 裕之
    セッションID: R3-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    Crystal structures of alkali metal hydrogen carbonates are affected by pressure. Previous studies showed that KHCO3 has a phase transition at around 2.8 GPa, room temperature. This study discovered that RbHCO3 transformed into a high-pressure phase at around 0.5 GPa, room temperature. As for CsHCO3, no phase transition was observed up to 5 GPa. These results suggested that the pressure-induced behaviors of alkali metal hydrogen carbonates were systematically related to their cation radii.
  • 鈴木 昭夫
    セッションID: R3-P01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    Soda melilite (CaNaAlSi2O7)のX線回折実験を高温高圧力下で行った。実験は高エネルギー加速器研究機構の放射光施設であるPF-ARのNE7Aステーションにおいて、MAX-IIIを使用して行った。実験条件は6.21GPaまでの圧力下で、室温から1100Kまでの温度範囲で行った。実験の結果、2.58 GPaにおいてsoda meliliteが生成し、また3.19 GPaにおいてsoda meliliteが分解することを確認した。相境界は2.9 GPa付近にあると考えられる。
  • 土居 峻太, 西原 遊, 後藤 弘匡, 飯塚 理子, 鈴木 昭夫, 亀卦川 卓美
    セッションID: R3-P02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    コーサイトは沈み込んだ大陸地殻の主要構成鉱物であり、UHPM環境において大陸地殻の変形強度を支配すると示唆されている。しかしコーサイトの粘性率に関する先行研究はRenner et al. (2001) のみであり、その実験条件はGriggs型高圧変形装置の性能により4 GPa以下に限られている。本研究では高エネルギー加速器研究機構、PF-ARのNE7Aに設置されたD-DIA型高圧変形装置及びD111型高圧変形装置を用いてコーサイト多結晶体のその場観察一軸圧縮実験を行った。その場観察には50 keVの単色X線を用いた。ラジオグラフ像はYAG蛍光体とCCDカメラを用いて、二次元回折像はX線を0.2 mm四方に絞って試料に照射しイメージングプレートまたはフラットパネルに露光して取得した。ラジオグラフ像中の試料長からひずみを算出した。二次元回折像中の各格子面のデバイリングを解析し、応力と圧力を算出した。4 GPa付近において得られた定常応力はRenner et al. (2001) とよく一致した。9 GPa付近の結果を考慮した流動則構成方程式およびその地球科学的示唆に関しては当日にて発表する予定である。
  • 有本 岳史, 入舩 徹男, 西 真之, 大藤 弘明, 國本 健広, 丹下 慶範
    セッションID: R3-P03
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    MgSiO3-FeSiO3系の相関係を(Mg0.4Fe0.6)SiO3組成の出発物質を用いて、64 GPa、2300 Kまで実験を行い決定した。その
    温度・圧力条件下においてブリッジマナイト、マグネシオウスタイト、スティショバイトの生成を観察した。ブリッジマナイト中のFeSiO3成分は温度・圧力の増加とともに増加し、60 GPa、2000 Kにおいて最大38 mol%も固溶することが判明した。
  • 池原 舞, 久保 友明
    セッションID: R3-P04
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
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    稍深発地震は岩石の脆性-塑性転移を超えた深さ60-300 km (2-10 GPa)で発生しているため, その断層形成メカニズムについて多くの議論が交わされている. 有力な仮説の一つにアンチゴライトの脱水脆性化が挙げられるが, 高圧下における断層形成条件は未だに明確になっていない. そこで本研究では, D-DIA型高圧変形装置を用いてアンチゴライトとオリビンの二相系を対象とした高圧下(5 GPa)におけるせん断変形実験を行った.
  • 生田 大穣, 大谷 栄治, 佐野 亜沙美, 柴崎 裕樹, 寺崎 英紀, 袁 亮, 服部 高典
    セッションID: R3-P05
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では地球の外核の主成分である鉄と、外核を構成する軽元素の一つとして考えられている水素について、高温高圧下での鉄水素化物(FeHx)の水素の含有量とその体積を定量化するため、J-PARC高圧ビームライン(BL11-PLANET)を利用して中性子回折法によりFeHx中の水素の直接観察を行った。高温高圧中性子回折実験は~4、6、8、11GPaの各等圧条件下において300-1200Kの温度範囲で行われ、FeHxの高圧および高温相である二重六方最密充填(dhcp-FeHx)相および立方最密充填(fcc-FeHx)相の中性子回折パターンを観察した。FeHxの構造と水素の含有量はリートベルト法によりGSAS Softwareを用いて最適化が行われた。fcc-FeHx相における水素含有量と体積増加の関係、およびdhcp-FeHx相におけるx>1を超える水素の取り込みについて報告する。
R4:地球表層・環境・生命
  • 井元 純平, 落合 朝須美, 古木 元気, 堀江 憲治, 竹原 真美, 山崎 信哉, 難波 謙二, 大貫 敏彦, Law Gareth, B ...
    セッションID: R4-01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原発から放出された高放射性Cs含有粒子 (CsMPs) の U, Cs, Ba, Rb, K, and Ca同位体組成比を分析し、電子顕微鏡観察と比較した。結晶質のFe-pollucite, CsFeSi2O6nH2Oの存在が確認され、また、Zn–Fe-oxide ナノ粒子がSiO2 ガラスに含まれている構造も見られた。 235U/238U比は 0.030 (±0.005) and 0.029 (±0.003)となり、比較的低いburnupの揮発を示唆した。
  • 落合 朝須美, 井元 純平, 古木 元気, 池原 遼平, 末武 瑞樹, 山崎 信哉, 大貫 敏彦, Grambow Bernd, Law G ...
    セッションID: R4-02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原子力発電所(FDNPP)の炉内に残る溶融燃料は、原子炉の構成物質と反応しデブリを形成していると考えられる。本発表ではFDNPPから放出されたデブリのナノフラグメントを~4 km圏内で採取した試料の中から単離し、電子顕微鏡により微細分析した結果を公表する。これらの情報は、炉内で起きた反応や現在の炉内の状況を知る手掛かりとなるとともに、デブリフラグメントが吸引可能な大きさの粒子となってFDNPPから環境中へ飛散し運搬されたことが明らかになった。
  • 菊池 亮佑, 向井 広樹, 市村 康治, 高橋 嘉夫, 酒井 陽一, 小暮 敏博
    セッションID: R4-03
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    これまでの黒雲母の風化過程の研究では、バルクでの化学組成・鉄価数の測定と高分解能透過型電子顕微鏡よる直接構造観察がそれぞれ個別に行われてきたが、微小領域でこれらの関係性を示す情報は乏しい。本研究では電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA)による特性X線マッピング及び定量分析および放射光を用いたマイクロX線吸収微細構造(μ-XAFS)によって黒雲母粒子内部における組成不均一性と鉄価数分布の関係を調べた。一部の試料では5 μm前後の間隔で層間がCaとなったバーミキュライト層と層間がKの黒雲母層のパケットが数mmの粒子全体で互層しており、バーミキュライト層の部分では層電荷が黒雲母部分よりも約7-12%低いことが示唆された。一方、Fe-K端のXAFSのスペクトルからは隣接するバーミキュライト-黒雲母の各パケット間で有意な違いは確認できず、むしろ雲母粒子の端の方で内部よりも酸化されていることを示した。鉄酸化によるケイ酸塩層の層電荷の減少は粒子端面から徐々に進行するが、イオン交換によって形成されるバーミキュライト層の分布とは完全には一致しないと考えられる。
  • 川野 潤, 西村 楓, 豊福 高志, 長井 裕季子, 河田 佐知子, Teng Henry, 永井 隆哉
    セッションID: R4-04
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    鉱物の溶解プロセスを明らかにするために、溶解する炭酸カルシウム結晶近傍のpH変化の2次元イメージングを試みた。可視化には、pHによって異なる蛍光強度を示す試薬HPTSを用いた。HPTSを含有する水溶液に炭酸カルシウム結晶を投入すると、その直後から結晶周囲の蛍光が変化するのが確認され、結晶の溶解とともにpHが変化していく様子を可視化・定量することができた。今後、さまざまな系への応用が期待できる。
  • 鈴木 庸平
    セッションID: R4-05
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    海山表面の様々な水深で形成するマンガンクラストは、環境変動の影響を受けやすく、地球規模での海洋-固体地球間の元素分配に変化を生じる可能性が考えられる。形成年代が1000万年を超える海洋地殻が全体の90%を占めるが、マグマの熱源を失い、空隙が二次鉱物で充填されるため、低温での岩石—水反応は進行しないと考えられている。。
    上述の対象で進行する反応を特定するためには、固液界面や鉱物充填された亀裂中に形成する微生物バイフィルムの可視化とその部位のナノバイオ・鉱物学的解析を行う必要がある。親水性樹脂を用いて作成した薄片に対して、光学顕微鏡、電子顕微鏡、顕微ラマン分光、二次イオン分析装置の分析手法を融合する上で必要な試料処理法や、手法の融合により何を明らかにできたかについて、本発表では紹介する。
  • 橋爪 秀夫, テン ベニー, ガースト シャリー, 藤井 和子
    セッションID: R4-06
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    核酸塩基のアデニンとリボースからアデノシンの合成を行った。アデニンとリボース溶液を準備し、それに粘土鉱物を加え、オーブンにより35~50℃で試料を乾燥させた後に脱イオン水を加えた後に再びオーブン入れ、乾燥する操作を20回行いアデニンとリボースの反応を行った。温度によるアデニンやリボースの酸化の可能性から窒素ガス下で同様の処理を行った。また比較のために蒸発をさせずに水溶液で同じ温度範囲で反応を行なった。その結果、粘土鉱物がカオリナイトの場合、アデノシンが生成された。生成量は少ないが、層間イオンをMgに置換したMg-モンモリロナイトを用いた場合においてもアデノシンは合成された。ガス雰囲気による生成物の差はほとんどなかった。粘土鉱物を含まない乾燥加水処理でもアデノシンは合成されるが、粘土鉱物が存在した場合には生成量が多かった。水溶液の場合はほとんどアデノシンは合成しなかった。
  • 甕 聡子, 川野 潤, 波利井 佐紀, 兒玉 優, 富岡 尚敬, 伊藤 元雄, 渡邊 剛, 永井 隆哉
    セッションID: R4-P01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    造礁サンゴは体内に共生藻をもち,熱帯・亜熱帯の浅海に生息する.本研究で過去に変動していた海水のMg/Caを再現するとともに,共生藻の有無によるサンゴ骨格の結晶構造への影響を明らかにすることを目的とした.
    サンゴ(Acropora sp.)を飼育することで共生藻のないサンゴを得た.サンゴは Mg/Caの異なる海水(Mg/Ca = 0.6-5.0)で約1週間飼育した.骨格試料は1個体ごと微小部X線回折(μXRD)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用い観察した.
    その結果,共生藻なしでMg/Ca<1.0で飼育したサンゴ骨格はカルサイト単相であり,共生藻がいる場合とは異なった,このことはサンゴが骨格を形成する際に共生藻の有無が骨格の結晶構造に影響することを示唆する.また,μXRDの2次元回折像とTEM観察から,Mg/Ca>1.0で形成された2相混合の骨格中では,カルサイトの結晶粒径がアラゴナイトよりも全体的に大きい.しかしこのような結晶構造に大きな違いが観察されるにも関わらず,サンゴ骨格は隔壁・底盤の基本骨格構造をもち,共生藻がいるサンゴ個体となんら違いはなかった.
  • 山本 弦一郎, 興野 純, 田村 知也
    セッションID: R4-P02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    高温状態におけるhydromagnesite の相変化を明らかにするために,その場高温粉末XDR 測定を行った.測定は室温から320℃まで30℃刻みで行われた.170℃までピークに大きな変化はみられなかったが,200℃からピークの強度が減少しはじめた.最終的に290℃では,ほとんどのピークが消失し,320℃において出現したピークはpericlase であった.従って,hydromagnesite は,300℃を超える高温下において次の反応が進行するものと示唆される.Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O → 5MgO + 4CO2 + 5H2O.
  • 眞鍋 達郎, 小西 博巳
    セッションID: R4-P03
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    鉄還元細菌の培養課程で生成するGreen rustの格子定数の変化
  • 田中 淳也, 川野 潤, 永井 隆哉, Teng Henry
    セッションID: R4-P04
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    非晶質炭酸マグネシウム(AMC)を様々なアルカリ金属炭酸塩水溶液と塩化マグネシウム水溶液の混合により合成した。炭酸ナトリウムを用いて合成したAMCは形成後数日でnesquehonite (MgCO3・3H2O)に相転移する一方、炭酸セシウムを用いると数か月経過後も結晶化が起こらないという結果が得られた。これより、イオン半径の大きいアルカリイオン金属イオンがAMC中に存在することで、AMCの安定性に影響を与えている可能性が考えられる。
  • 蕗谷 萌音, 小西 博巳
    セッションID: R4-P05
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    Cupriavidus metalliduransが沈殿する金粒子の特徴
  • 田村 知也, 興野 純, 癸生川 陽子, 髙木 壮大
    セッションID: R4-P06
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では, 伊豆大島の三原山で1986年に噴出した玄武岩溶岩を試料として, 地衣類と溶岩の界面をTEMおよびSTXMで観察した. TEMの結果, 地衣類-溶岩界面には粒径2µm未満のα-quartz, augiteに加えて, amorphous aluminosilicate, magnetiteとamorphous silicaの層が確認された. この結果は, 地衣類の代謝産物と溶岩の反応によって溶岩を構成する元素が溶脱し, Feはmagnetiteとして, AlとSiはamorphous aluminosilicateやamorphous silicaとして再沈殿したことを示唆する. 一方, STXMの結果, 地衣類-溶岩境界に分布するamorphous silica layer より溶岩側に, Caに富む領域が認められた. この領域のCa L-edge XANESスペクトルを解析した結果, 領域内部のCa L3-edgeにおける最強ピークが, 領域の地衣類側のエッジでは349.1 eVと349.3 eVにスプリットした. このことは, 地衣類の代謝産物と溶岩の反応により, 溶岩表面の数百nmの範囲においてCaが溶脱したことを示唆する.
R5:地球外物質
  • 木村 眞, 今栄 直也, 山口 亮, 原村 寛, 小島 秀康
    セッションID: R5-01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    隕石の全岩化学組成は隕石の特徴、分類、形成過程を理解するために重要な情報である。極地研究所の隕石コレクションに関する湿式分析データを用いて、分類や特徴を議論した。風化作用や角礫岩化作用を受けたものが多く、データの検討に当たっては薄片観察が欠かせない。
  • 今栄 直也, 中牟田 義博
    セッションID: R5-02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    隕石研磨片を水平面内で回転させてX線回折を行うと粉末X線パターンと整合的なランダム回折パターンが得られる。この方法は組織解析にフィードバックでき、同一種内の微小な差異を認識するのに有用である。最も変成の低い試料の変成前の特徴を明らかにすることも可能である。本研究でのCO3コンドライト測定の新たな知見は以下である。
    (1) CO3コンドライトのかんらん石130のピーク解析によりALH-77307のアモルファスの量は約15%、また、Y-81020は約9%になる。Alexander et al. (2017)はALH-77307の20%と評価しているので個体内変動を加味すると整合的である。
    (2) ALH-77307のみにマルテンサイトが存在しないことから、マルテンサイトはアモルファスより変成に弱い。
    (3) かんらん石130の強度比をモード比に置き換えるモデル化を行い、観察結果やこれまでの結果(例えば、Schwinger et al., 2016)の熱史と整合的な結果を得た。
  • 鈴木 康太, 瀬戸 雄介, 庄田 直起, 市村 隼
    セッションID: R5-03
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、精密な雰囲気・温度制御下におけるコンドリュール組織の再現を目指し、縦型管状炉にガス浮遊装置を組み込んだシステムの新規開発を行った。加熱システムには縦型管状炉を使用し、外側の炉心管の内部に細い炉心管を挿入した。細い炉心管の上部にノズルを装着し、ノズルからのガス上昇流によって試料を炉体内で浮遊溶融させた。また、外側と内側の炉心管には独立にガスを導入し、浮遊溶融中の還元雰囲気を実現している。さらに内部の炉心管に昇降システムを導入することで、試料交換位置と最高温度位置とのスムースな移動を可能にした。開発した装置を用いて、コンドリュールを模擬した物質の浮遊溶融実験を行った。1773Kで浮遊溶融させ、10^4 K/hr程度で冷却した試料を回収し観察した結果、板状オリビン組織が再現されることや、斑状オリビン組織が完全溶融した部分から形成することなどが分かった。
  • 宮原 正明, 大谷 栄治, 山口 亮
    セッションID: R5-04
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    Type 3 ordinary chondrites with or without a melting texture were investigated to clarify their shock features. Jadeite or tissintite was discovered from one of samples with a melting texture. Shock pressure conditions recorded in Type 3 ordinary chondrites with or without a melting texture were estimated from ~11 to ~25 GPa based on the ellipticity of a chondrule.
  • 高橋 実樹, 中村 智樹, Zolensky Michael, 松岡 萌, 榎戸 祐馬
    セッションID: R5-05
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、NWA2900 CK3 炭素質コンドライト隕石に含まれているDark Inclusion(DI)を詳細に研究した結果、他の炭素質コンドライトからは得られない形成過程を記録していることを発見した。NWA2900の母岩の岩石鉱物学的観察と分析を行った結果、この隕石はCV3に分類されているが、弱い熱変成を受けたCK3に分類されることが分かった。
    一方、DIは約1×2.5cmの細粒暗色で楕円形をしており、DI全体を貫通する幅100ミクロン程度の白色の脈が複数交差しながら縦横方向に走っている。脈は主に粗粒のDiopsideで形成されており、脈の中心部分は少し鉄に富む傾向がみられる。このDiopsideの長い脈は、隕石から発見されたのは初めてである。一方、地球岩石には高温高圧の水質変成を受けた岩石から同様のDiopside脈が発見されており、本研究で発見されたDIは、高温高圧の水質変成が起こった含水始原天体が太陽系初期に存在していたことを示す。
  • 兒玉 優, 富岡 尚敬, 伊藤 元雄, 今栄 直也
    セッションID: R5-06
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    試料加工から非破壊・破壊分析に至る複数の分析手法を組み合わせ、同一試料から多角的な物質科学的情報を取得するリンケージ分析技術の開発は、限られた量の試料を扱う上で必要不可欠である。高知コア研究所では、「はやぶさ2」が持ち帰る小惑星表層試料の分析を想定し、FIB-SEM複合装置、NanoSIMS、TEMを組み合わせたリンケージ分析技術の構築を進めている。このうち、FIB-SEM複合装置は試料加工だけでなく、EDSおよびEBSD検出器により数十mmオーダーの分析領域の主要元素分布および結晶学的情報を取得できる。この装置は、引き続くNanoSIMSによる同位体分析、及びTEMによる高分解能分析において、希少な試料の科学的価値の高い部分を狙い撃つ事を可能にする重要な役割を担っている。そこで我々は、FIB-SEM-EBSDの分析の質およびスループット向上を目的とし、Gaイオン(FIB)およびArイオンビームの加工条件の影響について詳細な検討を行った。本講演では、ビームの加速電圧および照射時間を変化させた比較実験の結果と南極微隕石へのFIB-SEM-EBSDの応用例を報告する。
  • 松野 淳也, 三宅 亮, 土`山 明
    セッションID: R5-07
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    宇宙塵中に含まれる非晶質珪酸塩微粒子(GEMS)の3次元元素組成図をSTEM-EDS-tomographyを用いて求めるための観察条件を考察する。電子線照射電流が強い時は、MgがSiに比べて選択的に欠落することがわかり、STEM-EDS-tomographyの取得にはビーム条件を十分に考慮する必要があるとわかった。
  • 金 台熙, 𡈽山 明, 松野 淳也, 瀧川 晶
    セッションID: R5-08
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    GEMS (glass with embedded metal and sulfides) are considered to be the most primitive materials of the solar system, and some of them originated from pre-solar environments. The formation process of GEMS is important to reveal their origin, which could be a key to understand the birth of the solar system.
  • 松本 恵, 中藤 亜衣子, 土`山 明, 松野 淳也, 三宅 亮, 上杉 健太郎, 竹内 晃久, 中野 司, バッカロ エピファニオ
    セッションID: R5-09
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    Acfer 094炭素質隕石は、プレソーラー粒子を多く含み、母天体での変成の痕跡がほとんど見られないことから、最も始原的な隕石の一つと考えられている。我々はこれまでに、始原的隕石の集積形成過程の解明を目的として、放射光X線CTを用いてAcfer 094炭素質隕石の3次元構造を調べ、この隕石のマトリックスは空隙率や組成の異なる複数の岩相から構成されることを明らかにした。それらの岩相のうち、最も空隙率の高い岩相(岩相1)は、XCT像から推定される組織がCP-IDPとよく似ている。本研究では、岩相1およびその他の岩相について詳細なTEM観察を行い、それぞれの変成度や形成過程の解明を目指した。
  • 土`山 明, 北山 晃, 三宅 亮, 川本 竜彦, 松野 淳也, 伊藤 元雄, 富岡 尚敬, 吉田 健太, 兒玉 優, 癸生川 陽子, 竹内 ...
    セッションID: R5-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    FIB/SIXM(走査-結像X線顕微CT)法を用いて炭素質コンドライト(Sutter’s Mill隕石)の鉱物粒子(方解石6粒子、エンスタライト1粒子)中に有機物からなると考えられる数ミクロンサイズの包有物を見出した。一部の包有物については、ラマン分光分析、nanoSIMSによるC,O,N,H同位体分析、STXM-XANES分析をおこない、不溶性有機物(IOM)であることを確認した。水質変成時に水と共存していたIOMが、方解石の成長に伴って結晶中に取り込まれたものと考えられる。また、包有物中の空隙は同時に取り込まれた水が、その後蒸発により抜けた痕跡かもしれない。炭素質コンドライトの鉱物粒子中には、IOM包有物が多量ではないが普遍的に存在するものと考えられる。
  • 中村 智樹, 茂木 郁, 山下 小百合, 松岡 萌, 榎戸 祐馬, 佐藤 雄大, 奥村 聡, 古川 善博
    セッションID: R5-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    含水炭素質隕石であるマーチソンCM隕石に対し、400~900℃の温度範囲で50時間実験加熱を行った。電気炉での加熱後に大気にさらすことなく、隕石加熱物を水分量やスペクトル測定用のサンプルホルダーに移し替えた。一方、加熱試料を大気にさらした場合の解析も行い、地球大気からの水分の影響を調べた。大気にさらさなかった600、900℃加熱物からは、ほとんど水分は検出されず、また反射スペクトルからは3ミクロンバンドの吸収が検出されなかった。一方、大気にさらした600、900℃加熱物からは、水分が検出され、また、大きな3ミクロンバンドも検出された。この実験結果は、熱分解しつつある炭素質隕石は、強力な吸水材のような作用があること示し、天然に加熱脱水した炭素質隕石の水分量やスペクトルへの吸着水や復水の影響は非常に大きく、それらのデータは慎重に解釈する必要があることが分かった。
  • 三宅 裕二, 野口 高明, 岡崎 隆司, 大澤 崇人, 芹澤 弘幸, 薮田 ひかる, 中村 智樹
    セッションID: R5-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    マーチソンCMコンドライト隕石に,はやぶさ2探査機の探査対象天体であるリュウグウの平均軌道半径1.1AUにおける100および1000年間の太陽風照射に相当するフルエンス量の4 kV He+イオンを照射した。1000年間の太陽風照射に相当する実験産物では,反射スペクトルの顕著な変化が見られた。また,この試料においては,コンドルール中の無水鉱物(カンラン石,輝石)とマトリックスの両方において,80-100 nmの厚さを持つ多くの気泡を含む層が観察された。それらは,マトリックスと基板の物質の混合物であることを示す化学組成を持っていた。また,この層中には,0.20 nmの格子縞を持つ多数のナノ結晶が観察された。それらの格子縞の間隔は,ナノ結晶がnanophase Fe0であることを示している。
  • 三河内 岳, 山口 亮
    セッションID: R5-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    Asuka 12209アングライト(Asuka-881371とペア)には最大4 mmに達するカンラン石外来結晶が含まれている。これらの外来結晶は均質なコア組成を持つが、その組成は粒子ごとに異なる(Fo90-83)。今回、カンラン石中に含まれる微小な包有物を調べたところ、Fe-Ni金属が含まれることを発見した。このことは、酸化的な特徴を示す石基部分とは異なり、カンラン石外来結晶が還元的な環境下で形成されたことを示している。カンラン石中のFe/MgとFe/Mn比を調べたところ、外来結晶には両者に比例関係が見られたことから、元々Mgに富んだカンラン石が様々な度合いの酸化を受けたことが示唆される。また、いくつかのカンラン石外来結晶には各種の変形組織が見られ、衝撃変成により形成された可能性がある。この場合、強い衝撃変成によりショックメルトが形成され、その中に衝撃変成度合いの異なる外来結晶が取り込まれた後に、石基が結晶化したことになる。しかし、その他の可能性として、カンラン石外来結晶の変形組織が母天体中マントルで形成されたことも否定できない。
  • 東 浩太郎, 長谷川 輝, 三河内 岳, Michael Zolensky
    セッションID: R5-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    様々な隕石種の岩片を含む角レキ岩隕石であるKaidun隕石中に見つかった2つの岩片について鉱物学的研究を行った。1. ブラチナイト隕石と考えられる岩片は、主にカンラン石から成る約0.4x0.4mmの岩片で、カンラン石組成はブラチナイトと似ており、ブラチナイトのタイプ標本であるBrachina、ブラチナイトの一種であるNWA 1500と近い特徴も確認された。BrachinaはMn-Cr年代が4564.8±0.5 Maを示すことから、Kaidun母天体の形成はこの年代より若い可能性がある。2. 水質変成を受けたEコンドライト岩片は、岩片の両端約1mmの範囲で中央と比べ一部の元素の含有量が明らかに少なくなっており、端層において欠如している鉱物、EPMAの定量分析での収量が低く組成にばらつきのある複数種の物質の存在が確認された。以上の特徴より非平衡な変成を受けており、水質変成を経験したことが示唆される。水質変成を受けた層はCコンドライトと接しており、この岩片の成因に関連した可能性がある。
  • 鳥羽瀬 翼, 吉朝 朗, ネスポロ マッシモ, 本宮 秀朋, 磯部 博志, 有馬 寛, 杉山 和正
    セッションID: R5-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    Tissint 隕石(Shergottite)は火星起源の隕石で ある。XAFS 法を用いた Tissint 隕石の表面とコアの Zr の局所構造解析を行い、地球産テクタイト、クレーター 付近で形成される衝撃ガラス、火山ガラ ス、雷管石、バデレアイトと比較すること で、隕石衝突による火星離脱時や地球大気 圏突入時に受けた環境推定を行った。 Tissint 隕石のコア部と溶融ガラス部の Zr 局 所構造解析より、それぞれバデレアイト と雷管石、スーバイトと 同様の局所構造を持つことが明らかになっ た。バデレアイトと雷管石の形成温度から Tissint 隕石コアの形 成温度は 1900-2300°Cの間であると推測される。スーバイト に似た Zr 局所構造を持つ、Tissint 隕石の表 面部は 900-1300°Cというコア部と比べて低 温で形成されたと推測される。Zr局所構造よりTissint隕石の表面部とコア部の形成環境に制限条件の付加と、Zr局所構造解析により天然ガラスの形成環境の詳細な推定に成功した。
  • 竹之内 惇志, 三河内 岳
    セッションID: R5-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    これまで火星隕石中のカンラン石の黒色化を引き起こす鉄ナノ粒子の形成過程には還元反応と不均化反応が提唱されてきた。そのため、鉄ナノ粒子の形成過程を制約するためには三価の鉄の有無を明らかにすることが重要である。先行研究によるXANES分析では三価の鉄が確認されていないが、メスバウアー分光分析及び、EELS分析では、黒色領域は透明領域よりも有意に高い三価の鉄を含有することが示されている。本研究では透明・黒色領域を、不均一に着色したシャーゴッタイト中の同一結晶内で測定し結晶方位の差を考慮することで、先行研究よりも精度の高い分析を行った。解析の結果、黒色領域は透明領域よりも有意に高い三価の鉄を含むことが示され、メスバウアー分光、EELS分析と整合的な結果が得られた。この結果は不均化反応によるナノ粒子の形成を支持し、ナノ粒子の周囲にSiに富む相が見つからないという、これまでのTEM観察の結果とも整合的である。また、我々のTEM観察では黒色領域中にネットワーク状に結晶構造の乱れた領域の存在を確認しており、三価の鉄はそのような領域に濃集している可能性も示唆された。
  • 安武 正展, 山口 亮
    セッションID: R5-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    アカプルコアイト・ロドラナイト隕石11試料の岩石鉱物学的特徴およびかんらん石ファブリックを明らかにした。アカプルコアイトは細粒組織をもち、普通コンドライト的モード組成を持つ。輝石温度計から、~910-1000℃が得られた。岩石組織から、これらは3 vol.%以下の溶融を経験したと考えられる。かんらん石LPO配は見られない。一方、ロドラナイトは粗粒組織を持ち、斜長石に乏しい試料(<4 vol.)、斜長石に富む試料(~9-19 vol.%)が見られた。斜長石モード組成から、これらは、それぞれ>10 vol.%および~5-10 vol.%の部分溶融を経験したと考えられる。輝石温度計から、~970-1100℃が得られた。ロドラナイト2試料に、かんらん石LPOの発達が見られた。岩石組織、かんらん石LPOから、ロドラナイトの一部は固相変形を経験した可能性が考えられる。これらの結果から、アカプルコアイト・ロドラナイト母天体中の部分溶融の進んだ高温な領域に、固相変形が発生していた可能性が考えられる。一方、アカプルコアイトの形成領域において、固相変形は発生しなかった可能性が考えられる。
  • 大野 遼, 竹之内 惇志, 三河内 岳, 山口 亮
    セッションID: R5-18
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    シリカ鉱物として隕石中で多く見られる単斜晶系トリディマイトは400℃以下で、六方晶系から直方晶系を経た相転移によって形成する。我々はこれまでに3つのNon-cumulate Eucrite中のシリカ鉱物に注目して、Eucrite隕石を用いた溶融・結晶化実験と合わせて熱履歴解明の研究を行ってきた。本研究ではこれまで観察した試料よりも熱変成度が高い5または6に分類されているMillbillillie中のシリカ鉱物の多様性と熱変成度との関連性について議論した。観察から、玄武岩質岩片には粗粒な輝石や斜長石の付近に単斜晶系トリディマイトと石英が存在していた。確認された組織から、どちらも熱変成による相転移によって晶出したと考えられる。また、存在したトリディマイトがすべて単斜晶系であったことから、この隕石は少なくとも直方晶系トリディマイトを持つ隕石よりも400℃以下で遅く冷却されたことが推測される。これは、シリカ鉱物と共に粗粒な輝石や斜長石が存在していることとも調和的である。以上のことから、Millbillillie隕石は一度急冷された後に埋没され、強い熱変成を受けたことが考えられる。
  • 谷 理帆, 富岡 尚敬, 鹿山 雅裕, 常 昱, 西戸 裕嗣, Das Kaushik, Rae Auriol, Ferriere Ludo ...
    セッションID: R5-19
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    巨大隕石クレーター形成モデルに制約を与えることを目的として、IODP 364次航海で掘削されたチクシュルーブ・クレーターのコア試料について、石英のカソードルミネッセンス分光分析を行った。衝撃を受けた石英は、青色発光ピーク強度が衝撃圧力上昇とともに増加することが実験によって示されている。衝撃回収試料を用いて圧力キャリブレーションを行い、それを元にチクシュルーブ基盤岩の花崗岩試料の衝撃圧力を推定した。その結果、いずれの試料も衝撃圧力は約15-20GPaの範囲にあることが明らかになった。試料の掘削深度による衝撃圧力の減衰は小さいものの、海底下深度1100–1200m付近ではわずかに圧力が高く、ピークリング形成時に基盤岩が大きく撹乱された影響を受けていると考えられる。
  • 富岡 尚敬, 谷 理帆, 鹿山 雅弘, ダス カウシク, ICDP-IODP Expedition 364 Science Party
    セッションID: R5-20
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    ICDP-IODP364次航海により、6600万年前に形成されたチクシュルーブ・クレーターのピークリング直上での海底堀削が初めて行われた。海底下深度505.7−1334.7mのコア試料からは、インパクト後の堆積物(主に炭酸塩岩)、617.3–747.0mからは、インパクタイト(Suevite及び衝撃メルト角礫岩)、747.0–1334.7mからは、ピークリングを形成する花崗岩類が回収された。本講演者を中心とするチームは、(1)基盤岩の衝撃圧力分布測定、(2)インパクタイト及び基盤岩の変形・溶融組織、(3)ケイ酸塩高圧相の探索、を通じて、ピークリング・クレーターの形成プロセスに関してより詳細な知見を得ることを目標とする。本講演では、堀削試料の概要を紹介する共に、衝撃断層脈の電子顕微鏡観察結果についても報告の予定である。
  • 三浦 保範
    セッションID: R5-21
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    地球の三状態圏で鉱物の数と組成が広がっているが、無海水の地球外天体では鉱物種と組成が限定的である. 炭素含有物も地球で多様な形成を示すが、地球外物質では数とサイズも限定されている. 地球外惑星の生命体議論も海底堆積物炭酸塩固体の観察が大切である.
  • 高山 愛枝, 大藤 弘明
    セッションID: R5-P01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    パラサイト隕石の起源と形成メカニズムを解明するため、パラサイト隕石の微細組織観察と化学組成分析をSEM‐EDSとTEMを用いて行った結果、隕石中のカンラン石中に液滴状包有物の存在が確認された。この微小包有物は、その産状からカンラン石の二次包有物(メルト包有物)であり、主にFe‐Ni合金とトロイライト(FeS)から成る。また、マイナー相としてスタンフィルダイトやクロマイト、α‐トリディマイト(SiO2)を含む。包有物中のFe‐Ni合金の化学組成は、Ni含有量の点においてパラサイト隕石の基質を構成するFe‐Ni合金と異なる。また特徴的なマイナー鉱物を含むことも考慮に入れると、包有物を生成したメルトは、基質部とは異なる起源のものか、もしくは基質部の部分溶融によって生じたものと推測される。一方、トリディマイトの存在から、包有物の形成は比較的高温(>870 ℃)かつ低圧(<0.15 GPa)であった可能性が高く、液滴状包有物の形成メカニズムを検討することは、パラサイト隕石が形成時もしくは形成後に経験した熱史を議論する上で重要である。
  • Youmo Zhou, Tetsuo Irifune, Hiroaki Ohfuji, Toru Shinmei
    セッションID: R5-P02
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    In this study, melting experiments of plagioclase with various compositions have been made at meteorite-shock-vein conditions, typically 16-23 GPa and above 2300 K, to discuss the shock metamorphism of plagioclase in a way of melting, cooling and crystallization under high pressures.
R6:深成岩・火山岩及びサブダクションファクトリー
  • 佐藤 真, 伴 雅雄, 西 勇樹, 及川 輝樹, 山崎 誠子
    セッションID: R6-01
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/01/16
    会議録・要旨集 フリー
    蔵王山、古熊野岳-中丸山火山体噴出物は上・中・下部の3つに分類できる。噴出物は全て中間カリウム-カルクアルカリ系列の混合岩である。下部と中部噴出物の全岩組成はSiON2組成変化図上で直線的なトレンドを示し、SiO2に富む側で収束し、乏しい側では発散する。上部噴出物は中部噴出物のSiO2に乏しい側の延長上に乗り、中部噴出物活動時に新たな苦鉄質端成分マグマが活動し始めたと考えられる。また、鉱物化学組成の解析結果から、珪長質端成分マグマは下部噴出物より上部噴出物の方が高温で、中部噴出物時にはその両者が共存していたことが明らかとなった。新たな苦鉄質マグマの活動に伴い、低温のものに置き換わるように、比較低高温の珪長質端成分マグマが形成され始めたと考えられる。
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