小滝川の流れる新潟県糸魚川市西部には,蓮華帯(Nishimura 1998)と呼ばれる,変成岩を構造岩塊として含む蛇紋岩メランジュが分布する(中水ほか 1989, 松本ほか 2011).
2017年6月7日,小滝川上流にある長栂発電所から,濁度99%に達する白濁現象の発生が,糸魚川市に情報提供された.
白濁物質の分析の結果,緑泥石,滑石,クリソタイル,トレモライトと同定された.このことから小滝川上流に分布する蛇紋岩を含む斜面の崩壊が考えられる.
クリソタイル及びトレモライトは,形態観察からアスベストであることが判明した.XRDによるRIR半定量分析結果では,河川水中に2-4wt%,白濁水から沈殿した白色沈殿物に7-20wt%アスベスト鉱物を含有する可能性がある.市内の大気中に含まれるアスベスト含有量を7カ所で調査したが,検出限界以下であった.
今回の白濁現象では,白濁した河川水に有害重金属などの水質的な問題は見られなかったが、その後の調査でアスベスト鉱物が確認された.上流部に蛇紋岩地帯がある河川が懸濁した場合は,その水質だけではなく,懸濁物質の鉱物学的な情報も合わせて検討する必要性を示唆している.
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