Diggingの方がthreateningよりもmotivationが強いということは余剰仮説からは説明されなかったが, 抑制解放説からは抑制解放の継続時間によって説明することができる。
Diggingは (threateningも含めて) 本来的な行動であると考えられる。
Ritualizeされると言う点では, 余剰仮説と同様に抑制解放説からも説明できる。
以上のことから, 闘争事態での転位行動について, ハリヨにおいて集められた本実験のデータに関しては, 抑制解放説の方が妥当性が多いと考えられる。
1匹の雄が造巣行動をしている水槽に投入されるという仕方で雌が雄のRevierに登場した。そうした事態で, 造巣行動類型のうち特にboring, fanningの頻度が著るしく増加した。しかし, これら二つの行動類型は, 造巣において, 巣の形を整える機能を果すと考えられ, 雌が現われれば, その中に雌が入って産卵するのだから, 当然増加が予期される。
この事態で, 雄が, 従う雌を背で押し上げてすぐ巣にもどって巣造りをするのが観察された。この場合の造巣行動は, 雌に生殖行動を阻止されたために生起したと考えるより, 雌を押しとどめておいて, 巣を完備するために生起したと考える方が自然である。
造巣行動遂行中の雄のいる水槽に雌を投入し, 観察終了後, 網で取り出すという操作をし, 雌のいない場合, 再び去った場合が各々急激にもたらされたが, どの場合にも造巣行動は生起する。雌がいる場合だけ, 造巣行動に特有のエネルギーが完全に消失されていると考えて, 性的事態における巣造りが非本来的であるというのは不可解である。これらの造巣行動は本来的だと考えられる。
上述の点から, 性的事態の造巣行動は転位行動ではなくて, 場面に適応した真正の行動だと考えるべきである。
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